TOYS
〜最後の時間〜

んしょ・・んしょ・・・。

寝静まってしまった寝室。

騒ぎ疲れた朝。

そして、誰も居ないはずの階段からの声。

剛だった。

彼の記憶が確かなら、コンセントは2階にあった。

そして、それを探しに彼は長い長い14段の階段に挑んでいる。

あと1歩で登れそうで、ぎりぎりで落ちてしまったり。

そんな繰り返し。

だけど、時間がないことを、彼が1番理解しているんじゃないだろうか。

『もう1度彼の音が聞きたい。』

その一身でかけあがる。

「ほらよ。」

後ろからのフォローがあった。

1人できたはずの階段。

気がついたのは坂本さん。

「なんで?」

「お前のやることぐらいお見通しなんだよ。」

「・・・さかもとさん・・・。」

「ほら、健の最後の声聞くんだろ?」

「はいっ。」

 



「お前ほんとにこっちであってんのかぁ?」

「わかんねぇけど、確かねぇちゃん持ってたんだよ。」

がたん。

「しぃーっっっ。。いくらのゆみこでも気付かれるって!!」

「大丈夫だよ、うちらのでかい音も人間には聞こえやしねぇよ。ましてや寝てんだから。」

「だけど。」

「はいはい。」

「あー!!」

「お前が叫んでどうすんだよ。」

「あった!!」

 

 

「健おきろっ、健!!」

「なぁにぃー??」

「なんやのんごーくん・・・朝まだ早いやんかぁ・・・。」

「これかけろ。」

「へ??」

彼はコンセントと一緒に最初の頃よく2人で聞いたカセットを持ってきた。

「まだあったんだよ、これ。」

「うあー、ちょー懐かしいねぇー。」

「ごーくん、けんくん、それなにー?」

「ほら、准一こっちこいって。」

「えー、なんやねんなぁー。」

「いいから早く!!」

 

 

「ねぇねぇにんぎょうさーん。」

「・・・。」

「そんなに僕のことキライ?」

「なんで?」

「だってしゃべってくれないじゃん。」

「んなことねぇよ。別に、誰とも話したきゃねぇよ。」

「ねぇ、友達になろうよ!」

「なんで?」

「いいじゃん、僕健ってゆうの。君は?」

「俺はお前と友達なんかにはならない。」

「なんでよぉー。友達なろうよ。一緒にいっぱい話そうよ!」

「話すことなんかねぇよ。」

「・・・そんな・・・。」

「そろそろゆみこ帰ってくんじゃん。俺戻るわ。」

「・・・うん。」

 

ただの焼きもちだった。

別にあいつのことキライじゃない。

ただ・・・逆恨みってやつかも。

帰ってきたゆみこが1番先に使うのはラジカセ。

日常のこと。

どうしてあいつは俺に友達になってくれと言うのか。

わからない。

ただ、悔しかった。

 

 

「いつまで1人でいる気だよ。」

 

 

ほんとだ。

俺はいつまで1人でいるんだろう。

一緒の時期に来たはずなのに、なんであいつの周りにはいろんな奴がいるんだろう?

 

 

「じゃぁお前は今日から剛だ。」

 

 

「俺、剛ってゆうんだ。・・・だから・・・。」

「よろしく!!」

「あ、、ああ。」

♪〜♪〜♪♪〜

「何この曲。」

「ゆみこが好きな曲。僕も大好きなんだよねー。」

♪〜♪〜

「・・・俺も・・・好きかも・・・。」

「ほんと?じゃぁ気合うじゃん!あ、僕のことは健でいいからぁ、剛って呼ぶかんね。」

 

 

