古代の先人に学ぶ
――日本人の「大和心」を縄文時代や古神道に学ぶ――
本論の概要
太平洋戦争に敗れて貧乏のどん底を体験した日本は、短期間に見事経済成長を成し遂げ豊かになった。ところが我々は今、豊かになり快適な生活ができるようになっているのに心は満たされず我々の周囲には閉塞感がある。
我々の次に向く方向は、「物質的豊かさ」と「心の豊かさ」のバランスを持った人間になることである。その「心豊かに」生きる秘伝や秘訣を、弥生時代や縄文時代の、いわゆる古代の我々の祖先に照準を当て、「大和心」を探ってみることにした。日本は、モンスーン地帯に属し高温多湿のために豊かな自然に恵まれた、米作に適した瑞穂の国である。歴史上これまで外国の侵略もほとんど受けず、大量の移民もなく、島国日本は長期にわたって日本独自の文化を築き上げてきた。(以上 2.日本の歴史と風土)
明治初期の日本の庶民は、質素ではあるが幸せで満足した生活をしており、思いやりのある、礼儀正しい、和を大切にする人々、自己を主張するのではなく共同・協調で生きる人々、創意工夫に優れた勤勉な人々であった。そうした人々の心はいつごろどのようにして形成されたのであろうか。
(以上 3.外国人が見た明治初期の日本庶民)
日本が縄文時代の後半の定住生活時代(約3500年間)、世界の先進地域では農耕文化が進み、富と権力が集中し争いの時代に入っていた。
日本列島ではその間、平和な社会が続き、ムラという共存共栄社会が根付き、平和で豊かな生活を通じて和の心が育まれ、人々は心豊かに生きた。
そして「日本のあけぼの」と呼べるような日本独自の文化が育ち、人の心に「大和心」が定着し、その後の日本民族の精神生活の基盤というべきものになった。
(以上 4.縄文時代の我々の祖先の生き方)
考古学は、遺跡や遺物というもの≠ノよる実証主義を採るため、その背後にある人間について語ることをあまりしていない。そこで私は、我々の祖先の精神生活を推し図るにあたり、考古学とは別の観点から、日本の神道について、それも弥生時代や縄文時代にもさかのぼる古神道について調べてみた。(以上 5.古神道に見る大和心)
古代の我々の祖先の「心豊かな」生き方で、現代人が学ぶべきだと思うもののうち、三つを選び次にご紹介する。