ルネのきままなアトリエ
⇒ぼちぼち歩きリストに戻る
⇒山域別リスト




長野県・標高1614m(小梨平)
2006年3月5日(日) 
晴れのち曇り ツアーに参加
スノーシューを担いでのトレッキング
静寂の上高地で美学を学ぶ



梓川の流れの向こうに横たわる穂高連峰(河童橋より)


冬の上高地・・・。
凛と凍てついた空気の中、ひっそりと静まり返る林。
裸の梢より、挑み来る者を冷徹に突き放すがごとく聳える岩と氷の峰々。
音もなく流れ行く川の流れ・・・。

昔からの憧れだった。
けれど、それは、厳しい訓練を受けた登山者だけが目にすることの出来る景色だと思っていた・・・。

静寂の上高地を体験するはずだったのですが、思いのほかたくさんの人が入っていました。
雪も例年より少なく、締まっており、スノーシューの出番はほとんどありませんでした。

でも、一歩林の中に分け入れば、周りには誰もおらず、時折小鳥のさえずりが聞こえ、野生のサルに遭遇し・・・やはり静かな冬のたたずまいを見せてくれました。


コース 広域地図    
 8:22 釜トンネル入り口
 9:12〜 9:30
大正池
10:32〜10:36 河童橋
10:41〜11:20 小梨平
13:15 釜トンネル入り口



「雪の飛騨高山と静寂の上高地スノーシュートレッキング」(初級)
何気なく見ていた登山ツアーのパンフレットにこれを見つけたのが1月初めだった。
日頃から勝手気ままに山歩きを楽しんでいる身。ツアー登山にはかなり抵抗があった。
行動の自由を拘束され(・・・ってものでもあるまいに)、ぞろぞろ行列で歩くなんて耐えられない・・・と、かねがね思っていた。(スーパーの行列は平気なくせに・・・)

けれど、憧れだった冬の上高地をいともたやすく、電話一本で手に入れることができる・・・という誘惑には勝てなかった。

一日目、飛騨高山に向かうの東海北陸自動車道からは、真っ青な空の下、奥美濃の山々(名前は知らないけれど・・・)、大日ガ岳、そして真っ白な白山、高山手前から乗鞍岳から穂高・槍、笠ガ岳の北アの峰々。
それはもう、目の覚めるような景色。実際、居眠りするどころか、地図を片手に興奮しっぱなしのガンダム母さんなのでした。

高山は、何のことはない市内自由散策。(申し込みの時点では雪原のスノーシューハイクだと勘違い('〜'))
宿泊は平湯の老舗旅館!次から次へと運ばれてくる料理に、ワンパターンのメニューに慣らされている胃袋が仰天!(こういう勘違いなら大歓迎\(^_^)/)


さて、二日目。
昨日ほどではないけれど、今日も晴れの予報。
朝食のお膳にも、これがホントに朝ごはん?というくらい料理が並んでいた。もちろん完食。・・・お腹が重たい・・・(^〜^;)

旅館から安房(あぼう)トンネルを経て、中の湯、新釜トンネルまでは15分ほど。あっという間だ。
ぐねぐねぐねと、狭い道を峠まで上っていた頃が嘘のようだ。
「駐車スペースがないので、すばやく降りてください」とのツアーガイドさんの注意にしたがって、車外へ。
なるほど、トンネル前のR158は、ひっきりなしに車が往来している。

トンネル外は、ひっきりなしに車が往来していました 何と、バス2台、総勢66名のツアー! 妙なものは写っていませんよね〜
釜トンネル(帰路撮影) 速やかに準備しトンネル突入! 出口はもうすぐ

トンネル前は・・・わ〜すごい人!
静寂の上高地にあらず喧騒の上高地・・・か・・・('〜')
ま、ともあれ、そそくさと準備をしトンネル突入。。

新釜トンネルは昨年7月に開通したばかり。全長1310メートル。交互通行できるようになり、勾配も随分緩やかになったみたい。(旧のトンネルが最大勾配が16.5%。新トンネルが全トンネル一定で10.9%らしい)
昨年8月、開通直後、通っている。もちろんバスでだけど。

