なにをするべきか なにをなすべきか

なにを目的にし どのように動くべきか

それをちゃんと理解して行動できる人って案外少ない

己の目的と責任を両立させて動ける人間は実は稀少だ

だって人間は理性を働かせられるけど 結局は欲望で動く生き物で

己の理性を過信すればするほど回りが見えなくなる

人とはそういう生き物だが

どうしても譲れないもののために意思を通そうと願ってしまう


“でも 時々 それは非っっ常−に傍迷惑なんだよね”


愛しい子の不快極まりないと露わにしきった歪んだ顔を思い出す

他者の迷惑も上官の命令も省みず動くということでどんな報復が己に返るか

君はそろそろ自覚したほうがいいんじゃないのかね?












<9>



「アスラン・ザラです!通告を受け、出頭いたしました!」

緊張と混乱でマーブル模様を描く思考を抱え、アスランは内部からの許可を得て隊長室に入った。

三年ぶりの幼馴染との再会で物凄い大絶叫を上げられ、本人確認のために飛出したはいいものの何故かハエ扱いされた上滅多打ちにされて、奪取してきたばかりの機体をボロボロのスクラップ状態にして帰ってきたのだ。

上官命令を無視した上にこの大失態。

懲罰は決定したようなものだが、アスランにとってはそれよりも三年の月日を経て更に可愛らしく成長していた幼馴染が自分に気付かず拒絶されたことの方が大問題だった。

無機質と言うか殺風景と言うか、必要最低限の物以外は本当に何も置いていない隊長室では、キーボードを叩く仮面――クルーゼ隊長が全く無関心な態度でアスランを迎えた。無関心と言うか、いっそ視線を向けるのすら煩わしいと言いたげな雰囲気である。

「君と話すのが遅れてしまったな。呼ばれた理由はわかっているのだろう?」
「はっ・・・命令に違反し、勝手なことをしてしまい申し訳ありませんでした!」
「それで、新型を大破させて戻った分の収穫はあったのかね?」

薄く笑みを刷いた上での皮肉な科白に、顔を強張らせて俯きそうになりながら、持ち帰った(アスランの脳内では)“大きな収穫”を示そうと苦しげに溜息を吐く。
こんな仮面に彼のことを知らせるのは大変不本意なのだが、仕方がない。

「あの奪取し損ねた最後の機体・・・あれに乗っているのは、キラ・ヤマト――月の幼年学校で私の友人であった・・・・・・コーディネイターです。まさかあのような場で再会するとは思わず・・・・・・どうしてもそれを確かめたくて・・・」

幼年学校にキラが編入してきてから7年間、いつでもどこでもずっと一緒だったのだから、自分が彼を判らないはずはないし、彼が自分を忘れるわけもない。月で別れてからトリィが何らかの拍子で壊れたらしく、足取りなど一向に掴めなかったし、オーブにいることくらいは予想していたものの、こんな所で再会するなんて本当に運命か何かとしか思えない。
本当に自分と彼は・・・

「なるほど・・・・・・では、次の出撃には君を外そう」
「はっ!?」

思考が気儘に暴走するのに歯止めを掛けたのはクルーゼの刺すような視線とあっさり下された不本意な命令だった。

それは困る!

あんな結果になってしまったが、キラともう一度コンタクトを取るためには自分も出撃メンバーに入れてもらわなければならない。
何より、追撃する別の同僚にキラを落とされるくらいなら、自分が話し合いの末、捕獲したいのだ。

(・・・そうすれば、またずっと一緒に・・・)

話し合いの“は”の字も叶わず、逆に撃墜されそうになった己の醜態をさっくり棚上げにして、アスランは必死で主張した。

「キラは・・・あいつは、ナチュラルにいいように使われてるんです!あいつ・・・優秀だけど、ぼうっとしててお人よしだから、気づかずに・・・」
「その優秀でもぼうっとしたお人好しに、紅を着ている君は落とされかけたわけかね?」
「っ・・・・・・それは!きっと、あいつは何か・・・洗脳でもされてて・・・私はあいつを説得したいんです!」
「洗脳されているのに説得しても無駄だろう」
「ですが!私は、そんな辛い目に遭っている同胞を放っておくことは出来ません!」

