ルネのきままなアトリエ
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三郎ガ岳

クリックしてください 油彩 仏隆寺モチヅキ桜
 仏隆寺モチヅキ桜 油彩
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奈良県・標高879m
 2005年10月13日(木) 晴れ 単独




前日まで厭というほど降った雨もからりと晴れて、久しぶりの青空。
たまりにたまった家事を片付けないといけないのだが、居ても立ってもいられなくなり8時を回ってから、あたふたと出かけた。

春のスケッチ以来、この山に登る機会を窺っていた。
今日は午後から用事があり、2時には戻ってこなければならない。
三郎ガ岳に登り諸木野の集落を回ってくる周回コースを歩くには時間的にかなり無理がある。
しかし、今日はどうしてもこの山に登りたいのだ。

と言うわけで、午後の予定を少し遅らせてもらうことにして出発した。


コース
10:30 仏隆寺駐車場
11:00 小峠
11:25〜11:30 高城山
12:07〜12:35 三郎ガ岳
12:43 磨崖仏
12:48 石割山明開寺奥の院宿坊跡
13:02 旧伊勢街道に出る
13:32〜13:38 諸木野集落はずれ東屋
14:03 小峠
14:39 仏隆寺駐車場



10時30分、仏隆寺駐車場を出発。
桜が満開の時には人でごったがえしていた仏隆寺の石段も、今は人影もなくひっそりと静まり返っている。
石段を左に見ながら林道を登っていく。
すぐ上の広船寺の向こうの橋を渡り、集落の中に入っていく。

民家の戸口で農作業をしていたおじいさんが、ザックにぶらさげた鈴の音に顔をあげて、声をかけてくる。
「あんた、一人で登るんか?」
「そんだけ鈴付けとったら、熊はけえへんわ。気いつけて行きや。」

稲穂が金色に波打っている。もうすぐ稲刈りも始まるのだろう。
柿がたわわに実っている。
こんな山の中だというのに、立派な家が多い。どっしりとした萱葺き屋根に白壁が美しい民家も残っている。
モチヅキ桜 駐車場 たわわに実った柿 藁葺き屋根の民家

集落を過ぎ、左手にログハウス、右側に池が見えてきた。なおも登る。右手に児玉稲荷の石碑があり、3台ぐらい駐車できそうなスペースがある。
高城山の登山口は、もうすぐ。

歩き始めて25分程で小峠の登山口到着。
切通しになった峠の左手に登山口の立派な標識がある。

登山道を少し歩いたところで、ダート状の林道に出る。しばらくこの道を歩く。
左手下、木の間越しにお墓が見えている。

11時、左手に高城山の登り口。 熊笹の茂った薄暗い植林帯の中を緩やかに登っていく。
10分ほどで、左手に開けたところから道が急にきつくなる

小峠登山口 ダート道から高城山登山口 傾斜がきつくなる トンネルの先は頂上直下
傾斜のきついちょっとした岩場には鎖が取り付けられている。
傾斜が緩やかになり、向こうにぽっかりとトンネルの出口のように明るい空が見えたと思ったら、ススキの斜面に飛び出した。
すぐ上から話し声が聞こえてくる。

20メートルほど斜面を登ると、高城山の山頂だった。
山頂には初老のご夫婦が休憩していた。
聞くと、やはり仏隆寺の駐車場に止めていた車の方だった。

山頂はなだらかな広場になっており申し分のない眺め。南に台高の山々。ちょっと霞んではいるが遠くに大峰。西に竜門山や、音羽三山の眺めが素晴らしい。
20メートルほど向こうに立派な東屋が見える。ここなら夏の暑い日差しの中でもゆっくり休憩できるだろう。

大阪から来られたというご夫婦としばしお話させていただき、一足先に三郎ガ岳へと出発する。

すぐ上が高城山山頂 榛原の町並みの向こうに音羽三山が

高城山山頂にて
東屋の側を北に回り込み、すぐに東に稜線を歩く。
木の間から目指す三郎ガ岳が聳えている。

ここから三郎ガ岳までは、ちょっとしたピークを三つ越えていく。
二つ目のピークはガイドブックでは左手に巻く、と書いてあったがそれらしき道は見当たらなかった。熊笹の斜面に10メートルほど踏み込んだ跡があったが、そこで行き止まりだった。

仕方なくコブを超えたが、ところどころに岩の露出した痩せた稜線の道は見晴らしもよく、疲れを感じさせない。
最後、フィックスロープが張られたちょっとしんどい登りを経て、三郎ガ岳の頂上に着いた。

