Bare Angel

第2章

−タイムリミット−

「俺様実はさぁ、天使なんだ・・・。」
 

 

がたんっ。。。
 

 

「いってぇ・・・。」

気がついたら僕はベットの中だった。

「ん?」

ここは何処??

僕の部屋・・・。

汗びしょびしょじゃん。

なんか怖い夢見てた気がする。

なんだっけ?

忘れちゃったよ。

 

 

「けーんー、なんで今日に限って寝坊するのよぉっ!!」

「あっ、ごめんごめん。。」

そう、今日は僕がここから出る日。

1人暮らしを始める日。

都合で見送れなくなった両親は、送ることだけをして帰っていくことになってる。

「いってらっしゃーいっ♪」

いつもと同じ変わらない声で見送る妹。

そうだな、変わることもないもんな。

 

 

僕を送って行った両親は帰っていく。

また連絡するからって、心配する母に伝える。

「さてと・・・ん?」

新しい部屋。

誰もいないはずの部屋。

そして、何もないはずの部屋。

「ネックレス?」

これって、僕がほしかったやつじゃん。

なんでこんなとこに、、前の人が忘れちゃったのかなぁ?

届けるったってわかんないよ。

「まぁいっか。」

 

 

1つ1つ順番にダンボールを開けていく。

「これどうしよっかなぁ?」

僕の部屋に、なぜか1番存在感の大きいネックレスの居場所がない。

「つけちゃっても、、いいかな?」

 

 

すると、目の前には黒い羽根1つ、部屋を舞う。

「黒い羽根?どっから・・・。」

僕は、何かを忘れてる気がした。

家のことでもなくて、勉強でもなくて、羽根。

そうだ。

黒い羽根・・・。

僕は1度、こんな黒い羽根を見たことがあったんだ。

カラスじゃない。

『天使』と名乗る黒い羽根の持ち主。

 

 

「てんしぃっっ??どっからどうみても悪魔じゃんっ!!」

「なっ、、なにいって、いだだだだっっ。。」

「大体天使のくせに黒い羽根なんておかしいよ。」

「こんなにかっこいい悪魔がいるかってんだよっ!」

「誰が??」

「俺様に決まってんじゃん。」

「あんたナルシスト?」

「んだ?その『なるしすと』ってのは??」

「知らないのぉ??」

「知らねぇよそんなの。なんだよ、どっからどうみても俺様はかっこいい。真実を述べてなにがわるい!」

「・・・じゃぁなんで羽根が黒いんだよ。」

「掟破ったからだよ。」

「掟?」

「あんたには関係ない。」

「そう。・・・ねぇ、さっきからなんで背中おさえてるの?」

覗き込んでみると真っ赤な血。

「うぁっ、見るんじゃねぇ。。」

 

 

思い出した。

僕は血を見て倒れたんだ。

けど、あの時はもうここにいたはずなのに。

なんでだろう?

 

 

外に出てみると、あの満開の桜が立っている。

「いない・・よね。」

木の下まで行って上を見上げる。

少しずつ散っている桜の花びらが、僕の顔の横を通過する。

誰もいない、桜の木の上。

「夢だったんだよね。」

忘れよう。

あれは夢だ。

そして、ネックレスはただの忘れ物。

 

 

「夢なんかじゃねぇよ。」

「うわっっ。。。。。。」

突然耳元から声がして、振り向くとあいつがいた。

「うひゃひゃ、びびってやんの。」

僕は驚いて声もでない。

「よぉ。」

「よぉ。」

「おっ、今度はちゃんと言ってくれんじゃん♪」

「GO・・・だよね?」

「おお、覚えてくれてんだぁ!あんたいいやつじゃん!」

「なにやってんの?」

「見りゃわかんじゃん。あんた探してたんだよ。」

「探してた?」

「そのネックレスで居場所がわかったって訳だ。夢んなかで健持って帰っただろ?こっちでは持ち主はお前になってんだよ。」

「そうなんだ。」

「そうなのーっ♪」

「で、なんの用?」

「お茶とか出してくれないの?貴重な客なのに・・・。」

こ、、こいつは・・・。

 

