TOYS
〜俺ってやつは・・・誰なんだろう?〜

・・・疲れた・・・。

「ごーくーん、まだぁ??」

「るせぇよっ、ったく、人使いの荒い奴。」

「しゃーないやろぉ?僕は動かれへんのぉっ!!」

「はいはい。」

くすくす。

「ちょっとぉ、坂本さぁん、笑ってるんだったら手伝ってくださいよぉ!」

アイツがいなくなって、もうどれくらいたったろうか?

なんだか、結構たった気がする。

けど、それが昨日の事のような気もする。

どっちだろう?

どっちが本当だろう?

それは、だんだん寒くなっていく季節が物語っていた。

「つかれた・・・。」

「ありがとーごーくーん。」

相変わらずなご主人のゆみこは、また准一の水遣りを忘れているようだ。

「ゆみこのばーかっっ。」

いるはずのない主人の名を叫ぶ。

「もー、忘れんといたってぇな。僕そんなに存在感ないんかいもぉ。」

誰かが口にすると思われた言葉は、あの日以来口にした者はいない。

いつか・・健とは違う誰かが、アイツの役割を果たしに来るんじゃないか・・・って。

その日が来るまでは、ここは彼の居場所。

もちろん、代わりが来ても。

健とは違う誰かでも。

ちゃんと一緒に仲間になるつもり。

そして・・・

誰もが思ってること。

彼等の中に、必ず健の居場所はあった。

それは、暗黙の了解。

 

 

「さぶっ。もう冬かいな。いややなぁ。寒いんは。」

「なぁなぁ知ってるか准一?」

「なにをやー?」

ごー。というストップの声が今にも出そうな博をバックに剛が准一に、いたずらっこくつめよってくる。

「霜って知ってる?」

「し・・も?」

「そ、し・も。」

「・・・どうせ博に教えてもらってんやろ?剛くんがそんなん知ってるわけないもん。」

「うるせぇよっっ!」

「ひろしぃー、なにそれ?」

あちゃー・・・やっちゃったよ。

そんな表情の博にかまうことなく准一は尋ねる。

「あ・・のね・・准一・・・。」

「お前の天敵。」

「・・・そら剛くんやろ?」

ばしっ。

「ったぁーっ。。なにすんねん。」

「つまんねぇこと言ってんじゃねぇよ。」

つまんねぇことと思ってるのは本人ばかり。

周りはみんな大笑い。

「なんだよ、坂本さん、井ノ原さんまで・・・もぉ・・・。」

「天敵ってどゆこと?」

「・・・どうゆうこと博さん?」

「剛くんが説明するんちゃうんけ?」

「んー、なんかよくわかんなかったから博さんにまかす。」

なんやそら。

「えっとねぇ、なんて言ったらいいのかわかんないんだけど、葉っぱになんか水みたいなのがつくの。気温の変化で・・・。」

「ふーん、なんや難しいなぁ。でもなんで天敵なん?」

「それはね・・・」

そこから先は・・言えなかった。

「んー?なんやのん?」

「あ、だから・・気をつけてってこと。」

「ふーん。でも部屋ん中におったら大丈夫やろ?」

「大丈夫だけど、准一窓近いから気をつけてね。」

「おお、わかったわ。」

 

 

「剛・・ちょっと。」

「なに?」

みんなが寝静まったころ、准一に背を向けて博は剛を呼んだ。

「昼間のことなんだけど。」

「うん。・・あ、霜ってやつ?」

「そう。」

「それがどうかした?」

「んー、僕もよくわかんないんだけど、凍っちゃうとか・・ないよね・・なんて。」

「えっ。。准一凍んの?」

「いや、それだけとは限らないけど、・・もう冬だし、僕達にとっては関係ないことかもしれないけど、准一にとっては・・ね。」

「・・・で、俺にどうしろと?」

「さぁ。」

思いっきり笑顔で答えられるもんだから、こっちだってわけわかんない。

「まぁ・・・気にしておいて。」

「は・・はぁ。」

 

 

「坂本さーん、起きてる?」

「ん?」

「あ、井ノ原さんも起きてんじゃーん。」

「・・・なに?」

「あら、お怒りモード?もしかして起こした?」

「・・・もしかしなくても起こした。」

「ごめん。」

「どした?」

「いや・・・別に用ってほどじゃないんだけど・・・」

「なら起こすなぁーっっ。」

と共に彼等のバトルが始まる。

「イタイイタイ。。もぉー。寒いんだったらはしゃぎたいって言えばいいのに。」

「もー、この時期はいやですねー。腰が痛くて痛くて・・・」

・・・腰ってどこだよ・・・?

