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↑ 動画タイトル : idea and selection by Mr.Arjetan & SNH.    




第1 〜  5話は、 第1章 クラス委員の役目 “PART1”
第6 〜10話は、 “PART2”
第11〜14話は、 第2章 少 女 覚 醒 “PART1” をご参照のこと。



< 目   次 >
第15話 「髪風船」   .......2007.10.1(Vol.799)
第16話 「処刑台」   .......2007.12.29投稿、
2008.1.1(Vol.812)掲載
第17話 「鏡の中のベビーフェイス」   .......2008.4.8(Vol.827)
 
あ と が き
ご  感  想


第18話以降は、 第2章 少 女 覚 醒 “PART3” をご参照のこと。





2007.10.1(Vol.799) 初出___Cont.No.RV0215    第16話へ 目次へトップへ


    第2章 少 女 覚 醒



「砂良ちゃん、今日から学校ですよ。早く起きなさい。」
「いや、恐いおじさんがいるから行きたくない。」
 ・・・ 
「砂良ちゃん、一緒に行こ。」
彩ちゃん、来てくれたの?でも、恐いおじさんがいるから行けないの。」
「大丈夫だよ、こうすれば・・・」
 小学校の入学式の朝、砂良は、この日、生まれて初めて三つ編みになった。おめでとうー!!
「あっ、かわいい。」
「この赤い玉が、恐いおじさんから守ってくれるよ。」
「本当に?」
「私だって、ほら。」
「本当だ、彩ちゃんとお揃いだね。」

砂良「彩ちゃん・・・。今日は・・・土曜日、学校は休みか・・・」
 小学生の習性。休みの日に限って、早く目が覚めてしまうものである。砂良は、ぼんやりと、この幻想的な空間に浸りながら、二度寝を決め込んだ。
 詩鳥家の朝、平日は、とても慌ただしく、目の前にある芸術をゆっくり鑑賞する間もない。サラつや姉妹の部屋の窓は、東向きにある。従って、朝になると、二人のバージンヘアを輝かせる日の光が、低い角度から差し込んでくるので、2段ベッドの下の段で寝ている砂良には、とてもまぶしいはずである。
 が、そうでない日もある。上の段から、垂れ下がっている通夜の長〜〜〜〜〜い黒髪が、丁度良い具合に広がると、文字通り、黒髪のカーテンとなり、下の段で寝ている砂良に差し込む日の光を和らげてくれる。そして、その内側から見える光景は、中にいる砂良にしか見えない奇跡の瞬間なのである。あの真っ黒な通夜のバージンヘアが、茶色に透けて、一本一本が怪しい光を放っている。何たる自然の神秘の奥深いことか!
 これこそ、詩鳥家名物第7弾、ラプンツェルのオーロラ!
 こんな優しい光に包まれて、砂良は、再び眠りに就く。それにしても、何という穏やかな朝だろうか。昨日の嵐のような出来事など無かったかのようだ。
 砂良は、もう一度目覚めると、長〜い髪が手足に絡み付かないように、注意しながらベッドから這い出ると、テレビのスイッチを入れ、それをぼんやり見ながら、昨日の出来事をゆっくりと振り返っていた。通夜は、まだ、寝たままである。休みの日の朝は、本当にラプンツェルのように、なかなか下に降りて来ない。寝る子は育つとよく言われるが、彼女の場合は、その発育が殆ど髪に偏っているようだ
「あっ、そうだ。私、今日からコンタクトに・・・・」
 砂良は、眼鏡がない状況にやっと気付いた。そして、今日は、また、あの美しい少女に会える・・・
「ひかりちゃん・・・。」
 ・・・
「あっ、そろそろ、支度しなくちゃ。」
 ブラッシングタイムの後、三つ編みに。本当に手慣れたものだ、編むのが速い。まだ、寝ている通夜を後目に、砂良は、出掛ける準備をした。小夜子さんの手作りのブランチ(←私も欲しい)を食べた後、4つの赤いさくらんぼを揺らしながら、砂良は家から出ていった。

 日常から、非日常へ・・・。

 砂良の住む神永町3丁目から、駅前の商店街に行く途中に、4丁目の小さな商店街があり、日常品は、大体、ここで間に合う。砂良のこれまでの人生は、神永小学校のある2丁目から、商店街のある4丁目までの往復だけで、あまり駅前の方にまでは行くことがなかった。そんな砂良にとっては、昨日や今日のように駅前まで買い物に行くことは、小さな冒険のようなものである。
「砂良ちゃん。」
 ニコニコしながら、砂良に声を掛けた少女は、隣のクラス6年4組の椿薫(つばき・かおる)。砂良のもう一人の幼馴染みである。
 駅前の商店街とは違い、4丁目の商店街は、美髪の街、神永町ならではの伝統的な商品を販売している店も多い。例えば、砂良の友達の薫(かおる)の親が経営している「椿屋(つばきや)」には、黒髪に良いとされている椿油の他、櫛やかんざし等の美しい黒髪を彩る装飾品もあり、長〜い黒髪の女性客も、よく訪れる。
 うららかな春の日差しの中、店の前に置かれた古い木製の長椅子に、綺麗に澄んだ瞳の浴衣の少女が何をするわけでもなく、道行く人に笑顔を振りまきながら、ただ腰かけている。彼女の艶やかな黒髪は、1本のかんざしでまとめられて、長さは分からないが、あの色艶、張りから見て、美しいバージンヘアであることは間違いない。この商店街も、駅前の如く、日増しに近代化されていく中にあって、この店の周りだけは、古い時代にタイムスリップしたかのようである。
 勿論、薫も、普段から、浴衣にかんざしなんていう格好で過ごしているわけではなく、学校にも普通の洋服で登校している。恐らく、店の宣伝のために、このような姿でいるのだろうが、看板娘と呼ぶには、余りにも完璧過ぎる。どんな人に対しても、幸せそうな満面の笑顔で挨拶して、悩みごとなんて何もないかのようだ。お金を出して探しても、これほどまでに、この店の雰囲気にぴったりの女の子はいないだろう。かんざしの先にあしらわれた白い椿の花を象った飾りが、結い上げられた長〜い黒髪の美しさを際立たせている。そんな彼女のことを、いつからか街の人達は、「椿の妖精」と評した。彼女の笑顔を見ていると、誰もがとても幸せな気持ちになれる。砂良も、これまで、彼女の笑顔にどれだけ助けられたことだろう。
薫 「今日はお出かけ?」
砂良「うん、駅の方まで。」
薫 「あっ、眼鏡してないね。」
砂良「うん、ちょっと色々あって・・・これから、コンタクトレンズ買いに行くの。」
薫 「えっ、そうなの?じゃー、砂良ちゃんも、タレント目指すとか?」
砂良「まさか・・・」
 薫が、「砂良ちゃんも」と言ったのは、彼女自身も、女優を目指していて、ある劇団に所属しているからである。
砂良「そう言えば、この前のオーディションの結果、もうすぐ出るんでしょ?」
薫 「うん、でも・・・」
砂良「自信ないの?」
薫 「元々、うちの劇団からの推薦枠は1名で、私は枠外で勝手に応募しただけ
   だから・・・」
砂良「推薦されたのって、あのシャンプーのCMに出たっていう子?」
薫 「うん、うちの劇団は、代表の決定が絶対だから。」
砂良「でも、私は、髪だけなら・・・じゃなくて、髪以外でも、カオちゃんの方
   が絶対に勝ってると思う!大体、あのCMにしたって、カオちゃんが出て
   ればもっと売れたのにって、お父さんも言ってたし・・・カオちゃんは、
   人に感動を与える女優さんになりたいんでしょ?!!」
 砂良の熱弁に圧倒され、薫の笑顔も真顔にならざるを得なくなった。
 うーーーーーーーーーーん!綺麗!美しい!パッツンと切り揃えられた前髪の下から覗く美しい瞳。あんな澄んだ瞳で見つめられたら、自分の汚い心を全て見透かされてしまいそうだ。可憐という言葉は、恐らく、彼女のためにあるのだろう。この子のためなら、あの笑顔を守るためなら、本当になんでもしてしまいたくなる。
薫 「あ・・・うん。砂良ちゃん、もし、このオーディションに受かったらね。
   この髪・・・

