ルネのきままなアトリエ
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倶留尊山

KUROSOYAMA
奈良県・標高1038m
 2005年11月10日(木) 快晴
 
厚あげちゃんと 


夕暮れの曽爾高原
▲夕暮れの曽爾高原

10数年来の友人の厚あげちゃんからメールが入った。
「山に連れて行って」

今まで山歩きなどしたことがないという彼女。
先日家に来たとき、山の写真を見て、
「ふ〜ん、きれいやな〜」と言っていたが、大して興味をそそられた風にも見えなかった。

彼女の息子、高校の登山部に入っている。今まで彼女に「普段どの山へ登っているの?」「夏合宿はどこに行ったん?」とかいろいろ聞いたことがあったが、「さあ・・?知らんわ」「長野県のどっかの山とちがうんかな?」っていうような返事しか返ってこなかった。

その彼女からのメールである。
正直驚いたが、嬉しくもある。
で、選んだのがここ。
距離も短いし、お天気さえ良ければ雄大な眺めを楽しみながらの稜線歩き。
山歩き入門編としてはうってつけである。

私よりずいぶん若い彼女。学生時代はテニス部。この数年ゴルフにはまっている。
家事もてきぱきこなし、じっとしているのが嫌いというエネルギッシュな人である。
もしかしたら私のほうがぜーぜー息を切らしながらついて行く羽目になるかもしれない、との不安はあった。
30年近く前のことではあるが、そんな苦い経験をワンゲルの時代にしている。

ま、そんなこんなで出かけた倶留尊山。
文句なしに素晴らしい眺めだった。
文句なしに愉快な一日だった。


コース 地図
10:55 長尾峠駐車地出発
11:10〜11:25 亀山への尾根
11:57 亀山峠
12:30〜12:47 二本ボソ
13:25〜14:25 倶留尊山
15:21 亀山峠
15:55 曽爾高原P
16:05 長尾峠駐車地



曽爾高原Pの駐車料金600円をケチって、長尾峠に駐車。
亀山の稜線まで薄暗い植林帯を歩く。
階段が現われると程なく亀山の稜線に飛び出す。さえぎるもののない眺め。
目の前に曽爾高原の大パノラマが広がる。稜線の道が亀山から二本ボソへと続いている。西には、屏風岩から住塚山・国見山・兜岳・鎧岳の山並みが太郎路の集落を隔てて屏風のように連なっている。

厚あげちゃん、感嘆のあまり思わず「うわー、きれい!!」
携帯のシャッターを切る。

ここではや、大休止。まだ20分も歩いていないけれど、まあ、いいか。曽爾高原のファームガーデンで買ってきた米粉パンを早速、パクリッ。
さっくりした食感。美味しい!


長尾峠から登山道に入る もうすぐ亀山の稜線に


亀山の稜線から 右:亀山 左:二本ボソ



左から 屏風岩・住塚山・国見山・兜岳・鎧岳

ひとしきり休憩して出発。
亀山への上り。大パノラマを楽しみながらの階段状の上り。
振り返れば、古光山がぐんぐんせりあがってくる。

左:後古光山 中央:古光山南峰 右:古光山
突然後ろから彼女の怯えたような声。
「・・・Sさん(私のこと)、怖くない?」
えっ?と私。
「後ろ、何もないやん・・・」泣きそうな声。
えっ?たった今まで元気良く歩いてたのに・・・。どうしたん??
と、戸惑うばかりの私。
「・・・落ちたらどないしょ・・・」
落ちたら・・・って、ただの階段やんか・・・。
「・・・私、高いところ、あかんねん・・・」かなり悲痛な声。
あのな〜、山は高いところにあるねん・・・って言うより、

地面の高くなっているところを山って言うねん!!

山へ連れて行ってくれって言うたやんか〜!
ここまで来て、何を言いだすの〜、高い所が苦手やなんて・・・。
「・・・忘れてた・・・」と厚あげちゃん。

上からスニーカーをはいた50代後半とおぼしき一組の夫婦が下りてくる。その後ろから、同じくらいの年齢の女性グループが下りてくる。いずれも軽装である。

「ほら、見てみ。私らよりずっと年上の人らだって、ふつーに歩いてるやろ。
ここはただのハイキングコースやで。
こんなしっかりした階段は、ないで〜」
彼女を勇気づけようと、試みる。

(ここで、もうちょっといろんなやり取りがあったけれど、省略。)
一瞬高度感に足がすくんだ彼女だったが、怖さより景色に感動する気持ちが勝ったみたい。
「ちょっと怖いけど、ほんまにきれいやね〜!」と、すぐに気を取り直し様子で、カシャカシャと携帯のシャッターを切りだした。

よかった〜!一瞬、どうなることかと思ったよ。(高い所が苦手というのを忘れてたことを忘れてくれたみたい・・・?)

