羽根
〜BEGINNING〜

第3話
〜僕の好きな場所。〜

「たいへんたいへんたいへーんっっ。。」

大慌てで帰ってきた2人に准一と博が迎える。

そして、バイトから帰っていてお疲れの健を起こしてしまう。

「なんだよー。」

「ニュースっっ。。」

「あのな、落ちついてな、落ちついて聞けよ。」

「剛兄が落ちつけよ。」

寝起きの健は不機嫌だった。

「あ、そっか・・・じゃなくてっっ。。」

「快兄が告白されてたぁっっ。」

・・・。

一瞬の間が空いたあと一斉に全員が叫ぶ事になる。

「マジでマジで??」

「ちょっ、剛兄剛兄再現再現。」

そう言いながら2人のコントが始まった。

「ねぇ快くん。」

「なに?」

「もし私が好きだって言ったら・・・迷惑・・・だよね。」

「だってよぉおいっっ。」

「快兄も隅におけないよねぇーっ♪」

「ちくしょー目細いのによぉ。」

言いたい放題である。

「剛、それ関係ない。」

「えー、でも真相はどうなんやろうな。」

「あー、慌てて帰って来ちゃって返事聞くの忘れた。」

「なんで聞いてこなかったんだよーっ。」

「しょうがないだろ?動揺してたんだよっ。。」

がらっ。

「帰ってきたぁっ??」

「おかえりーっ。」

「た・・ただいま。。」

そこには全員のお迎えを受ける昌行がいた。

「なーんだ、昌兄か。」

「なんだとはなんだよぉっ。」

状況を把握してない昌行。

「ただいま。」

「あーっ、快兄おかえりぃーっ。」

「なんだよ、なんでこんなに扱いが違うんだよっ。」

「快兄快兄!」

「な・・なに・・してんの?」

こちらも状況を把握していない。

「もー、快兄とぼけちゃってぇー。」

「返事どしたの?」

「えっ?」

「だってさぁ、告られたんっしょ?」

「なっ、なんで知って・・・」

「そんな公園なんか人通り多いとこで2人きりじゃだめだよー。」

「あ・・・ああ・・・。」

「で、どうなのよっ??」

「どうって、別に。」

「別にって、断っちゃったの?」

「いや・・・」

「じゃぁOKなん?」

「・・・いや・・・」

「どっちなんだよっ、はっきりしろよっっ!」

「どっちでもないよ。」

そういって彼は階段を上がって行く。

「快兄ご飯は?」

「いいよ、食ってきたから。」

「そぉ。」

 

 

部屋に戻った彼はベッドにダイブした。

出てくるのはため息ばかり。

「なーんでこんなことになっちまったんだろ。」

下ではいつもの食事の戦いが始まってた。

けど、そんなことはどうでもいい。

腹減ってるのは事実。

食ってきたなんてウソ。

家族に質問攻めされるのが嫌なんじゃない。

そんな気分になれないんだ。

かちゃ。

「ホントは食ってねんだろ?」

「ごう・・・。」

「ほい。残りもんだけどな。」

残り物というわりには、結構しっかりしたご飯。

なんだ、気ぃきかしてくれちゃったり?

「さんきゅ。」

しばらくの沈黙だった。

快彦は黙々と食べつづける。

「なんだ、食えんじゃん。」

「まぁな。」

食わなきゃお前が心配するんだろ?

