羽根
〜BEGINNING〜

第4話
〜28回目の楽しみ。〜


「やだよー、そんな安易なのー。」

「じゃぁなんかいい考えでもあんのか?」

「うっ・・・。」

「ほーらねぇじゃん。」

「だって毎年毎年一緒じゃんよー。」

「坂本家には無駄に金使わないっていう教訓あんだろ?」

リビングのテーブルに1つの影があった。

剛とかよこだ。

そして、ある1つの議題に向かってもめていた。

「剛、それ言うなら家訓。」

「げっ、博兄。。」

背後から博の声が聞こえた。

「なんの話?」

「あ・・の、えっとね・・・。」

「おい、かよこ、お前のことだろ?」

「何言ってんの、剛兄のことでしょ?」

「ちがっ、お前だろ?」

「剛兄でしょ?」

「博兄、僕の受験のこと。」

「受験?」

その博の後ろからはもう1つの声。

准一だった。

「ほら、進路とかいろいろあるやろ?かよこは来年やし、剛兄にも相談に乗ってもらっとってん。」

「・・・何が毎年一緒なわけ?」

ドキっ。

「それに別に高校のことだったら無駄なんかじゃないよ?必要なお金だからね。」

「あっ、だからね、毎年あれでしょ?年子だから剛兄、健兄、1つ飛んで准兄でしょ?次は私だしー。」

「そうやで、んで受験校の数のこと。やっぱ1つの方がええんかなぁ?思って。」

「そんなこと別にいいのにー。准の好きなようにしたらいいよ。」

「ありがと。」

「そ、そうだ博兄、あのねマヨネーズとおしょうゆもうすぐなくなっちゃうんだ。買ってきてくんない?」

「いいけど・・・。」

 

 