 薫は、潤んだ瞳で、砂良を見つめながら、かんざしの先の方を掴んだ。
 おーーーーーー、これは、やっぱり、お約束ですかーーーーー?待ってましたーーーーーーーーー!!!
薫 「・・・やっぱり、いいや。受かってから話すね。」
 えーーーーーーーーっ、お預けかよ?!!!そ、そんなー!!
薫 「あっそうだ、しとりの泉の伝説って、聞いたことある?」
砂良「しとりの泉?知らないけど・・・」
薫 「やっぱり、砂良ちゃんの家とは、関係ないんだ。」
砂良「それって、どんな泉なの?」
薫 「オーディションで一緒になった子から聞いた話だから、私もよく知らな
   いんだけど、私が神永町から来たって言ったら、じゃー、しとりの泉も
   知ってるかって言われて。」
砂良「この町にあるの?」
薫 「そう言われてるらしくて、その泉の水で髪を洗い続けると、美しい黒髪を
   ずっと保っていられて、死ぬまで髪が伸び続けて、誰かに切られそうに
   なっても、その泉の力で切られないように守ってくれるんだって
。」
 そんな有難いものがあるのなら、どんなにいいだろうかと砂良は思った。校則だろうが、髪切り魔だろうが、何があっても、安心して寝ていられる。
 「しとりの泉」、「しとりの泉」、・・・
 そんなのあるわけないと思いながらも、椿屋を通り過ぎた後も、砂良は、ずっと心の中で、その泉のことを考えていた。





 西埼玉駅、武蔵鉄道(通称:むさてつ)西上線(さいじょうせん)の主要駅(快速も停まる)の1つでもあるこの駅前の広場には、2つの誇れるものがある。
 1つは、正面口前にある大きな噴水であり、今日のように晴れた日には、鮮やかな虹を見ることも出来る。長〜い黒髪に噴水の虹、アイドルのDVDにもありそうな何とも素晴らしいシチュエーションだ。その周りに腰かけることも出来るので、待ち合わせ場所として、多くの市民に親しまれている。砂良の場合も、その例に漏れず、ここで、あの髪長美少女に会うことになっている。
 あー待ち遠しい!私も早く、あの太股まで達するストレートヘアを堪能したい。ただし、真面目な砂良は、約束の時間よりも、かなり前に来てしまったらしい。
 暇潰しに、長〜い三つ編みを前後させたり、ニギニギ、スベスベさせたりしていたが、それにも飽きてしまった砂良は、歩道橋を上って、ひかりが来そうな方面の様子を見に行くことにした。見渡したところ、まだ来る気配もないと判断して、引き返そうとした砂良の視界に入ったのは、もう1つの駅前名物である。
 美容室「髪風船(かみふうせん)」。というよりも、その中で華麗な技を披露しているカリスマ美容師、青井風子(あおい・ふうこ)嬢である。この時代のカリスマ美容師というのは、長くて黒い健康なバージン・ヘアを見ると、やたらと重いだの流行りでないだのと難癖をつけ、髪を散々痛めつけた後、何度もその補修に美容室に通わせ、バカ女の財産をしゃぶり尽くすような金の亡者とは違う。その人の髪質や個性を十分見極め、その人の髪本来の美しさを引き出す技術と人真似ではない独自のポリシーを持った本当のプロだけが、カリスマ美容師と呼ばれるのである。
 特に、髪風船の青井風子氏は、自分自身のアジア人としての長〜〜〜〜い黒髪に誇りを持っており、この国が失いかけた本来の美しさを取り戻すことに命を懸けている。彼女は、美しいストレートヘアにパーマをかけようとしたり、失恋して長〜〜〜〜〜〜い髪をばっさり切ろうする客に、説教して、怒って帰られても、絶対に妥協しない鉄の意志を持つ女性で、西埼玉市のみならず、県内外からも多くの注目を集めている。
 本来、美容室とは、髪を切るところであり、断髪恐怖症である砂良が、近づきたくないはずの場所であるが、砂良は、風子のプロの技に見入っていた。彼女自身の長〜いストレートヘアに、仕事で使うヘアピンやヘアクリップを留めておいて、必要に応じて、そこから外して使うようにしている。砂良は、このようなやり方が、この上なく新鮮に感じ、凄くカッコ良いと思った。歩道橋の丁度真ん中辺りにいると、風子の仕事ぶりが一番よく見える。そういう演出効果を狙ってのことだろうが、多感な年頃の砂良にとって、風子の妙技は、かなりの衝撃であった。
砂良「あれが、風子さん・・・」
 生まれてから、一度も美容室に行ったこともなく、世の流行り事に疎い砂良でも、彼女の名前は知っていた。砂良に限らず、校則等で自分の愛したロングヘアとお別れをしなければならない女の子の多くは、
 切るのは嫌だけど、もし、本当に切らなければならないのなら、
 この店で、風子さんに切ってもらいたい
・・・そう願っている。
 今日も、髪風船は、休日ということもあり、沢山の女の子で一杯だ。しかも、ロングヘアの若い女の子が多いような気がする。もしかしたら、砂良と同じような境遇で、わざわざ遠くから電車に乗って、来ている子もいるかもしれない。風子を指名したら、かなりの時間を待たねばならないだろう。それでも、自分が大切に伸ばしてきた黒髪にハサミを入れてもいいのは、同じように長い髪を愛してくれる人がいい・・・。
 砂良は、あそこで順番待ちしている子達も、自分と同じことを考えているんだろうなと思いながら見ていると、その中に砂良と同じような長〜〜〜〜い三つ編みの女の子を見つけた。彼女は、うつむいて2本の三つ編みをしっかりと握りしめていた。砂良は、眼鏡もないのでよく見えないが、しかし、それ故に、裸眼で遠いガラス越しの彼女の気持ちを感じることが出来た。

 「本当は、切りたくない!このまま、順番が来ない方がいい・・・」


「砂良ちゃん、噴水の前じゃなかったっけ?」
 ここで漸く、お待ちかねの太股少女、失礼!髪長美少女の登場である。砂良は、眼鏡のないこともあって、何でこの町に髪長アイドルさんがいるのだろうか?と不思議に思ったが、数秒後に、自分に声を掛けたのは、立花ひかりだと分かった(
第10話参照)。
 いやーーーー、それにしても綺麗だ。この長さ、この輝き、もうたまりませんねーー!!
 先ほど、登場した椿の妖精、薫がぽかぽかとした春の日差しを感じさせるのに対して、同じパッツン系でも、ひかりの場合は、正にクールビューティー!暑い夏の日差しに稲妻のように突き刺さってくるような圧倒感がある。
 皆さんは、どちらがお好みですか?(笑)
 週末で賑わう人々の注目を集めながら、二人はあの眼鏡屋へと向かった。
砂良「あっ、見える。でも、ちょっと痛い。」
 というのが感想らしい。
 帰り道、砂良に見えたものは、人々の注目のまなざしだった。コンタクトをしてない時は、皆、ひかりのことだけを見ていると思っていたが、実はそうではないことが分かってしまった。
ひかり「コンタクトにして、良かったでしょ?」
砂良 「あ・・・」
 二人が、再び、歩道橋を渡っていくと、
ひかり「さっき、あの中、ずーーーーっと見てたでしょ?」
砂良 「うん、ちょっと気になる子がいて・・・」
 砂良がコンタクトをした目で、再び、中を覗いてみると、丁度、その女の子の順番になって、風子に呼ばれているところだった。
 彼女は、最初は、かたくなに動こうとはしなかったが、やがて立ち上がって、静かに三つ編みを握っていた手を離した。
 彼女が握りしめていたものは、4つの赤いさくらんぼ・・・あの少女は、彩乃だ!(主に第6話参照)
 片瀬彩乃12才、この時代の女の子では、最高の称号とされる髪長美少女ではなくなる瞬間が、もうすぐ、そこまで来ている。
 おーーー髪よ!!!

