2003-東京モーター 2002-ジュネーブ
2001-USJ特集

 

【スーパーカーカタログ探検隊】 
第1回 BMWのスポーツカーカタログ 話:滝本隊員、高橋隊員

滝本:今回から始まったこのコーナー、「スーパーカーカタログ探検隊」では、新旧のスーパーカーカタログをわれわれが探検、究明して読者の皆さんに紹介していくものです。よろしくお願いします。

高橋:ところで、このコーナーの名前は、「カーマガジン」の「BOWのNEWCLASSIC探検隊」のパクリでは?

滝本:まあ、そうだともいえるし、そうでないともいえる。あまり細かいことは気にしないでいただきたい。今回取り上げるのは、BMWのスポーツカー特集ということで、新旧のBMWスポーツカーカタログを紹介します。まず最初に登場は、BMW M1。1979年のカタログです。

高橋:これはまた初っぱなから凄いモノが出ましたね。M1が出た当時の時代背景を説明すると、スーパーカーブームの花形ともいえるランボルギーニ・カウンタックLP400、そしてフェラーリ365GT4BBの2台が出たのが、1974年。翌年にポルシェ930ターボが登場します。これらの人気スーパーカー達にあとマセラティやロータスが加わってブームが形成されていた訳ですが、M1が出てくるのは、1977年。ちょっとブームに乗り遅れた感がありました。

滝本:スタイルやエンジンのスペックなど、どれをとっても一流のスーパーカーなんだけど、M1は当時あまり人気がなかったですね。フェラーリやランボルギーニなどのスポーツカーブランドに比べて、BMWはセダン中心のブランドだったのも不人気の原因だったと思う。

高橋:やはりスーパーカーというのは、いつ壊れるか、火を噴くか、という危うさが人気の条件だったのかも。M1は多分、当時のスーパーカーの中では、最も実用的に走れるクルマでしたからね。

滝本:さて、そのカタログはというと、当時のスーパーカーカタログの中でもずば抜けて豪華だった。

高橋:サイズは297mmx377mmという大判で、表紙はLPレコードジャケットのような厚紙。スパイラルリング綴じで、28ページにトレスカードのページが3枚、見開き折りページも多く、印刷は銀の特色が多用されている。

滝本:25年前のカタログということを考えると、当時の印刷、製版技術の粋を集めて作られたことが伺える。もちろん現在でもこれほど豪華なカタログというのは、なかなかお目にかかれない。


高橋:装丁だけでなく、内容も凄い。昨年の「オートカー・ジャパン」9月号にこのM1カタログのことが紹介されていたので、その記述を引用させてもらうと、「自慢のビッグシックス、それを単体で撮るところまでなら分かる。しかしBMWは、ヘッドを外し、そのブロック側の面とヘッド側の燃焼室を撮り、それでも飽き足らず、オイルパンを外してクランクシャフトとそれをごついベアリング・キャップが押さえ込んでいる絵まで撮っているのだ・・・」さらに「ジャンパオロ・ダラーラが決定したパッケージに基づいて、イタリアはモデナの専門会社が組み上げた鋼管フレームが、図面とランニングシャシーの状態のカットと、多重露光を駆使した透視写真で表現されている。」と、BMWがこのM1に賭ける熱意が溢れるように伝わってくるカタログの内容となっています。

滝本:まさに圧巻の一言。しかしM1は商業的にも、モータースポーツでも成功を収めることが出来ず、フェイドアウトすることになる。

高橋:なぜかBMWのスーパースポーツカーは不運の末路を迎えることがお決まりとなっています。それでは、不運のクルマ第2弾の登場ですね。

滝本:第2弾は、BMW Z1カタログです。カタログ発行年は、1989年。

高橋:いや〜、これもレアですね。実車もレアなら、カタログもレア。M1の登場から10年、87年のフランクフルトショーに初めて出品され、88年から生産車としてリリースされました。