痛いところばかり突いてくる上司に内心舌打ちしながらも、あくまで主張を曲げずに反論すると、表情の読めない仮面隊長はなにやら思案顔で立ち上げたままのモニターを見て言った。

「それで、拒絶させた時はどうする?」

ありえない!
実際にハエ扱いされた上、撃墜されそうに・・・(以下略)アスランは、内心でのみ断言し、そんなことはまずないが万が一の時は、

「私が、撃ちます」

どんな手を使ってでも掻っ攫って逃げてやる。
言っていることとは真逆の決心をしながら、アスランはこちらを見ていたクルーゼを一瞥し、それ以上の追及を避けて「これで失礼します」と背を向けた。

特に何の声を掛ける事無く部下を見送ったクルーゼは、モニターに流れる暗号めいたプログラムを指でなぞりながら、静かに微笑む。

「撃つというなら・・・結果的に君があの子を撃ったなら・・・その時は」

私が、君を殺そう

そろりそろりと近づいてくる潮時の気配を察して呟く声音には、呆れと諦めと、それ以上の何かに満ちている。

徐に、モニターを落として立ち上がる。暴走を予測できる部下と再会を予想できるイレギュラーの存在に、どう立ち回ろうかと算段を付けながらも痩躯の男はブリッジに向かった。





































戦場に緊急発進する予定の戦艦の中で一味違った空気を醸し出していた彼らだったが、一頻り話し合って区切りが付いたのか、照れているらしく若干顔を赤くしたサイがほのぼのムードを切り替えようと口を開いた。

「それで、これからどうする?」
「うーん、ザフトが来たならどうせ僕が出るし、コンタクトは取れるだろうけど・・・」
「問題は進路だよなぁ・・・」
「だよねぇ・・・」

話し合いつつ、彼等がパソコンを囲んでいる傍ら、そこら辺の事情を知らないフレイが、

「なになに?コンタクトってどういうこと?」

とミリアリアに訊ね、かなりドラマチックに脚色されたキラの事情を説明してもらって楽しそうな声を上げているが、敢えて訂正はせずに放置することにした。

いつの間にかキラと探し人が“昔将来を約束して生き別れた恋人”で折角見つけたと思ったら敵同士の立場になってしまい、キラの所在や変わらぬ思いを伝えに行くために会いに行くのだということになっている。
概要は合っている気がするが、色々肝心な所で間違っている。
しかし年頃の少女たちの想像力に拍車を掛ける設定は、どうせ一度飛び出したら事実を知るまで暴走するだけなのだから、一々歯止めを掛けるのは非常に面倒臭く無駄な作業でしかない。

「そういうことなら、是非協力するわ!」

しかも、なんだかフレイがやる気になってくれたので、実質それを放置するだけで協力者が増えるんだしまぁいいや、という大雑把な性分で割り切ってしまえたのもあったが。

この時期の少女たちは他人の面白い恋話や運命的な話が大好きなのだ。

「フレイ、この艦の進路、予測できる?」
「多分ね。乗組員と補給の状況は?」
「艦員の数は少なくて、士官は3人だけ。補給は途中で打ち切ったから物資の備蓄もかなり少ないよ」
「地図ある?」
「すぐ出すよ。範囲は?」
「できるだけ広域でコロニーへの経路と距離が判りやすいのがいいわね。どうせこの辺りはコロニーの数も多くないし」

