ルネのきままなアトリエ
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石鎚山 愛媛県・標高1982m 2005年10月23日(日)曇り


一ヶ月も経たないうちに、再び土小屋にやってくることになるとは!
前回、登山口の土小屋にやってきたのが9月の下旬。
四国のてっぺんからの眺めを見てみたい、と思った。
だが、あいにくの悪天候。登山口で天候の回復を待ち粘ってみたものの、いまいち気力が湧いてこない。
しっかり雨具をつけ意気盛んに雨の中を出発していく中高年のパーティを横目で見ながら、すごすごと引き上げてきたのだった。

でも、やはり登りたい。出来るならば山が鮮やかに色づくこの季節に。
絢爛豪華に装った秋の弥山山頂から天狗岳の写真を見るにつけその思いが高まっていった。
いったん何かに夢中になると、どうにもブレーキがかからなくなる難儀な性格。
夫に持ちかけると、あっさりと同意してくれた。
再び石鎚山をめざすことになった。

しかし、今回もやはり太陽は姿を見せてはくれなかった。
けれど、乳白色の霧に包まれた幻想的なブナ林、色づく木々の間を秋を満喫しながらの山歩き。
山頂は昨夜からの雪で、積雪5センチ。早朝は霧氷が見られたらしい。

眺望は望めなかっためれど、ガスの中に「四国のてっぺん」を感じた。

コース 地図(クリック)
8:10 土小屋登山口
9:55〜10:10 二の鎖小屋
10:35 三の鎖下
11:03〜12:00 弥山山頂
14:12 土小屋登山口

アクセスルート 松山自動車道いよ西条IC〜寒風山トンネル東側出口〜瓶ガ森林道〜土小屋



 前日の土小屋 
午後5時過ぎ
うっすらと霧氷が見られる

車の中で夜を明かす。
夜中かなり冷え込んで、何度も目を覚ます。
厚手の毛布は持ってきたもののシュラフを持ってこなかったことが悔やまれる。
同じように車の中で寝ている車も3台ほど。
明け方下から登ってきた車も何台か。
5時過ぎ、ヘッドランプを点けながら出発していくグループもある。
雨は降っていないものの、天気は良くない。山はガスって見えない。
どんよりとたれこめた雲の下に、瀬戸内海がかすんで見える。

8時5分、雨具をしっかりつけ、駐車場出発。
5分程で登山口到着。
登山口 登山口から振り返る 尾根上のゆるやかな登り 石鎚スカイライン

しばらく林の中を歩くが、右手から国民宿舎石鎚荘からの道が合流し、すぐに見晴らしの良い場所に出る。
左手に山肌を引っ掻くようにして下っていく石鎚スカイラインが見える。
ほどなく道は尾根の北斜面に回り込みゆるやかに登っていく。
黄色く色づいたブナが美しい。

北側斜面 ブナの大木
道はまた尾根の南側に回り込み、晴れていればさぞや眺めがよさそうな斜面を登っていく。
しばらくして、休憩によさそうなベンチのあるところに着く。

ベンチ

晴れていればこの辺りから荒々しい石鎚山の山容が見えるはずなのだが・・・。
ベンチの先でちょっとだけ休憩して、出発。
道は南西斜面から尾根を乗り越し北東斜面になり、自然林の中を徐々に上っていく。

二の鎖の少し手前に面白い標識が横たわっていた。
このページのタイトルの画像に使っているのがそれである。
鉄製だが赤く錆びついている。文字が一つ一つ丁寧にくりぬかれている。芸術作品といってもいいぐらいの味わい深い標識である。斜面に無造作に横たわっているところをみると、ずいぶん前に作られたものなのだろうか。
霧の中を登る 滑落・落石注意の看板 ちょっとしたガレ場を横切る

20メートルほどのガレ場を横切ってしばらく登ると、開けたところに出た。
大きな鳥居があり、たくさんの人が休憩していた。ここで成就からの道と合流する。
成就からもたくさんの人が登ってくる。
石鎚山に登るには土小屋からのコースが最短距離で、最近はこちらが主流らしいのだが、このことを「我が道を行く」のwolfgangさんの記録を読むまで知らなかった。
知らないままロープウェーに乗り成就からのコースを歩いていたかもしれない。そして、途中でギブアップしていたかも。ありがたいことである。