木の間隠れに三郎ガ岳 稜線より袴ガ岳 露岩の稜線

頂上には誰も居ない。
東側を除き、大パノラマが広がる。

南方面の眺め
東方面の眺め

が、こんな素晴らしいお天気に、こんな素晴らしい眺めを眼前にし、何てことだ。
その感動を分かち合う人がいないとは。

見ず知らずの人でいい。
山頂でのひと時、
「いいお天気ですね!」
「素晴らしい眺めですね!」
「あの山は何でしょうか?」
などと、大して意味もないけれど、お互いがはるばる山道を辿りここまでやってきたという同志のようなものを感じながら、二言三言、言葉を交わすだけでその感動はもっと奥深いものになるのだ。

高城山のあのご夫婦は、まだやってきそうにない。
ゆっくり写真を撮り、お弁当を食べた。
まだ、来ない。

もうそろそろ出発しようかと思った時、がさごそと音がして、ぬっと男性が一人姿を現した。50代くらいだろうか。
こんにちは、と挨拶を交わしたが、その方はせわしなく写真撮影を始めた。
黙々とデジカメのシャッターを押し続けている。
一段落したところで、
「シャッターを押しましょうか?」
と、声をかけてみた。

ピークでの記念撮影のお手伝いでも出来ればと思い声をかけたのだが、いきなりの申し出に、その方は戸惑ったような表情を一瞬見せたかと思うと、
「あ〜、結構です」
とおっしゃるなり背を向けて、そそくさと食事の用意を始められた。

さて、そろそろ下りるとするか。

山頂からは南へ、木の枝草の根につかまりながらの急降下。
10分足らず下り、踏み跡が二手に分かれておりどちらを辿ろうかと迷ったら、そこが磨崖仏の側だった。

すぐ下の右手の林の中から読経の声が聞こえてくる。
石割山(いしわりさん)明開寺(みょうかいじ)奥の院宿坊跡か?

宿坊跡の建物横に「石割峠」への立派な道標。


急な下り 磨崖仏の横に出る 磨崖仏 宿坊跡の建物

さて、ここから予定していたルートをはずしてしまう。
予定ではこの後、すぐに林道に出て、石割山明開寺本院跡を通り、旧伊勢街道を石割峠を越えて諸木野(もろきの)の集落に出ていくはずだった。

ところが、このあまりのしっかりした道標に、大して道も確かめず、すぐ右手の谷沿いの道に踏み込んでしまった。
地図で確かめると、すぐに左手の尾根を越えなければいけないのだが。すぐにおかしいな、とは思ったのだが、道はしっかりしているし方向は間違っていないので大事はないだろうとそのまま進む。道は植林帯の中小さな谷をどんどん下っていく。

一向に林道に出る気配もなく、予定とは違うコースを歩いていることに気づく。
しかし、方角的には諸木野に出るにはこの方が早そうである。

15分程下ったところで、木立の間から林道らしきものが見え、暗い林から道に飛び出した。
左に「石割峠」の標識はあるが、右への標識はない。ちょっと考えたが、方角的には諸木野は右なので、右に進む。
2、3分歩いたところで、旧伊勢街道の標識が見つかる。
つまり、石割峠を越えるルートパスしをショートカットでこちら側に出てしまったわけである。

諸木野の貯水場まではすぐだった。
林道を大きく右に回り込むと、下に諸木野の集落が広がっていた。
集落のはずれにコスモスに囲まれた立派な東屋が建っていた。
先を急がないといけないけれど、初秋の山里ののどかさにしばし時の経つのを忘れる。

杉木立の中下る 旧伊勢街道に飛び出す 貯水場 東屋

諸木野集落
諸木野集落

東屋のコスモス

諸木野の集落を通り、右手に「旧伊勢街道」の標識をやり過ごし、一つ目の三叉路をまっすぐ進む。左に行くと諸木野川沿いに国道369号線に下りていくことになる。

林道は右に直角にカーブし登っていく。
100メートルほど先の三叉路を左に登る。
民家がぽつりぽつりと続いている。こちらも立派な家が多い。

最後の民家の前を通り、しばらくいくと道が二手に分かれている。

の道に「この先、道路通行止め」の標識があるが、かまわず進む。
しばらくなだらかに登っていくと、見覚えのある木立が現われたと思ったら、登山口の小峠だった。

集落の手前で、仏隆寺を遠くに見ながらしばし休憩。

一つ目の三叉路 道が二手に 右を行く 集落を見下ろしながら

登りがけに声をかけてくれた農家のおじいさんが、戸口で仕事を続けていた。

「今帰りかい?
よう晴れとったから、見晴らしよかったやろ」
こちらを見て声をかけてくれた。

のどかな秋の山村をゆったりと時が過ぎてゆく。
次回は桜の頃、木々が芽吹き始める寸前の時期に、また訪ねてみたい。

諸木野の道しるべ 右 おいせ本街道 左 仏隆寺

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