あの時と同じリズムが流れる。

「なつかしー・・・。」

「剛は変わったよね。」

「どこが?」

「いろいろ。」

「ふーん。・・・健はさぁ、変わんないな。」

「そんなことないよ。」
 
「変わんない。優しいとこは全然変わってない。」

「剛も意地っ張りなとこは変わってないけどね。」

「んなことねぇよ。」

「あーあ、ちょー心配。准一の茎折っちゃダメだよ、剛。」

「わぁってるよ。なんだよそれ、いつも俺がいじめてるみてぇじゃん。」

「だってそうじゃん。」

「ちげーよ、あれは・・・」

「はいはい、ちゃんと僕が止めてるから今の准一があるんだよねぇー。」

「・・・そうなの?」

「そうなのー♪」

「じゃぁ准一ももう終わりだな。」

「だからだめだってぇ!!」

「なぁ健。」

「なに?」

「がんばれよ。」

「なにイキナリ。」

「元気でなって言えないから。」

「じゃぁ、剛は元気でね。」

「ああ。」

「あ、それから、短気なの直した方がいいよ。そしたら准一とケンカもなくなるし。んで坂本さんに迷惑かけないこと。井ノ原さんを壊さないこと、博さんに文句言わない事。」

「なんだよ、井ノ原さんと博さんのはもうやってねぇだろ?」

「言っとかなきゃ剛はすぐ忘れるんだから。それから・・・」

「それから・・・その・・・あの・・・」

彼の言いたいことは大体わかる。

わかるから、ちょっと辛くて・・・。

「忘れないよ。健のこと、ずっと忘れない。大丈夫、心配すんなって、みんな覚えてるよ。」

「そ・・・っか。」

「あたりめぇじゃん。」

「でも・・・でもね。変わんない生活してね。」

「え?」

「僕がいなくなっても、寂しくしないで。楽しくしてて。みんなでバカやってよ。それが1番僕がうれしい。だって、僕1人いなくたって、みんないっぱい遊べるじゃん。お願い。寂しくならないで。みんなのこと、好きだから。だから、いつも笑っててほしいんだ。笑顔無くさないで。お願いだから。」

わかるから・・・めちゃくちゃ辛いよ・・・。

「・・・わかった。」

「もうすぐ時間だね。」

「なんでわかんの?」

「ゴミの時間。」

「・・・。」

「行こう。」

「みんなのとこに・・・な。」

「当たり前。」

 

「健、今までいろんな居なくなって行く人見てきましたけど、健が1番寂しいですよ。」

「ありがと井ノ原さん。」

「しっかり、してくださいね。」

「うん。俺、井ノ原さんのこと好きだよ。だから、壊れないでね。」

「それは十分気をつけます。」

「あ、剛に壊されないようにね。」

「んなことしねぇってゆってんだろ?」

「ああ怖い。」

「い、、いのはらさぁーん。。なんもしねぇってぇ。。」

「短い間だったけど、すごい楽しかったよ健。」

「僕もすごい楽しかったです。ホントに。」

「がんばってな。」

「はい。」

「けんくーん。」

「お前最初から最後まで泣いてんじゃないよ。」

「だってぇー。」

「立派な花咲かせよ!」

「当たり前やんかぁー。僕がんばるからなぁー。絶対どっかから見ててやぁー。」

「わかったよ。」

「健、これから辛い事いっぱいあると思うけどがんばれ。今まで、楽しかったよ。健がいてよかった。」

「坂本さん・・・。僕、これから壊されるとか、どうなるとかわかんないけど、それでも、絶対忘れないよ。みんなと過ごしたこと。みんなのこと、絶対忘れない。」

「ああ。」

「また・・会えるよな?」

「わかんないけど、きっと会えるよ。」

「俺、その日までいっぱい楽しんでやるんだ、ここで。それで、次に会った時にいろんな話してやる。准一の咲かした花のことも、みんなのことも、いっぱい話す。だから・・・」

「うん。」

「だから、負けんなよ!俺も負けない。健に会うまでちゃんと笑ってる。お前がいなくなったら辛いよ。だけど、負けねぇ。」

「うん。」

ばたん・・ばたん・・・ばたん・・・

・・・迎えが来ちゃったよ・・・。

つづく。

あら・・・(爆)どうしよ、なんか終われない。。これ続きどうしたらいいんやろう・・・?やべぇー。もう書けねぇよー。あー。まいいや。とりあえずこのへんが山場ということで、この話の。。