Bare Angel
第5章
−天使になりたい−
「なぁ健。」
「なに?」
「明日・・なんだけど・・・。」
「何が?」
「何がって・・そのさぁ・・」
「冗談だよ!」
「・・そ・・・。」
俺は健の考えてることがわからなかった。
ただ、毎日健のところに行って、くだらない話して・・・。
そんな毎日だった。
こんな日が続いてくれたらって、本気で思った。
どれだけ・・幸せだろうって。
だけど、もう待てないんだ。
「GOはさぁ、なんで天使になったの?」
「なんで?」
「いや、別に・・ただ気になったから。」
「ふーん。そう。」
「ねぇ。なんでなったの?」
「さぁ。」
「答えになってない。」
それは、俺にとって難しい質問。
「わかんねぇ。」
こうしか答えられねぇもん。
「なんで?」
「さぁ・・・。」
「さぁって、そればっかじゃん。」
健のほっぺがふくらんでくる。
ったく、20歳の男がやることかよ。
けど、なぁーんか、憎めない。
「俺さ、最初は悪魔になろうって決めてたんだよねー。」
「あくまぁっっ??」
「そ。そんで、キライなやつ全員殺してやろうって思った。」
「・・・。」
「けど、今更思うのも変かな?人間もう1回やりてぇよ。」
健みてたら、そう思ったんだよ・・・。
「GOは人間になれなかったの?」
「最初は人間やりなおせたんだけど、気がつくの遅かったよ。」
「?」
「最初っから人間になるって言っとけばよかったよ。」
「じゃぁなんで天使なの?」
「あー・・・。」
なんでだっけ??
「忘れた・・・。」
「わすれんなよー!」
ほんとなんでだっけなぁ・・?
「気がついたら白い羽根だったんだよ。ホントに。」
「ふーん。」
なんで悪魔の羽根じゃなかったんだろ?
おっかしぃなぁ・・・。
「KANA!」
「なんですか?HIROSHIさん。」
「あのさ、GO大丈夫かなぁ?」
「さぁ。」
「さぁって・・・。」
「私に聞くのが間違いですよ、HIROSHIさん。」
「いや、君にしか聞けないんだよねー、GOのことは。」
「けどHIROSHIさんが連れてきたんでしょ?」
「なんでそれっ!」
「マサユキさんがいい人でよかったですよねーっ♪」
「ちょっ、KANA!!」
「空飛んでみる?」
「え??」
「飛んでみたかったんだろ?」
「なんでわかんの??あ、そっか。天使はなんでも知ってるんだよね。」
「ちげぇよ。だって、この部屋最近飛行機の模型増えたじゃん。」
「あ・・そっか。。」
「で、どうすんの?行くの?行かねぇの?」
「行く!!」
「風がちょー気持ちいいー。。」
「健あんま乗り出すんじゃねぇよ、あぶねぇじゃん!」
「大丈夫だって!」
「落ちても知らねぇかんな。」
「あ、ねぇねぇ学校見えるよ!すごいすごい!」
「ったく、人の話も聞けってんだ・・・。」
「GOってホントに天使なんだねぇー。」
「あったりめぇじゃん!俺様をなんだと思ってんだよ!!」
「あー!!」
「なにっ!!」
「GO久々に『俺様』ってゆったぁ!!」
「えっ?」
「そのほうがGOらしいよ!」
「そ、、そか??」
「そうだよ!!」
「あっ、あぶねぇっっ!!」
風の強さでバランス崩した羽根。
俺の背中から健が消えていく。
けど、下まで落としてたまるかよ。
「きをつけろよ!俺様の華麗な羽根さばきがなかったら今頃・・・」
「今さぁ、ちょっとだけ飛べたね。1人で飛べたよ?」
「んなのん気なこと言ってる場合かよ!お前死亡日早める気か??」
「でも飛べたよ!!」
「・・・落ちてるだけじゃん。」
「そうなんだけど・・・。」
「反省しろよ!」
「GOが飛ばしてくれるって言ったんじゃん。」
「・・・。」
「・・あはははは」
「なにがおかしいんだよ!」
「だってGOの羽根素直なんだもん、しゅんとしてんのちょー笑えるよぉー。。」
「笑うなよ。ほら着いた。」
「ありがと!すっごい楽しかったよ。」
一瞬の沈黙が怖かった。
次に出る言葉はきっと決断の時だから・・・。
「僕さ、天使になりたい。」
「え?」
「だからぁ、死んだら天使になりたい。」
「・・・。」
「子供の時から空飛びたかったんだ。だから天使だったら実現できるよ。天使ならGOと一緒だよ?」
「健は・・・」
「なに?」
健は人間の方が向いてるよ。
誰にでも優しくて、思いやりとかちゃんとあって、素直で、誰にでも好かれてて・・・俺とは違うから・・・。
「健は、人間もう嫌?」
「そうじゃないけど・・僕が天使になったら迷惑?」
「そんなことない。だけど・・・」
「じゃぁなんで?」
「2度と人間にはなれないんだよ?」
「いいよ。生きてたっていい事ないもん。」
「そんなことねぇよ!健なら・・健ならいい事だってすぐに見つかるよ。」
「それでもいい。僕は天使になりたい。」
「・・・わかった・・・。」
「なぁKANA。」
「なに?」
「俺ってなんで天使なの?」
「突然なによ。」
「俺なんで悪魔じゃねんだろ。」
「あー・・・。」
「あ、お前なんか知ってるだろ?」
「知らないよー。」
