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     あなたがいれば… -第3話-
作者:鏡裏さん


−朝・水仙の間−

美樹「ほら、起きなさい!」
真琴「お兄ちゃん起きて」
直樹「……」
美樹「起きんかい!」
  美樹が直樹の布団をはがす。
直樹「んあ?なんだ…」
美樹「もう朝なんだからさっさと起きなさい!」
直樹「あ?ああ…頭いってー…」
真琴「お兄ちゃん、大丈夫?」
直樹「ああ…あれ?進也は?」
美樹「進也ならまだあっちの部屋で寝てるよ」
直樹「……じゃあこれは誰の布団なんだ?」
美樹「マコちゃんのよ」
直樹「真琴が一緒に寝たのか?」
美樹「そうよ。
   男二人が別の部屋で寝るからしょうがなかったのよ」
直樹「そうか…
   顔洗ってくる…」
美樹「昨日はどうだった?」
真琴「どうだったって…」
美樹「例えば一緒の布団で寝たとか…」
真琴「え、あ、あの…どうしてわかるんですか?」
美樹「う〜ん…我ながらするどい勘だねぇ。
   それにしてもマコちゃんって結構大胆ね」
  真琴の頬が紅く染まる。
美樹「いいのよ。
   これからもそれくらい積極的にねっ。
   それじゃあたしは進也を起こしてくるから」

−朝食後・菖蒲の間−

直樹「今日はどうするんだ?」
美樹「そうだね〜
   別行動ってのはどう?
   あたしは進也とどっか適当に行って来るから直樹はマコちゃんと…」
直樹「別々に行動するのか?」
美樹「別にどこか見たくて来た訳じゃないんだからいいんじゃない?
   ねえ、マコちゃん」
真琴「は、はい」

−旅館前−

美樹「じゃあ、またね。
   仲良くやるのよ。
   あたし達はもう行くから」
進也「美樹ちゃん、俺頭痛いよ〜」
  進也は美樹に引きずられていった。
直樹「さて、どこか行きたいところある?」
真琴「…見るようなところってあるの?」
直樹「別にないか…
   じゃあ、海にでも行く?」
真琴「…うん」

−海岸−

真琴「…晴れてたら良かったのにね」
直樹「そうだな。
   昨日まで晴れてたのに、今日は寒いな」
真琴「ねえ、お兄ちゃん…」
直樹「ん?」
真琴「私今度は夏に来たいなぁ…」
直樹「そうだな〜」
真琴今度は二人で…
直樹「え?」
真琴「何でもないっ……わっ!」
  真琴は転びそうになる。
直樹「おっと!」
  直樹は真琴の腕をつかんで支えてやった。
真琴「あ…お兄ちゃん…」
直樹「気を付けろよ」
真琴「…うん」
直樹「あれ?降ってきたのか?」
  降り出した雨は次第に強くなってくる。
直樹「どこか雨宿りできるところは………あそこにしよう」
  直樹は真琴の腕をとって走った。

−バス停−

直樹「ここはバス停か…
   真琴、大丈夫か?」
真琴「…うん」
  雨の降る音の中、真琴の荒い息づかいが聞こえてくる。
直樹「真琴、どうかしたのか?」
真琴「…ごめん、お兄ちゃん…」
  真琴は直樹に寄りかかってきた。
直樹「真琴、どうしたんだ!?」
  直樹は真琴の額に手を当てる。
直樹「熱があるじゃないか…」
  直樹は外の様子を見てみた。
  雨が止む様子はない。
直樹「クソ!
   しょうがない…」
  直樹は自分の上着を脱ぐと真琴に着せた。
直樹「ちょっと我慢してくれよ」
  直樹は真琴を背負うと旅館に向かって走った。

−菖蒲の間−

直樹「まずこの濡れた服を脱がさないと…」
  直樹は真琴の服を脱がせる。
  真琴は下着姿になった。
直樹「これも脱がさないと駄目か…」
  直樹は真琴のブラジャーをとって、浴衣の上に寝かせた。
  真琴を運ぶ間もどうしても真琴の胸に目がいってしまう。
  何を考えてるんだ、俺は…
  浴衣の上に寝かせると、パンティを脱がせて浴衣を着せる。
  暗い谷間の奥にわずかに亀裂の一部が見えた。
  そのまま真琴を運んで布団に寝かせる。

−数時間後・菖蒲の間−  

  フロントで医者を呼んでもらって、解熱の注射を打ってもらった。
  医者が帰った後は、直樹一人で真琴の側にいる。
  そして汗の浮かび上がる真琴の額をたまに拭いてやっていた。
  
  真琴が身体を動かす。
直樹「真琴…起きたのか?」
真琴「………お兄ちゃん…ごめんね…」
直樹「そんなこと…いいよ…
   それより早く直せよ。
   こんな所で寝てるんじゃおまえもつまらないだろ?」
真琴「…うん…わかった…」
直樹「汗はかいてないか?
   かいてるなら着替えた方がいいぞ」
真琴「うん…じゃあ、着替える…」
直樹「俺は後ろ向いてるから」
  
  衣のすれる音が聞こえる。
  俺は何をどきどきしてるんだ…
  妹とはいえ女がすぐ側で着替えを…
真琴「……お兄ちゃん…」
直樹「え?」
  直樹は思わず振り返ってしまった。
  真琴の白い背中が目に飛び込んでくる。
  少し物憂げな少女がそこにはいた。
  思わず見とれてしまう。
真琴「…お兄ちゃん?」
直樹「え?ああ、ご、ごめん!」
  直樹は再び背を向けた。
真琴「…お兄ちゃんが着替えさせてくれたの?」
直樹「…そうだよ」
真琴「ふ〜ん…替えの浴衣取ってくれる?」
  なんで何も言わないんだ…
直樹「あ、ああ」
  直樹は背を向けたまま浴衣を手渡す。
真琴「うふふ…私が背を向けてるからこっち向いてもいいよ」
直樹「いや、そういうわけには…」
  浴衣を着た真琴は再び布団に寝た。
真琴「お兄ちゃん…」
  真琴は直樹の方に手を伸ばしてくる。
  直樹は真琴の手を握ってやった。
直樹「ここにいてやるからちゃんと直せよ」
真琴「……ありがとう…」

−さらに数時間後−

進也「たっだいま〜」
  直樹は仕草で静かにするように言う。
進也「ン?どうしたの?」
美樹「静かにしろって言ってんのよ。
   あたし達はあっちの部屋に行ってるから」

−水仙の間−

進也「ねえねえ、どうしたの?」
美樹「マコちゃんが寝てたでしょ。
   あんた見なかったの?」
進也「何で?」
美樹「そんなこと知らないわよ」
  直樹が部屋に入ってきた。
美樹「マコちゃんどうしたの?」
直樹「風邪だよ。
   熱があるんだ」
美樹「そうなの…」
進也「大丈夫なのか?」
直樹「ああ、医者に診てもらって、注射も打ってもらった」
美樹「まあ、とりあえずは安心か…」
直樹「じゃあ、俺はあっちに戻るから」
美樹「うん」
直樹「あ、それと、すまないけど…
   今日も真琴と一緒の部屋で寝るから」
進也「ああ、美樹ちゃんのことは俺に任せろ」
美樹「なんか間違ってるね、あんたって」  

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