10cm1発バックロードホーン型スピーカ BH1108ES

12年間愛用したダイヤトーン製DS-1000のツィーターがトンだのをきっかけに、自作スピーカーの世界に戻りました。おりしもFOSTEXから限定ユニットFE-108ES発売とのこと。せっかくなので、完全オリジナルでやってみたのが、これです。

設計:ホーンの広がりの設計と内部構造
製作:組み立て方法と内部写真
完成:仕上げと外観写真
:完成直後の音
チューニング:エージングと調整
小細工:悪あがき
測定:周波数特性


設計思想
21mm合板使用 振動をしっかり受け止めることのできるCWホーンキャビネットとする。
低損失ホーン
スロートがスリットにならないように、等価直径を大きくとる。
後面開放
仕上げのしやすさと見た目を重視し、後面開放とする。
(中高音の漏れを少なくする意味もあるが、設計段階では気にしていなかった。)
音道
スーパースワンのホーンスペックを基準に、さらに低音を欲張り、若干長め、大き目の開口とする。途中もこまめに断面を広げる。
仕上げ
木目を生かしてウレタンニスで仕上げたときにきれいに見えるように、合板の木口を見えないようにする。



ホーンの設計
ホーンの広がりと空気室の奥行き、全体の奥行き等を試行錯誤し、グラフのような広がり率を持つ設計が出来上がりました。

右グラフの曲線はエクスポネンシャルでの近似線です。
グラフ下の近似式にあるように、スロート断面は43.2cm2ですが、全体をエクスポネンシャルで見たときの入口は、37.0cm2となっています。
特性に効くのはこっちの方でしょう。

ちなみに、エクスポネンシャルで近似したときの、スーパースワンのスロートは、34.4cm2となります。

私の場合も、もっと絞った方が良いかもしれません。

右の図は音道の設計図です。向かって右側が正面になります。

デッドスペースは嫌いなので、空気室の出っ張りがホーンの一部を形成するように構成し、空気室下の空きスペースは、ユニットをFE-108Σ等を使ったときにツィーターをマウントできるようにしておきます。

スロート周辺の側板を補強を兼ねて内側に2枚重ねとし、基本的には15cm幅のCWホーンとしながらもスロート付近は幅を狭めて(10.8cm = 15cm - 2.1cm × 2)、スロート高さを4cm確保しました。

◇ 外形寸法 99.6(H)×19.2(W)×42.9(D)
◇ 空気室容積 1.92 (Liter)
◇ スロート断面積 43.2 (cm2)
◇ ホーン長 255 (cm)
◇ 開口面積 388.5 (cm2)


ページの先頭へ


製作


板取というほどのものはありません。側板(41.1cm×96.0cm)と等幅(15.0cm)の板の切り出しと丸穴あけ(Φ12.0cm)を東急ハンズに依頼し、必要な長さをその都度、手引き鋸で切り出しました。断面を直角に切り出すために、ソーガイドという治具を使いました。これがあったから手引き鋸に挑戦したとも言えます。

夜中にリビングで製作。釘打ちはうるさいのでやめにして、

◇ 働き長70cmの端金2本(本当はもっとたくさんあった方が良いです)
◇ 大小のCクランプ計4個
◇ Fクランプ1個
◇ コーナークランプ2個
◇ 重し各種(鉄製スピーカー台、別のスピーカー、雑誌、等)
を使って、木工ボンドだけで接着しました。

写真は音道の様子です。斜めに渡した板でできた隙間は、さらに合板から45度カットで切り出した三角材と水中ボンドを使って埋めました。

折り曲げ部分には逆扇形のスペーサーや板を渡して、補強とスムースな音道を狙いました。写真では見えませんが、最初の90度折り曲げ部(第1コーナーと呼んでいます、次がバックストレート)にも、逆扇形が入っています。

逆扇形カットの途中ででジグソーが煙を吐きましたので、後半から斜めの板に切り替えた様子が痛々しいです。

仕切板の端は丸く削ってありますが、当然ですよね。

後になって考えると、補強だけに留めて、やたらとスムースさは狙わない方がよかったような気がしています。


ページの先頭へ



完成!

サブバッフルに桜材単板、フロントと天板には化粧代わりに集成材を重ねてウレタンニス(クリア)で仕上げました。その結果、フロントバッフル下部は3枚重ねの60mm!

実測重量22kg。合板が思ったより軽かったようですが、大音量時にもビリツキはなく、こちんこちんです。

#100と#400のサンドペーパーで表面を整え、ニス塗り、#400で研磨、ニス塗りの繰り返しで3回の重ね塗り。つるつるになりました。

側板の合板部分は触るとつるつるですが、見た目はざらざらして見えます。下地処理が甘かったせいでしょう。


ページの先頭へ



音!
塗装が終わって2ヶ月たちました。会話できないほどの音量でもコーンの振れが小さく、安心して音量を上げられます。十分ロードがかかっているようです。

ドラムのスタッ!というアタックが気持ちよく抜けてきます。ピアノの打撃と余韻がリアルで美しく、中高音は剛性の高いサブバッフルの効果が出ているようです。

裏の開口部に耳を近づけると、中音が盛大に漏れてきます。側板やバッフルに耳を当てても板を通しての漏れは少ないようなので、音道を伝ってきているとしか思えません。音道をスムースにするためのスペーサーが中高音を反射して漏れてきていると考られます。伝声管みたいなものです。

低音は癖がなく、ベースの音程による不自然な強弱感もありません。ただし、このスピーカだけを聞いていると不満はありませんが、量的には少な目でしょうか。特に50Hz以下のレベルは低いと思います。