次回に続く・・・

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あ と が き        ご 感 想 





2007.12.29投稿、2008.1.1(Vol.812)掲載___Cont.No.RV0216    第17話へ 目次へトップへ


    第2章 少 女 覚 醒



「片瀬さん、こんな長い髪では、中学生にはなれませんよ。この辺りでバッサリ切りましょうね。」
「こんなに長い前髪では、前が見えませんね。入学式までには、ちゃんと眉の上で、バッサリ切り揃えましょう。」

 砂良は、昨日のホームルームで、彩乃に発した言葉を思い起こしていた。
 彩乃は、悪いことをしに来たわけではない。ただ、クラス委員の砂良に言われたままのことを、直ぐに実行しようとしたに過ぎない。
 しかしながら、今、ウインド越しで、起ころうとしている出来事は、砂良には、全く想定外のことだった。その原因を作ったのは、自分。勿論、本意ではない。このことを彩乃に伝えるべきかどうか?いや、そんなこと、彩乃も分かってるに決まってる。
 昨日一日で、本当に色んなことがあった。でも、こんなにも早く、その問題に直面しようとは・・・。
 彩乃は、髪風船カリスマ美容師、青井風子に案内された席に向かって、緊張した様子でゆっくり歩いていった。対して、風子の方は、こんなに可愛くて、髪の綺麗な女の子が、お客さんで良かったというような表情に見える。
 彩乃は、赤いさくらんぼを付けたまま、席に座った。その席は、髪長美少女にとっては、処刑台・・・。あと数分で、髪長美少女、片瀬彩乃は死亡する。そこに残される死体は、ただの短髪少女。
 そんな彩乃に、風子は実に嬉しそうに話しかける。初めは、頷いたり、首を横に振ったりするだけであったが、彩乃が顔を上げて、鏡越しの風子に、最初の一言を告げると、それまでの風子の嬉しそうな表情が、急に曇った。
 風子は、深い溜め息を付いた後、彩乃の太くて長〜〜い三つ編みを持ち上げながら、白いケープを被せた。

 いよいよ始まる・・・死刑執行。

 風子は、背中に流した彩乃の長〜い三つ編みを、再び前の方に持ってきた。鏡に映る彩乃の最後の三つ編み姿・・・本当に可愛い。この太い三つ編みを結んでいるゴムに付いている4つの赤いさくらんぼが、その可愛さを一層、
 むっ、急に、彩乃が、そのさくらんぼを手で押さえるように隠した。恐らく、
 「髪を解くので、そのゴム取りますね。」というようなことを言われて、反射的に手が出てしまったのだろう。
 でも、髪を切りに来た彩乃が、それを拒否することなどあってはならない。彩乃は、やむなく静かに手を下ろした。
 風子は、左手で、太くて、つやつやの三つ編みを握り、右手で、2つの赤いさくらんぼを掴んだ。

 「この赤い玉が、恐いおじさんから守ってくれるよ。」

 あっ!遂に、取られた。そして、もう2つ・・・。なんとも、あっけない。
 彩乃は、台の上で仲良く並んだ4つの赤いさくらんぼを、じっと見つめていた。この髪飾りが、彩乃のバージン・ヘアを彩ることは、多分もうない。こうして、積み重ねた思い出を1つ1つ捨てていくことが、大人になるということなのだろうか・・・。
 風子は、彩乃の三つ編みに細い指を通して解いていき、さらに、真っ白なケープ一面に、神様が与えて下さった最高の芸術を広げていった
 おーーーーーーー、本当に本当に素晴らしい。三つ編みの跡が全く付いていない。この位置からでも、よく分かる。正しく、形状記憶ミラクルヘアー
第6話参照)である。この状態のまま、何時間でも、見ていたい。
 三つ編みを解かれた彩乃は、その多量の髪が肩も胸も背中までも覆い尽くして、まるで、平安のお姫様のようにも見える。そのお姫様が、数分後には・・・。
 風子は、死刑執行を待つ彩乃に再び話しかけた。彩乃は、その度に、首を縦や横に動かしていくので、長くて重い前髪が、ゆらゆらと徐々に、彩乃の視界を狭くしていった
 あー、もうすぐ、顔が見えなくなってしまう。
 風子とのやりとりの中で、既に、両目が半分ずつ隠れた状態で、彩乃は、自分のあごの辺りに手を当てて、アイ〜ン(by志村けん)のようなポーズを取って、水平にした手のひらを左右に動かした。つまり、これは、

 「この辺りで、ばっさり切って下さい。」と、いう意味なのだろう。

 この瞬間、作者にも、何か背中を突き抜けるようなものを感じた。あー、本当に切ってしまうんだ。
 次に、彩乃は、人差し指を、眉のある辺りに「一」の字を書くように、動かした。

 「ここで、前髪もパッツンして下さい。」

 あごの辺りで切り揃え、前髪もパッツン。つまり、その髪型は、

        

 ギョ、ギョエーーーーーーーーーーーー!!!あの美しいワンレン娘が、そんな姿に・・・。とても想像出来ない。
ひかり「ねぇ、あの子、片瀬さんじゃない?砂良ちゃん、あれ?」
 砂良の姿は、そこには無かった。無理もない、断髪恐怖症の砂良が、とても直視出来る場面ではない。
 風子は、霧吹きで、彩乃のバージン・ヘアの表面を湿らせて、後ろ髪の方から、粗い目の櫛で梳いていった。これぞ、プロの技と言わんばかりのテクニックだ。カリスマ美容師によって、梳られた濡れ髪・・・余りに、美しすぎる。
 あー、本当に、私は、歴史的瞬間に立ち会っているのだろう。
 残るのは、長〜い前髪だけ。思い起こしてみよう、あの素晴らしい等式を・・・(これも第6話参照)。

    前髪の長さ=後ろ髪の長さ(ワンレングスの等式)

 この長くて美しい前髪にまで、櫛を通してしまうことは、ワンレン美少女、片瀬彩乃の生涯が幕を閉じてしまうことでもある。既に、全く絡みも摩擦も存在しない、つるつるすべすべのバージン・ヘアは、彩乃の顔を殆ど隠してしまっている。後は、儀式あるのみ。

 すーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ、静かに幕は下ろされた。

 彩乃の顔は、分厚いカーテンに阻まれ、もう完全に見えなくなってしまった。このお姿こそ、ワンレン髪長美少女、片瀬彩乃の最後の最後の本当に最後のーーーーーーーーーーーーーのっぺらぼーーーーーー!!!なのである。
 あー、もう、我慢出来ない。この歴史的瞬間を、間近で見ないでどうする。髪風船の店内へ、ワーーープ!

    ギュイーーーーーン!

 うぉーーーーーー!!こ、これは・・・。もう、美しすぎて言葉が出ない。真っ白なケープに360度広がる黒髪バージン・ヘア。この適度な湿り気が、元々多いキューティクルを増幅させたかのように、この上ない輝きを放っている。間違いなく、今日のこの美容室内、いや、世界中のヘアサロンの中で、最も美しい。
 風子は、この完璧なのっぺらぼーに、分け目を入れるべく、櫛の柄の部分でこめかみの辺りから、前髪とその他に分かれるように、左右2カ所に隙間を作った。
 その隙間から、覗き込みながら、
風子「本当に、いいのね?」
彩乃「・・・・」
 沈黙は、続いた・・・。風子の反対側の隙間から、作者も覗き込む。

    一筋の涙・・・・・。

 恐らく、涙を堪えるのに精一杯で、声を発することも出来ないのだろう。そんなにいやなら、切らなきゃいいのに!
彩乃「・・・お願いします。」
 さらに、多くの涙がこぼれた。それを察してか、風子は、彩乃の泣き顔が見えないように、後ろ髪から、ブロッキングし始めた。彩乃の長くて多量のバージン・ヘアが、幾つもに分けられていく。この姿は、最早、髪長美少女とは言えない。明らかに、処刑台で死刑執行を待つワンレン美少女、最期の姿である。
 風子は、再び、霧吹きで、彩乃の長〜〜い前髪を湿らせた後、何度も櫛で梳かした。
 これで、準備は整った。風子は、遂に、あの銀色に輝く物体を手にした。それは、砂良がこの世で1番嫌いなもの・・・ハ・サ・ミである。
 あーーーー、本当に、本当に、彩乃の長〜〜〜い前髪が、パッツンされてしまう。
 風子は、彩乃の目の少し下の辺りで、左手の人差し指と中指で、彩乃の真っ直ぐに長く伸びた前髪を挟んだ。そして、彼女が右手で持っている光る物体が、ゆっくりと、その場所に近づいていった。
 しかし、この時、徐々に、深まっていく彩乃の悲しみは、12才の少女の持つ理性だけで、抑えることが出来なくなっていた。彼女の小さな肩が、ヒクヒクと小刻みに上下する。止まらぬ涙・・・。
 そして、遂に、来る時が来た。彩乃の長〜〜〜い前髪の上下には、鋭く光るギロチン・・・その先にある風子の指は、今、ゆっくりと、ギロチンが下りる方へ・・・バージン・ヘアギロチンまでの距離、3ミリ・・・2ミリ・・・1ミリ・・・・
 おーーーーーーーーーー髪よ!!!!
彩乃「うっ、・・・、うっ、・・・」
 あー、もう、駄目だ!胸が、胸が苦しい。心臓が爆発しそうだ。意識が遠のいていく・・・。