早速頼ってしまおうとキラはサクサクとフレイの疑問や要望に答え、モニターにヘリオポリスを中心にした宙域図を呼び出して見せた。

「この艦って一応地球軍のものって事になってるのよね?外にはザフトがいて、物資は不足、地球に下りるにしても付きに行くにしても補給が必要となると・・・」

しかもこの艦にはヘリオポリスからの避難民だって抱えているのだ。少ない軍人+7人の学生と一般人だけだった時なら兎も角、強行軍で長期航行は望めまい。
飢えは人を凶暴化させるのだ。民間人とはいえ、艦内での暴動は現在の状況では命取りだ。地球軍もそれくらいは心得ているだろう。
ヘリオポリスから月へ。地球を挟んだ2通りの経路を指で辿り、フレイは白い指を月から少し戻したある一点を指して止めた。

「アルテミス?」
「寄るとしたらここよ。軍人って群がってないと大抵のことは出来ないようになってるから、どこかで一度補給して連合と連絡を取るはずだもの。ザフトが追ってるんなら尚更、ここには傘があるから一時避難所としては持って来いだし」
「でもアルテミスってたしかユーラシアじゃなかったっけ?」
「連合はユーラシアを連合の傘下にしか見てないわ。あんなところでこっそり作ってた戦艦だし、拘束してデータ取るチャンスになるから、アルテミスも受け入れると思う。それに、完璧な守りがあるって信じきってるやつら自身の警戒心なんか飼い犬以下よ。・・・あそこの司令官、顔が気持ち悪くて強欲なので有名なのよね」

顔が気持ち悪いのは関係ないんじゃ、
そう思う男性陣を他所に、フレイとミリアリアの目が物騒に煌いたのをキラは黙って見なかったことにした。ちょっとだけ冷たくなった空気にも、空調の故障の所為だと思い込むことにする。

「んじゃあ、傘で決まりかな」

納得した様子の――自分の彼女が暴走しそうな予感に気付いていないトールに頷き返し、キラはアルテミスのデータを呼び出すために手を動かし始めた。

「会うんなら、アルテミスの前よね〜」
「ちゃんと捕獲で済ませて戻ってきてね?」

こんな艦どうなってもいいけどキラと離れるのは嫌よ!

「うん、解ってる。ストライクには傷一つつけずに戻るよ」

素早く思考をアルテミスからキラの運命の人に切り替えた少女たちの念押しに答えてアルテミスのデータを見せ、オーブの影たる彼女は友人たちを悠然と振り返った。

「ついでに、こちらの“意思”も伝えてくる。みんなにも手伝ってもらうかもしれないけど・・・この艦は月に行かせないし、地球軍に渡すつもりもない。報復なんて趣味じゃないけどね、」

自分たちの平和を踏みにじってくれたお返しに、たっぷり色つけて後悔させてやろう。

なにやら企んでいるらしい物騒な笑みを見せて断言した彼女は、実力で裏づけされた自信に満ちていて最高に格好良かった。

“影”は、その存在を良く知るオーブ本土出身の民からは別称“オーブの騎士”とも呼ばれ称えられているのだと、本土出身の4人は実感と共に思い出した。
あの“影”の任務を手伝えるのだと興奮に震える。キラから正体を聞いて、この一年と少しの期間で溜め込み修めてきたあれこれのスキルを思う存分発揮できるのだ。

キラの宣言で学生たちの若い冒険心と熱いやる気に火が着いたところだったが、危なっかしい興奮に水を差すように、外からあまり見たくない顔が入ってきた。

「お〜い、キラ・ヤマト〜」
「なんですか変態鷹さん。さっきキラには近づかないでって言ったのもう忘れたんですか。人語を話せるくせに異名が鳥類なだけについさっきのことも記憶に残らないくらい脳みそ足りてないんですか」
「俺は変態じゃない!ムウ・ラ・フラガだって・・・」
「否定すると余計説得力ありますね」
「なぁに、あの人変態なの?最低だわ、狭い艦内になんでそんなのがいるのよ!公共猥褻物になりかねない汚物が同じ閉鎖空間にいるってだけで気分悪いのに近くに来ないでよね図々しい!

