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【 「ハレの箸」と「ケの箸」 】
  
 日本には、様々な年中行事があります。この年中行事は「神ごと」とも云われるように
本来は日を決めて神様を呼び、お祭りを行う日のことです。
『祭』とは、神にご馳走を捧げることなのです。祭の日を古くから「ハレの日」といって
います。農耕民族である日本人は、日常生活に「晴の日」と「褻の日」(けのひ)を設け
単調になりがちな生活にリズムをつけてきたのです。現在でも、よそ行きを「晴れ着」と
言っているのは「晴の日」に着替える着物のことなのです。

 最近では、冠婚葬祭の時は別として、普段に人を家庭に招いてご馳走をするという風習
は徐々に薄れつつあります。
食べ物は舌で味わっているだけでなく、誰がどうやってつくったのか、という料理の背
後の支えが、料理の美味しさを発露させるのです。だから現在、日常の家庭での手作り料
理(郷土料理)こそ、家庭での人と人との結びつきや、他の人に贈る最高のもてなしにな
っているのです。
 この「おふくろの味」や「郷土料理」の背後の支え(心)を、相手に伝える役割を果た
してくれるのが箸なのです。

箸にも、「ハレの箸」と「ケの箸」があります。
昔も今も、神事・祝儀などの「晴の日」につかう『両口箸』は、箸の両方の端を使って食
べることが出来ます。この『両口箸』は丸い『柳箸』が主で、冠婚葬祭や本膳料理などの
「正式の箸」として使われ、「ハレの箸」といっています。
この箸は、神と人とが共食するために、白木の柳箸で、柳は白く清浄で強い木であること
から、魔性を防ぎ、邪気と不祥を払う霊木とされ、春真っ先に芽を出す「めでたい」縁起
の良い木で、「家内喜箸」とも書き、「箸の中の箸」とされています。この箸は、男女・
年齢に関係なく、一般にその長さは八寸です。原則として使用は、一回きりで使い捨てる
ことになっています。このほか、吉野杉の赤味で面の取った、杉の香り豊かな「利休箸」
(らんちゅう箸)も「ハレの箸」として使われています。
 これらの箸は、今でもお正月や結婚の祝い膳には、欠かせないものです。
 これに変わって、「褻の日」(けのひ)すなわち家庭用、個人用として使われるのが
「ケの箸」です。もっとも多く使われているのが「塗り箸」でその他紫檀・黒檀・鉄木
やプラスチィクの箸もあります。来客用・業務用として多く使われているのが、木や竹
の『割箸』です。これらの箸は大体が、箸の片方だけを使って食べる「片口箸」になっ
ています。
 このように、柳箸などの神と関係のある『両口箸』が、「ハレの箸」であり、神と関
係のない「片口箸」が、「ケの箸」として区別されています。
 この王朝時代に誕生した柳箸を「正式の箸」、塗り箸や割箸を「略式の箸」とも呼ん
でいます。