「その顔は絶対知ってる!教えろよ!!」
「言いませんー。」
「ほら、やっぱ知ってんじゃねぇかよ、教えろよ!!」
「やだぁー!!」
「なんで俺様のことなのにお前が知ってて俺様が知らねぇんだよ!不公平じゃねぇかっ!!」
「HIROSHIさんが知ってるよ。」
「HIROSHIさん??」
「そう。」
「・・・聞きにくいな。」
「なんで?」
「苦手なんだよあの人。」
「そぉ?」
「あの笑顔の裏がちょー怖い。」
「なによそれ。」
「だっていっつも笑顔なんだぜ?ちょーこえぇじゃん。あの人の怒ったとこ見てみてぇよったく。」
「へぇー、GOの弱みって俺。」
「げっ・・・HIROSHIさん。。」
「げってなんだよ・・・。で、健はどうした?」
「・・・天使になるってよ。」
「そっか。じゃぁ明日記憶消す作業に入るから、ちゃんと伝えておけよ。」
「あ、忘れてた・・・。」
「肝心なとこの抜けてるやつだなぁGOは。」
「なぁHIROSHIさん。」
「なんだ?」
「記憶消したら天使になってからも俺のことだけ覚えてないのか?」
「そうだな。」
「俺だけ・・・ないのか?」
「ない。」
「・・・きっぱり言うよなぁー。」
「無理だよ。」
「はーい。」
「天使になるんだったら、また会えるよ。」
「・・・。」
俺のことは忘れんのか・・・。
忘れられんだよなぁ・・・。
俺は忘れないんだけどなぁ・・・。
人間になっても、天使でも悪魔でも俺のことは忘れるのはわかってる。
だけど・・・。
「なぁHIROSHIさん。」
「今度はなに?」
「俺ってさぁ、悪魔になるって言ったはずなんだけど・・。」
「それがどうかしたか?」
「なんで今天使なの?俺。まぁ羽根は今黒いけど・・・。」
「あー・・・。」
「なんだよ2人して。教えろよ。」
「GO、マサユキって覚えてるか?」
「マサユキ?誰だよそれ・・・。」
マサユキ・・・?
「あー・・・?」
「思い出した?」
「あー・・・。」
「中途半端なやつだなぁお前。」
「覚えてねぇよ。」
「じゃぁそいつ思い出したら教えてあげるよ。」
「うわ、きったねぇなぁHIROSHIさん。」
「じゃぁなっ。健にちゃんと言うんだぞ!」
「わかってるよ!!」
マサユキ・・・かぁ・・・。
誰だっけ・・・。
えーっと・・・。
お前が森田剛か?
・・・。
あの柄の悪い悪魔のことか?
「あれ・・・俺なんで・・・。」
なんで覚えてんの?俺。
だって記憶ねぇはずじゃん。
アイツ悪魔だろ?
・・・ん?
夜空の星にまぎれて天使と悪魔がいた。
「GOがさぁ、そろそろ気がつきはじめたみたいだよ?」
「やっと気付いたのかよあいつ。」
「マサユキのこと忘れてたよ。」
「なんなんだよあいつ。最初っから最後まで生意気なやつだなぁおい。俺のことくらい覚えておけよ。」
「実際死んでからの出来事だから覚えててもいいのにね。」
「そうだよな?」
「話していい?」
「・・・ご自由に。」
「まぁ、条件つきなんだけどね。」
「条件?」
「そっ。GOがマサユキのこと思い出したらってゆうね。」
「それじゃ話す必要ねぇな。1回忘れたら2度と思い出さねぇよ、アイツは。」
「なんで?」
「そんな感じだろ?」
「まぁ・・ねぇ・・・。」
「まっ、いつかは話さねぇといけねぇことなんじゃねぇ?」
「そうだね。・・・ところでさ、そっちの仕事どう?」
「相変わらずだよ。お前がいるからな。」
「ははは。悪魔には負けてられないからね。」
「けど最近悪い奴も増えたもんだな。なーに考えてんだか。」
「天使になれる人って少ないからね。」
「どう考えても森田は悪魔だろ?だってアイツ人殺したんだぜ?」
「そうだけど・・・十分反省してるから大丈夫だよ。」
「あいつ全然仕事しねぇって、こっちでも評判すげぇぞ?」
「なんてったってあと1人で悪魔行きだからね。」
「その1人はどうなのよ?」
「まぁ、順調みたいだよ。たぶん。」
「お前ちゃんとアイツ見とけよ?俺森田と仕事すんのやだよ。」
「なんで?優しいやつだよ?情にもろくて。」
「それを指導すんのがやなんだよ。」
「あー、それはわかるかも。」
「だろ??」
「けど、なんでアイツ人殺したのかなぁ?」
「そこまで首つっこんじゃいけんでしょ。」
「知ってるくせに。」
「言えねぇな。あんたみたいな天使にはわかんねぇよ。」
「マサユキにはわかるの?」
「・・・わかんねぇけど、近い気がする。」
「GOとマサユキ似てるからねぇ。」
「一緒にすんなよ。まぁお前にはぜったいわかんねぇな。」
「あー、そんなこというなよ!」
人間の時のことは・・・忘れたくても忘れられないよ。
あの時は、自分しか信じる事ができなかったから・・・。
なのに、アイツ信じたとたんこうだ。
どうせ記憶消すくらいだったら、全部消してくれればよかったのに・・・。
1番忘れたい記憶だけが・・・ずっと離れない・・・。
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