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舞は湯船に身体を横たえ、いつしか軽いまどろみに陥っていた。 夢とも現実ともつかぬ意識の中で、彼女は友達に無理矢理渡されたあの本のことを思い出していた。 もう開くつもりはなかったのに、気がつけばまた、彼女は貪るように先を読んでいた。
……物語の少女…異国の気高い血を引いている幼い娘は、今や男の欲望を叶えるための存在へと変貌していた。 ゆっくりと押し開かれた性は、また少女をそれ無しではいられないようにもしていたのだった。 今日も男は少女を抱きかかえ、そして薄いブラウスの上から幼い胸をまさぐり始める。 男の求める唇にぎこちなく応えながら、小さな手は教えられた通りに彼の股間に潜り込んでゆく。
男はその幼い身体を、指で、そして口で丹念に味わいながら、少女の手に包み込まれた自身から呼び起こされる官能を愉しむ。少女もまた、男の巧みな愛撫に身体を火照らせ、か細い喘ぎを漏らし、そしてほころび始めた蕾から初々しい蜜を流し始めるのだった。
「……それな…恥ずかしい…こと……」
うわごとのように、掠れた声で舞は呟く。
思い出すほどに、胸は切なげに脈打ち、下腹部が熱くなってゆくのを感じる。 あのとき…部屋に来た兄から逃れるように風呂場へと脚を運び、そして下穿きをおろしたとき、冷たいものが糸を引きながら内股に張り付いたことを彼女は思い出す。 染みになった下着を隠すようにたたみ、浴槽の縁でぬるついたそこを何度も洗い流しても、指が触れるたびに染み出してくるような感覚に、舞は激しい羞恥を覚えていた。
浴槽の中で身体を清め終わり、こうして漫然と身を横たえていると、また、あの本の中の妄想が脳裏を駆け巡り、彼女の胸と、そして秘められた場所を苛んでゆく。 やがて彼女の指が、そこを慰めるためにゆっくりと伸びてゆく。 まどろみに白んだ頭が、もうそうする以外にないと告げているかのようだった。
……少女の狭く、清らかな膣道に自身を与え続け、男は少女に女の悦びを教え込む。 絶え間ない官能に、やがて少女は男根に貫かれる快楽を覚え、ついには自分から脚を開き、導き挿れ、腰を蠢かすようにさえなる。
しかし、男は少女の覚えた欲望をた易く満たすことはしなかった。 彼の愛を受けるためにはただ奉仕し、尽くすことを覚えさせ、また堪えきれずに自らで慰めるようなことがあれば、酷い辱めが待っていた。 しかしそんな性的な苛めにも、少女は新たな情欲を覚え、次第にそれを好んで求めるようになる。
男の官能を刺激し、劣情のまま抱かれるために、少女はどこまでも淫らに変わってゆく。
男と二人だけのその世界で、一日の全てを彼の為に尽くし、どのような求めにも、どのような辱めにも少女は応えた。 男に荒々しく突き上げられ、激しく抱きしめられながら、彼の放つものに体内を満たされ、そして自分もまた果てるとき……少女は自分の心が満ち足りてゆくのを感じていた。
生まれたそのときからずっと一人で生きてきた自分の、当たり前だと思っていたその寂しさが、狂おしい官能と共に薄れてゆく。 また、一人になるのは堪えられなかった。 だから、貪るように男を愛し、そしていつまでも愛されるために、少女は幼い肢体をどこまでも開いていくのだった。
…そして、舞もまた、そんな少女の気持ちに合わせるかのように、まだ穢れを知らないその部分をなぞってゆく。 普段なら、不安と怖れから進んでするようなことでなかったその行為は、物語と比べれば他愛もないことのように思えていた。 いつしか彼女は、自らが少女の頃に戻ったような気持ちで、その頃は想像だにできなかった行いに身体を揺らしつづける。
「……あ……ん…」
ゆっくりと、僅かに盛り上がった秘裂の上をなぞる指が、次第に規則的にうごめき、爪の先は時折襞の奥へと掻きいれられる。 それが包皮に埋もれた突起に差し掛かるたびに、舞は張り詰めた声を漏らし、しなやかな上体を強張らせる。
「あ…あっ……ん……ん…」
自分では、そんな淫らな娘でないと信じていた。
しかし、彼女の指は次第に動きを強め、襞を掻き分け奥へと進もうとする。 やがて中指の先がゆっくりとその部分に沈んでいき、舞はこれまで味わったことのない悦びに、乱れた声をあげる。
「……は…ぁ…ああ……ああっ…」
ゆっくりと、そして規則的に、指先は肉孔に挿し込まれ、そして引き出される。 湯の中に、ねっとりとしたのが溶け出し、一瞬陽炎のように揺らめいて消えてゆく。
「……わたし…わたし……こんな…いけない…こと……」
禁忌だったはずのその行為に彼女は背徳を感じながら、しかしそれさえも官能へと変わり、果てのない悦びへと変わってゆく。
少女はこんな高まりに溺れていったのだろうか…… 朦朧と定かならぬ頭で彼女は思う。 しかし……異性を身体の奥底へと収め、絶頂に失禁さえする物語の少女は、舞の精一杯の戯れとは程遠いような気もするのだった。 自分のこの指が、もし……想像でしか知らない、男性のそれであったのなら……
「んあっ……あ……い…い……いい…の……あぁ…ああぁ……」
内向きに、慎ましやかに育ってきた彼女にとって、異性を強く意識したのはそれがはじめてのことだった。 感じたことのない高まりに、心と体をうちふるわせ、しかしその先にある果てをまだ知らないまま、舞の脳裏に、もっとも親しい一人の異性が浮かんでは消えてゆく。
「……そんな…そんな……いけない…こと…よ……あ……だ…め……」
否定しようとする言葉とは裏腹に、満ち足りた何かが、彼女の中に広がってゆくのを舞ははっきりと感じ取っていた。
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