TOYS
〜ずっと一緒に〜

 

「ゆみこ〜ご飯よ〜!!」

「はぁーい、今行くー!!」

ゆみこは遊んでいたおもちゃ達を箱の中にしまう。

「また遊ぼうね。」

ぱたぱた。

スリッパの音が消えて行く。

そして、箱のふたが開く。

「ってぇー、ゆみこのやろーおもいっきり投げやがんの。」

「おい、剛、お前使われるだけいいじゃん。俺こっから出られねぇよ。」

「うひゃひゃ、坂本くんももう年だかんね。」

「剛、それシャレになんない。」

おもちゃ箱から現れた人形の剛。彼の容姿はいたって普通の犬のぬいぐるみ。

そして、それを1周り大きくしたのが昌行。

「今はミニサイズが流行ってんだよ。」

「まじで??」

「たぶん。」

「ごおー、坂本くーん、元気ぃ??」

「健うるせぇーっっ!!」

「お前もっと静かにしろよ、ゆみことかに聞こえんだろっっ!!」

「あっ、ごめんねぇー・・・。」

健と名乗る彼はCDラジカセである。

『僕いつまでここにいられるのかなぁ?』それが彼の口癖だった。

その原因はラジオにあった。なぜなら、ラジオの情報は1早い。

そして、それを流すのが彼こそ健の仕事。

「僕いつまで・・・。」

「また始まったよ・・・。」

「剛、今度はホントなんだってば!!」

「なんでだ?」

「今度ね、新製品で『MD』ってのが出るの。」

「MD??」

外の世界を知らない彼らにとってはそれはどんなのもなのかさえもわからない。

「なにそれ??」

「うーん、よくわかんないんだけどね、僕より高性能なラジカセなの。」

「ゆみこがそっちにひかれたら終わりってことか。」

「そんな事言わないでよっっ!!」

「うるせぇっっ!!」

普段はおとなしい彼も声は自由自在と言っていいほど操ることができ、高音はほんとにうるさい。

「ああ、ごめんね、ごめんねっ。。」

そんなこんなな毎日です。

「いのっちぃ〜?元気っ??」

「ちょっと起こしてくださいよ。。」

「なにやってんだよ、年よりくせぇなぁもぉ・・・。」

「ああ、すいません、なんせもう4年目ですから。」

彼は一般的に言うとすごろくである。

すごろくというのは、おもちゃ達にとってヒーロー的な存在であって、みんなに遊んでもらえる。

「けどそろそろヤバイね。」

「手の皮がむけちゃいましてねぇ・・・。」

「・・・手ってどこだよ・・・。」

「いやぁ、はしっこですよ坂本さん。。」

「・・・はぁ・・・。」

「どうした?准一。。」

「今日は天気が曇ってんねん。あかんわもぉ・・・。ゆみこちゃん水くれへんし・・・。」

「お前ほんっとよく食うよなぁ、水って昨日の晩もらったばっかじゃねぇかよ!!」

「んなことあれへん、あれはもらったうちにはいらへんのやっ!!」

「何言ってんだよ、前のやつはっ・・・。」

「前のやつはなんやねん!!」

「・・・いや、、いい。。」

「なんやねん気になるなぁ。。」

横ではくすくす坂本が笑ってる。

「前のやつはな全然水なんてほしがんなかったんだよ。」

「坂本くん・・・。」

「そいつと僕はちゃうねん、作りとかがやな・・・。」

「あー、そうだな、前のやつはもっと綺麗で可憐な花咲かせてたしな。」

「なっっ、なにゆうねん健くん、僕はまだ芽が出たてやねん、もうすぐしたらなぁ、りーっぱな花咲かせたんねん、楽しみにしててや!!」

「はいはい。」

「そのためにはなぁっっ!!」

「水が必要なんだろ?」

「ちゃう、それだけとちゃう!!水も大事や、けどな、太陽さんという素晴らしい方がおるからこそ僕等が生きていけんねん!!わかるか??」

・・・わっかんねぇよ。

「な、みんなわかってへんなぁもう・・・。」

「そういや准一、ゆみこのかあちゃんがお前の土変えるって行ってたぞ。」

「おお!!やっと引越しか?」

「土変えるだけだよ、きっと。。」

「そうか、せっかく慣れて来たのになぁ、この土も。けど、どうせ替えるんやったらもっとこうでっかい植木鉢にしてほしいなぁ。。」

「ばーか、植木鉢はなぁ、自分にあった大きさじゃないといけないんですよ、むやみにおっきいのにしたらいけませんよ。」

「な、なんでですか井ノ原さんっ。。」

「お、出た!井ノ原さんの知恵袋!!」

「大体よく考えてみてくださいよ、そんなでっかい鉢もってたら目標がでかすぎて大きくなれないじゃないですか。」

・・・なんのこっちゃ?