滝本:だけどこのクルマは、月産30台程度のほとんど手作りで作られたため、日本では正規輸入されることもなかった。

高橋:当時の並行輸入モノで、1200万円したそうです。当時の911カレラ2・カブリオレが1200万円で買えますから、いかに法外な価格だったかが分かります。

滝本:それはいくらなんでも高すぎる!!このクルマ、ボディとシャシーは専用設計だが、エンジンとギアボックスは、325i からそっくりそのまま流用したもの。2494ccのシングルカム6気筒だから、エンジンの性格はスポーティでもなんでもない。

高橋:走りを楽しむクルマじゃなくて、あくまでオープンでクルージングを楽しむファンカーとして企画されたようですね。Z3もどちらかといえば、そういうクルマだったと思いますが。カタログのほうは、サイズが340mmx285mmと大判の20ページ構成です。

滝本:カタログの中身もやはり、エンジンや足回りなどの記述は非常に少ない。全てのボディパネルをFRPで組み上げていることを示す、パネルを全て外した写真などがあるが、全体的にはイメージ主体の印象だ。

高橋:Z1はクルマそのものの出来より、コンセプトが中途半端だったと思いますね。エンジンや足回りを煮詰めてリアルスポーツカーに仕上げるか、あるいは、もっと低価格で量産タイプのライトスポーツカーを狙うべきでしたね。

滝本:まだマツダのユーノス・ロードスターがデビューする前だったが、ロードスターにはBMWもやられた!と思ったんじゃないかな。

高橋:それでBMW不運のスポーツカー第3弾とは?

滝本:じゃ〜ん!!BMWZ8です。発行年は2000年。

高橋:おおっ!!Z8カタログといえば、思い出すのはもう4年前になりますか。当時ディーラーに行っても出てくるのは、小さな簡易カタログだけで、てっきり本カタログなんて無いと思っていたら、ACCの森会長が「赤くて大きなカタログがある」と。あせって大阪中のディーラーを回ったけれど、もうどこの店にも残っていなかった。

滝本:たまたま神戸のBMWディーラーでダメもとで、あるか、と聞いたら、スッと出てきた。

高橋:あの時は、感激しました。何事もあきらめたらだめだ、と教えられたような気がしましたよ。

滝本:カタログサイズは296mmx297mmの52ページ。カタログそのものは大きくて豪華だが、内容的には、ほとんどイメージ写真とイラストなどで、これも技術説明のようなページは少ない。

高橋:このクルマの性格からいって、それでいいんです。まずこのクルマを買おうという人は、エンジンの構造がどうの、シャシーの構造がどうのなんて気にする人はいない。

滝本
:とはいえ、Z8はM5譲りの5リッターV8・400馬力エンジンにオールアルミボディ。オープンのみの専用設計という贅沢なクルマで、インテリアのスイッチひとつまでオリジナルで丁寧に作られている。辛口評論家で知られる福野礼一郎氏でさえ、珍しく絶賛しているクルマだ。(注・「礼一郎式外車批評」)

高橋
:確かに値段は1660万円と、モデナが買えるような価格です。だけどこのクルマには十分にそれだけの価値があります。クルマというより、宝飾品を買うような感覚ではないでしょうか?

滝本
:ところが、やっぱりBMWのスーパースポーツカーは同じ運命をたどる。販売不振のため、2003年には生産終了となった。今、Z8の中古車ほどお買い得なクルマはありません。わずか2年落ちのZ8が、新車価格の半額で買えます。高橋さん、1台どうですか?

高橋
:いや〜、お金があったら欲しいですよ。これ10年ほど寝かしていたら、絶対値が上がると思いますけどね。

滝本
:ということで、今日は、BMWのM1、Z1、Z8という不運のスポーツカー3台のカタログとエピソードを紹介しました。

高橋
:次回のネタは何でしょうか?

滝本
:そうですね、フェラーリの4人乗り特集というのもいいし、チゼータV16Tのような、悲運のスーパーカーも取り上げたい。何になるかは、お楽しみということで。

高橋
:それでは、またお会いしましょう。


★BMW・M1、Z1、Z8の各カタログはBAZARコーナーにて販売しております。ぜひご覧ください。