トンネル内は照明が点いていて、ヘッドランプは要らなかった。
旧のトンネルに比べて傾斜は緩やかとは言うものの、延々と続く登り。おまけにペースも結構速く、いつにも増してぱんぱんに膨らんだお腹を抱えて、早くも息切れ。
ふ〜、先が思いやられる・・・。

上高地側の出口付近が少し凍結していたけれど、アイゼンを着けるほどでもなくトンネルを出る。



うわ〜!!焼岳や〜!!
うわ〜!!だんだん近づいてくるやん!!
前方に焼岳が・・・ だんだん迫ってくる焼岳

路面に雪はなし。道の両側に1メートルぐらい。
ツアーとは言うもののロード歩きなので、列になって行進するわけでもない。山岳ガイドさんを見失わない程度に自分のペースで歩く。
緩やかに登っていくと、前方梓川の右岸に焼岳が見えてくる。

あれ?
前の二人組の若い女性。ザックを担いでいない!登山靴は履いているものの、小さいショルダーバッグを肩から提げて、スノボーウェアー姿。

・・・そのバッグの中に雨具は入ってるの?非常食は持ってますか?
フリースの予備は?アイゼンは?ヘッドランプは?
地図とコンパス・・・なんか、持っているはずないわな〜┐( -_-)┌

いつになくイジワルなガンダム母さんなのでした・・・(;´_`)
ま、そのいずれも、今日必要になるとは思えませんけどね〜。

周りを見回すと・・・重登山靴に完全冬山装備。そのまま穂高まで行ってらっしゃい!・・・って人もいる。
ま、そんなこんなで各人各様、いろいろあり〜のツアー御一行。

うわ〜!!穂高や〜!!(うるさい!ええ加減にせー!) うわ〜!!近づいてくる〜!!(・・・・誰か、この人連れて帰って・・・)
穂高が見えた! 穂高を目指して尚も行く
いくつ目かのカーブを曲がると、突然前方に真っ白な穂高連峰が立ちはだかる。
うわ〜!
周囲から歓声が上がる。
夏とは違う(当たり前)、秋とも違う(当たり前)、穂高。
3年前の5月初旬に見た穂高ともまた違う。
青い空をバックに、岩と氷の壁。

前方に白い穂高を見据えながら、尚もロード歩きは続く。
この辺になると、路面はほぼ雪で覆われている。
所々凍結している所もある。

この辺りでスノーシューでよちよち歩いている何組かのパーティを追い抜く。(着けない方がずっと歩き易い・・・何が何でもスノーシュートレッキングをやってやる!という鬼気迫る意気込みが感じられる・・・キモチはわかる・・・)


うわ〜!!映ってる〜!!(・・・・)
大正池畔より

歩き始めて50分余り。
大正池のバス停到着。
池は半分ぐらい凍っている。氷の融けた鏡のような水面に穂高連峰の秀麗な姿が映る。

ここから先は自由行動となる。
やった〜!好き勝手に歩ける〜\(^-^)/ どこまでも団体行動になじめない母さんなのでした。(単に、あまのじゃくなだけ)
現在9時。
13時30分にトンネル出口に戻ってくださいとのこと。4時間半のフリータイムだ。

まずはトイレに。
事前の話では冬季使用できるトイレはないとのことだったけれど、そうでもないみたい。 (そりゃそうですよね。これだけたくさんの人が入って、めいめい好き勝手にすれば、山の自然はひとたまりもないですよね)
大正池、中の瀬、バスターミナル、小梨平にそれぞれ冬季トイレがある。(但し、男女共用個室一つのみ)


やっぱり映ってます

カメラを担いだ中高年多し!! 焼岳も堂々としたものです
シャッターチャンスを待つカメラマンたち 焼岳を間近に仰ぐ

大正池から、梓川沿いの道をとる。
積雪は1メートルちょっとぐらいか。ガイドさんの話では、例年より一メートルは少ないらしい。
しっかり締まっていて、スノーシューを着ける必要は全くない。
それでも、あちこちでスノーシューの人を見かける。

