TOYS
〜ずっと一緒にいたいから〜

「ああ、やっぱええなぁ、新しいのんは。」

今日はお天気です。太陽の光がまぶしいです。

そして、窓辺に置かれる彼は新しい植木鉢になっています。

「井ノ原さん、あれいいんっすかねぇ。」

おもちゃ箱の中の2人が知恵袋の井ノ原にこそこそ話。

「まぁ・・・いいんじゃないですか?」

「そうなのかぁ・・・。けど前より丈夫そうなのがむかつく。まだたいしてでかくもなってねぇのに。ばかじゃんゆみこのかあちゃん。」

「お、負け惜しみか?剛。」

「なっ、なんで俺が、、くっだらねぇ。」

ぷいっ、とそっぽをむいた彼に2人はくすくす笑う。

「わかりやすいな、剛は。」

「そうですな。でも坂本さん、准一大丈夫ですかね?」

「なにが??」

その言葉に剛もちょっと耳を傾ける。

「あの植木鉢、実は、確か重いんです。そして、落ちたら割れるんです。」

「割れるぅ??」

「わぁー、坂本さん、、大声出しちゃだめですよ、准一に気付かれます!!」

しかし、のほほん気分の准一にとっては聞こえてないも当然です。

「大丈夫でしたか。実は以前・・・といっても私がまだ新米の時のことですが、お名前はちょっと忘れてしまったんですけど、地震かなにかで揺れ落ちてしまったんです。」

「ええっっ!!」

「剛、声がおっきぃ!!」

「あ、ごめん。。」

「ん?どないしたん??」

やばい。。

「なんでもねぇよ、きにすんな。。」

「そぉ?」

ふぅー・・・。

「で?どうなったの?」

「一応命はとりとめたもののちょっと根っこを切ってしまいまして・・・。」

「でも大丈夫なんでしょ?」

「本人はショックそうでしたが・・・。」

「・・・。」

「あの人はお強い人でした。私が大丈夫か聞いてもいつも笑顔で答えてくれるんです。」

「ああ、井ノ原さん泣かないで。。」

「すいません、ちょっと思い出してしまいまして。。」

「じゃぁ地震来たら准一危ねぇんじゃないんですか??」

「その大きさにもよりますが・・・。」

 

 
「なぁ准一。」

のほほんと太陽の下にいた准一に机の上から剛が話しかけます。彼に1番近い場所で。

「んー?なんや剛くん。」

「植木鉢がおっきくなるってのはうれしいこのなのか?」

「お、剛くんが興味もってくれたー!」

「んなんじゃねぇよ!!」

「なんやのん、つまらんなぁ。」

「で、どうなのよ?」

「うーん、正直よくわからへんけど、かまってもらってるってことはうれしいやん。」

「そういうもんなの?」

「そういうもんちゃう?今回のんちょっと重たいけどがんばるわ。」

「落ちたらどうすんだよ?」

「なにゆうてんねん、落ちるわけないやん。」

軽く笑いながら言う准一にむっとした。

「お前は落ちた事ないからんなことが言えんだよ!!」

剛は知ってたから。いつか机の上にだけど東山さんが落ちたんだ。

そしたら、葉っぱが1つ落ちたんだよ。

痛そうだったんだよ。

「なんやねん、いきなり大声だして!!」

その声に他のものはみんな目をむけます。

「落ちたらなぁ、ちょっとやそっとじゃすまされねんだよ!!そんなのん気にしてる場合じゃねぇだろ!!」

「なっ、なんやねん!!僕が幸せやゆうてんねんからそれでええやんか!!」

「そういうわけにはいかねんだよ!!」

「あー、わかった、剛くん僕おらんかったら寂しいんやろ!!それともうらやましいんか?僕がゆみこにかまってもらってるから!」

「んなわけねぇだろ、たとえお前がこっから落ちたって絶対助けてやんねぇかんな!!」

「ああ、助けてもらわんで結構!落ちることなんてあるわけあらへんがな。」

「ふん、言ってろ!!お前なんかすぐに落ちてこっからおさらばだ!!」

「なんやねん、剛くんのあほーっっ!!」

「准一のばーかっっ!!」

つーんとなって定位置に戻る剛の行動に准一が気付くことはなかった。

彼はよくわけのわからない行動をする。けど、今日は、今日だけは違ってた。

だけど、本当にわからない。なんで?
 