 

「で、用って何?」

結局彼はずかずかと僕の新居に足をいれた。

「健いい家に住んでんじゃん。」

「でしょでしょ?ちょーいいでしょここ!・・・じゃなくて、用件。」

「あー。。」

「なんだよ?」

「あのさ・・・えっと・・・その・・・。」

「なんなんだよぉ、もぉ!」

「うーん。。。」

「GO?」

「ごめん、もう1回出直してくるわ。」

悩むだけ悩み、僕を脅かすだけ脅かし、聞けなかった用件を残しながら黒い天使が空へ舞っていく。

「なんだったんだろうか?」

 

 

天使の家は基本的に雲の上にある。

彼は仕事を終えられないまま、結局また帰って来てしまった。

「あーあ、情けなー。」

声の主は幼なじみの天使。

背中には、当然真っ白の羽根を持っている。

「んだよ、KANA!!」

「うわぁ、ちょーこわーい。。」

「うるせぇよっ。」

「また仕事さぼってる?」

「さぼってねぇよっ!!」

「結果が出ないんだもん、一緒じゃない。」

「ほっといてくれよ・・・。」

「・・・変わってあげようか?」

「いいよ、また信用なくすし。」

「もう十分ないと思うけど。」

「なんだよ、大体HIROSHIさんがわりいんだよ。」

「でも、これが天使の仕事でしょ?」

「黒い羽根・・・か。」

「早く白になるように努力しなさいよ。」

「いっそのこと、悪魔になったほうがいいのかもな。」

「悪魔の方が仕事つらいみたいよ。」

「けど、心なんていらないだろ?」

「天使の方が人間に好かれると思う。」

「嫌われたっていいよ。」

「あたしはやだ。」

「俺様とお前は違う。」

「一緒にしないで。」

「・・・あーあ、無理なんだよ俺様にはこんなこと。」

「3ヶ月前のGOとおんなじ。卒業するんじゃなかったの?できないって思う自分から。」

「・・・。」

「まぁいいや。あたし仕事行って来るからね♪」

とんとんと軽々と雲を越え、羽根を使って飛んで行く白い羽根。

「KANA!」

「なぁにー?」

「どうやったら仕事うまくいく?」

やつはニヤっと笑って、

「親切な心と笑顔。」

と答える。

わけわかんねぇよ・・・ったく。

雲の上から下を見下ろしてみる。

 

 

・・・健だ・・・。
 

 

「わっ!!」

「のわぁっっっ。。。」

後ろから脅かしにきたのはHIROSHIさんだった。

「な、、なななんですか??」

「うははは(笑)上から落ちるなよ♪」

「楽しまないでくださいよぉ、びっくりしたぁ。。」

「どうだ、ちゃんと仕事してるか?」

答える事ができなかった。

「またか・・・。」

「すいません。」

ため息1つつくHIROSHIさんに、聞いてみる。

「なんでこんなことしなきゃなんないんっすか?」

「俺達が先にやらないと、悪魔に持ってかれるだろ?」

「どっちが幸せなのかなぁ?」

「少なくとも、お前が今まで担当したやつは・・・。」

「すいません。」

「お前は次の相手、つまり三宅健だ。どっちにいってほしい?」

「・・・わかりません。」

「判断はお前の勝手だ。けどな、お前には後がないんだぞ?わかってるな?」

自分の持つ黒い羽根を見てみる。

「・・・はい。」

「HIROSHIさーんっ、ちょっときてくださーいっ。。」

「おっと、お呼びがかかったみたいだ。じゃぁな、がんばれよ。」

言葉にならなくて、ちょっとうなづいてみる。

「元気出せ。」

そう言って飛んで行くHIROSHIさん。

 

 

やっぱり、俺様には向いてないんだよ。

こんな仕事。

 

 

判断はお前の勝手だ。
 

 

人間は何を求めているんだろうか?

まだまだ未熟だと改めて実感させられる。

俺様にはわからないことが・・・たくさんあるから。

けど、もう、俺様には時間がない・・・。

TO BE CONTINUE