川からひとたび林に入ると、辺りに人影は見えなくなった。

歩いた所が道 また川岸に出ます
穂高に向かって・・・ 少し雲が広がってきた
林のあちこちに踏み跡、スノーシューの跡、クロスカントリーのシュプールが残っている。
林の中を穂高を目指して歩く。



途中、先を行く相方が何やら指差している。見ると、10数匹のサルの群れが10メートルほど向こうでこちらの様子を窺っている。反対側にも。
どうやら、サルの通り道を私たちが横切ってしまったみたい。
少し緊張する。(ワタシ、仲間と違うよ〜)

蛇行して流れる梓川 それにしても人影がない
梓川沿いの道を行く それにしても皆さん何処に?
田代池を過ぎ、焼岳の登山ルートの分岐、中の瀬を過ぎ、またしても川沿いの道へ。


真っ青だった空には少し薄雲が広がってきている。
今日は昨日ほどの好天は見込めないようだ。
昨日は、霧氷も見られたらしい。


冬芽の色でしょうか?
対岸のケショウヤナギの梢が・・・


時おり人には出会うけれど、静かなたたずまいを見せる河畔の道。
ツアーの皆さん、いったいどこを歩いているのだろう?


綺麗ですよね〜 河童橋が近くなると、ちらほら人影が・・・
冬芽の色? 河童橋が見えてきた

大正池畔より1時間弱、向こうに河童橋が見えてくる。
右手の林の中に駐車場、ビジターセンターなどが垣間見える。そのまま川沿いの道を歩く。

10時半過ぎ、河童橋着。
シーズンにはたくさんの人で賑わう河童橋も、今日は人影もまばら。
辺りを見回すけれど、同じツアーの顔見知りの姿は見えない。ひとしきり写真を撮って小梨平へと進む。


見慣れた景色だけれど、季節が変わると別世界
河童橋もひっそりと・・・

河童橋から 半年振りの景色です
河童橋より穂高連峰

 
小梨平はひっそりと静まり返っていた。
小さなテントが一張り。向こうからクロスカントリースキーを履いた青年がやってくる。
挨拶を交わし、川畔に出る。振り返ると、青年はさっきのテントの主らしかった。

小梨平からの穂高連峰の眺めは圧巻だと思う。
河童橋から見るよりずっと間近に、見上げるような角度でそそり立っている。河童橋から目と鼻の先なのに訪れる人は少なく、気に入っている。

小梨平はガンダム母さんの思い出の地です(そればっかり言うてる・・・)
小梨平より穂高連峰を仰ぎ見る

景色が何よりのご馳走 何が何でも撮影しょうという意気込みが・・・
カップ○ードルです・・・言わんでもワカル
山を見上げながら昼食 温かさが何より!

川岸はかなり風が吹いていた。
林の中で昼食にする。
こんな最高のロケーションでの食事は、どんな高級ホテルのディナーにも勝る・・・(ホテルで食べたことないけど・・・)

小梨平で40分余りいたけれど先程の青年の他、人影を見なかった。

やっぱ、夏より存在感がありますよね いや〜、いいっすね!専属カメラマン付きで・・・(* ̄∀ ̄)ノ"
小梨平から焼岳 焼岳を眺めるモアイ像

いつになく凛とした雰囲気を漂わせる母さん
(気が向けば、ポインタ置いてください)


やっぱり・・・
河童橋まで戻ってくると、先程より随分賑わっている。
橋の袂や川原にも人が下りて休憩している様子。駐車場の方からも何人かのパーティがやってくる。
けれど、見知った顔はない。皆さん、どこで居るのだろう?


賑わう河童橋

焼岳を正面に見ながら歩く
焼岳に向かって・・・

帰路は行きとは逆に、穂高を背に、焼岳を正面に見据えながら川沿いの道を戻る。

しばらく行った所で、向こうから見覚えのある顔がこちらに向かって歩いてくる。
同じツアーのご夫婦だった。あちこち寄り道して、やっとここまで辿り着いたとのこと。河童橋には今からだと言う。
帰りの時間大丈夫かな、と気にしていると、すぐに後ろから引き返して来られた。
「河童橋は次回の楽しみに残しておきます。もう思い残すことはない、というほど何もかも満たされると、面白みがありません」と、ご主人。
う〜ん、美学ですよね〜(⌒〜⌒;)
その精神のゆとり、謙虚さ、見習わねば・・・。


