2001年9月のとある日曜日、ふと「もう一度海住山寺に行ってみよう」と思い立ちました。海住山寺は、京都府加茂町にある、真言宗のお寺です。これまで3回も海住山寺の急坂に挑戦したことは、すでに書いてきました(第5の章、第12の章)。昨年の秋、やっと直登に成功し、悲願を達成したときの喜びはひとしおだったものです。今年は、夏に暗峠を経験していますので、それと比べて海住山寺への急坂がどんなものだったかを確かめる意味もありました。
朝6時50分に家を出ました。すがすがしい天気です。JR加茂駅を過ぎて、恭仁大橋を渡り、国道を横切って田んぼの中の道を走ります。小さな川沿いの草むらからは虫の音が聞こえてきました。「ああ、もう秋だなぁ」と思いながら、車輪を進めて、海住山寺への道の入り口に。
急坂が見えてきました。ギヤを最も低くし、ペダルをこぐ足に意識を集中させます。急坂を登り始めました。「あれ。。。?」何だか変なのです。ペダルをこぐと、すっと自転車は前に出ます。前に進むのは当たり前なのだけど、以前はもっとしんどかったはずなのに、今回はスムーズに坂道を登っているのです。以前と比べたら、はるかに楽です。何としたことか。。。
これは、私の脚力が以前にも増して付いて来た証拠なのでしょうか。それとも、愛車の27段ギヤのおかげなのでしょうか(前に使ったランドマスターは24段ギヤでした)。はたまた、あの暗峠の道を経験したため、少々のことでは体が驚かなくなってきているのでしょうか。
何だか分かりませんが、素直に進歩を喜び、急坂を登って行くのですが、どうしたことか、今回は仕事のことが次から次へと頭に浮かんできました。新製品を無事リリースできてほっとしている後だから、仕事のことなど忘れて、自転車で走ることに集中できるはずなのに、とりとめなく仕事のことを考えていました。こんなことって、これまで無かったことです。
仕事のことを考えながら登っていると、いつの間にか急坂を登りきっていました。海住山寺の急坂ってこんなに短かったのか、と不思議に思いながらも自転車を駐車場に止め、境内に入りました。
早朝の境内は、静かです。まずは本堂に参拝。境内を散歩します。と、本堂の右側に、下の写真のようなお地蔵様が。 最近は長いものに巻かれて、惰性で生きているのではないかと自分に嫌気がさしていた矢先のことでしたので、「何くそ」という文字を見てギクリとしました。人間、「何くそ!」と思うことこそ大切でした。「何くそ」と思っている限り、人間はエネルギーを燃やし続け、挑戦し続けることができます。だからこそ人生なのです。私は、この「やる気地蔵」様に、「どんな激坂をも登れますように 何くそ 何くそ 何くそ」と祈りました。
境内の静けさにしばらく浸って気分をリフレッシュし、海住山寺を後にしました。