 「彩ちゃん、ダメーーーーーーーーーーーー!!!」、ガチャーーーン、バキバキッ、ボコーーーン
 
 何か、女の子が叫ぶ声と、物が壊れるような音がしたような・・・。
 処刑台の前には、長ーーーーーーーーい髪の少女。しかも、三つ編みが半分解けている
 彼女は、台の上に置かれた4つの赤いさくらんぼを手に取り、昨日のホームルームで言った事は、自分の本心ではないので、彩乃が髪を切る必要はないということを、長々と熱く語り始めた。
 少女の名は、詩鳥砂良。風子は、砂良の行動と熱弁ぶりに、いたく感動した様子だった。
風子「なんか、サーラみたいだね。」
 これは、思いもよらない誉め言葉だった。確かに、髪を切られそうな女の子を止めに来たところは、同じかもしれないが、それを憧れのカリスマ美容師、風子から直接言われるとは、夢にも思わなかった。憧れの人から、自分にとって、最高の言葉をもらった砂良は、有頂天になってしまったが、まだ、自分がしでかしたことに気付いてはいなかった。
 この席に走って来る途中で、店の中の器具を壊してしまったのである。三つ編みが片方だけ解けたのは、その所為だった。
 もう、彩乃が髪を切る切らないは、大した問題ではなくなっていた。砂良が壊してしまった機械は、とても高価なもので、小学生の貯金で払えるような金額ではなかったのである。
 砂良は、「ごめんなさい」を繰り返しながら、このことをどうやって、親に話すべきか考えていた。もうすぐ、中学生になるというのに、こんなことで、親に心配をかける自分が恥ずかしかった。そんな中、ひかりが、店内に入ってきた。
ひかり「風子さん、お願い。砂良ちゃんは、私の友達なの、何とか許してあげて。」
 何と!ひかりは、風子と知り合いだったのである。しかも、かなり親しそうだった。
風子「そうね、じゃー、うちの店のヘアーモデルになってくれたら、弁償しなく
   てもよくしてあげる。」

  「ヘアーモデルって、髪を切るんですか?」

 そんなこと、怖くてとても聞けない。それに、例えそうだとしても、今の状況で断ることなど出来る訳がない。風子は、嬉しそうに、砂良の世界一美しいバージン・ヘアに触れ、半分解かれたままの状態で、写真を撮り、その画像を本店に転送した。本店からは、直ぐに返事が来て、早速、明日来て欲しいとのことだった。
砂良「本店って、何処にあるんですか?」
風子「東京よ。そっちのお嬢さんも、一緒に来てください。交通費は、こちらで
   もちますから。」
彩乃「はい、私も行きまーす。」
風子「ひかりちゃん、明日大丈夫でしょ。二人を本店まで連れて行ってあげて。」
ひかり「はい。ついでに、東京の色んなとこ、案内してあげるね。」
彩乃「わーい、東京、東京。」
 さっきまで、泣いていた彩乃は、嘘のようにはしゃいでいた。彩乃にしてみれば、自分がしたことの責任を取りに行くというよりも、友達の砂良の付き添いという感覚でいるのだろう。
砂良「そういえば、ひかりちゃんて、東京から越して来たんだっけ。」
 砂良は、明日のことを考えると、とても彩乃のように、はしゃいではいられなかった。自分の大切な髪が、どうなってしまうのか?全く、想像もつかない。
 東京、髪風船の本店・・・・果たして、この場所で、どんなドラマが展開されるのだろうか?旅立ちの時は、近い。

次回に続く・・・

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2008.4.8(Vol.827) 初出___Cont.No.RV0217     目次へトップへ


    第2章 少 女 覚 醒



 砂良は、家に帰ると、早速、今日の髪風船での出来事を家族に打ち明けた。
砂良「大丈夫、ひかりちゃんは、東京のことよく知ってるみたいだから。」
 勿論、長良小夜子も、普段外出を控えている砂良が、子供だけで遠くに出掛けることが心配だった。だが、それ以上に、あの事件以来、一度も髪にハサミを入れたことのない砂良が、断髪の恐怖に耐えられるのか、そのことが不安でならなかった。家から遠く離れた所で、ただ、娘の無事を祈るしかない。とても辛いことではあるが、自分でしたことの責任を自分で取ろうとしている娘を、二人は止めることが出来なかった。
 もしかしたら、今よりももっと深い心の傷が残るのかもしれない。でも、こうして、皆少女から大人になっていくのだろうか・・・。

 「お姉ちゃん、ヘアモデルって、髪切るの?」

 とてもそういうことを平然と聞ける雰囲気ではなかった。今回ばかりは、年少の通夜でも、ただならない事態だということがよく分かった。自分の部屋に入ったサラつや姉妹は、無言でテレビを見ているだけだった。
 う〜ん、正直、空気が重い・・・。よし、他の子の部屋にワープしよう。


    ギュイーーーーーン!


 むっ、ここは・・・?女の子の部屋には違いないだろうが、何か落ち着いた雰囲気の・・・。おっ、机に向かって勉強しているのは、何と、三つ編みの少女ですねー。ただし、体の大きさからいって、彩乃ではない。
 あっ、カレンダーの横に掛けてあるのは、名門三ツ星才女学院の制服ではありませんか!
 あのカッコいいブレザーを、塚原あゆみや遠山さくらも着るわけですねー。でも、名札が付いているので、新入生のではないようだ。名前を見ると・・・川野。あっ、そうか、あの三つ編みの少女は、砂良のクラスメートの川野愛里
第9話参照)の姉、川野愛子(かわの・あいこ)ですね。
 ご存知のように、三ツ星の中等部では、髪の長〜い生徒は、三つ編みにすることが義務づけられている。愛子が家でも三つ編みをしているのは、恐らく、勉強の邪魔になるからだろう。前髪も、少し伸びているようで、垂れてこないように、1本のピンで留めてある。それにしても、愛子の三つ編みは、その性格を表しているかのように、本当に綺麗に編まれていますねー。太さも編み目の間隔も均等だし、何よりも、この艶、輝き、あーーーーーー触りたい!!俺にニギニギさせてくれーーーーーー!!!

 コン、コン、ガチャ、
「真面目ですねー、もうすぐ卒業なのに勉強ですか。」
 今、入ってきたのは、妹の愛里。6年5組の女子で、唯一、三ツ星の中等部に進学することになっている児童である。可愛いけど、ショートヘアなので、やっぱり詳細は省略(笑)。姉は今年卒業するので、同じ中学には通えないが、誰もが認める才色兼備の美人姉妹である。
愛子「珍しいわね、何か用?」
愛里「卒業の儀式のことだけど、私が立ち会ってもいい?」
愛子「いいけど・・・、急にどうしたの?」
愛里「いや、別に・・・、どうせ彼氏とかいないんでしょ?」
愛子「うるさいわね、小学生のくせに。」
愛里「私だって、4月から中学生だもん。」
 そう、愛里も、4月から、あの三ツ星の制服を着るわけですよ。ショートだけど、でも、結構、似合っちゃったりして、可愛いんだろうな〜。
愛子「ねぇ、しとりの泉って、聞いたことある?」
愛里「さあ、詩鳥って名字の子ならうちのクラスにいるけど、それがどうかしたの?」
愛子「知らないならいいけど・・・。そういえば、どうして、髪短くしたの?」
愛里「・・・勉強の邪魔だからよ。」
愛子「そうかなー、私は邪魔じゃないけど。」
愛里「じゃー、これは要らないね。」
 愛里は、愛子の前髪を留めてあったピンを、すっと抜いて、自分の短い前髪に留めると、自分の部屋に逃げるように帰っていった。
愛子「ちょっと、もう。」
 愛子は、これから起きる悲劇、いや、喜劇など全く想像もつかず、しばらく、そのままの状態で、勉強を続けた。

   ・・・たらり・・・。

 愛子が、少しうつむくと、少し伸びた愛子の前髪は、愛子の綺麗な瞳の前に落ちてきてしまった。そして、この中途半端な長さが曲者なのである。
 例えば、ちょんまげ娘の水沢栞くらいの長さなら、ちょんまげを解くと、口まで隠れて視界が遮られてしまうが、まぶたの上には、つるつるの髪がひんやりとして、気持ち良くもある。対して、愛子の長さだと、前髪の隙間から、何とか視界は確保出来るが、まぶたを開くと、その毛先が、愛子の瞳をつんつん攻撃してくるのである。これは、この上もなく、うっとうしい。
愛子「あー、もう。」
 少し、首を左右に振ってみた。が、逆効果だった。今、正に、愛子の長いまつ毛と前髪の毛先との間で、激しい陣取り合戦が行われている。
 そう、この状態こそ、才色兼備の三つ編み美少女、川野愛子のプチのっぺらぼーーーーーーーーなのである。
 愛子は、才女のプライドが邪魔をして、愛里のところにピンを返してもらいに行くことをためらった。自分で、何とかせねば。愛子は、左手で前髪を押さえながら、勉強を続けることにした。そして、しばらくして、左手が疲れてきたので、ある程度癖が付いたかなと思うと、手を離して、勉強を続けた・・・。あーでも、この程度では、1分も持たない。

