TOYS
〜ずっと一緒にいたいです〜

平和です。

ゆみこの部屋は平和です。

だけど、その平和も今日まで。

確信はありません。

ただ、そんな『予感』がしたのです。

井ノ原さんが、そう言ったから。

 

 

「・・・あぢー。」

「剛、あついあついゆうな、余計暑くなるだろ!!」

この部屋にはクーラーがありません。

扇風機はあるのですが、残念にもコンセントが抜けています。

彼らは『へたすると感電する』と恐怖を覚えています。

今はもういませんが、かつて・・・そう、東山さんの同期である錦織さん。

彼は人形であるにも関わらず焦げてしまったのである。

どれだけゆみこを脅かしたかは・・・計り知れない・・・。

「・・・あぢぃー。。」

「健・・・なんかかけて、、涼しくなるようなの。」

「えー、今やってんのかな?そんなの。一応夏だからもっとギャンギャンしたのしか・・・。」

「健くーん、お願いやぁ・・・暑いねん。僕さすがにこんなに太陽浴びんのいややわぁ・・・。」

「お、、おい、井ノ原さんっっ!!しっかり!!」

すでに倒れ気味の井ノ原さん。

「剛、早くそっち持って、押し入れの奥は涼しいはずだ!!」

「おっけー行くよ。」

「すいません。。」

「大丈夫ですか井ノ原さん。」

「けどさすがに水かぶるわけにはいかないっしょ。健と一緒で。」

♪〜♪〜〜♪〜〜

「お、健ナイス選曲。」

海が聞こえる。

そんな気分だった。

「なんか・・・いいよな。」

「そうだな。」

何がどういいのかはわかりません。

ただ、なんかいいんです。

この感じがいいんです。

今まで店のショーケースに飾られてたものや、自分の前をすどおりしていくのを何度も見ていたから。

だから・・・こうやって毎日を友達と過ごせるのが、うれしいんです。

 

 

「ただーいまぁー!」

「おかえりー!」

「ねぇお母さん、約束のもの、買ってきてくれた?」

「はいはい。ちゃんとすぐできるようにお父さんがセットしてくれましたからね。」

「わぁーい。」

 

 

「・・・でもあづい。気分は涼しくてもやっぱかわんねぇじゃん。。」

「ちくしょー、夏のばかぁー。」

ぶちん。。

「健切るなよー!!いくら愚痴ったからって。」

「しっ!!下が騒がしい。」

・・・。

「確かに。」

「もうそんな時間かよ。」

「ってことは、扇風機がつく!!いやっほーっ!」

ばたばたばた。

「お、帰ってきた!」

がちゃ。

・・・?

彼らの目はゆみこに釘付けです。

というよりも、彼女の持ちものに釘付けなのです。

「坂本くん、、あれ・・・何?」

唯一同じ定位置の彼らがひそひそ話を始めます。

「さぁ?」

「ひょっとして健の言ってたMDってやつかな?」

「そうかなぁ?」

そんな彼らにはお構いなしにゆみこはさっさと作業を始めます。

うぃーん。

「・・・動いた??」

「きゃぁ!すごいすごーいっ!!」

・・・何が?

「インターネットってどうやるんだろ?ねぇお父さーん。」

そう言って彼女は走って行きます。

うれしそうに・・・。

「いんたーねっと??」

「なにそれ??」

剛が箱から飛び出そうとするのを坂本が捕まえ首をふります。

「すぐに帰ってくるよゆみこ。」

ばたばたばた。

「・・・ありがと。」

 

 

「あのね、これねこれね・・・。」

ゆみことお父さんとのやりとりが続きます。

うれしそうなゆみこ。

5人は不安になります。

自分がここに来た時と同じ表情。

ゆみこの・・・ほしいもの。

ゆみこを・・・幸せにするもの・・・。

「・・・あれ・・・なんだよ・・・。」

「剛、焼きもちか?」

「んなんじゃねぇよ。」

んなんじゃ・・・ねぇよ・・・。

そんなんじゃ・・・ねんだよ・・・。

 

 