 

その夜剛にとっては心配でなりませんでした。

「ごぉー?どしたの??」

彼は部屋の真ん中の方に配置されているので周りのことはなんでもわかります。

「別に・・・。」

「なんかあった?」

「なんでもねぇよ。」

これ以上つっこんじゃいけないと思った健は音楽を流しはじめました。

「なにやってんの?」

「いや、ちょっとでもなんか役にたてばって・・・。」

「んなことしたら、ゆみこに気付かれんじゃん。」

「大丈夫だよ、今はテレビの時間だよ、まだ戻ってこないよ。」

「なんかの拍子で帰ってくっかもしんねぇじゃん。」

「・・・剛どうしちゃったの?今日やっぱ変だよ。」

それからは黙ったままだった。

ただ、健の流すちょっとポップな曲が部屋にかすかな音で響き渡っていた。

「・・・ありがとな・・・。」

健は剛の性格を知っている。

不器用で、でも優しくて。そして、お礼は必ず言ってくれる。

「どういたしまして。」

「けんくーん、その曲ええ曲やったでぇ〜!」

「ありがと。」

剛は准一には顔を合わせなかった。

怖かったから。

 

 

「剛。」

「井ノ原さん。」

「どうしました?元気がありませんよ。」

「そんなことないっすよ。」

「・・・気にしていらっしゃるんですか?准一のこと。」

「・・・。」

「大丈夫ですよ、めったに地震なんてきませんから。」

「別に、俺は准一のことなんか・・・。」

「剛は優しい。ほんとに優しい。いい子だ。」

「・・・ばかにしてるんですか?」

「そんなことないよ。剛はほんとにいい子だ。でも、自分まで犠牲にしようなんて考えないでください。あなたには強い味方がたくさんいるんです。」

「・・・?」

「ここにいるみんなは剛の味方ですよ。健も、坂本さんも、准一も、もちろん私も。みんな味方です。しょいこまないでください。」

「・・・うん。」

「准一にもしものことがあっても、剛だけが助けるんじゃなくて、みんなで助けましょうよ。助けあっていきましょうよ!」

「うん。」

「意地ばっかはってても、なにも始まりませんよ。」

「・・・。」

「ちゃんと謝るんですよ。」

「・・・。」

「ごぉっっ!!」

「・・・。」

・・・やだとは言えないけど、うんとも言えない。

勢いとはいえどもホントにやだった。

悔しかった。

かまってもらえないのは、事実だったから。

 

 

「あー・・・。」

あれから数日が過ぎました。

相変わらず剛と准一は目を合わそうともしません。

3人はもうすっかり飽きれ顔。

「准一どしたのー?お水なら最近よくもらってんじゃん。」

准一に1番定位置の近い健が声をかけます。

「ここな、太陽の光が当たらへんねん。」

准一は窓辺から移動して机の上に行ってしまいました。

「地震がある前にぐしょぐしょで疲れてまうがな。」

「でもそこに居る限り移動できないよねぇ。ゆみこちゃん気がつかないかなぁ?」

「気ぃつかへんやろ。帰ってくるころは夕日が当たってんねん。けど僕が欲しいんは昼の太陽やねん。。」

「でも無理だよ。」

「僕に足があったらなぁ。」

「でも気付かれちゃうよ、あんな高いとこ戻ったら。」

「ちゃうねん、あっこがええねんけどな、こっからもうちょっと行ったあの机の角あるやん?あっこは少しやねんけど日が差すねん。」

「そうなの??じゃぁ坂本さんと剛に手伝ってもらえばいいじゃん。」

「いやや、剛くんはいやや。坂本さんには迷惑かけちゃうし、あかん。そんなんあかんで。。」

 

 

「・・・だってよ。どうする?剛。」

「なんで俺に聞くんだよ。行くわけねぇじゃん。あんなやつのことなんか。」

ふぅー・・・。

「しゃーねーなぁもう。井ノ原さん、協力願えますか?」

「私で力になれることがあれば、なんなりと。。」

「井ノ原さん!!ちょっと坂本くんなにゆってんだよ、井ノ原さんに頼んでもしものことがあったら・・・」

「お前は行かないんだろ?」

「・・・。」

2人はニヤニヤ笑ってます。

「はめてんのかよ。ちっくしょー、俺はぜってぇ行かねぇかんなっ!!」

「あーあ。」

 