ほんの二言話しただけでミリアリアから先程のネタを使って存在から全否定され、それを受けたフレイが加勢する。その間にもキラはアルテミスの情報が映っていたモニターを落し、サイにパソコンを押し付けていた。
女性陣の見事に息の合った連係プレーだったが、会うたびにこれをされるフラガがちょっと哀れだと思う反面、早いとこ学習すれば良いのにと思わないでもない。

「だぁーっ、もう!伝言くらい言わせてくれ!・・・マードック軍曹が怒ってたぞ」
「なんだって僕が怒られなきゃならないんです」
「自分の機体くらい自分で整備しろってさ」

やっとまともに会話を交わせてあからさまにホッとしている様子に、キラは内心意地悪く笑う。折角の友達の加勢を無駄にするつもりは毛頭無い。
敵は怯んでいる。

「僕の機体?そうですね、僕のものにしてみても良いかもしれません。どうせ貴方方はあれに乗れないようですし。ところで貴方のメビウスはどうなんです、ちゃんとやってあるんですか」
「おいおい、子供じゃないんだから・・・まだだけど」
「自分のもやってないくせに僕のことを一々呼びに来たんですか。まさか僕に手伝わせるつもりじゃないでしょうね、図々しい
「べ、別にそんなこと言ってないだろうが」

どもって焦っている時点で力一杯肯定している事実に気づかないのは、鈍感だからか間抜けだからか。
きっと両方だ。

「それより、お前の機体を」
「僕のはとっくに済ませました」
「整、備・・・・・・っへ?」

どうしてこんなのと同じなのかと腹が立つので、自分の探し人と同色の目を極力見ないように言い放ち、更なる間抜け面を晒す鷹男を退散させるべく口元だけ嘲るように笑みを乗せた。

「当然でしょう。命を預ける分身なんですから、隅から隅まできっちり自力で整備しましたよ。あなたもきっちり自分の機体は自分で整備してくださいね、子供じゃないんだから

先程自分が向けられた科白を皮肉とセットでそっくりそのまま言い返す。

「だからとっとと自分の仕事に戻ってくださいね」

とハエでも払うような仕草で手を振るキラに、フラガは気まずげに背を向け――
どっと防音しているはずの室内から見事に漏れ出た大爆笑する子供たちの声に、やり込められたと気づいた一軍人は、がっくりと肩を落としたが・・・・・・室内で笑い転げる学生たちには知ったことではなかった。















































友人たちの爆笑が収まるのを待ち、自分も引き攣れるように愉快に痛む腹筋をさすりながら、キラはドアのロックを掛けなおして彼らに向き直った。

「それじゃ、ちょっと行ってくるね」

まるで近所のスーパーに買い物に言ってくるというような気軽な口ぶりだ。
しかし、これから自分が戦場に出向くことを十分理解している友人たちは、さっと顔を引き締めて頷き、艦の管制担当であるサイが思い切って切り出した。

「キラ、俺たちもブリッジに入っても――」
「だめだよ」
「だってそっちの方が乗っ取りやすいし」
「だめったら、だめ☆」

にっこりと眩い笑顔で止めるキラを、サイやトールが少し不満気な顔で見やるが、それでもこれからたった一人で戦いに出る少女は頑として首を縦に振らなかった。

「君たちのために戦うのは、僕の仕事だよ。これは誰にも譲らない、僕の権利だ。それに、そのウイルスならどの端末からでも侵入できるようになってるし、空調システムだって医務室さえ占拠できれば後はどうにでもなるって解ったでしょ?」

キラとサイが共同で作ったウイルスは、パターンは様々だが相手のセキュリティを突破するパワーは揃って強力な代物で、居住スペースの一角からでも艦内全域を乗っ取れるし、医務室は感染症患者が出た時のために空調が別枠で設置されていて、トールが製作予定の睡眠ガスも安全域としてそこさえ確保しておけば抜かりなくことが運べると調べもついているのだ。