鳥居から木製の階段を数十メートル登ると二の鎖小屋。
しばし休憩。その間にも続々と登山者が登ってくる。


二の鎖下
ロープウエー成就駅からの道と合流
二の鎖小屋
二の鎖を登る


巻き道を行くか二の鎖を登るか少し考えたが、鎖を登ることにする。

私たちの前を男性一人、女性二人のグループが登っている。
足場の手がかりをつかめずに、てこずっている。
先頭を登っていくリーダーと思われる女性が後の二人にあれこれアドバイスするのだが、岩場に張り付いたまま身動きできない状態が続く。
三人ともかなり高齢とお見受けする。70歳前後ぐらいか。

10年後、あるいは20年後、私にこの鎖場を登ろうという気力が残っているだろうか?
鎖場より何より、山を歩こうなどという体力と気力があるかどうか・・・。

とても真似できそうにない。
脱帽である。
二の鎖を登る
三の鎖を見上げる
二の鎖を登り終えると、目の前に三の鎖の岩場が聳えていた。
垂直とも思えるような岩場。
前の三人は、巻き道へと去っていった。

腕がだるい。
しばしの休憩の後、三の鎖を登る。

濡れていなければそれほど大変ではないと思う。
鎖はしっかりしている。
けれど、昨夜からの雪がところどころに融け残り、乾いていればどうってことのないようなところで滑る。

三点確保しながら慎重に登りたいのだが、岩が濡れているのでしっかりと足場を確保できないまま、腕の力だけで体を引っ張りあげる場面もあった。

さすがに、鎖を下りてくる人は誰もいなかった。
神社裏手より三の鎖を見下ろす
いいかげん腕が疲れてきた頃、ひょいと弥山頂上神社の裏手に飛び出した。

頂上は登山者でかなり賑わっている。
山頂では昨日から初雪を観測したらしい。
積雪5センチとのこと。
私たちが着いた時には、雪は融けていた。

神社横で居た男性が声をかけてきた。
「今日は天狗は見られないみたいですね。」
天狗?
もしかしてブロッケン現象のこと?
石鎚ではブロッケン現象で見られる人影を「天狗」と言うのか?
で、思わず聞いてしまった。
「天狗、って何ですか?」
その男性はびっくりしたような顔をされる。
言ってしまってから、気がついた。「天狗岳が見えない」ということだったのだ。
恥ずかしい・・・。

その天狗岳は渦巻くガスの中である。
天狗岳への稜線
頂上には石鎚神社と立派な頂上山荘がある。
山荘の中ではコンロは使えないけれど、奥まった食堂のテーブルでも自由に休憩させてもらえる。
テーブルで同席したのは、高松の男性と愛媛のご夫婦。男性はこの山荘の常連さんで、従業員の方と親しく言葉を交わしている。修験道の業をされているらしく、首から袈裟を掛けていた。大峰山の洞川にもよくいらっしゃるらしい。
山頂にて記念撮影 登山者で賑わう弥山山頂 石鎚神社頂上山荘
次から次へと登山者がやってくるけれど、ガスはいつまでたっても晴れそうにない。
天狗岳へはここから痩せ尾根を10分ほど。
ガスの中を天狗岳に向けて下りていく人もたまにいるが、ほとんどはここにとどまっている。
先の高松の方の忠告もあり、今回は天狗岳は断念。次回の楽しみに残しておくことにする。

姿を見せてくれそうにない天狗岳に後ろ髪を引かれながら下山開始。
乳白色の霧の中を、カエデやブナ、トチ、ツツジなどの色づいた木々を楽しみながら、のんびりと下る。
三の鎖の巻き道 頂上直下のつらら 紅葉を楽しみながら下っていく
霧の中のコハウチワカエデ?
シロヤシオの紅葉 振り返る
オモゴザサの斜面を下る
しかし、驚いたのは、なおも下から続々と登ってくる登山者である。
もう昼を過ぎているというのに・・・。しかも、この天候で。
それも、運動靴にズボンというスタイルの人が圧倒的に多い。幼稚園から小学生とおぼしき子供連れもたくさん居る。(ベビーキャリーを背負って立山や乗鞍岳を歩いていた我が家が、偉そうには言えないが・・・)
70歳はとうに過ぎていると思われる高齢の方も次から次へと登ってくる。それも、近くの公園の裏山を散歩するようないでたちで。
雨でも降ってきたら一体どうするつもりなんだろう?

う〜ん。
これほどまでに石鎚山は皆に愛されている身近な山だということなのか・・・。

夫と首をかしげながら、それでもブナやカエデの紅葉に「四国のてっぺん」の深まりゆく秋をしみじみと味わった山旅だった。


おまけ「石鎚山系のカエデ類」

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