TOYS
〜はなれたくないよ〜

いつのころからか、僕は壊れ始めていた。

自分でもわかってた。

それをみんなに言ったらどうするだろう?

みんなはなんて言うだろう?

僕がここからいなくなったら、みんな悲しい?

僕のために・・泣いてくれる?

その時が・・・怖かった。

 

 
「ねぇおかぁさーん。」

「なに?」

「ラジカセまたおかしいのー。」

「また?この前修理出したばっかりじゃない。」

「だってね、CD聞けないんだよ?んで、なんかそれから電源切れなくなって・・・」

「まだ1年しかたってないのにねー・・・。」

 
 

「けーんっ。どしたんだよ?らしくねぇなぁ。」

「えっ?」

「元気なくねぇ?」

「そんなことないよ。」

「そう?」

「お前が元気ないとさぁ、ほら、なんか部屋に活気がないってゆうか、華がないんだよ。」

「花??剛くん、僕花やで?ちゃんとおんで?」

「その花じゃなくて!音楽がないと華やかじゃないってこと。」

「あ、なんや、びっくりしたぁ。とうとうさじ投げられたか思ったわ。」

「んなことしねぇよ。けど全然咲かねぇ花だなぁおい。」

「ゆっくり時間かけて美しい花咲かしたるわ!」

「早く咲けよな、じれったい・・・。」

「んなこと言わんといてやぁっー!!」

ギャーギャー。

「健ほんと大丈夫?どっか悪いんじゃないの?」

「大丈夫だよ、平気。」

「なんかあったら相談しなよ?同じ機械なんだから。」

「うん。」

 

 

「坂本さんどう思います?」

「井ノ原さんこそ・・・。」

「健はねぇ、考えすぎるとこあるから・・そういうとこからきてるんじゃないですか?」

「ただの思い過ごしならいいんだけど・・・。」

「どうしちゃったんでしょうね?」

「・・・もしかして・・・。」

一瞬走る鳥肌と恐怖。

彼は機械だから。

目に見えない恐怖心。

「大丈夫・・・ですよね・・・。」

「ああ・・・。」

もう誰かがいなくなるのは・・いやです・・・。




ゆみこが部屋に戻ると健とにらめっこが始まった。

「ゆみこ何やってんの?」

「さぁ。」

「なぁ坂本さん。」

「ん?」

「健ってどっか悪いのか?」

「っぽいな。」

「俺機械のことなんてよくわかんねぇよ。」

「うちらより作りが複雑だからな。」

「・・・。」

 

 

最初にここに来た時はどんな気持ちだったのか、もう忘れてしまった。

それくらい、毎日が楽しかった。

僕は坂本さんや井ノ原さん、剛みたいにおもちゃじゃなければ、

准一みたいに花じゃない。

同じ機械とはいっても、博さんのように丈夫で高性能なわけじゃない。

いつか終わりがくることだって知ってた。

知ってるんだけど・・・そうなんだけど・・・。

もっと、みんなと一緒にいたいよ。

ねぇゆみこ。

僕使わなくなったっていいからさ、こっから場所を変えないで。

すみっこでいいんだ。

そうすれば、みんなとまた遊べるからさ・・・。

 

 

「ねぇお父さんこれみてー。」

きっとこれが最後。

もうみんなとお別れだね。

少しのお父さんの見まわりの後判断が出た。

「もうだめだよ、これ。」

 

だめ・・・か・・・。

 

「明日にでも捨てに行こうか。」

 

あした?

 

「やばいよ!!やばいっっ!!」

「剛どうだった??」

「健が明日いなくなる。」

「えっ??」

 



ゆみこが部屋に戻ってきた。

だけど、健は姿を見せなかった。

「なぁ、なんでいねぇんだよ、健。」

「わかんない。」

「ひょっとしてさぁ、下?」

「うそ。」

「俺達さよならも言えないわけ?」

「やだよそんなの。」

「行こう。」

「当たりめぇじゃん!」

「・・・でも、どうやって行くんですか?」

「えっ?」

「准一と博。」

「・・・。」

「行ったところで戻ってこれないよ。階段が・・・」

「戻んなくてもいいじゃないですか。」

「ばっ、井ノ原さん何言ってんの?そんなことしたらヤバイに決まってんじゃん!」

「その時はその時でいいじゃないですか。おもちゃ達の最後の抵抗ですよ。」

「・・・。」

 

 

PM 23:00

ゆみこ消灯。

あれから健は1度も姿を見せなかった。

「準備いい?」

「OK。」

「じゃぁ手順の再確認。」

「剛は先に行って健の場所を突き止める。」

「おう。」

「准一は俺の背中から離れるな。いいな。」

「このロープ大丈夫なん?」

「大丈夫だって!」

「なんか怖いわぁ・・・。」

「次、博は井ノ原さんの上に。」

「井ノ原さんそんな体力あるんですか?」

「大丈夫、俺もサポートするから。」

「俺健見つけたら戻ってきて手伝うよ。」

「いいよ、心配すんな。それより、健のそばにいてやれ。あいつはもっと心細いはずだから。」

「わかった。だけど・・・」

「12時だ。12時になっても来なかったら戻って来い。」

剛は小さくうなずいた。

「いいか、ゆみこと姉さんは寝たけどお父さんやお母さんが眠ってるとは限らねぇかんな。気をつけろよ。」

「わかってる。」

「じゃぁ行こうか。」

「うっす。」

 

 
ここから、誰かが抜けることがないように・・・。

 

つづく。

ホンマは全部書いてしまいたかったんですけど、ちょっと長くなりそうなので2回にわたることにしました。健くんのモデルは一応あって、うちの古い方のラジカセなんですね。ホンマに。CD聞くようにすると動かなくなって、ラジオに戻すと音が出なくなる。最大音量にしないといけないんですね。カセットも同様。しかも電源が切れないんですよ。だからコンセント抜いて。でもラジオはちゃんと聞けるんでカミセンミュージアム用にしてます。コンポよりキレイに入るんだよねー(^^)ですので、今回の捨てられないものシリーズはこの「ラジカセ」かもしれませんね。