狙い自作のバックロードホーンシステムの低域強化のために、サブウーファーを設計しました。FE-108ESユニット1発のバックロードの60Hz以下が少な目に感じたためもありますが、それまで使っていたダイヤトーンのDS−1000(初代)のツィーターがトンだものの、残ったスコーカーやウーファーを使ってみたかったことがきっかけです。
ユニットDS-1000の27cmウーファーを使います。このユニットは、密閉箱でのカタログ動作周波数が35Hzということ、システム全体での出力音圧レベルが90dBということくらいしかわかりません。システムとしては低域だら下がりでしたが密閉箱相応というところでしょうか。将来はFW-208新版への付け替えまでをスコープとします。
設計
アコースティックフィルターとしての動作を期待できるASW方式やDRW方式は大きくなりすぎること、高能率ハイスピードなバックロードホーンと組み合わせるには、ユニット前面からの音圧を有効に使いたいことから、通常のバスレフとしました。 サブバッフルごと交換が容易なように、ユニットはトップマウントとし、横倒しでも使えるようにします。
最終的にはチャンネルデバイダーで中高域をカットしてバイアンプ駆動しますが、資金難により、しばらくはPPW(プッシュプルウーファー)方式とし、アコースティックフィルターとコイルにより中高音をカットします。
もちろん、チャンデバ導入後は上部キャビをはずします。
(結局、最初からチャンデバ導入となりました)
キャビネット容積74 / 23 Liter ダクトの動作周波数28 / 68 Hz 下部 / 上部 30Hz以下の再生を狙いますが、それほど大口径のウーファーでもないので30Hzをチューニング周波数としました。ダクトの長さは全体の奥行きから決めたもので、背板とダクトの隙間がダクトの延長として働いたとして28Hzになります。
能率は不足すると思うので、知人から只でもらったアンプ(デンオン製PMA-700V)を当面のサブウーファー用アンプとします。
製作
完成間近。底面スリットダクトのバスレフ。この上にΦ255mmの空いたサブバッフルが取り付けられます。板が足りなかったので、上部キャビは無しです。 サブバッフルを独立して取り付けるために、Φ300mmの切り抜きとしています。横断面を見るとバックロードよりも小型ですが、幅372mmが効いて、部屋の中に置くとかなり大きく見えます。
補強の桟は大体200mmおきに入れましたが、正確ではなく適当です。左右でも位置が違います。
口の字型の補強桟とせず、板に無駄が出難いように短冊を組み合わせて、同等の強度が出るようにしています。
下の方、ダクトの上にはサブバッフルの抜き板を貼ってほぼ2枚重ね。板取の都合で、ダクトと底板はパインの集成材。余っていた板を総動員です。
吸音材は、ばらしたDS-1000に詰まっていたフェルトを引き剥がして使用。
内面をカバーするには足りないのですが、チャンデバを使って電子的に中高音が出ない、つまり、内部で発生する定在波成分の音源はないので、かなり少な目でも大丈夫と判断しています。
音、調整1999/9/4、外観の仕上げを残して、やっと音が出せるところまでこぎつけました。1週間の間、完成を目の前にしながら、夜帰ってからでは作業できないのが辛かったです。(管理者注:「カラかった」ではない。)
音出し これまでどおりメインをスルーで鳴らし、プラスSWの形で音出し。SH-D1000をチャンネルデバイダーに設定して最初の設定は、 ハイカット : -12d/oct カットオフ 60Hz
ボリューム : メイン側 = -36dB、SW側 = -28dB出過ぎや! メインのBH-1108ESの出力音圧レベルを96dBと見て、DS-1000のシステムは90dB。DS-1000は100Hz以下だら下がりなので低音88dBとして、8dB差をつけたところが、うれしい誤算。キャビネットの大型化とバスレフ採用の効果でDS-1000としての低音を大きく上回っています。
SW側アンプを絞っていくと、結局ボリューム-35dBでバランス。
アンプがメインと違うので単純比較はできませんが、能率はかなり高いようです。
SW単体で鳴らしてみる SWだけで鳴らしてみました。 「60Hz以下だけというのは、こーゆー音か。ふむふむ」音とは言えない、遠くで鳴るヤンキーのカーステ、というのが最も良く表現しているように思います。
再設定 メインをそのまま使う方式とメインをローカットする方式をいくつが設定しました。 メイン スルー + SW -18dB/Oct @60Hzメイン単体では、聴感上、80Hzくらいから少しづつレベルが下がり始めて60Hzまでは気にならない程度の低下量、その下が40Hz以下のどこかにある再生限界に向けて一直線に低下、という感じなので、下がり始める70-80Hzを中心にクロスさせています。
メイン -12dB/-Oct @60Hz + SW -12dB/Oct @60Hz Q=0.7
メイン -12dB/-Oct @80Hz + SW -12dB/Oct @80Hz Q=0.7
試聴 やはり普通の音楽ソースでは、SWの効果は小さいです。バスドラムのアタックの瞬間のズッと押してくるのが力強くなりましたが、たぶん、メイン単体に比べて40-50Hzのレベルが上がったことによるもので、この程度なら、片チャンネル2発のバックロードBH-2108ESでも出ていました。 あいにく、オーディオブランクが長かったせいで、長岡系ソフトの持ち合わせがなく、真価を発揮するソフトは少ないのです。逆に、不足と感じていたメインのBHの低音が、通常の音楽鑑賞にはいかに十分なものであったかを検証することになりました。えへんっ!
