プロ野球日本シリーズは4勝2敗で横浜DeNAベイスターズが26年ぶり3回目の日本一に輝きました。
終わってみれば第3戦で盛り返したDeNAの勢いがそのまま最後までソフトバンクを呑み込んだシリーズとなりましたが、個人的にはソフトバンクが劣勢の場面で出てくる投手にプロとしてのキャリアの浅い選手が多く、本当に日本シリーズの1点もやれない場面で抑えられるだけの経験のある選手なのかを疑問に感じました。今季レギュラーシーズンで結果を残している投手、例えばシーズン途中から30試合以上に登板して一定の成績を挙げた投手であれば昨季までの実績がなくてもまだわかるのですが、昨季まで実績がなく今季数試合しか投げていない投手が出てきて打たれたらファンが納得できるのか、もう少し他に経験のある投手がいなかったのかと思いました。負けの数が増えれば増えるほど勝ちパターンの投手を無理させてでも投げさせる必要が出てきますが、継投の人選に伝わってくるものが乏しかったというのが正直な感想です。崖っぷちとなった第6戦でも終わってみればちぐはぐな継投になっていました。「今季のソフトバンクは強すぎて苦しい時がなかったから小久保監督が劣勢の時の戦い方を経験できていないのではないか」との指摘が複数の解説者から聞かれましたが、まさにこの言葉で説明がついてしまう継投だったかと思いました。また、首脳陣をはじめとして気の緩みがなかったかという部分も気になりますが、これは当事者にしかわからないので来季以降に活かされるものと思います。
一方、DeNAはレギュラーシーズン中は終始苦しい場面ばかりで、その経験が最後に活きた形となりました。力のある先発投手の数が足りず、第1戦先発のジャクソン投手を中4日で第5戦に先発させる苦しい台所事情でしたが、2日の第6戦が雨で流れたために敵地福岡で先発した投手を第7戦に注ぎ込める余裕ができたのも大きかったと思います。結果的に第6戦で決まりましたが、第3戦に勝利してから試合を重ねるごとに勢いを増していった打線と強力ソフトバンク打線を抑え込んだ投手陣の奮闘が見事に噛み合った結果の日本一だったと思います。私は「クライマックスシリーズ(CS)を勝ち抜いたチームが日本シリーズに出場するに相応しいチーム」という意見を持っていて、もし巨人がソフトバンクと対戦したらどんな戦いになっていたか、下手したら2005年の阪神のように永遠にネタにされるような惨敗を喫したかもしれないということを考えると、CSで日本シリーズを戦うに相応しいチームを選ぶのは面白い日本シリーズを演出するにあたって必要なことだと思います。
今回の日本一により、来季はDeNAとなって初となるベイスターズ27年ぶりのリーグ優勝への期待が大きくなっていますが、現12球団で最も優勝から遠ざかっているベイスターズの来季の戦いをひそかに楽しみにしています。
また、今月は第3回WBSCプレミア12が開催され、台湾が年齢制限のない国際主要大会の初優勝を飾りました。
侍ジャパンこと日本代表は今大会を2026年ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や2028年ロサンゼルスオリンピックに向けた育成のための大会と位置づけ、比較的若い選手を多く選出したチームで臨みました。
6チームの総当たりで戦うオープニングラウンドでは5戦全勝で勝ち抜き、次の4チームの総当たりで戦うスーパーラウンドでは危ない試合もありながら打線が爆発し3連勝と8戦全勝、国際大会での連勝記録を27に伸ばして決勝を迎えましたが、2日連続の対戦となった台湾に力負けしての準優勝となりました。
オープニングラウンドでは投手陣がキューバ戦の6失点以外は3失点以内に抑える好投もあり危なげなく勝っていましたが、ミスなど課題の残る試合が続きました。続くスーパーラウンドでは3試合連続9得点と打線は当たっていましたが、初戦のアメリカ戦を除き6失点と投手陣の疲れが見えていました。ベネズエラ戦では途中逆転を許し、ともに試合前に決勝進出が決まった台湾戦では初回に4得点して優位に試合を進めるも常に反撃ムードを持たせる展開になりました。それが翌日の決勝に影響を与えた可能性は否めません。
それはそれとして、今大会の台湾は悲願の主要国際大会初優勝に向けて強いチームを作ってきたことに加え、スーパーラウンド第3戦で予告先発として発表したエースを翌日の決勝で投げさせるため、罰金を払ってでも変更したところに台湾チームの本気で優勝したい気持ちを感じました。予告先発の変更という行為自体には賛否はありますが、最終的に大会事務局が認めているため、大会のルール上は問題ないことになっていますし、先発投手にマウンドで投球練習だけさせておいて先頭打者を申告敬遠して降板というペナルティ回避の選択肢もあった中、それを選ばなかったことも投球練習すらも見せたくないという本気度の表れだったと思います(日本チームに対する敬意とみる向きもありますが)。
決勝ではメジャーリーグ一歩手前と言われている台湾のエースが4回を1安打3三振の無失点に抑え、5回表にソロと3ランの2本塁打で4得点した台湾が5回以降NPB経験者2人を含む3投手の継投で無失点に切り抜け、台湾悲願の初優勝となりました。日本代表としては最後の最後で打線が狂わされたように打てず、「投手がいい投球をすれば格上にも勝機がある」という国際大会の怖さをここで味わうことになりました。5回表、ソロホームランを喫した直後の1アウト1・2塁の場面で投手交代できなかったことが悔やまれますが、スーパーラウンドから投手が1人怪我により離脱し、大会ルールにより補充できずに臨んでいたことと、シーズン終了後の開催によって怪我を防ぐために投手起用に制限が掛けられていて、この試合で使える投手の数が決まっていたことを考えると、日本代表チームとして予定の投手で勝てなければ仕方がないというスタンスである以上は我々も受け入れるしかないかと思います。予定の投手で勝てるだけの力がなかったと言えばそれまでであり、スーパーラウンド第3戦で予告先発投手を変更した台湾が井端監督の「予告先発が左投手だったから変更後も左投手で」という要望に応え、前日の試合で先発した左投手を先発させるなど無理をした台湾に3回当たって全部勝てるほど甘くはなかったということだと思います。
ともかく、選手の皆さんはお疲れ様でした。しばらくはゆっくり休んで来季に向けて頑張っていただきたいと思います。
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