ここで興味深いのはミセ部分の大きな開口と前面の道とが一体になっていると言うことです。確かに現代の商店街も道に対して前面開口ですし、前面道路で車が頻繁に走るところでは考えられませんが、軒が深くミセには床が張られ揚げ見世を張り出し蔀戸を上げることで、道から見るとまるで露店のような親しみが湧いてきます。一方、ミセからは張り出すことで道を取り込んだ広い商スペ−スを得ることが出来ます。現代人にとっては新鮮な魅力ある空間構成になっていて道から思わず吸い込まれて入って行きたくなるような何とも不思議な繋がりを持ちます。これらは、単なる建具という概念を越えて面白いからくり装置と考えることができます。

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蔀、揚げ見世詳細図(閉)

蔀、揚げ見世詳細図(開)

大戸詳細図(閉)

大戸詳細図(開)


 ここで思い浮かべるのが京都の祇園祭の宵山で、山鉾町の町家一軒一軒大戸を開き格子をはずした光景です。土間やミセノマ、オクミセなどにジュウタンや屏風などその家の名品を飾り付けし一般に開放してみせる風習があり、一名屏風祭りの町家と同じような構成になっているのがわかります。