   ・・・3・2・1・・・たらり・・・

 あーーーー、うっとうしいだろうなーーーー。でも、人の小さな不幸というものも、なかなか見ていて楽しいもんですねー。
 愛子は、もう我慢が出来ず、隣の部屋の愛里の前髪からヘアピンを奪い取り、愛里の部屋のドアにある小さな鏡を見ながら、自分の前髪にピンを留めると、さっさと自分の部屋に戻って行った。

   つるつる〜〜ん

 これで、快適に勉強を続けられる環境が整った・・・はずであった。愛里は、素直にピンを返したが、愛子が前髪にピンを留めている間に、愛子の三つ編みを結んでいたゴムを気付かれないように抜き取っていたのである。そして、ただでさえ直毛の愛子の長〜い黒髪は、ゴムが抜かれてから席に着くまでの僅かな時間で、殆ど、三つ編みが解けてしまっていた
 このことを知らない愛子は、思いっきり前傾姿勢で、勉強に打ち込んでいた。何だろう?いつもと、背中の感覚が違う。そんなことを考えている間に、すっかり愛子の左右の視界は無くなり、長くてつるつるすべすべの横髪は、愛子の両腕にまとわり付いていた
 前髪は、ピンで留めてあるはずなのに・・・。愛子は、今のこの状況を理解出来ずにいたが、しばらくして、両手でサイドの髪を背中の方に払うあのシャンプーのCMによく出てくるお決まりの動作(←どなたか、この動作に名前を付けて下さい)を何度も繰り返しながら、勉強を続けた。
 いや〜、本当にいいもんですね(by水野晴郎)。まるで、シャンプーのCMをリピートして見ているようだ。あー、この艶、輝き、日本人に生まれて良かったーーー。愛子の黒髪は、量も多く、太いので、こんな動作を続けるのは大変だろうが、もっと見ていたい。
 そして、この喜劇は、次なる段階へ・・・。何度払っても、滑り降りてくるつるつるのバージン・ヘアに困り果てた愛子は、後ろ髪を全部、一旦、左肩の前の方に持ってきて、左手でその束を持ちながら、勉強することにした。しかし、これでは、左側の視界が遮られてしまうので、髪の束を持つ手を左の方へ伸ばして、左の視界を確保した。
 でも、こんな無理な姿勢が長く続くわけがない。今度は、右肩の前に髪の束を持っていったが、左手でこの束を掴もうとすると、右側の視界は確保出来ない。よって、却下。仕方がないので、髪の束を背中に持っていって、首の後ろの辺りで左手で押さえながらすることにした。この姿勢もかなり辛い。

 愛子は、こんなことを試行錯誤しながらやっているうちに、遂に、今日の勉強を終了させた。
 おめでとう!
愛子「あー、終わったーーーー。」

  ビシーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 達成感のあまり、両手をバンザイするように、上に伸ばした瞬間、無理をし続けた愛子の左ひじに激痛が走った。
愛子「痛ーーーーーーーーい!!!!」
 誰かさん(第13話参照)も似たような・・・。そして、痛みのあまり、回転する椅子の後ろに倒れ落ち、動けないでいた。この時、愛子の解かれた長〜い髪が、倒れこんだ愛子の顔に絡みついて、のっぺらぼーーーーーになっていたのは、言うまでもない。
 ガチャ、
愛里「お姉ちゃん、・・・・・、顔何処?
 やれやれ、賢そうに見えても、精神年齢は、栞や沙也香と、あまり変わりはないようですね。
 むむっ、栞?そうだ!沙也香から来たメールの内容をまだチェックしてない。またまた、栞の部屋にワープ!


    ギュイーーーーーン!


 おっ、ここは・・・、部屋中黄色だ。その黄色い壁の至る所にイラストのような絵が貼ってある。可愛い絵を書くんですねー。それから、あれは、神永中学の制服。上のカバーは取ってあっても、まだ新しいので、恐らく、新入生のでしょう。ということは、神小の6年生か・・・。
 むむっ、鏡台の上には、透明なキュービックの付いた黄色いゴムが2つ・・・。これはもう、ツインテールのあの子しかないでしょう。しかも、これがここにあるということは、本人は、解き髪なわけで・・・。
  「栞からメールだよ」、「栞からメールだよ」、「栞からメールだよ」、・・・
 ああ、突然びっくりした!ピコ(←もう説明は要らないですよね でも一応第13話参照)の呼び出し音が、目覚ましのように鳴っている。連呼する設定にするとは、結構、せっかちな子ですね。
 あっ、近づく足音が聞こえる。今の着信音を聞いてのことでしょう。いよいよ部屋の主、月影沙也香第8話参照)の登場ですよ。
   ガチャッ、
 彼女は、一目散に、ピコのスイッチに向かった。しかし、彼女の足の裏を待ち受けていたのは、黄色いじゅうたんではなかった。
   つる〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん
 何たる予定調和か!如何に彼女がバナナを好きだといっても、こんな時のこんな場所にバナナの皮が落ちているなんて!!
 それでは、スローで見てみましょう。長〜〜〜〜いワンレングスを真ん中分けにして、初期の金八先生(←例えが悪い?)のように、長〜い前髪を耳に掛けている沙也香。もう、あっという間に。
   バサーーーーーーーーーー!!!
 出ましたーーーー!!あわてんぼ沙也香のズッコケのっぺらばーーーーー!!!
 髪を解いていなければ、こうはいきませんよ。こんな素晴らしい偶然を下さった神様に感謝します。
 沙也香は、長〜い前髪を抑えながらピコを操作して、栞からのメールを読み始めた。内容は、以下の通りである。
前説:
 本メールは、先日、沙也香から栞に送られてきたメールへの返信メールである。よって、>に続く文が沙也香で、それ以外の部分が栞が書いたメッセージである。なお、この時代の少女の創作文字等を、当然、作者は知らないので、意味不明なものは独断で削除してある。
Re:沙也香だよ〜ん


>今日のホームルーム凄かったね、いろんな意味で。

ねーーーーーー、ここじゃ書き切れないくらいすごかった。

>詩鳥さんも途中からおかしくなって、少しかわいそうだったね。

ちょうど、沙也香の時くらいから、おかしくなってたね。

>あーー髪切るのやだよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
>実はね、私、三ツ星受験してたの。
>落ちたけど。
>内緒にしててゴメン。

えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!
としか言えない。

>あそこの高等部の制服かわいいでしょ。
>あの制服着て、こんな格好するのが夢だったの。

   写真1 「サーラ!」
    ↓   
   写真2 「ラブリー!」
    ↓
   写真3 「チェンジ!」
    ↓
   写真4 変身完了

>三ツ星才女学院・高等部の沙也香完成、なんちゃって。
>でも、ヨカッタ。栞と同じ中学に行けるから。
>今度の試合ガンバッテネ。
>もし、優勝したら、いいものあげられるかも。

実は・・・私も沙也香に黙っていたことがある。
今度の大会で優勝できたら、一の木学園の特待生に推薦されるって。
だから、本当に、優勝したら・・・。まっ、無理だろうけど。
今、思えば、「一緒に制服買いに行こう」って言ったのって、
三ツ星の合格発表の日だったんだね。