「安心した。」

「そんな弱くねぇよ。」

「そう。」

また沈黙だ。

剛はまともに顔を見て話さなかった。

「気になんねぇの?」

「・・・。」

「さっきまであんなに質問攻めだったのに。」

「なんだよ、聞いて欲しいのかよ。」

「べっつに。」

「・・・悪かったよ・・・茶化したりなんかして。」

「いいよ、ホントのことだから。」

「そう。」

快彦の手は一向に止まることなくご飯に向かった。

「どうすっかねぇ。」

「・・・知らねぇよ。」

「あら冷たい。」

ぶっっ。

「うひょひょひょ。」

「なに笑ってんだよ。」

「言い方だよそれ、おっもしれぇーっ。」

「・・ったく。」

「快兄が彼氏だったら彼女喜ぶよ。キライなの?」

「そうじゃないんだけど・・・」

「遠慮してんの?上2人に。」

「そうでもないな。」

「じゃぁなんなんだよっ。」

剛のイライラはピークだった。

「ずっとさ、友達だったから。」

「男と女の友情なんて成立しねぇよ。」

「俺はそうは思わない。」

「だって現にその人快兄のこと好きなんじゃん。」

「もしお前が・・・」

「なに?」

「・・・お前だったらどうする?」

「どうするって言われてもなぁ。俺、女のダチなんていねぇし。」

「そだな。お前はかよことしかしゃべんねぇかんな。女はよ。」

「別に女なんてどうでもいいよ。そのうち衝撃的な出会いでもあるさ。」

「じゃぁ、もしかよこから好きだって言われたら、お前どうする?」

「はぁっ??」

「あ、例え悪ぃ?」

「・・・悪すぎ。だって妹じゃん。言われるわけねぇよ。」

「そりゃそうだ。」

「あいつが他人だったら、きっと俺はしゃべんないよ。」

「しゃべれねんだろ?」

「・・・うるせぇ。」

「お前も早く女の友達作れよ。そしたらわかるからよぉ、俺の気持ちが。」

「わかりたくねぇよ。」

「あ、そぉ。」

「どうすんの?その人の返事。」

「今は保留。」

「その次だよ。」

「・・なるようになるさ。」

「なるようにって・・・」

剛の言葉は箸を置く音で遮られた。

「ごちそうさま。うまかった。」

「ああ。」

立ちあがろうとする快彦に剛が手を出す。

「いいよ、持ってく。」

「ありがと。」

 

 

「迷惑って言われてもなぁー。」

・・・迷惑だよ。

友達だったんだからよぉ。

迷惑に決まってんじゃんかよぉ。

ウソだけど。

キライじゃないんだよねー。

けど今はさぁ、俺、どうでもいいんだよねー。

彼女とか・・恋とか。

そらいつかは恋人とか出来ちゃって結婚とかしちゃったりするんだろうけど、

今は・・どうでもいいんだよなー。

だってさぁ、やりてぇこといっぱいあるもん。

束縛されたくないし、したくないし。

まぁそういう相手じゃないけど。

やっぱさぁ、気にするじゃん、そういうの。

お前には悪いけど、そこまで好きじゃないんだ。

いつもいっつも考えちゃうほど、好きじゃないんだ。

俺、好きになられるより、好きになりたいほうなわけよ。

わかってくれる?

この気持ち。

 

 

「快兄やっぱ元気なかった?」

「ん?」

1人食事の後片付けしているかよこが言う。

「そうでもねぇ。」

「そっか。」

ちくしょー、快兄が余計なこと言うからかよことしゃべんの緊張するじゃねぇかっ。

「剛兄。」

「なに?」

「なんか隠してる。」

「はぁ?」

「絶対なんか隠してるっしょ。」

「なんで?」

「だって剛兄の態度おかしいもん。」

だからそれは・・・快兄が・・・

「剛兄気付いてないでしょ?」

「な、、なにに??」

もしかしてマジで好きだとか言うんじゃねぇだろうな。

「剛兄ねぇ、なんかウソついたり隠し事したら相手の目見て話さないんだよ。」

「・・・なんだ、そんなことか。」

「ちょっと、なんだとはなによぉっ!!」

「あ、わりぃわりぃ、別になんもねぇよ。」

「そぉ?」

「なんもねぇってっ。」

「じゃぁさ、落ちついて私の話聞いてくれる?」

「な・・なに?」

タイミングの悪い事というか、夜も遅いからというか、他の家族はここにいなくて・・・

2人きりで・・・

妹といえども・・ちょっとドキドキとかしちゃったりして・・・

だって一応コイツも女なわけだし・・・

「あのね・・・」

「あ・・ああ。」

な、なんで俺ドキドキしちゃってんの?

たかが妹じゃん。

「剛兄の好きな番組のビデオ消しちゃった・・・。」

「えっ?」

なぁーんだ、そんなことか。

当たりめぇだよな。

そんなことか、そんなことか・・・って・・えっっ!!