「なにやってんねん、かよこも剛兄もっっ!」

「しょうがねぇじゃねぇかっ、帰ってきた事に気がつかなかったんだよっ!」

「そうだよ、だって博兄いつのまにか後ろにいたんだもんっ。」

「そうやけど。」

「ほんっと、いいタイミングに来てくれて感謝。ありがと准兄。」

「別にええけどな。・・・にしても、相変わらずアドリブきかへんなぁ、剛兄。」

「・・るせぇよ。」

「で、どないすんの?来週やで?博兄の誕生日。」

「そうだよー、もう来週だよ?」

「お前なにやりたい?」

「うーん。」

「だからぁ、外食したいー。」

「そんな金ねぇ。」

「いいじゃん、無駄じゃないよ、誕生日なんだから。」

「けどさぁ、人数的に結構無理あるんちゃう?」

「そうかなぁー?」

「そうそう、だから却下。」

「でも剛兄そうしたら私に全部ご飯作れって言うでしょ。」

「言わねぇよ。」

「だって剛兄ご飯作れないじゃない。レパートリー少ないもん。」

「昌兄も仕事忙しいしなぁ。」

「じゃぁ昌兄にはケーキ買ってきてもらってー。」

「でも健兄でもええんちゃう?だってバイト先ケーキ屋さんやしぃ・・・。」

何気に気がついたのは剛だった。

「あいつの働いてるとこってほとんど自営業じゃん?あいつ作れるんじゃねぇの?」

3人の頭の中に描いてみる。

健のケーキ作り職人の図。

・・・らぶりー・・・。

「・・・作れなくても似合いそうだよねー・・・。」

「違和感がねぇ。」

「・・・健兄、年上やと思えへん・・・。」

「じゃそれ聞いとくよ。」

「料理なぁー・・・。」

剛がぼやいた。

同時に准一とかよこはお互い顔を見合わせてニヤリと笑う。

作戦実行の合図だ。

「剛兄作ったら博兄喜ぶと思うんだけどなぁー♪」

「そうやで、剛兄作ってやぁー。僕も食べてみたいし♪」

「そ・・っか?」

「そうだよ、剛兄も作ってよぉ!」

「剛兄!!」

弟と妹に弱い彼が首を縦にふったのは・・・ゆうまでもないっか。

「じゃぁ料理はなんとかなりそうだからぁ。」

「でも剛兄ちゃんと練習しといてや!」

「・・・いつ練習すんの?」

「え?」

「だってさぁ、博兄の前で料理するのは間違いなく変だよ。」

「ほんまや。気付かれるどうこうより不自然。」

「お前なぁ・・・。」

「じゃぁ何作るかのレシピもたてなきゃだからぁ、今日は私の部屋きてね。その時健兄にもケーキのこときいてぇー。」

「僕も行きたいなぁ。」

「准兄はだめだよぉ、だって博兄と一緒の部屋だから怪しまれる。」

「快兄どうすんの?」

「快兄いたら騒がしくなるからなぁ・・・。」

「けど1人って寂しいんちゃう?ただでさえ寂しがりやのに。」

「うーん・・・。」

「ただいまーっ、計画決まった?」

「んー?まだぁ。」

「じゃぁ今晩決めなきゃな、なんせ来週なんだからよぉ。」

「そうだね。」

「ってことで、全員俺の部屋集合な。」

「僕は?」

「准一?・・・じゃぁ俺が勉強教えるってことでいい訳つけてぇ。」

「快兄に勉強教えてもらったらきっと間違ってるよねー。」

「んだとぉー!」

「ただいまー。」

「あ、健兄おかーりー。」

「健、今晩俺の部屋集合な。」

「あ、博兄の誕生日の予定たてんの?」

「あったりー♪」

結局こうなっちゃうんだ。

 

 

「しゅーがくりょこーみてぇ。」

「先生に見つからんようにこそこそすんのんな。」

「でも楽しいじゃん。」

「で、どうすんの?快兄なんか案ある?」

「健さぁ、ケーキ作れんの?」

単刀直入に聞き出したのは剛だった。

「うーん、こったのはまだできないけど多少はできるよ?」

「やっぱり。」

声をそろえたのは剛・准・かよこだった。

「かわいい。」

そうぼやいたのは快彦だった。

「変態っ。」

最近このやりとりは日常茶飯事となった今では誰も突っ込もうとしなかった。

「じゃぁ健兄に作ってもらおうか?」

「いいけど・・・できるかなぁ?やっぱ昌兄に買って来てもらった方が。」

「そういや昌兄来ねぇの?」

「んー、なんか明日も早いらしいから、決まったら教えろしかゆうてくれんかった。」

「でもいいんじゃねぇ?全員来ちまったらぜってーばれるよ。」

「もうばれてそうだけどねぇ。」

「そりゃ誕生日前は誰しも喜びの日だからね。」

「ま、知ってても知らない振りしなきゃならんからね。」

「顔にやけちゃうんだよねー。」

「そうや、本題本題。」

「そうそう、じゃぁ料理は私と剛兄でしょ?」

「俺学校早く帰ってくるから手伝うわ。」

「じゃぁ快兄と。レシピも考えなきゃねぇ。博兄何が好きかなぁ?」

・・・。

「なんでも好きそうなんだけど。」

「らーめん。」

「・・・誕生日にケーキとラーメンって・・それでええんか?」

「なんか合わないよねー。」

「ちょっと無理あるかぁ。」

「うーん。じゃぁまぁいつも通りの誕生日メニューで。」

「でも剛兄がはいったら味変わっちゃうかもしんないよねー。」

「お前こそ、ちゃんとケーキ作れんのかよ!!」

いつもと違う誕生日メニュー。

それは剛が料理を手伝うこと。

健がケーキを作ること。

だんだん彼らが自分達の手で祝うことになる。

それはきっと、兄としての楽しみでもあるのかもしれない。

 

 

誕生日特別家訓。

本人誕生日当日の帰宅時間は「7時。」

「剛兄それ焼きすぎーっ。」

「んだよ、大丈夫じゃねぇか、ちょっと焦げたくらいじゃん。」

「剛、これ焦げるとあんまおいしくないんだよねー。」

「知らねぇよそんなの。」

「でもいつものトーストはうまいやん。さすが剛兄やで。」

彼の作る自己流のトーストには脱帽ものである。

けど、他のものをあまり作ったことのない彼に料理をさせることは・・・普段使ってるものにとって時に恐怖に変わる・・・。

「あー、剛兄それ焦げてんじゃんっ。ばかぁっ。」

「うるせーよっ。」

「ねぇ、ここにあった砂糖知らない?」

ボール片手に健が聞く。

「・・・あ・・それって砂糖?」

フライパンを片手に剛がぼやいた。

「・・・大丈夫かよ。」

つぶやいたのは快彦とかよこだ。
 
 

 

「ただいまー。」

「おかえり昌兄。」

のんびりと飾り付けをしている准一がひょっこり顔を出す。

「・・・。」

「どないしたん?昌兄も手伝ってや。」

「・・・なんか・・慌しいな、今年は。」

「だって剛兄がキッチンにおんねんから慌しくもなるわー。」

「そう。」

「昌兄は、スープ担当らしいからね。」

「わかってるよ。着替えてくるから。」

「そらそうやで、昌兄。スーツ姿で料理するヤツがどこにおんねん。」

 

 

