5月連休の2000年5月6日(土)、やっと自分の時間が取れたので、久しぶりに鷲峰山林道を走って来ました。車ではすでに何度も行っているところですが、今回訪れるのは数年ぶりとなります。でも、本格的な林道を自転車で長距離走るのは今回が初めてです。もうそろそろ長距離走に挑戦しても良いころだろうと、気持ちの良い五月晴れの中、朝6時48分に家を出ました。
鷲峰山(じゅうぶさん)は、京都府相楽郡和束(わづか)町と宇治田原(うじたわら)町の町界に位置する、標高682mの山です。奈良市の中心部から見ると、鷲峰山は北北東の方角にあり、直線距離にして約18kmと意外と近くにあります。なお、和束町は、私の住む加茂町の北側の隣町です。
この鷲峰山には、林道が縦横に走っており、昔はよく車で走りました。当時道路はまだダートの部分が残っていました。でも、今はすっかり舗装されています。山頂付近からの眺めが良く、天気の良い日に走ると、気分がスカッとする道でした。鷲峰山は家からもそんなに遠くないし、私が自転車で最初に走るための本格的な林道としては最適だと考えました。
鷲峰山へは、まずJR加茂駅の前の道を北に走り、木津川にかかる恭仁(くに)大橋を渡り、国道163号線を横切ってまっすぐ進みます。しばらく行くと、“海住山寺(かいじゅうせんじ)に行くには左折する”との看板が出てきますが、今回はまっすぐに進路を取ります。やがて上り坂になります。しかし、そんなに大した坂道ではありません。民家の建ち並ぶ中、どんどん上っていくと、道の左右一面に茶畑が広がっている所に出ます。和束町はお茶の名産地としても有名です。茶畑には、まだ黒い覆いがかぶさっている場所もありました。
また、茶畑の鮮やかな緑と木々と空と、実にうまく調和した風景を目にすることができます。茶畑を見ていると、気分が晴ればれするのは私だけでしょうか。
そう言えば、今日は土曜日です。子供たちは学校があります。私が自転車で走っていると、向こうから歩いて来た小学校3〜4年くらいの女の子がにっこり微笑んで「おはようございます」と挨拶してくれました。茶畑の広々とした風景とあいまって、さらに気分が良くなりました。このあたりの小学生は、スクールバスで学校に通うようです。途中でスクールバスとすれ違いました。
5月上旬だというのに早くも田植えを終えた田んぼを見ながら坂道を下って行くと、和束運動公園に出ます。大きな運動公園です。今日は土曜日なので子供たちの姿はありませんでしたが、日曜日だと家族連れで結構にぎわっています。
和束運動公園を過ぎると、大きな2車線(片側1車線)の道路“府道宇治木屋線”に出ます。鷲峰山に向かうには、ここのT字路を左、すなわち宇治田原町方面に向かいます。なお、右に折れて橋を渡ると府道木津信楽線が走っています。橋の向こう側には、道の駅「茶処和束」が見えます。「茶処和束」には売店だけでなく食堂もあります。
それにしても、何という変わり様でしょう。数年前に訪れたときには、こんな大きな道路はできていませんでした。昔なら細い坂道をくねくねと登って行ったのですが、今は車道の横に付けられた2m幅の歩道兼自転車道を実に快適に走れます。この道路をしばらく走っているとT字路に出ます。交差点付近には「相楽和束観世音菩薩」の像が立っていました。このような仏像も以前はありませんでした。最近できたのでしょう。でも、この交差点を左に向かうと、うれしいことに昔通ったままの狭い山道に出ました。
しかし、ここからが大変でした。かなり急な、曲がりくねった坂道が連続しています。海住山寺への道ほど過激に急な上り坂ではありませんが、道も狭いうえに車が結構走っているので神経を使います。車とすれ違うときには、危険防止のため、自転車を止めて車をやり過ごしました。それに途中でなぜか腰が痛くなったのには困りました。しばらく休憩していると治まりましたが。
きつい上り坂は少々辛いものがありましたが、鷲峰山への林道の入り口の犬打峠までは、思ったよりも時間がかかりませんでした。犬打峠からは右に道路が分岐しています。この林道が鷲峰山の山頂付近にある金胎寺(こんたいじ)に通じています。分岐点には「金胎寺」への標識と「林道二号鷲峰山線」の標識がありました。
ここからは緩やかな登坂に変わります。ペダルをこぐ足も軽くなって、周りの新緑に目をやる余裕が出てきます。まだ山桜が咲いています。いろいろな鳥の鳴き声が聞こえてきます。やがて再び茶畑が広がっている場所に出ました。ぽっかり空いた緑の空間です。
なおも進むと、やっと金胎寺の参道入口に到着します。今日は参道を誰も歩いていないので、自転車で参道を登りました。「下乗」と彫られた石の前で自転車を置き、そこからほんの少し歩くと金胎寺です。犬打峠から約50分も走って着きました。金胎寺は真言宗に属するお寺で、676年に役小角(えんのおづぬ)が開いたとのことです。非常に古いお寺です。本尊は弥勒菩薩、境内には古いが形の美しい多宝塔が建っています。この金胎寺には昔の行場がハイカーに開放されていて(だだし有料)、結構険しい道を歩いて奇景を楽しむことができます。十数年前、私もこの行場を、北アルプス山行の練習のために歩いてみたことがありますが、途中急坂や鎖場、岩場もあって、スリル万点でした。
金胎寺を出て、参道を下って林道に戻ります。ここから引き返すことはせず、さらに北上しました。非常に緩やかな坂道を15分ほど登ると、無線の中継基地の下に出ます。そして、ここからはずっと下り坂となります。快適な長い下り坂が和束町の中心部まで続くのです。しばらくは山の尾根付近を走りますので、周りの山岳風景は格別です。つい先日までは、下り坂では風が冷たく感じたのに、今日はウインドブレーカーが不要で、とても快適に走ることができました。風もすっかり5月の風になっていました。
鷲峰山の林道を下って行くと、途中で分岐点に出ます。まっすぐ行くと宇治田原町、右に折れている道を行くと、湯船(ゆぶね)方面です。「宇治田原町」の看板と、「湯船へ」の標識があるのですぐにわかります。今日は湯船を通って帰るため、右折しました。ここからもずっと下り坂です。
やがて、府道木津信楽線に突き当たります。突き当たりの右側には湯船駐在所があります。そこを右折して、またまた道を下ります。この道は結構車の通行が多いので注意が必要です。府道木津信楽線をどんどん下って行くと、来る時に見た道の駅「茶処和束」に到着します。ここでちょっと一休み。缶ジュースを買って飲みました。
この道の駅からは、往路を帰ることにしました。そのまま府道木津信楽線を走っても良いのですが、せっかくの天気だし、景色の良い和束の茶畑の道を帰りました。
結局家に着いたのが午後12時13分。約5時間半かかりました。それにしても、5時間半も自転車に乗ったのは今回が初めてであり、非常に疲れました。両足の疲労感がなかなか抜けません。でも、大変満足した1日でした。