プロローグ
その一帯を北と南へと流れる2本の川がある。その昔、カヌーでやって来た人たちは、1マイルほど離れたその川の間を、カヌーを頭に担いで運んだものだという。この地帯をポーテージと呼ぶようになったのは、こうした「運ぶ」事に由来するらしい。仔鹿園が紹介する「ポーテージプログラム」という命名にも、訪問教師が家庭へプログラムを運ぶことへの積極的な意志が込められているのである。
プログラムの開発と普及
ポーテージは合衆国ウィスコンシン州の州都マディンソンがら北へ約150qに位置する酪農地帯である。そのポーテージ市において、1969年障害乳幼児とその親への早期プログラムの開発を目的とする「ポーテージプログラム」が組織され、同年、最初の助成金が交付された。その時点でプロジェクト・スタッフは、適用対象を0〜5歳の乳幼児とすること、そして次の要件を兼備したプログラムの開発を意図した。
1.発達的アプローチの重視
2.発達領域の区分
3.指導課題や効果の記録方法の明記
4.指導方法の明示
そして、3年後には実験版「ポーテージ早期教育ガイド」が完成した。その後合衆国内で先行的実践が行われ、その効果が大変著しいことが立証された。
我が国への導入
1983年から厚生省の研究助成をへて、「ポーテージ乳幼児教育プログラム」日本版が東京学芸大学教授(現日本ポーテージ協会会長)によって作成された。
仔鹿園への導入
1983年職員研修としてポーテージプログラム生みの親ともいえるシドニー・ビジュユー博士の講演を聞く。
1985年第1回ポーテージ乳幼児教育プログラム指導者講習会に園長以下11名が参加。そして保育の中に積極的にプログラムを導入しはじめた。
その後数回にわたり仔鹿園主催のポーテージプログラム指導者研修会を奈良県で開催した。
また仔鹿園での取り組みを全国大会や国際大会で発表した。
プログラムの概要
・562項目のプログラムを使用し、「乳幼児の刺激」「基本的生活習慣」「運動」「言語」「社会」「認知」の6領域に分かれている。
・発達初期の刺激や学習の機会をどのように与えたらよいかを具体的に示したのが、このプログラムである。
チェックリストについて
・このプログラムによる指導を始める前に、まず現在の子供の発達状態を十分把握するために指導者と保護者が連携してこれを行う。
・指導中のカリキュラムの記録として継続して使用している。
・チェックリストは、発達評定にも使う事ができる。
プログラムの特徴
・お母さんが日常生活の中で指導できる個別指導プログラム。
・子どもの状態を領域別にチェックすることによって、発達の遅れやひずみを的確にとらえることができる。
・子どもの発達に応じた指導目標が、チェックリストによってすぐ選ぶことができる。
・子どもの発達をふまえてスモールステップで指導できるように562項目の指導目標が示され、0〜6歳までのチェックすべき発達水準がすべてカバーされている。
・お母さんがこのプログラムを実施することによって、子どもの発達を正しくとらえることができる。
また、お母さん自身が子どもを育てる良い指導者ともなりうるテキストである。
・発達の順序に従って系列的に並べられており、系統的な指導が出来子どもの進歩を連続的に評価できる。
課題の与え方
・月1回子どもと共に行う。
・第1回目の面接でチェックリストにより最初のアセスメントを行う。
(自分の子どものベースライン・・・どの位置にいるか・・・を知る)
・それに基づいてすべての発達領域にまたがっていくつかの行動目標を選び、それぞれの行動目標と活動例を母親とともに検討する。
・活動例をもとに、一人ひとりの子どもにあった指導計画を作成し、家庭で指導し記録を録る。
・一ヶ月後、その間の家庭での指導経過を指導記録をもとに報告してもらい、行動目標の達成について評価する。
・目標が達成されていれば次の行動目標を選び、これを繰り返す。
行動目標の選び方
・この次に身につくと思われる技能を選ぶこと。
・子どもにとって機能的な技能を選ぶこと。
・学習しかけている技能を選ぶこと。
・子どもが興味を示す技能を選ぶこと。
・家庭でするのであまり時間をとらない技能を選ぶ。
・子どもが学習することに親が興味を持っている技能を選ぶ。
・その子にとって学習する必要のある技能を選ぶ。
アセスメント
子どもの発達をいろいろな角度から観察する。
[例えば]
・子どものことについて母親と先生の間で話し合う。
・テストを行い発達段階を確かめる。
・チェックリストを利用しながら保育中の様子を話し合う。
・チェックリストを利用しながら指導中の子どもの様子を母親と一緒に話し合う。
・子どもの発達段階を親と一緒に確かめ課題を見つける。
課題分析
チェックリストにあげてある行動目標はある程度細分化される。
[例えば]
現在の行動「あなたのはなはどこ」と聞かれると自分の鼻を指す。
1.他人の鼻を指す
2.顔の絵の中の鼻を指す
3.子どもの鼻を指しながら「これ何」と聞くと真似をして鼻と言う
4.子どもの鼻を指しながら「これ何」と聞き、始めの音を言うと鼻と言う
5.子どもの鼻を指しながら「これ何」と聞くと鼻と言う
このように最終目標を達成するためにそのこに応じた現時の技能水準を学習進度に則した課題分析を行っていく。これを作成する上においては母親と先生が一緒に作成したり先生だけが行なったりする。課題分析は一人一人違ってくる。又、指導して行く上で途中どうしても乗り越えにくい物があれば、最初に考えた課題分析をもう一度見直し一緒に新しい分析を考えていく場合もある。
記録
・アセスメント(発達評定)の時点で色々な検査
・課題分析における家庭プログラムの記入
(これは1ヶ月に1度、先生と一緒に記入していき個人指導の時に渡す。
詳しい記入に仕方は、その都度指導者が説明する。
・家庭プログラムについては家族とよく相談をし、みんなの見やすい所にはっておき、家族善意因果協力して取り組む事ができるようにする。
・記録は評価であり、次の取り組みへの大事な資料となる。指導の方法をしっかりと把握し、正確に記入すること。
評価
・課題についてどのくらい達成できたかを、課題を与えられてから1ヶ月後に親と一緒に確かめる。
それによって、次のステップに進むようになる。それを評価という。
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