羽根
〜BEGINNING〜

第6話
〜不器用な性格。〜

じぃー・・・。

・・・。

じー・・・。

・・・。

じー・・・。

「・・・なに?」

その視線に気がついた昌行は、持ち主の准一に問い掛ける。

「ん?別に。。」

そういって視線をはずすものの、昌行が新聞を再度読んでみると、またもや視線に気付く。

せっかくの休日。

邪魔されちゃたまんない。

「だから・・なに?」

「な・・なんでもないっ。」

返す言葉にとげを感じたか大急ぎで逃げて行く。

「・・ったく。」

なんなんだよ。

今日は日曜日。

休日の日。

剛と健はバイトに出かけ、快彦は友達と遊びに出かけていた。

同様にかよこも友達の所へ行き、博は買い物に行っている。

家にいるのは昌行と准一だけ。

はぁー。

准一の視線が気になってか、昌行はため息1つ。

「じゅんいちー。」

「なに??」

台所に逃げた准一を呼び戻す。

「どっか行くか?」

「えっ?」

「もうすぐ昼だし・・なんか食いに行くか?」

「ラーメンっっ!」

ぱーっと明るくなる准一を見てちょっとホッとする。

「じゃぁ博が帰ってきたら3人で行くか。」

「うんっ。」

 

 

「昌兄、これも僕のチャーシューあげるわ。それともやしと・・・」

「お前自分で食えよ。」

「そうだよ、どしたの准一?」

「んー?別に。」

「なに?気に入らなかった?」

家の近くには街中でおいしいと言われるラーメン屋があった。

もちろん、この家でも大人気。

博が太鼓判を押しているという保証もついていた。

当然といえば当然だが、准一だって大好きなこの店。

そして安い。

この店のオーナーはこの家族のことをよく知っていた。

オープンしたての時は客はあまりいなくて、それでもおいしいと言って休日には必ずと言っていいほど誰かが現れたからだ。

「准ちゃーん、今日のはおいしくなかったかい?」

「そ、、そんなことないですよ、めっちゃうまいですっ!」

「そうかい。」

なんかある。

だけど、そのなにかがわからない兄ちゃんたち。

「じゃぁ・・もらっとくよ。」

「うん、いっぱい食べてな!」

准一の喜ぶ顔を見るのは悪くない。

けど・・いつもなんでもいっぱい食べる准一が気を使う。

なぜ?

渡したチャーシューなどを食べる昌行を見て、なんだかうれしそうな准一。

・・・なぜ?

 

 

「ごちそうさまでしたーっ!」

店を出た3人はのんびりと家に戻って行く。

「もう冬だね。」

「そうやなー。」

「今年もここにお世話にならねぇとな。」

冬は鍋に限る!というが、鍋というものは、この家にとって豪華なものとされている。

ので、寒い時には暖かいラーメンに限る!

そういうこと。

「准一、寒くて勉強できなかったら言えよ?うちストーブとか増やす金がないわけじゃないんだからな。」

「わかってるよ。」

「あ、でもさすがにエアコンはなしな。」

「わかってる。」

「エアコンなんて買ったらすごいお金かかりそうだよね。特に快彦と剛が。」

「あー、ありがちありがち。」

「つけるなら今で言うかよこと健のとこだけだね。」

「えー、リビングはぁ?」

「一番妥当な場所なんだけど、留守番が快彦と剛だったらどうすんの?すごいことになるよー。」

「あははは。」

 

 

帰って来てからも准一の視線はずっと昌行に釘付けだった。

もう慣れてしまったのか、しだいに何も言わなくなった。

「昌兄肩こってへん?もんだるわー。」

「あ・・ああ。」

「昌兄お腹空いてへん?」

「さっき食ったばっかじゃねぇか。」

「そっか。」

・・・なんなんだ?一体。

「准一ー、そんなに昌兄にかまってちゃ、昌兄も疲れちゃうよ。」

なりゆきをずっと見ていた博が声をかける。

「そっかー。」

しゅんとなった准一に声をかけたのは昌行。

「今日の晩御飯の手伝いでもしてやれよ。」

「うんっ!」

 

 

「今日はえらく昌兄につっかかるね。」

「迷惑かなぁ?」

ちょっとドキドキしたように言う准一はかわいらしかった。

「そんなことないよ。」

「そっか。」

1言1言ですぐに表情が変わるのが准一。

「なんかあった?」

「んー?」

キャベツをとんとんしながら准一が考える。

「別になんもないよー。」

「ふーん。」

コトコトと煮詰まっていくスープに目をやりながら、准一の顔を覗き込んでみる。

・・・楽しそうだな。

めずらしい。

料理があまり得意でない彼がなぜか今日は昌行の言うことをちゃんと聞く。

どうしてこんなに聞き分けがいいのか?

また成績が悪かったからゴマすりでもしているのか?

それとも他になにか悪い事をしたのか?

悪い方に悪い方に考えるのはいつも准一の事を見ている証拠。

テストの点が悪い時には必ず昌行の言う事をきく。

なにか悪い事をしたときもそうだ。

今日はなんなんだろう?

「なに?」

さすがにじっとみている博の視線に気付かないわけがない。

「え・・・?」

あ、、ヤバイ、吹き零れるっっ。

「博兄へんなのー。」

変なのはお前だと、どうして言えないものか。

「またなんかやったの?」

「またってなんやねん。」

「成績がよくなかったとか、悪い事しちゃったとか。」

「んなことないって。なんでそうなんねんっ。」

「じゃぁ・・今日はなんでそんなに聞き分けがいいの?」

んー。

悩んでいる准一を見たのは、今日でもう5回くらいみた。

「だってな・・・」

6回目でやっと口を開いた。

「昌兄が痩せててん。」

「それは元々でしょ?」

「んー、でもな、なんか前よりももっとやせてるきがすんねん。」

そっか。

「ここんとこ忙しかったやん?なんか残業とかやっとったし、僕が寝た後に帰って来て、僕が起きる前にはもう家でてるし。それにな、僕今受験生やん?んで暖かくすることとかいろいろ考えてくれるし。もしかしたら・・もしかしなくても僕のせいかなって思ったりしとってん。だから・・悪いなぁって思ってさ。」

今まで見せないようにしていたのに。

結局は気付かれてたんだな。

昌行は隠すのが不器用だ。

この家族はみんなそうだった。

そのへんは全部おふくろ似。

けど、親父もそんなことがあった。

准一のことだから、きっと知られたら責任感じてごめんなさいって、自分が勝手にやってるだけなのに謝ってくるだろう。

わかってたから、隠してやってるつもりだった。

けど・・そういうわけにはいかねんだな。

 

 

「いっただきまーす。」

いつもの戦いが始まったんだけど、昌行はいつも以上に食べていた。

自分ではそんなつもりはないんだけど、周りはみんな気付いてた。

でも、誰もがみんないつもと変わらない。

遠慮なんて言葉は一切なし。

けど、それでも・・いつもより多く食べたのは昌行。

1番満足したのは・・・准一だった。

 

つづく。

別に何を思って書いたわけじゃないんですけど、昌行さんが痩せたなーと思って書いたわけでも実はないんですけど(爆)なんかこの3人のことが書きたいかも。と思って書いてみました。深い意味は全くないですので。。ただ・・そうねぇ、しいて言えば昌行さんが細いことがすげー悔しかった(笑)それはメンバーに対して全員に言ってるのですが(爆)ちくしょーって(笑)そしてうらやましいぞ・・と・・・。。