>それじゃーね、
後説:
 写真1・・・神中の制服を着た沙也香の三つ編み姿(←かなり可愛い!)
 写真2・・・同じく、沙也香が三つ編みを解いた仲間由紀恵状態
 写真3・・・出たーーーー!!沙也香ののっぺらぼーーーー!!!
 写真4・・・長〜い前髪を七三に分けて、ヘアピンで留めてある沙也香
 「サーラ!ラブリー!チェンジ!」とは、髪長美少女戦士サーラが変身する時の決まり台詞である。
 要するに、サーラが変身するように、沙也香も三つ編みの中学生から自由でちょっと大人の高校生になりたいという意思を表している。
 沙也香は、うつむいたまま、深いため息をついた。
 お互いに、「中学になったら、同じクラスになれるといいね。」とか言いながら、一緒に制服まで買っていて、それぞれが、別の中学に行くことを考えていたのだ。友達にも、平気で嘘をつく・・・それが、大人になるということなのだろうか?
 沙也香は、長〜い前髪をかき上げて、鏡に映る自分の顔をじっと見つめた。まだまだ、子供だと思った。それから、ベッドに寝転がって、栞のことを考えていた。
 ロングヘアが許される「一の木学園」は、私立だが、学力テストの他に、一芸合格のコースもあり、特待生は学費が免除されるので、推薦されれば、勝ち組でない家庭の栞でも入学出来る。栞が「一の木」に入学するのは、神中に柔道部がないためで、栞の柔道を応援してきた沙也香が反対など出来るわけがない。
 最早、ショートカットになることが決定的となった沙也香、友達の優勝を素直に喜べるのだろうか?そして、何よりも、今までずっと一緒だった二人が別々の中学に行くことになるかもしれない。色んな思いが、沙也香の心の中を駆け巡った。自分から送った最後の言葉「お・や・す・み」とは裏腹に、今夜は眠れない夜になりそうだ。栞も、同じことを考えているのだろうか・・・。
 あー、こっちも、空気が重いな。バカ校則の所為で・・・。それでは、今度は、栞の様子を見に行ってみようか。水沢家にワーーーーーーープ!


    ギュイーーーーーーーン!


 あれ?例の如く、思った所にはワープ出来ないようですね。ここは、サラつや姉妹の部屋。天井の明かりは消えていて、通夜の方は、長過ぎる髪を下に垂らしたまま、もう、床に付いたようだが、砂良は、鏡をじっと見つめたまま動いていない。
 砂良には、店に入ってから処刑台の彩乃の所に行くまでの記憶が、殆ど無かった。外からは、何度も見たことはあっても、髪風船の入り口が何処にあるのかもよく知らないし、自分の意思というよりも、心の奥底にある何かが、砂良を動かしたように思えた。
 何れにせよ、彩乃のヘアカットを阻止した代わりに、今度は、自分が処刑台に行かされることになってしまった
 今の三つ編みを解いて、朝、起きてからする三つ編みが、最後なのかもしれない。
 もうすぐ中学生なんだから・・・。そんな言葉を何度心の中で唱えても、砂良の恐怖は拭えなかった。
 大人になるって、どういうことなんだろう?髪を短くすること?今の私は、まだ、こんなにも幼くて・・・。
 眠れない。このまま朝が来なければ・・・。でも、そんなことあり得ない。
 もう、じっと座っていることにも、耐えられなくなってきた。誰かと話をしたい。じゃないと、不安でおかしくなってしまいそうだ。通夜はもう寝ている。両親には、心配をかけたくない。残された選択肢は一つ。
 砂良は、自分の部屋を出て、隣の兄・良介の部屋のドアに近づいて、中から音がしないか、耳を澄ました。良介は、受験勉強も終わって、年齢的に今頃の時間でも起きているはずである。
 「あー、☆郎の奴、触りまくりやがって。」「くそー、俺もV作になりてーなー。」「やっぱ、由香さんは最高だよなー。」
 砂良には、ドア越しに聞こえてくる兄の言葉の意味が、全く分からなかったが、良介が部屋の中にいることは、確認出来た。
さあ、全国のお兄ちゃん、お待たせ致しました!あなたの心の妹、詩鳥砂良が、今、あなたの心のドアをノックします。
 コン、コン。
砂良「お兄ちゃん、起きてる?」
良介「えっ、砂良か?ちょ、ちょっと、待ってくれ。」
 ゴソゴソ・・・
良介「どうぞ。」
 砂良が部屋に入ると、パソコンの画面は、ゲームになっていた。
砂良「こんな時間に大丈夫だった?」
良介「ああ、ゲームの途中だけどいいぞ。」
 因みに、ディスプレイは、ゲームの途中ではなく、スタート画面だったが、今の砂良の心理状態では、そんなところにまで目が行くはずもなく、ただ、兄に受け入れられたことに安堵した。
 一方、良介は、かなり動揺していた。そういえば、最近、二人きりで話したことは殆ど無かったし、それ以前に、砂良のメガネをしていない顔を、随分長い間見ていなかったことに気付いた。こんなにも美しい少女に成長していたのか・・・。
砂良「あの・・・私ね、明日・・・長い髪・・・三つ編みとか、最後に・・・」 
 良介も、ある程度は、砂良が何のために来たのか、察していたが、何を言っていいのか分からなかった。「大丈夫だよ」とか「心配するな」とか無責任なことも言えないし、何か不安を紛らわすことを言わなければならないと思った。
良介「明日、東京行ったらさあ、芸能人に会えるかな?」
 不安に満ちた砂良の表情が、少し綻んだ。砂良は、やっぱり、ここに来て、良かったと思った。
「砂良ね、こんなに髪伸びたんだよ。」
 砂良は、後ろにあった長〜い三つ編みを前に持ってきて、自慢げに見せた。
「うん、解いたら下に付くんじゃないか?」
 良介は、砂良のリラックスした顔を見て、自分も安心した。だから、こんな気の利いた言葉も出てくる。
「どうかなー?」
 砂良は、そう言いながら、三つ編みを持ち上げて、赤いさくらんぼの先の方の髪をゆらゆらさせて遊んだ。
 さあ、良介!もう一息だ。解かせろ!!解かせろ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
砂良「ねえ、解いた方が良い?」
 こんな小悪魔な神(髪)の声があるだろうか!良介は、肉声を発することが出来ず、ただ、大きく頷いた。そして、それを見た砂良は、良介の手の届く位置に4つの赤いさくらんぼを差し出した
砂良「はい、どうぞ。」
 良介の心臓は、爆発寸前で、思考回路も殆ど壊れている。それでも、微かに残る意識の中で、遂に、砂良の長〜い三つ編みを結んだゴムに付いたさくらんぼをその手で掴んだ
 あーーーーー、これは夢だ。絶対に夢だ。良介は、もう、そこから、体が動かなくなってしまった。
 砂良は、良介がなかなかゴムを外そうとしないので、三つ編みを持ったまま後退りした。すると、
 
    つる〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、つる〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん。

 何の抵抗もなく、ゴムは抜けていった。ここから、良介の意識は、もう無いに等しい。砂良は、ゴムが取れたばかりの長〜い髪をゆらゆらさせながら、三つ編みを解(ほぐ)していくと、くるりと後ろ向きになり、「あれ」をやってくれたのである。そう、左右の手の甲で、あの長過ぎる後ろ髪を一気に背中に払ってしまったのである
 こんな至近距離で、そんなことをしたら・・・。砂良の長過ぎる髪は、ふわりとダイナミックに浮上した後、良介の顔をペロリと舐めて、すーーーーっと下に降りていった
 やっぱり、夢だ。夢に違いない。
「見て、お兄ちゃん、こうすると下に付くかもしれないから。」
 砂良は、上を向いて、背中を反らしてみせた。ああ、確かに、砂良の髪は、床に付いている。そうか、そうなんだ。なんか、益々、愛しく思えてきた。こんなことまでしてくれて・・・。あーー、可愛いなーーーー。
「きゃーーーーーーっ」
 無理な姿勢を続けた砂良は、バランスを崩して、倒れそうになった。そして、この時、それまで、夢の国を旅していた良介が、ふと我に返り、体を張って、基、顔で砂良の解きたてのバージン・ヘアを受け止めて支えた。顔に絡みつく世界一のバージン・ヘア・・・
 あー、もう、100回死んでもいい。エレナ(シャンプー)の優しい残り香が、良介を再び天国へと誘った。
 今のアクションで、砂良の気持ちも、相当楽になってきた。良介の方は、もう一生分の幸せを15才にして体験してしまったが、砂良はそんな良介にさらに追い討ちをかけるように、ニッコリ笑いながら、
「お兄ちゃん、昔みたいに、砂良の髪で遊ぼ。」

