Bare Angel

第1章

−羽根のない天使−
 

僕は今日から大学生になる。

1浪して、めちゃめちゃ悔しくて、勉強しまくって・・・。

とうとう手にした合格だった。

正直言ってこの大学に行って何がしたいって訳じゃない。

けど何か見つかると思った。

やりたいこと。

いや、絶対見つけるから。

そして、東京での1人暮らしは、その第1歩。
 

 

「やっぱり母さん心配だなぁ。」

「何言ってんだよ、大丈夫だって!ちゃんと1人でやってくから。」

「そぉ?けどあんたのことだから、何かしら問題起こすんじゃないかって、不安なんだけど。。」

「そんなことないって!ホントに大丈夫だから心配ないよ。」

今まで僕に関心のないかのように妹にべったりだった母も、やっぱり息子の1人暮らしには抵抗があったんだろうか?」

確かに、すぐにOKしてくれた父と、なかなか納得してくれなかった母。

けど無理言って強引におしきったのは僕の方。

本当にごめん。

だけど僕は・・・。

「やるからにはちゃんとやらなきゃだめよ。」

「はいっ!」
 

 

駅まで見送る僕に、

「今度来る時、部屋が散らかってたらおこるからね。」

なんて言われたりもした。

その時の僕は、いたって普通の僕だったんだ。

こいつに会うまでは・・・。
 

 

「さてと。」

目の前にあるダンボールの山。

これ全部片付けなきゃいけないんだよねぇ・・・。

なんか先が思いやられるなぁ・・・。
 

 

がたんっっ。。
 

 

・・・。

なに?

なんの音??

そと・・・だよね・・・。

ダンボール落ちたわけじゃないし・・・。

僕はゆっくりとドアを開けてみる。

1つ息を呑んで目を開ける。

やだよ、引越し早々めんどうに巻き込まれるの・・・。

さっき見た風景となにもかわるものはない。

なにかがおちたわけでも倒れたわけでもない。

なんもないじゃん。

緊張して損した。
 

がさがさがさ・・・。
 

右を向くと大きな木がある。

満開の桜の木。

なのに、なんかおかしい。

人がいる。

って・・木の上に人がいる??

なんで、、なんでなんでぇ??

あ、、おちるっっ。。

大きな音と共に僕は近寄っていった。

「だ、、だいじょうぶですか??」

「・・・。」

返事がなくて・・・。

「あ、、あの・・・。」

見た目は、そうだなぁ、僕と同じくらいの男のこ。

「よぉ。」

「・・・えっ?」

「よぉ。」

僕は、何処からか落ちてきた彼を見て唖然としてしまっていた。

言葉も返せない。

「お前、俺様がよぉ。って言ってんのに返事しろよな?」

「あ・・・。」

やっと我に返って言葉がでる。

「・・ど、どうも。。」

そういうと彼は僕にでこピンをくらわす。

「ってぇー・・・なにすんだよ!!」

「どうもじゃなくて、よぉだろ!」

なんなんだこいつ・・・。

「よぉ。」

「よぉ!やっと言ったな。」

「あんた、そこでなにやってんの?」

「あー、ちょっとな。」

「けがない?」

「別に。」

「ふーん、じゃぁいいよね。僕はこれで・・・。」

「ちょっと待てよ、あんた名前は??」

「・・・なんで?」

「俺様は、GOってんだ。あんたは?」

「だから、なんで?」

「何言ってんだよ、俺様が百歩譲って先に名乗ってやったんだからあんたも教えろよ。」

なんだよ、自分が勝手に言ったくせに。

「三宅健。」

「じゃぁ健。」

「なんだよ、なれなれしく呼ぶなよ。」

この名前気に入ってるけど、いきなり呼ばれても・・・。

「これやるよ。」

「なに?」

差し出した手の上に乗ってる大きなネックレスは、僕が前からほしいと思って絵を描いたデザインに似ている。

赤い玉のついたひもに、シルバーの鳥。

「つけてみろよ。」

勢いでつけそうになってしまった。

「そんなの、知らない人からもらえないよ。」

「いいじゃん。」

「やだ。」

「いいじゃん、俺がやるって言ってんだから。」

「やだ、もらう理由がない。」

「いいだろ、やるよ!」

「やだ。」

「俺はお前って決めたんだから!」

「・・・はっ??」

「たのむから、つけてくれよ。」

「・・・なに??」

さっきの顔とはうって変わった真剣な目。

「うっ、、わぁぁっっ、、いだいいだいっっ。。。。」

「な、、どうしたの??」

彼が痛そうにしてるのは演技かもしれない。

「そんなのでひっかかんないよ。」

「まじ、、まじでまじで、、いたいんだって。。」

体はウソをつかないというのはこういうことを言うんだろうか?

額には汗がたくさんでていた。

「あーもぉ、つければいんだろ!!」

ぶんどってつけた僕に彼はかすかな安心の目をみせる。

すると、奇妙なことが起きていた。

どうして今まで気がつかなかったんだろうか?

彼の背中には大きな影があった。

「・・・せなか・・大丈夫??」

「くんなっ!!」

近づこうとする僕に怒鳴りつける。

「あ、ごめん。。もうちょっとだけ、待ってくんない?」

「どうして?」

「頼む・・・。」

「うん。」

背中に手を当てたまま目を閉じる。

しばらく彼は全く動かない。

だんだん荒くなっていく彼の息だけが響いている気がする。

そして、ゆっくりと目開き1つため息をついてみる。

「・・だ、いじょ、、ぶ??」

「あー、ごめんな、俺様の力じゃ無理みてぇだ・・・。」

「えっ?」
 

ファサっっ。
 

彼の背中からきれいな音が鳴る。

その時、やっと後ろの大きな影の正体に気がついた。

そうか、これは大きな・・・羽根・・・。

真っ黒の羽根。

でも、真っ黒ってことは、じゃぁ悪魔?

「きみは・・・。」

「俺様実はさぁ、天使なんだ・・・。」

TO BE CONTINUE