 
「坂本くん、もうちょっと右。。」

「これ重いんだってば・・・。」

「ごめんなぁー(><)」

「前の方が軽そうだったよもぉ・・・。」

「あーストップストップ。。」

健の適確な指示により、きっと最短距離であっただろう。

「あー・・・久しぶりの太陽はええなぁー・・・。」

「よかったじゃん、准一。。」

「ほんまありがとうな3人とも感謝感謝やで。これで光合成が楽になる。」

「でもやっぱ元の位置に戻しとかなきゃいけねぇよなぁ・・・。」

「私もういやですよ。。」

「・・・ねぇねぇ、もうすぐゆみこちゃん帰ってくる時間なんだけど・・・。」

「マジで?」

「そんなはやいんかぁ・・・。いつもおらんのに、たまにはゆっくりしてきてもええやんかぁ。。僕このままでええわ。」

「そういうわけにはいかねんだよ、准一。井ノ原さん、しっかりしてください、もう少しがんばってくださいよ。」

「はいはい。。」

「んじゃぁまず右ねー。」

「せーのっ・・・。」

そのとき事件が起きました。

井ノ原さんが足を崩してバランスが悪くなり准一の植木鉢は机の角から落ちて行きます。

「うわっっ、じゅんいちっっっ!!」

坂本さんが叫びますが准一は机の横を通過します。

がしゃんっっ。。

・・・そんな音が聞こえるはずでした。

しかしなぜか『ごんっっ。』という、なんともいいがたい音が鳴り響きます。

「ああ、私のせいで・・ああ、なんてことをしてしまったんだ・・・。」

准一は気を失ったままです。

「准一っっ!!」

上から坂本さんが叫びます。

その言葉に反応して目が開きます。

「・・・。」

彼が下を見ると確かに茶色の植木鉢はヒビ1つありません。

「・・・あら?」

准一はゆっくりと動こうとしますがなにやらバランスを崩し横に倒れてしまいました。

「ご・・ごうくん??」

確かに彼はそこにいた。

少し植木鉢の底の穴から出る水でしめってしまった人形。

「ご、ごうくん、しっかりしてやごうくんっっ!!」

動けない准一に変わって降りてきたのは坂本さんでした。

「おい剛!!剛!!」

 

 

夢を見た。

准一が・・・割れた・・・。

「気がついたか?」

目の前にあったのは坂本と井ノ原でした。

「あれ、今昼じゃなかったっけ?」

すっかり窓から見える景色が変わって暗くなっています。

「よくやったな、剛。」

「なんのこと??あ、、俺そういや准一の下敷きだっけ?・・・准一は?もしかして・・・。」

がしゃんっっ。。

そんな夢を今さっき見たところだったから。

「大丈夫ですよ。彼は無事です。」

「・・・よかった・・・。」

彼はまた長い眠りにつきます。

目がさめた時にはきっと、相変わらずな剛と准一の会話が聞けるでしょう。

 

 

彼らはもう家族です。

同じ仲間同士が集まってそして、誰1人掛けることなくして生きていく。

お互いに助け合い、ケンカさえも楽しんで生きていく。

そんな関係なのです。


つづく。

・・・まだ長野さん出ません(笑)タイミングがないです(爆)キャラ的には決まってるんですけど、なぜか出せないままなのです。。ああ、だけど人助けの剛さん・・・素敵(><)結局はそれを書きたかったのです。用は素敵な剛さん。あれから帰ってきたゆみこは准一が落ちてることに気がつき、きっとこの場所はやばいんだ!と何かを勘違いし(笑)もとの位置に戻るということになってます。そうそう、何気に聞かれたのですが、なぜゆみこ?ってことの疑問にお答えしますと、名前を決めるのが苦手な私。演劇部最後の舞台をふんだのがこの小2の「弓子」だったのです。もちろん姉もいたり(爆)で「ゆみこ」なのです。深い意味はないです。いやぁ、かよこにはしたくなかったんで(笑)当然ですけどね・・・。さぁーて、次ことは長野さんかなぁ・・・?