             砂良の髪で、

 何ーーーーーーーーーーーー!!!!!!!何で、遊べって???!!!!おいおいおい、良介ーーーーーーーーーーーー!!!!そんなのありかよーーーーー????
「じゃー、久しぶりにやるか?」
「うん。」
 砂良は、満面の笑みで答えた。
さあ、あなたの隣にも、ふくらはぎにまで達する長〜〜〜〜い黒髪美少女の妹がいると思って・・・。
良介「ごめんください、マフラーありますか?」
砂良「はい、こちらに。」
良介「いやー、ヒンヤリとして気持ちいいですねー。」
砂良「でも、お客さん、ここを引っ張ると首が絞まるんですよ。」
良介「うぇ〜〜〜〜〜〜!!死ぬーーーー!!!」
砂良「御臨終です。惜しい人を亡くされました。」
良介「そして、死人はミイラになるのだ。」
 念の為、ここまでの二人の会話の間で、何が起きたのか説明しよう。
 砂良は、良介の顔の前に、長〜い髪を垂らし、その「黒髪ののれん」を手で払いのけて、良介が店に入り、マフラーを買う。勿論、このマフラーは人毛で、砂良の黒髪が、良介の首に巻かれる。そして、何故か、ここで客を殺してしまう。子供ですねー。それから、仰向けに寝ている良介の顔に、布のように砂良の髪を被せて、「御臨終」。最後は、良介が、砂良の顔に髪を巻きつけて、「ミイラ」ということになる。
 これぞ、試鳥家名物の元祖!「マフラー屋さん殺人事件」。どうですか皆さん、髪の長い妹がいたら、一緒にこんな遊びをしてみては。って、そんな妹、いねーーーーちゅうの。
 今度は、巻きつかれた髪を解いた砂良が逆襲に来た。
「お兄ちゃんもミイラーー!」
「えっ?」
「大丈夫、あの時よりも、砂良の髪、もっと伸びてるから、お兄ちゃんにも出来るよ。」
 こんなことをして遊んでいた頃には、自分にしか巻き付けられなかったが、さらにスーパーロングになった今では、他人の顔さえもぐるぐる巻きに出来てしまう。これこそ、「大人の遊び」というやつですね。
 あーーー!私なら、このまま、本当のミイラになって、死んでもいい。
 大人の遊びまでしてしまった砂良は、もう、すっかり、気も晴れて、自分の部屋に戻ろうとした。
「砂良、ちょっと待って。これ、貸してやるから、明日持ってけよ。」
 良介が渡したのは、砂良は持たされていないカメラ付きの携帯電話だった。
「これで、芸能人に会ったら、バシバシ撮ってきてくれよな。」
「カメラとか、どう使うの?」
 カ・メ・ラ・・・そうだ。良介は、とても良いことを思いついた。カメラの使い方を教えることに託けて、今日で最後になるかもしれない妹の超ロングヘア姿の写真を撮ることにした
「それじゃー、まず、モデルさんの髪を直さないと。」
 ということで、先程の「殺人事件ごっこ」で乱れてしまった砂良の超ロングヘアをブラッシングすることになった。いや、仕向けた
 ただでさえ、砂良の髪は長過ぎて、ブラッシングするのは、重労働である。その上、髪の乱れも、尋常ではなく、かなりの時間が掛かってしまう。でも、髪が長ければ長いほど、時間が掛かれば掛かるほど、良介にとっては、至福の時なのである。
 良介は、幸せを噛みしめながら、愛しい妹のバージン・ヘアにブラシを通した。指を通る感触、ブラシを入れる度に輝きを増す艶。あー、この家に生まれて本当に良かった。何度でも言う、あと100回死んでもいい。
 即席カメラマン、良介が最初に選んだ被写体は、王道中の王道、砂良の細い足首しか見えない世界一美しい後ろ姿だった。先細り?そんなものあるわけない。美しい・・・本当に美しい。髪の広がり方、流れ、艶の入り方、文句の付けようが無い。
 それから、顔の半分を髪で隠した超〜〜〜〜〜セクシーポーズ。とても小学生とは思えない。さらには、分け目の付いた頭頂、見せるのが大変なうなじ、あらゆる角度から、撮りまくった。そして、忘れちゃいけないのが、伝家の宝刀、のっぺらぼーーーーーーーーーーである!!!ただし、後ろ姿との違いは、つま先が見えるか、かかとが見えるかだけであるが。
 さらに調子に乗った即席カメラマンは、動画を撮ることにした。シャンプーのCMでお馴染みのかき上げシーンやのっぺらぼーになる過程のシーン。そして、黒髪の滝つぼ落とし(第12話参照)から髪洗いの格好までさせてしまった。
 ピーーーーーーーーーーーーーーーッ!やがて、携帯のメモリーが一杯になってしまった。やれやれ、良介は、携帯のデータをパソコンに移してから、充電器と一緒に砂良に渡した。
 そして、砂良が部屋を出た後も、今の夢のような出来事を噛みしめながら、自分の撮った作品を眺めていた。まさに、夢心地・・・・。
 ガチャッ、
砂良「お兄ちゃん、大好きだよ。」
 ガチャッ、
      だ・い・す・きーーーーーーーーーーーーだって!!!!!
 詩鳥良介、15才、これから普通の恋愛が出来るかどうか心配である。
 さて、兄のお陰で、何とか床に付く精神状態になれた黒孔雀は、羽根を休めるように、静かな眠りについた。そして、夜が明け、遂に、運命の日の朝を迎えた・・・。
次回に続く・・・

感想をお送りください

あ と が き        ご 感 想 







 あ と が き 

「バージン・ヘア」(あとがき)パート
アールジェタン さん  2007.10.24(Vol.806) 初出___Cont.No.RV0215a    
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   第15話「髪風船」の後書き

長友三さんへ

 今回も、作品の内容を、さらに深く説明したような詳細な感想を下さいまして、本当にありがとうございます。美容室、髪風船は、西埼玉駅の前に建つガラス張りの大きなビルの2階にあります。
 私が初めて東京に来た頃、駅のホームや歩道橋の上から中の様子が見える美容院が多くあって、都会の美容院は、こんな風に外から見やすくして、集客を狙っているのかと思っていました。
 ある意味、そんな立地条件の美容院というのは、私など一生入ることのないようなオッシャレ〜〜〜〜な空間であって、そんな乙女の花園の中で、どんなドラマが展開されるのか、激動の第16話にどうぞ御期待下さい。


スネークハートさんへ

 800号達成おめでとうございます。あと68本で王さんの記録に並びますね(笑)。このHPもウイルスに侵されたりと大変なことも多いでしょうが、全国のロングヘアラバーの皆さんの為にも、これからも頑張って続けて下さい。でも、よく見ると、第15話は、Vol.799だったんですねー。惜しいことをしました。ところで、恋人の由香さんはお元気ですか?
 さて、今回も、深い解析ともに、いくらかの疑問を投げかけて下さいました。この方が、後書きが書き易くなるのでありがたいです。また、スネークさん自身の体験やロングヘア女性への熱い思いは、非常に参考になりますし、執筆の大いなる励みにもなります。
 スネークさんは、パッツン系美少女にも思い入れがあるようですが、私は、「速水栄子」さんという女性を存じ上げなかったので、尋ね人のコーナーを見てみると、何と!昔は、あの麻丘めぐみさんよりも長く、全盛期の吉川ひなのさんよりも美しい髪のタレントさんが、いらっしゃったんですねー。しかも、美少女ですかーーー。
 ということで、当時の画像を見たくて、ネットで調べたのですが、ムチャクチャ可愛いですねー。
 実は、レトロ美少女、椿薫のモデルになったタレントさんが存在するんですが、速水栄子さんと結構雰囲気が似てるんですよ、これが。驚きました。こんな美しい女性が、もっと増えるといいですね。