「ほんとにごめんねぇっ。気がつかなかったのーっ!」

「お前なんてことすんだよぉっっ。」

「ごめんごめんごめんなさーいっっ。」

「俺があの番組を毎週毎週どんな思いで見てるか。」

「ごめんなさーいっっ。」

「ふざけんなよっ。」

そう言ってやるとコイツは泣きそうな顔するんだよ。

やっぱ子供だよな。

お前。

「じゃぁ罰として健とこのケーキおごりな。」

急に元気になっちゃったりするんだから。

・・・女ってのは単純で・・・難しいな。

「もちろん、ちゃんとおごります!」

今は・・俺だって彼女とかそんなの、どうでもいいよ。

女に対する免疫みたいなもんねぇし。

・・・妹相手にドキドキしてんだから、よっぽどだな、俺も。

でもちょっとだけ・・・ちょっとだけなんだけど、快兄の気持ちもわからなくはない・・かも。

 

 

「快兄おかーりー。」

「お前いつになったら学校始まんだよ。」

「らいしゅー♪」

「なんだよ、暇なやつ。」

どうだった?

お前顔がそう言っちゃってるよ。

やっぱ女といえどもいろんな奴がいるもんだ。

それに、末っ子だしね。

1番よくわかるよ。

わかりやすい性格なんだから。

「ちゃんとした。」

一瞬?の顔を浮かべた後に納得する妹。

「そっか。」

「まぁー、いろいろあるさ。」

「そ、、そだね。あ、ご飯できてるよ。」

お前が気にすることじゃねぇさ。

「お、今日はなに?」

そう言って部屋に入って行く俺には5つの痛い視線があった。

やっぱ・・ね。

「快兄もったいねー。」

最初に言ったのは健だった。

「次の機会なんて快彦にはないよな。」

「そりゃないだろ昌兄。」

「いいんじゃない?快彦の考えたことなんだし。」

「でしょ?博兄。」

「でもやっぱもったいないよねー。」

思いっきり笑顔で答える次男は・・やっぱり強い。

「大丈夫やってー、快兄はもてるからそのうちいい子見つかるって。」

准一は素直だなぁ。

「でもこんな細い目の人好きになる人いるのかなぁ?もの好きだよねー。」

「健、お前1言多いんだよ。」

「快兄。」

「どした?剛。」

えらく深刻だなぁ。

「強く生きろ。」

・・・?

「剛、お前熱あんのか?」

彼はそれだけを言い残してさっさと食事の準備にとりかかる。

「博兄、かよこご飯まだぁ?」

お前は俺よりめしか・・・。

しかも強く生きろって、お前に言われてもなぁ・・。

・・いいけどね、別に。

 

 

「俺さ・・そういうの、まだ考えられないんだよね。」

「うん。」

「今の生活で満足だから。お前のことは、友達としては大好きだけど、恋人としては大好きになれねぇの。」

「そ・・・っか。」

「ごめんな。」

「ううん、あたしの方こそ、おどかしちゃってごめんね。」

謝るのは・・俺の方だよ。

「じゃ。」

「うん。」

 

 

ちょっとだけ泣かしちまったけど。

俺は後悔してない。

今彼女とかできちゃったら、家にいる時間減るじゃん。

今1番楽しい場所を、自分の手で逃がすことないでしょう。

俺はそこまでバカじゃないからね。

だから・・わかって。

俺、今時バカで古いかもしんないけど、

兄弟のこと・・・

1番好きなんだよね。

 

つづく。

快兄を中心としたお話ですね(笑)彼等はみんな仲良しなのー。それを書きたいのー。でも、いいじゃない、そこが彼等の「居場所」なんですもの♪ねぇ。恋愛ものを書くならまず快兄かなぁ?なんて思ったのです。健くんもいいけど・・・あ、いいかも(笑)それはまたのちのちにある・・・かもしれないですね(^^;)でも、ハッピーエンドもいいんだけど、やっぱ最後は兄弟に・・なんて終わり方・・・も古いかしら(笑)まぁ1人2人くらい彼氏彼女どうこうとかでもいいと思うんですけどね。どうしようかなぁ?ちょっと楽しみです。