後古光山の御杖側山麓の眺めは、まるでヨーロッパの絵本の挿絵のような景色だ。



絵本に出てくる箱庭のような風景

亀山から二本ボソを望む

亀山からもう一つピークを越えて、亀山峠まではすぐ。
厚あげちゃんの高所順応能力は素晴らしいものがあり、先ほどの姿とは別人のよう。
亀山峠周辺ではたくさんのハイカーが休憩していた。
二本ボソへ上って行く人は少ない。

写真を撮りながら、おしゃべりしながら、コースタイムの倍ほどの時間を掛けてゆっくり歩く。

二本ボソへの道から振り返る
撮影しながら颯爽と歩く厚あげちゃん

背後に広がる雄大な景色を振り返り振り返り、二本ボソへの道を上って行く。
結構きつい上りだけれど、あまりしんどさは感じられない。

木立の中に入り、ひと息で二本ボソ手前の入山料徴収の小屋に着く。
中のおばさんと、美杉村から来たという男性がしゃべっていた。

入山料一人500円を支払う。10メートル先が二本ボソ。

目の前に倶留尊山がぐっと顔を出す。
その右手に、尼ガ岳から大洞山、そして局ガ岳から栗ノ木・修験業山を経て三峰山、高見山への稜線が延々と連なっている。
素晴らしい眺めである。

倶留尊山の頂付近はもう紅葉は終わりかけのようである。

ここでもしっかり写真撮影をし、出発。

二本ボソより倶留尊山 鞍部を行く


あらかた葉っぱを落とした木々の間から倶留尊山を見ながら鞍部まで下る。
そして上り返し。
途中2、3箇所、東斜面の絶壁が見下ろせるところがある。
足元から地面がスパッと切れ落ちて、山麓の木立が真下に見下ろせる。
真下に広がる木立

岩をつかんでぐんぐん上るところが3箇所ほどあり、高度を稼いでいく。
二本ボソが下に見えるようになると、程なく山頂である。
二本ボソが下に見える お尻写さんといて〜!!  どんどん高度を稼いでいく

登山口を出発してから、何と2時間!
やっと山頂に到着。
山頂には先着の男性が二人だけ。それぞれ単独行のようである。
年配の男性が、記念撮影のシャッターを押してくださるというのでお願いする。

山頂は数年前までは木が茂ってほとんど視界が利かなかったが、今は伐採されてかなり景色が見えるようになった。
特に南側が開けている。今しがた越えてきた二本ボソの後ろに古光山、そのはるか彼方に高見山の秀麗な姿が見える。
東側も尼ガ岳から大洞山、伊勢の山々が延々と連なっている。
南を望む 古光山の後ろに高見山

お昼はそれぞれが用意したお弁当。
厚あげちゃんは料理が得意。今日はカレーピラフ弁当。私は、豪華幕の内弁当である。(残り物を詰めただけ)それと、インスタント味噌汁。あったかい汁気は体を芯から暖めてくれる。
食後にはコーヒーを入れる。

それにしても何ということだろう。
既に11月だというのにこの暖かさ。長袖のTシャツ一枚だけで丁度いいなんて。
暖かな日差しが照り、眠気を誘うような陽気。


記念撮影

カレーピラフと幕の内弁当

コーヒーで乾杯!

山頂でも四方山話に花が咲き、気がつくと一時間が経過していた。
既に2時半になろうとしている。さあ、戻ろう。

亀山峠までは同じ道を戻る。

颯爽と下る

高いところも、もう平気!

太陽が西に傾き、倶留尊山の東斜面が深い陰影を刻んでいる。
上りに見た山とはまた違う景色。

二本ボソより倶留尊山を振り返る

軽快に飛ばし、曽爾高原を見下ろす稜線に出る。
すり鉢状の高原が午後の光の中、銀色に輝いている。うっとりとするような眺めである。
何度も立ち止まりながら、この景色をまぶたに、焼き付ける。

曽爾高原を見下ろす 中央:古光山 その右肩遠く:高見山

亀山峠からはススキの中の道を曽爾高原に下りていく。
振り返ると、峠の上の真っ青な空に白い月が浮かんでいた。
既に3時半になろうとしているが、この時間でも下からはひっきりなしに人が上ってくる。
お亀池を見下ろして 亀山峠からの下り

銀色に光る高原

高原の広場近くの台地にも、ベンチのある広場にも、カメラを抱えたたくさんの人が集まっている。駐車場の方からもまだ人が上ってくる。

お亀池南側の売店を過ぎ駐車場手前、真っ赤に色づいたモミジが目に飛び込んでくる。感動の一日を締めくくるにふさわしいフィナーレだ。ここでまたしても撮影タイム。
下からはまだ続々と車が上ってきている。
ススキの海に浮かぶ住塚山・国見山
駐車地の長尾峠に戻ってきた時には、既に4時を回っていた。大急ぎで帰らないと夕食の支度が間に合わない。
楽しみにしていた「お亀の湯」に入る時間はなくなってしまったけれど、素晴らしい一日だった。

翌日、彼女からメールが届いた。
「昨日はありがとう!楽しかったですね〜
感動の連続でした。(中略)
何だか病みつきになりそう・・・」

ぜーぜー息を切らしながら彼女の後をついていく日も、そう遠くはなさそうである。



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