「おお!!そうなんっすかぁ!!いやぁ、勉強になりますわぁ!!」

「っつったって准一が替えるわけじゃねぇじゃん、決めるのはかあちゃんのことだよ!!」

「・・・そうやんなぁ・・・。どうか土変えだけでありますように。。」

今頃ではあるが一応紹介しておこう。

准一は窓辺に置かれる花だ。

まだ最近来たばっかりの新米。

しかし、何を間違ったのかしゃべり方はおかしいのだ。

「やべっっ、ゆみこが帰ってきた!!」

ばたばたばた。。

がちゃ。

さっきと変わらぬ風景がゆみこの目の前にある。

「えっと・・・教科書どこだっけ・・・?」

がちゃ。

「ふぅー・・・。」

「あれ、なにやってんのいのっち?」

「危ない危ない。」

彼は年のせいかちょっと出遅れてしまって、まだ定位置にはついていなかったのだ。

「ほんとにあぶねぇよ、ったく、だから無理すんなってあれほどっっ!!」

がちゃ。。

「下敷き忘れちゃったよー。。」

がちゃ。。

「・・・びっくりさせんなよ。」

「大丈夫ですよ剛、彼女はそこまで注意力のある人じゃないんです。」

「なんかそれ失礼だけどね。」

「けどまっ、うちらにとってはありがたいことでしょう!」

「だね。」

 

 

そんなこんなで、おもちゃ達は毎日、ほんとは戦いです。

彼らはちゃんと知っているからです。

自分はおもちゃであって、造られたものであって、そして、いつかは枯れるものであるから。

いつまでここに居られるか。

ほんとに怖い、戦いなのです。

そんな辛い経験を、1番多くしてるのが坂本と井ノ原でした。

「ねぇ坂本くん。」

「なんだ?」

「ごめんね。」

「・・・なんで?」

「さっきは、ほんとごめん。もう絶対言わないから。」

「東山さんのことか?」

「・・・。」

彼は何も言わずに頷く。

「気にすんなよ、あの人は後悔なんかしちゃいねぇよ。」

「そうかな?」

「そうだよ、お前はまだ新米だったからなあの時。」

「だけど、ごめん。」

彼も剛の頭をくしゃくしゃして笑ってみる。

 

 

「なぁ坂本、花にはな、いつか枯れる時が来るんだ。」

「・・・はい。」

「俺ももうあと2,3日したら、この花ともおさらばだ。」

「そんなこと・・・。」

「そうなんだよ。ゆみこは十分と言っていいほど俺に『綺麗だ』と言った。だから、あいつが幸せならそれでいい。」

「・・・。」

「もし俺が居なくなって、次に新しいやつが来たら言ってくれ。綺麗な花を咲かせろよって。」

「・・・はい。」

「何泣いてんだよ。」

「・・・わ・・わ・・・か・りません・・・。」

あの人はなんでも知ってた。

そして、涙の止まらない俺の頭をくしゃくしゃしてくれる。すっかり細くなってしまった葉で。

楽しかったんだよ、ほんとに。

あんまりにも高いところに窓があるから外が見えないんだ。

空も少ししか見えないんだ。

そんな時に彼がいてくれた。

兄貴のような存在。

だけど・・・。

 

 

「・・ん・・・くん・・・坂本くん・・坂本くん!!」

「あ、、剛か。。」

「大丈夫??うなされてた。」

「・・・そっか。」

「・・・俺も・・・。」

「ん?」

「俺も忘れらんないよ、東山さんのことは。」

「そうだな。」

 

 

夜になるとあたりは真っ暗になり、そして、やがて太陽が昇る。

そんな、平和な、毎日だった。

誰1人離れることがなく、捨てられることなく、そして必要とされたものばかりが集まった場所。

仲良くなってしまった以上、家族と言える存在になってしまったこと以上、もう後戻りわできない。

だけど、それは彼らにとってしあわせなことかもしれない。

同じ宿命をもった彼らが共にすごして行くのだから。

1人よりも、心強いかもしれない。

少し古いもの同士が集まったこの部屋。

飼い主のゆみこはきっと新しいものに興味がないんだ。

そう思っていた、今日この頃だった。


 

つづく。

映画「TOY STORY」を見て多いに感動し、そして次の日に私は部屋の掃除をしました。大晦日よりも大掛かりなことかもしれません。だけど、ちょっとだけ懐かしいおもちゃをみつけました。押し入れにしまいこんでしまったものがたくさん出てきました。正直言うといらないものばかりです。だけど、捨てられませんでした。また同じ幅をとるスペースで、約10個のさまざまな子供の時使ったものでした。ちょっとこれは捨てられない。もちろん捨てることは大事です。部屋を新しくしたい、そんなことはよくわかります。だけど、私はなぜかそれらを見て涙が出ました。理由はわかりません。それでも涙が出たんです。きっと、捨てられないものばかり。そう思ったから。だからきっとおもちゃ達はこんな気持ちなんだろうなと思って書きました。つづくかどうかはわかんないことお話。けど長野さんが出てないとこを見ると続くでしょう、きっと。そうそう、このお話のテーマは「共存」です。簡単に言うと「みんな生きている」そして、「みんなで生きている」ということです。