「それでも・・・」
「俺らだってさ〜」
「もうっ、あんたたち聞き分けなさいよ!子供じゃないんだから!!」

尚も言い募ろうとする二人を遮ったのは、黙って彼らのやり取りを聞いていたフレイで、最後にくっつけた科白に見守っていたミリアリアがぷっと吹き出した。
その彼女に、うっかりキラも先程の彼女に振られた男とか上司に突然肩を叩かれたサラリーマンのようなフラガの打ちひしがれた背中を思い出し、つい堪えきれず吹き出す。
連鎖反応のように笑いは男性陣にも伝わり、彼らは再来した爆笑の衝動を適度に満喫した。

「い、行って、来るね〜」

ぷっとまた笑い出しそうになるのを肩を震わせて堪えつつ手を振るキラに、同じく笑いの余韻を残した彼らは手を振り替えし、やや震えた声で

「「「「「い、ってらっしゃー、いっ」」」」」

と声を揃えて見送った。このネタでしばらく笑えそう、いや、フラガを見るたびに今後どんなシリアスなシーンでも笑い飛ばせてしまいそうだった。

一回目をただの衝動だったのだが、二回目の思い出し笑いですっかりフラガのイメージが“哀れな背中の変態鷹”像で固まってしまったのだ。

げほげほと咳き込みながらなんとか発作めいたそれを抑えたサイは、未だ肩を震わせながらも発信機を撫でるフレイを見やる。彼女だってキラが心配じゃないわけではないのだ。

「なぁ、フレイ」
「何よ?」
「何で止めたんだ?」
「私たちが民間人だからよ」
「え・・・・・・」

ポスッと手近なベッドに腰掛けるフレイに訊ねると、帰ってきたのはもっともだけど意外な答えで。

「フレイ・・・?」

戸惑うサイを仰いだフレイは、きゅっと綺麗にリップを塗った唇を噛み締め、薄っすらと涙を滲ませていた。

「私たちが民間人だから、キラは私たちを戦いに関わらせないようにしてるし、それ以外だけなら協力させてくれてるのっ。民間人による戦闘行為は、国際法では重犯罪行為だからっ!」
「そんなのっ、キラは・・・!」
「キラは!・・・キラは、データとしてあちらに戦績を残されても自力ですぐに消しちゃえるし、何よりも“影”だから実質の立場は民間人じゃないのよ。民間人に向けられた法なんだから、民間人でないキラは戦いに行けるの。キラの運命の人にだって会いに行けるっ」

だが、自分たちはそんなキラのサポートすらできない。戦場に立つキラに対しては、無事に帰ってくることを祈ることしか出来ないのだと、彼女の目は悔しさに満ちて語っていた。

大西洋連邦事務次官を父に持つフレイは、その位置を遺憾なく利用して父やパーティに現れる同僚から情報収集し、軍内部の事情やそれぞれの法制度を学んできた。

父の秘密に触れ、ヘリオポリスに逃げるようにやって来た、人間不信気味だったフレイを解放してくれたキラのために。

サイを始め、ここにいる者たちは、元々コーディネイター嫌いを主張していたフレイがどのようにしてキラに心を開いたのか詳しく知らなかったが、すっくと立ち上がり、

「ちょっとオーブの人たちのとこに行って来る」

と言って颯爽と出て行った彼女の後姿に息を呑んで顔を見合わせ、
“自分のやるべきこと”のためにそれぞれ立ち上がった。実際に戦えなくても、今ここでできることはいくらでもある。

「俺ッ、もう一回艦内回るな」
「じゃあ私はあの2人の所に・・・」
「あ、ミリィ、俺も行くよ」
「ぼ、ぼくは・・・」
「カズイは談話室頼む」
「うん、」

フレイとキラの間に何があったかなんてことは聞かない。話していいと言う時期が来れば、きっと本人たちから何らかの合図があるはずだ。自分たちは、それをちゃんと見逃さなければ、いい。
それがどんなものであっても、自分は全部受け止めよう。

サイは決意を新たに固めて、ミリアリアと共に医務室へ向かった。






何も持たないこと

何かを持っていること

それぞれに相応の重みがあり

無知な者には到底理解し得ない痛みを伴う

だが それを知ろうと足掻く第三者には何が届くのか



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