骨髄移植をすることになった私には提供してくれるドナーが必要です。骨髄の提供は、HLAという骨髄の型が合わなければ提供することはできません。型が合っていなければたとえ親でも提供することはできないのです。一番可能性が高いのが兄弟。それでも一致の可能性は4分の1です。妹と弟を持つ私はすぐに二人の型を調べてもらい、妹と型が一致していることが分かりました。この点ではとても幸運なことでした。
もし兄弟の誰とも合わなければ骨髄バンクに登録して、自分の型と一致したドナーが現れてくれるのを待たなくてはなりません。そしてそれにはとても時間とお金がかかるのです。
骨髄移植費用に関する社会保障制度として、骨髄液に保険適用が効かないということは意外と知られていません。腎臓や角膜には保険点数がつけられており、保険からお金が支払われます。しかし、骨髄には点数がつけられておらず、しかも骨髄バンクの場合には他の臓器バンクでは必要のない負担金が患者に請求されます。コーディネート料・ドナー障害保険・ドナー健康管理調査費などです。
日本骨髄バンクでドナーが見つかった場合の患者負担金の平均は55万3427円、最大では116万3550円となっています(公開シンポジウム「骨髄バンクに医療保険を」(99・7・23)の資料から)。
また日本国内でドナーが一人も見つからず、海外でのドナー探しをしなければならない人もいます。
その場合はもっと費用もかかり、例えば全米骨髄バンクから骨髄液の提供を受けた場合の平均は375万1833円、最大は633万7150円です(同資料より)。
それから時間の問題があります。これが一番致命的といえるでしょう。ドナーが運良く見つかったとしてもそれからコーディネートが進み、3次検査や最終同意などをパスしてようやく移植、となるまでに早くて6ヶ月〜8ヶ月かかります。
その間待っている間に確実に病気は進行していくのです。病気の完治に移植しか手立てが無いのであれば、出来るだけ早くした方が良いに決まっています。そしてドナーが身近にいないばかりに、命を落とされるケースも多々あります。このような現状を当時の私は全く知らなかったので、妹と一致したことを聞かされたとき、嬉しい気持ちはもちろんありましたがそれがどれだけ幸運なことかということはよく分かっていませんでした。
それよりもこれから受ける骨髄移植というものがどんな治療なのか、そのことだけで頭がいっぱいだったんです。