「ゆみこー、お父さーんごはんよー。。」

「はぁーい。」

ばたばたばた。

・・・。

みんなはそのものに興味深々だった。

そして、恐る恐ると近づいていく坂本と剛。

・・・。

なんだか・・・くろいノートみたいなんだけど・・・。

かつんかつん。。

剛がつついてみる。

ばたんっ。。

びくっっっ。。。。。。

そのノートのようなものがイキナリ開きます。

あまりの突然の出来事にちょっとびっくり。。

「なに?」

「・・・。」

突然の彼の言葉に2人はびっくりしています。

「・・・なに?」

「あんたこそ、、誰?」

「僕?僕はぱそこん。」

「・・・ぱそこん??」

「君達こそ誰?」

「・・・坂本。」

「・・・剛。」

「なんのよう?」

「そっちこそなんの用だよ?」

「なにって言われても、ただここに来ただけで。。」

「ぱそこんって、どんなことすんの?」

「どんなことって言われてもなぁ・・・。」

「例えば?あ、ほら、さっき言ってたいんたーねっとってのはなんだ?」

「ああ、インターネットね。これね、すごくてね、世界中からの情報集めたり、それから同じ趣味の人と出会ったり、手紙より早くメールって言うので会話できたり・・・」

よくわからん・・・。

「あのさ・・音楽とか、、流せんのか?あんた機械だろ?」

「ああ、もちろん流せるよ。他にもいろいろな情報やテレビだって見ることできるし・・・」

「出て行けよ。」

「そう言われても・・・。」

「出てってくれよ!!」

「剛!」

「・・・ごめん。」

「なんなんだよ、君達は。」

「あ、気ぃ悪くしたら謝るよ。けど、こいつあんまり責めないでやってくれないか?」

「別にいいけど。」

「なぁなぁぱそこんさん?」

「なんだい?」

3人の様子を伺っていた窓辺の准一が声をかけます。

「あんさんもここに来たんやったら僕らの友達になろうや。」

「准一何言って・・・」

「何言ってるんだ。」

剛の言葉をさえぎるようにぱそこんが言います。

「なにって、別に、僕はぱそこんさんと仲ようなりたいからゆうてんねんけど。」

「バカにするな。君達と一緒にしないでくれ。僕は優秀なんだ。君達のような知性の低そうなやつに友達呼ばわりされたくないね。」

「んだとぉっっ!!」

「剛、、落ちつけって。。」

坂本は殴りかかろうとする剛を必死で止めようとします。

「落ちついてられっかって、誰がバカだって?ああ??俺はいいよ、確かにバカだから。けどなぁ、他のやつらまで一緒にすんなよ!!」

「所詮、君達は人形であって、そして彼もただの花だ。考える力なんてどこにあるってゆうんだ?」

「坂本くんと准一バカにすんなっ!!」

「剛!!」

一瞬の坂本の一言で辺りが一斉に静まる感じでした。

「・・・ないのかよ?」

「なんだ?」

「坂本くんは悔しくねぇのかよ!!あんたここで1番えらいじゃねぇかよ。誰のこともわかってて、みんなちゃんと助けてくれんのに、バカって言われて悔しくねぇのかよっっ!!」

坂本は何も答えませんでした。

「ちくしょー!!」

剛は坂本の手を振り切り博を睨み、そして、准一と健の前を通りすぎ箱の中に帰って行きます。

「ごめんな。」

坂本はぱそこんにこう言います。

「あんたが謝ることないよ。」

「あいつの責任は俺の責任だ。」

「そう。同じ人形だから?」

「そうじゃないよ。・・・友達だから。」

「友達だから・・・ねぇ。」

「あいつのこと、悪いやつだなんて思わないでくれよ。あれで結構優しいんだ。」

 

 

「坂本くんと准一バカにすんなっ!!」

 

 


「・・・わかる。」

「そっか。」

「・・・。」

「けどな、例えあんたの頭がここで1番よくても俺達には関係ない。誰が1番で誰がバカでもないんだ。」

「あんたここで1番えらいんだろ?もっと威張ればいいじゃないか。」

「えらいわけじゃない。1番長いだけなんだ、ここにいるのが。みんなの事よく知ってるからってえらくもなにもない。あれだけ素直に人かばえるあいつの方がえらいよ。」

「そうか?」

「それに、准一もえらい。」

ぱそこんは准一の方を見る。

「初めてここに来たやつはどきどきもんなんだ。それは新米のあいつが1番よく知ってる。ああいう言い方だったけど、うれしかったんだよ、新しく入ってくるやつが。」

「・・・。」

「あいつにとっての幸せは友達が増えることなんだ。みんなで同じバカやってここで暮らすのが好きなだけなんだよ。」

「じゃぁ僕とは合わないね。」

「あんたはゆみこに好かれてる。そう言いたいのか?」

「そうだ。僕がゆみこさんに好かれている限りここから出て行くことはない。ごみにはならないんだ。そのくらい、君もわかってるだろ?」

「ああ、わかってるさ。けどな、あいつに好かれるのもいいけど、みんなでバカやるのも楽しいぜ?」

「そんなことないね。」

「まっ、俺達は俺達なりの生活作ってきたんだ。これからもそれを変えることはない。気にくわなくても口出すなよ。」

「当たり前だ。」

「それから・・・。」

「何?」

「気が向いたらあいつらとも遊んでやってよ、あんた頭いいんだろ?お前が言う『バカな奴等』の指導してやってくれよ。」

「何言ってんの?」

ぱそこんの言葉には気にせず坂本が続ける。

「それからもう1つ。」

「なに?」

「ここに居る限り俺達は家族だ。だから、なんかあればすぐに助けにいく。剛だってそれくらいわかってるよ。」

「助けなんてこの僕に限って必要ないね。」

「バカやってんのに入りたくなったらいつでも来いよ。」

「・・・。」

 