「やっばー、あと10分しかないよ。」

「できたぁっ。」

「かわいいーっっっ。」

料理には作った人の性格が出るという。

そして、彼の作るケーキとは。

「でも、ちょっと失敗したんだ。甘いかも。博兄甘いの大丈夫かなぁ?」

「大丈夫だよ、健ががんばって作ったんだからさぁ。」

「健兄天才やでっ。」

「ちょーかわいいこれ。」

「ほんと?博兄喜んでくれるかなぁ。」

素直に誉めることのできない彼はというと、

「なんで健に作れて俺にできねんだよ。」

俄然やる気で燃えていた。

「剛、これうまいよ。」

トースト以外作ったことなかったにしろ、なんとか食べれる味は確保できた。

  

  

「5分前だ。」

「准一、行ってらっしゃーい。」

「ほいな。」

今年、彼は博と待ち合わせをしていた。

と言っても家からそう遠くないそれこそ数分で行けるような場所。

「博兄、お誕生日おめでとーっ!!」

「近所迷惑になるよ、准一。」

お調子者の彼は外でも余裕でクラッカーを鳴らしてしまう。

「ええやん、今日は博兄の誕生日やねんから。」

「はは。ありがと。」

「ほら、はよ行こ。みんなが待っとる。」

「今年はどんな誕生日になるんだか。」

「なんや慌しい誕生日になりそうやわ。」

「そうなの?」

「大丈夫!とびっきりやから。」

弟は楽しそうに兄の背中を押した。

 

 

「博兄。お誕生日おめでとーっっ!!!」

誕生日となると余裕でクラッカーを鳴らすのは1人じゃない。

全員が近所迷惑の対象となっていた。

「ありがと。」

「ほら入って入って。」

准一は博の手を引っ張っていく。

いつもと同じ場所。

同じ風景も、今日は違う。

今日はいつになく華やか。

「この飾り付けみんな僕がやってんで。」

小さな子供がお父さんの似顔絵を父親に見せるような目で見てくるから、思わず笑いが漏れてしまう。

「すごいねー。ありがとう。」

その2言で十分の満足が得られているようだ。

「料理は私と、昌兄と快兄。そしてなんと、剛兄が作ったのーっ!」

「えっ。」

「なんだよ、博兄その「えっ」ってのは。」

「いや、、意外だなぁって。」

「意外だろ?おかしいだろ?」

「快兄楽しむなよー。」

パーティーとなるとどことなくみんなテンションも高くなっているのは言うまでもなくって。

「けどなぁ、剛もがんばったんだよー、博兄食べてやってよ。」

「もちろんだよ。」

「博兄。あのね・・・」

ちょっとはにかんだ彼はまたなんだか可愛らしさを誘っているようで、博はなんだか快彦の気持ちがわかる気もした。

「うわー、健今めちゃくちゃかわいいっっ。」

カメラを片手に構える快彦は、一段と怪しさを増していた。

あえなく近くにいた昌行に没収されたが。

「快兄は黙っててよぉ!」

・・・そこまではわからないけど・・・。

「あのね、俺ケーキ作ったんだ。博兄みたいに上手じゃないし、ちょっと失敗もしちゃって甘いんだけど・・・」

「健がケーキ作ったのかー♪」

「あ、、あれなんだけど。」

そこには健のらしさが出てるというか。

「すごいじゃん、健。おいしそうだよ。」

「で、俺からは・・・」

「昌兄ちげーよ、みんなからだろ?」

「ほんっとせこいよなぁ、この人。」

「いいじゃねぇか、買って来たのは俺なんだから。」

「博兄、お誕生日おめでとう!!」

「祝28歳っ!ってことで。」

「昌兄すげー楽しそうなんだけど。」

「これでまた1個差だからね。」

「そんな理由で嬉しいんかいっ。」

「はい、プレゼント。」

青いリボンに包まれた少し大きめの箱。

「昌兄似合わないねぇ、その台詞。」

「快彦うるせぇ。」

そこには、少し大きめのセーターがあった。

「冬だかんね。」

「博兄に風邪ひかれちゃたまんないもんね。」

「晩御飯が食えねぇ。」

「剛はご飯に執念かけてんからな。」

「でも食べるのだけだよねー剛兄は。」

「健、お前1言多いんだよ。」

 

 

28歳になって思うこと。

このまま毎日が楽しければいいなって。

それだけ・・かな?
 

つづく。

長野博お誕生日おめでとー企画っ(笑)こんなとこで使うなよって話でもありますが。。。なんかうまくいかなかったんですけど、まぁいいか。やっぱこんだけの人数がまとめているとどの台詞が誰かわかんないと思いますが、適当に読んでください。イメージとあてはめて。書いてる本人も実はあんまりわかってませんから(爆)いいじゃなーい。とりあえず、長野博さんっ、お誕生日おめでとうございますっ!これからもはっちゃけた博さんをみれることを楽しみにしています!!