中の瀬付近からの穂高連峰

穂高に名残を惜しみつつ、ふり返りふり返り歩く。
左手の林を見ると、裸の木々が雪面に柔らかな影を落としている。
・・・このままスノーシューを担いだまま・・・っていうのもシャクやな〜。

相方は・・・というと、いつものごとく遥か向こうに行ってしまい、彼方の木々の合間にちらっと姿が見える。

せっかく持ってきたスノーシューだ。
使わない手はない!(おいおい、精神のゆとりは!謙虚さは!美学はどこへ行った!)
中の瀬の手前でスノーシューを着け、一人で林の中に分け入る。

踏み跡のない雪面に、木々が柔らかく影を落とす。
この陽射しは、もう春。

春です 春の光です
雪面には柔らかな陽射しがふりそそぎ・・・
やっと大正池に戻ってきました・・・疲れた・・・ 穂高よさらば・・・
再び大正池に戻ってきた頃には・・・ 穂高の稜線は雲に隠れかかって・・・

しつこくふり返る・・・美学はどこにもない・・・┐( -_-)┌ トンネル内も相方は遥か彼方・・・ガンダム母さん連れていかれたらどうするの・・・ あれ?一番乗り?
名残惜しみつつ振り返り振り返り・・・ 釜トンネルに再突入します はい、スタート地点に戻ってきました!
あれ?
他の人、誰も戻ってないやん!

お疲れさん!

水彩スケッチ


帰ってから安房トンネルがいつ開通したのか気になって調べてみた。
1997年12月6日開通。全長4,370m。
(以下、岐阜県のホームページからの抜粋)

飛騨地域の「第二の夜明け」安房トンネル12月6日開通」

飛騨地域と長野県の信州地域とは、標高1790メートルの安房峠を越える国道158号で結ばれています。しかし、この道路は急しゅんな地形と火山帯特有のもろい地質のため、降雨時には土砂崩れの危険があり、たびたび通行止めになりました。また、日本有数の豪雪地帯にあるため、冬季は閉鎖されてしまいます。
 そのため、天候に左右されず、1年を通じて安全に、そして快適に通行できるようにと、北アルプスを貫く安房トンネルの工事が、昭和55年に始まりました。以来、世紀の難工事といわれる技術的困難を乗り越え、いよいよこの12月6日に開通することとなりました。
 安房トンネルは、関東からの飛騨の玄関となるだけでなく、関東圏・関西圏との交流の中心となり、交通体系を大きく変えます。県では、トンネル開通に合わせ、国道471号平湯バイパスをはじめとする幹線道路や農道・林道などを整備。飛騨地域の新しい時代の幕開けに備えて、総合的な道路ネットワークづくりを進めています  



なかなかの難工事で、1995年に開通の予定が、温泉の水蒸気爆発により、掘削を一時中断したらしい。
そういえば、そんな事故、あったよね・・・で、また調べる。

開通した中部縦貫自動車道「安房トンネル」。飛騨が大きく変わる可能性をはらむ

 水をかけながら砕いた70度の岩磐、もろい火山性たい積層。73度の熱水が湧き出る高熱岩盤を掘り抜くには2年かかった。4人の作業員が亡くなる水蒸気爆発事故もあった。

 また、トンネル天井から安房峠の頂上へ抜ける高さ450メートルの換気立坑、トンネル内の安全を監視するモニタ−、旧調査試掘坑を利用した避難道など、最先端の技術を駆使した防災管理が施されている。860億円の巨費と18年の歳月を投じ、世紀のプロジェクトは完成した。“第二の夜明け”を迎え、飛騨の未来はどう変わるのか。   《岐阜新聞12月26日付朝刊県内総合版掲載》(一部抜粋)


ふ〜ん・・・。
母さんの頭には、既に中島みゆきの例の感動的な歌声が鳴り響き、胸には熱いものがこみ上げている・・・。
年とともに、ますます涙もろさに磨きがかかかっている母さんなのでありました。


ぼちぼちあるき リストに戻る


山域別リスト