サイン波スイープを聞いてみると、「聞こえる」という感覚が40Hzちょい下あたりから始まり、50Hzを過ぎたあたりから急上昇、60Hz以上はほぼフラットのようです。思ったより伸びていませんが、リスニングポジションの背中側がリビングと続きの6畳和室で、押し入れやカウンター式のキッチンを入れると26畳相当ありますので、仕方ないでしょう。後面の開口部がサッシというのもマイナスですが、カーテンを閉めると開口部からの中高音の漏れを吸収してくれるので、メリットもあります。

結論。あとはサブウーファーがあれば完璧です。


ページの先頭へ



チューニングと鳴らし込み
エージング  塗装を含む完成が5月末、週末しか鳴らせない上に土日合わせても数時間鳴らせれば良い方なので、ユニットのエージングがなかなか進まないのが悩みです。

当初の比較対象は片チャンネルに10cmを2発の自作機なので、同じ口径の2発と1発との比較となり、すこし低音に物足りなさがありました。
 

壁との距離  壁といっても、部屋の幅4mの左右いっぱいのサッシ、しかも結露防止シート(梱包に使うプチプチシート)を全面張り付けなので、どんな影響があるか、公式どおりにはいきません。

いろいろ試した結果でも、それほど大きな変化はありませんでした。逆に考察すると、サッシ、又は結露防止シートは変な鳴きが加わったりしない代わり、ホーンの延長として働くほどの効果もないと言えるかもしれません。あるいは、結露防止シートに吸音効果があるのか?
 

吸音材 完成直後は吸音材なし、その後、ホーン開口からの中高音の漏れが気になったので、空気室のユニットの真後ろ部分とサイドに薄手のフェルト、空気室下部にグラスウール(5×15cm)を落とし込み、しばらくこの状態で聞いていました。

中高音の漏れは低減したものの、音が寂しくなったことと、低音の不足感解消のためにグラスウールは取り去りました。これで、低音の力強さが若干改善

部屋の違い 関西オフにてげんきまじんさんのじまん部屋に持ち込み、鳴らしてみたところ、少ないと思っていた低音が出るわ出るわ。注意して聞くと、確かに少な目なのは最低域であり、実用域(勝手に40Hz程度と思っている)は問題なく再生しているようでした。

再生限界は比較になりませんが、音域バランスだけならモアと比較しても低音不足ということはないことがわかりました。

自宅での比較対象にしている、片チャンネル2発の自作機はFE-108ΣとFE-108ESとの混成なので、低音の強調感にだまされていたのかもしれません。

さらにエージング さて、持ち帰ってから改めて鳴らしてみると、低音不足の先入観が消えたせいか、じまん部屋でのドンドコブルブルソースでゆすぶられた効果か、見違えるように鳴っているようです。

ただし、じまん部屋と比較すると音量が小さいせいも手伝って低音が出難いのは間違いありません。
やはり、低音を感じにくい部屋の伝送特性をカバーするためには、サブウーファーが必要です。


ページの先頭へ



小細工
空気室内の接合コーナー全部に、水中ボンドを塗り込みました。

きっかけは、水中ボンドが余っていたことです。
組み立てる時に前面バッフルの密着に不安を感じたのを思い出したからではありません。

効果は、中低域が増えた、気がします。最低域が変わってないのは確かでしょう。
バランスとしては、中低域が増えたので相対的にローエンドは不足しているように聞こえます。

ボンドの体積分とは別に空気の遮断が良くなったので、実効的な空気室容積が減ったのと同じ効果が出たのでしょうか?

端材をほうり込んで空気室調整をした時の変化に似ていますので、コーン前面からの音とホーンのクロスオーバーが上がったような印象になりました。

ソースによっては下品な感じにもなりましたが、もう後戻りはできません。

これが本来の性能と、覚悟を決めることにしましょう。


ページの先頭へ



測定
以前から適当なマイクを物色していたのですが、マイク1本に何万円も出すのは優先度を下げざるを得ず、測定環境がないままにここまで来てしまいました。

今回、2000/8/26の東海岸オフの際に、すみやまさんに連れていってもらったRadio Shackで購入した音量計(Sound Level Meter)やっと周波数特性を測ることができるようになりました。

とりあえず、補正なしの測定結果を紹介します。

測定条件

  • リスニングポジション
  • 左右両チャンネル同時に鳴らして測定。
  • ツィーターなし。
  • マイク補正なし。(カタログ値:32-10,000Hz±3dB)
  • PCで作成のWaveファイル(20-20000Hzサイン波スイープ)をCDで再生、マイクで測定しFFTツールで作図
  • WaveファイルをFFTツールで測定した時の周波数特性(元信号)を一緒に重ねてプロットしてあります。

測定結果

マイクアンプの特性を補ってやるためには、40Hzで+2dB、32Hzで+3dB、20Hzで+6dB補正して見ます。

元信号と比較してみると、全体として40Hzくらいまでは中高音と同レベルで再生されているのがわかります。それ以下は6dB/octで落ちてます。

高音が下がっているのは、リスニングポジションはスピーカーまでの距離が約3.6mあるため。
10kHz以上の急降下はマイクの特性です。

長岡式バックロードのお決まりのように80Hzにディップがありますが、耳で聞いた感じではこのレベルが低いとは感じられないので気にしないことにします。

まずは一安心。^/.^


ページの先頭へ

スピーカーシステムの製作へ戻る

TOPへ戻る