剛と坂本が目を合わせる。

「で・・・なんだ、剛。」

「あのね。」

「って・・無視かいっ。」

うひょひょ。

「もー、井ノ原さん先に進まないじゃないですかぁ。」

「あはは、すいませんねー。」

「で・・・なんなんだ?」

「なんだっけ?」

「知るか。」

「そう、准一。」

「・・・准一ってさぁ、めんどくせぇな。」

「なんだそりゃ。」

「俺達ってさぁ、なんだかんだ言って寒いけど大丈夫なわけだろ?暑くたってどうだっていい。でも・・准一は違うんだな。」

「仕方ねぇよ。それが准一の宿命ってやつさ。」

「いつ咲くんだろ・・アイツ。」

おもちゃ箱のてっぺんから覗いてみる。

・・・。

「はっ、のん気に月なんか見てんじゃねぇよ。」

・・・。

「ちょっ、寝ないでくださいよー。退屈じゃないっすかぁ。もー。これだから年寄り組はぁ・・・」

「誰がだよっ。」

「なっ、起きてんならしゃべれよ2人ともっっ!!」

・・・。

「・・・同時に寝言なんか言うんじゃねぇよ・・ったく。」

 

 

めんどくせぇな。

ちゃんと生きるのって。

准一は水がなかったら死ぬわけだし。

肥料とかもよくなかったら死ぬわけだし。

光だろ?それからその霜ってやつにもやべーわけだし・・・。

あ・・れ??

俺がちゃんと死ぬって・・・一体いつなんだろう?

俺の死って・・・一体なんなんだろう?

あれ・・・俺・・・准一のコト・・うらやましい?

ちゃんと生と死があるから。

じゃぁ健の死はいつだったんだろう?

1つの部品が壊れた時?

ココロがなくなった時?

じゃぁココロってなに?

おれのココロって・・・なに?

俺にココロってあるの?

おれは一体・・・何者なんだろう?

坂本さんは何者?

俺と大きさ違うけど・・・ほとんど同じじゃん。

でもそれは見た目であって・・・中身は全然俺なんかと比べ物にならないくらいすごい。

井ノ原さんは何者?

あんだけボロボロになってんのに、元気じゃん。あの人が死ぬ時って・・一体いつなんだろう?

博さんは何者?

一番複雑そうなあの人。

うぃるすってやつにひっかかったらもう終わりだって言ってたっけ?

じゃぁ、それにひっかかる以外死はないのか?

准一は何者?

アイツは・・すげーデリケートで・・・でも俺達と一緒にしゃべってて・・じゃぁココロはあるのか?

あれ・・みんな持ってんのか?

健だって機械だった。

准一は植物であって、博さんも機械。

井ノ原さんは・・・なに?

坂本さんは・・・なに?

じゃぁ俺は一体・・ダレ?

俺達って全然違うのに、同じココロってやつを持っててそれでいて、一緒にこうやって笑ってる。

この時間は事実なんだよな?

信じていいんだよな?

でも人間は分類する。

俺や坂本さん、井ノ原さんまで一緒の「おもちゃ」だと言う。

俺達に1つ1つの価値って・・・あるんだろうか?

もしかしたら・・・俺じゃなくて・・同じ顔をした誰かでもよかったのか?

もしかして・・・中身がどうであったって・・人間にとってはどうだっていいのか?

俺がつっぱってたって。

坂本さんがリーダー的にすごくったって。

井ノ原さんが場を和ませてくれたって。

博さんの笑顔がホッとしたって。

准一がすげー楽しい奴だって。

健が優しいやつだって。

・・・どうだって・・・いいのか?

中身なんか・・なくったっていいのか?

人間って・・・そういうやつなのか?

だったら・・・俺は・・・誰なんだろう・・・?

わからない。

 

つづく。

うーん、イマイチよくわからん(笑)なんか書いてて自分の疑問を勝手にぶつけてみました。きっと明日になればまた疑問が増えてて書き足したくなるかもしれません。あ、もちろんそれはたぶんしませんが。前回白黒の結末と書きましたが、私的に予期しない結末を書こうとしてる自分に気がつきました(笑)一応当初の予定などを書きたいのですが、今後どうなるか・・どうするかうちもわからないんでこの話が完結しきった時にいろいろネタばらしをしようと思います。ってことはもうすぐ終わりなのかなぁ?この話?どうなのよ?自分??・・・わかんない(笑)