数少ない低音CDを聴いてみました。
「(テラーク)チャイコフスキー1812」このCDは12分過ぎから始まる本物のキャノン砲に備えて?、通常演奏の部分のレベルが低いので、自然とボリューム位置が高くなります。そして、ドカーン、パチッ、、、、ドカーン、パンッ、、、ドカーン、パチッ、やりすぎました。御近所の皆さん、すみませんでした。それにしても、何という重低音!気色良い!あの大砲を思いっきり鳴らそうとしたら、5Hz、10Hzといった信号で空振りしないように、バスレフダクトのチューニングを20Hz以下に持っていかないと無理です。
それでも、このCDでは通常演奏部分もたっぷり重低音が入っており、SWで雰囲気が一変しました。何てことだ!
何はともあれ、30Hz以下を十分なレベルで再生する目的は十分達成したように思います。調整はこれから、これから。マリンバが呼んでいる
鬼太鼓座が呼んでいる
予定 意外に高能率に仕上がったため、Fdをもっと下げても大丈夫かもしれません。ダクトのチューニング周波数を下げるのは簡単で、端材を適当に切ってダクトに差し込めばOKです。この場合、若干能率は低下するはずなので聴きながら調整ということになります。 大砲や太鼓に備えて20Hz付近を狙ってみようかな?
そして、このシステムに合うソフトを集めねばなりません。本末転倒?
いや!、オーディオを趣味にするなら、この順番で間違っていないはずです。
発展型 作っていきなり発展型というのもなんですが、このSWの形から容易に想像できるように、サブバッフルではなく小さ目の第1キャビを乗せれば、ダブルバスレフに変身です。 ダブルバスレフとすればトータルの容積が増えるので、自然とスリットダクトのFdが下がり、より低い音域まで再生可能となるはずです。
いろいろと遊べそうなSWになりました。
それにしても、メインとSWを置くスペースがあればモアが置けるではないか?
測定 サイン波スイープでレスポンスをチェック。
20Hz過ぎから音が出始め、23Hzで中音と同等のレベルに聞こえました!この状態で音楽を聴くと、低音がオーバーに聞こえるので、3dB程度絞っています。
まあ、ウーファーとメインは別アンプなので、レベルを合わすのは簡単なんですが、ここまで伸びるとは思いませんでした。
70Hz付近に谷がありますが、クロスオーバー特性を変えても消えないし、聴く場所を変えると逆に山になったりするので、部屋のせいでしょう。もっとちゃんと測りたい!
ちゃんと測定2000夏に簡易測定環境ができたので、サブウーファーも測ってみました。
右下がりの直線が入力信号をそのまま処理したものなので、これを元信号として判断します。
チャンネルディバイダーもネットワークもなしのスルーの特性です。
ダクトのチューニングは計算より若干低めの23Hzくらいにきているようです。
マイクアンプの特性を補ってやるために、40Hzで+2dB、32Hzで+3dB、20Hzで+6dB補正して見ると、20Hzに向かって下がるにつれてブーストされる不気味な特性です。
43Hzと70Hz付近の山はメインのバックロードでも見られたことから部屋の特性と思われます。詳しいスペックもわからないまま適当に設計した割にはダクトのチューニングが壷にはまって、変なしゃくれもなくローエンドの能率も十分確保されているようです。
メインのバックロードをスルーで使うには、ウーファー側で40Hz以上をシャープにカットしなければなりません。
現在、チャンネルディバイダーでローパス特性を整え、下の様な特性で使っています。
BH-1108ESと組み合わせた時のトータルでの周波数特性は、↓こんな感じです。
サブウーファーはクロスオーバーを50Hz、肩特性(Q)を0.6とし、30Hz付近の谷間を埋めるために少しだけ特性の補正をしています。
BH-1108ES + SW-DS1K + FT90H