 

「なんで?」

「あ?」

「なんであんなやつに優しくするんだよ、つけあがるだけじゃねぇかよ。坂本さんよう。」

「そうじゃない。」

「だったらなんで?」

「あいつの目はいい目してる。優しい目をしてる、だから話しただけだ。」

「話したところでなんになんだよ。」

「さぁな。けどまっ、あとからこっちのやることに文句言われるよりはいいでしょ。」

「そういうもん?」

「そういうもん。」

「そうなのかなぁ?」

「お前後でちゃんと謝っとけよ。」

「やだね。」

「お前なぁ・・・。」

「おやすみ。」

「ごう!!・・・たく。」

奥に居た井ノ原さんがこっちを見てる。

大丈夫ですよ。

そんな目だった。

そうですか?

 

 

井ノ原さんの予言通りに剛は夜のみんなが寝静まった頃に動き出す。

そして、机の方に向かってそっと歩き出す。

こんこん。。

ばたんっっ!!

「しぃっっ。」

「なんだ、君か。」

剛はちゃんと坂本との約束を守りに来ました。

「あのさ・・・」

言い始めようとするけど博はそっぽ向いてます。

当たり前のことかもしれません。

「昼間は・・・ごめんなさい。」

突然の出来事にぱそこんはびっくり。

「いきなり出て行けなんて言って、ごめん。」

「・・・。」

「俺さ、あんた来て不安になったんだ。」

「何が?」

「あんた確かにえらいよ。えらいと思う。けど健が・・あのラジカセ。あいつがかわいそうになったんだよ。」

「どうして?」

ぱそこんというのは実に高性能な機械だ。

だとしたら、俺達の前から消えるやつがいる。

健だった。

「健はなんとも思ってないかもしれないけど、健よりあんたの方が役に立ったらこっからあいつ、居なくなるんだよ。それがやだった。」

「別に、関係ないじゃん。人の事気にする暇があったら自分の心配すればいい。」

「・・・確かに、そうかもしれないけど、でも、俺にとって健は、大事な友達だから。」

「友達・・・ねぇ。」

「そう。友達。」

「友達友達って言っても、いつか誰かがいなくなる。僕は買われていく友達をたくさん見てきた。」

「俺達だっていつかは捨てられる。そのくらいみんなわかってるさ。」

「じゃぁなんで?」

「あんたは・・・退屈じゃねぇのか?」

「何言って・・」

「どうせ捨てられちまうならさ、その日までみんなで楽しくやりたくねぇ?」

「・・・。」

「どうせだったら俺は楽しい方を選ぶ。ずっとゆみこに遊ばれて、だけど遊ばれない日は暇で暇でしょうがない。それに、誰もいないのに動けないなんてつまんねぇじゃん。みんな生きてるんだから、楽しく一緒にバカやりゃいいじゃん。」

「だけど・・」

「捨てられる日に・・・楽しかったって思えたら・・・最高じゃん。」

「・・・僕も・・・できるかな?みんなと一緒にバカやること。」

「ったりめぇじゃん。できるよ。みんなで騒ごうよ。」

 

 

「おかえり。」

「起きてたんだ。」

「そんなこったろうと思ったかんな。ま、1番先に気がついたのは井ノ原さんだけど。」

「俺さ、人形でいる意味がわかんなかった。だけど・・・」

「だけど?」

「坂本さんと井ノ原さんのおかげだよ。」

「俺はなんもしてねぇよ。井ノ原さんのおかげだろ?」

「そんなことありませんよ。」

「ごめん、起こしちゃった。」

「でもほんと、よく言えたな。お前も成長したよ。」

「うけうりだけどね。」

 

 

次の日、ぱそこんという名前から、彼は「博」になりました。

友達の・・・証です。

 

つづく。

博さん・・こんな役でごめんよ。ってか、これ書きながら「Vの炎」の博さん思い出しました(笑)特にこれと言って後書きもないので、うちにある不思議物シリーズでもやろうかと(笑)
その1 はりせん(サビから入る歌もあるんですよ(井ノ原談)うたばんより)
うちの部屋での1番謎なものです。だからサビなのです(笑)というのも、中2の時に吉本新喜劇を見に行きましてこの時に買ったものです。特に物欲もなかった年頃(爆)ってゆうか、そこまでしてほしいものもなかったのよ。しかーし、これは実に興味をひいた。だが、値段は高く「小さいのでいいよ」って言ったのに、両親は「いいよ」と言ってくれて買ってくれました。これ買って知ったのは、あんだけ「ばしーん」ゆうて鳴るはりせん。音は確かにすごいが実は全然痛くない。そりゃまぁそうですな。