読者の皆さんへ

 今回の衝撃的なラストシーンに、驚かれた方も多いでしょうが、先ずは、タイトルのいかにも造語的な「髪風船」という3文字をどこかで見たことあるかなーと思われた方も、10人に1人くらいは、いらっしゃることでしょう。
 この3文字は、第2章の冒頭の謎の男の意味不明な台詞の中に出てきます。ということは、文脈からして、「May」という美容室もあるかもしれないですねー。そして、謎の男の正体は・・・。分かった人は、言ったらダメですよ(笑)。
 では、新キャラの一人目、椿薫についてお話します。前日のホームルームでは、色々なパターンの髪解きシーンがありましたが、実現出来なかったものもあります。その1つが、まとめ髪のかんざし抜きです。そりゃそうですよね。今時、そんな格好で登校してくる女の子はいません。
 という訳で、それを実現させるために、その子の家の店で、かんざしを売っていて、その宣伝のために髪に挿しているという設定の女子が他のクラスにいることにしようと考えました。となれば、名前も和風でなければいけませんが、名字は、あのCMが印象的なシャンプーから頂戴しました。我々の永遠のアイドル・仲間由紀恵さん、ワンレンお嬢様・三杉玲奈のモデルとなった蒼井優さん、その玲奈に仕える現役女子高生メイド・垣内結奈のモデル(半分:あとの半分は、パンテーンのユイにゃん)となった竹内結子さんが、一度に見れてしまうとてもお得なCMですね。今は白椿の宣伝をしているので、薫の髪飾りも、白い椿にしました。かなり強引な設定ですが、我ながら、役柄にぴったりの名前が出来ましたねー。もしも、本当に、椿薫という名前の女性がいましたら、恥ずかしいなんて言ってないで、名前負けしない美しい髪の女性を目指して下さい。
 次に、二人目の新キャラ、青井風子についてですが、私が学生の時に通っていた床屋さんで働いていた女性が、本文のように、まっすぐな髪に仕事で使うクリップのような物を留めてあって、凄くカッコ良いなと思って、今回、カリスマ美容師として登場させました。その人は、どちらかと言えば、小柄で可愛い系でしたが、青井風子は、同性からも憧れの対象となるようなスマートな女性という設定です。そんな彼女の言動は、砂良や他の髪長少女達にとても大きな影響を与える可能性があると言えるでしょう。その意味でも、かなり要注目のキャラです。
 ちなみに、名前の由来は、青い空に風になびく髪。勿論、髪風船の「風」は、風子からとりました。これも、我ながら、綺麗な名前になりました。以上、自我自賛(笑)。
 それでは、今回のスネークハートさんの疑問も含めて、本話から、色々な謎が増えてきたと作者も思っていますので、それに答えるべく、勝手にQ&Aを作ってみました。

Q.「しとりの泉」って、本当に、神永町にあるの?
A.ファンタジー小説(やっとそれらしくなってきましたね)的には、あることにした方が、正道なのでしょうが、作者がひねくれ者なので、あまり綺麗な決着の仕方をしないかもしれません。
 
Q.赤い玉には、彩乃の運命を左右するとか、何か特別な意味があるの?
A.色が赤いということよりも、彩乃から砂良に渡されたことが重要で、このさくらんぼが、砂良や他の髪長少女の運命を握っているかもしれませんので、本作が映像化された際には、意味ありげなシ−ンでは、玉を光らせたりする演出もあったらいいと思います。
 
Q.薫「・・・オーディションに受かったら、この髪ね・・・」って、髪がどうなるんだーーーーーー?!
A.髪のことも含めて、オーディションがどうのこうということも、これからのストーリーに絡んでくる可能性があります。これらがどうなるかは、現実にある出来事と関係してきます。
 
Q.砂良とひかりが、街行く人の注目を集めたのは、顔、髪のどっち?
A.両方です。
 
Q.作者は、噴水のある駅前広場に馴染みがあるの?
A.待ち合わせ場所を、噴水広場にしたのは、あるアイドルのイメージビデオで、噴水の虹が綺麗だったからです。
 
Q.ひょっとして、のっぺらぼーを入れるのを忘れたんですか?
A.実は、私としたことが・・・・というのは冗談で、第15話は、ストーリー重視ということで、敢えて入れませんでした。ただし、文中にはないですが、朝のブラッシングタイムで、砂良はのっぺらぼーになっているはずです。
 
Q.そう言えば、沙也香からのメールの内容は?
A.これは、早いうちにやらないと、関心が薄れてしまいますね。実は、どこに入れるか、まだ決めてません。第2章で、適当なところがなかった場合は、第3章になるかもしれません。
 
Q.彩乃は、本当に髪を切りに来たの?
A.美容院内での彩乃の様子から、その覚悟で来たと判断するのが妥当でしょう。


 では、最後に、次回の予告です。次回は、スネークハートさんの御感想にもありましたように、ストーリー的にも物語の大きな転機となる非常に重要な回となります。
 恐らく、第5話「ゆきちゃんのりぼん・後編」第10話「三つ編みにサ・ヨ・ナ・ラ」をも凌ぐ、大興奮作になる(あくまで予定ですが)のではないでしょうか。
 それでは、全国の○○フェチのお兄ちゃん必見の第16話「処刑台」にどうぞ御期待下さい。

感 想
「バージン・ヘア」(あとがき)パート
アールジェタン さん  2008.1.14(Vol.815) 初出___Cont.No.RV0216a    
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   第16話「処刑台」の後書き

スネークハートさんへ

 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。今年も、バージン・ヘアを宜しくお願いします。新年の表紙も、ユニークで興味深いものが多く、楽しませてもらっています。ところで、今年こそ、あの名作漫画の続編を期待してもよろしいですよね?
 さて、今回は、話の流れから、正月早々、スネークハートさんのお嫌いな断髪(未遂)ものになってしまいましたが、今回も、いつも以上に鋭い分析をされていて、感激致しました。私も長い髪が短くなること(特に!若い女性タレント)には、激しい嫌悪感を抱いておりますが、切られる寸前までの姿には、この上ない美を感じます。そこのところをご理解頂けたのは、非常に嬉しく思います。
 後半の考察でも、かなり鋭い分析がありました。
 確かに、本話の出来事が、「非日常」の入り口になる訳でありまして、それが、そのまま「スターへの道」となっていくのか?まあ、ヘアーモデルになっただけでは、そうはならないでしょうが、今回の東京遠征は、2重3重の意味で、物語に非常に大きな影響を及ぼすことになります。
 そして、もう1つ気になるのが、謎の美少女、立花ひかりですよね。彼女には、何か秘密があるのでは?と疑っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そのことも含めて、今後も目が離せませんね。


映像関連会社の皆さんへ

 本話の髪風船でのシーンは、本作中でも屈指の名場面になるでしょうから、かなり詳しく書きましたが、もう少しだけ補足します。
 まず、忘れていけないのが、ハサミをきらりと光らせることですね。それから、髪だけでなく、のっぺらぼーになるまでの彩乃の表情をしっかり撮ること。あとは、BGM等で、悲壮感を演出することでしょうか。
 文章中では、作者が店内にワープして、目線が変化していますが、音声のことも含めて、最初から店内目線でやるのもありかなと思います。


読者の皆さんへ

 新年、明けましておめでとうございます。今年も皆さんにとって、良い年になることを願って止みません。近年、じわじわと黒髪の割合が増えているような気もしますが、長い人は、やはり少ないですね。タレントさんの中でも、期待している女性は、何人かいますが、今まで裏切られるケースの方が多いですからね。せめて、物語の世界だけでも、いい夢を見たいですね。
 さて、前回、衝撃のラストとなりましたが、彩乃の髪がどうなってしまうのか、恐らく、一番予想出来た展開だったのではないでしょうか。それでも、最後の最後まで、「もしかしたら・・・」と思われるように書いたつもりですが、いかがでしたでしょうか?結局、切らないわけですから、そこまでのドキドキハラハラの過程を楽しんで頂けたなら、本話に関しては成功だと思います。
 しかし、今度の東京遠征では、髪に何も手を加えないということはあり得ないでしょうから、これからが、本当に砂良にとっての正念場となるでしょう
 ということで、次回の予告です。第16話は、非日常への入り口となる重要な回でしたが、次回も、またまた意外な展開になってしまいます(←毎回そんなこと言ってるような・・・)。でも、ある意味、嬉しい意外の方が強いと思いますので、楽しみにしていて下さい。
 それでは、今度こそ、ロングヘアフェチのお兄ちゃん必見の第17話にどうぞご期待下さい。

感 想
「バージン・ヘア」(あとがき)パート
アールジェタン さん  2008.5.25(Vol.832) 初出___Cont.No.RV0217a    
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   第17話「鏡の中のベビーフェイス」の後書き

長友三さんへ

 いつも感想を下さいまして、ありがとうございます。本作では、意味ありげに、制服が登場していますが、それは作者が制服好きだからです(笑)。ただし、今のところ、セーラー服とかブレザーと記してあるだけで、詳細なデザインについては書いてないですよね。これは、読者の皆さんの理想的な制服を勝手に想像してくださいという意図もあってのことです。
 砂良が中学に入学する日、果たして、どんな姿になっているのか。今後の展開を楽しみにしていて下さい。


スネークハートさんへ

 創刊9周年おめでとうございます。私が本サイトにハマッタきっかけは「由香さん」ですが、まさか、自分がこうして作品を投稿するようになるとは夢にも思いませんでした。これから10周年に向けて、さらなる飛躍をお祈りします。
 そして、今回の表紙も、実に素晴らしいですね。第9話の後書きでも少し触れましたが、このCMは本当に忘れられない名作の1つですよね。ちなみに、本作で、「サーラ・リジョイ」に変身する井上夕紀は、この表紙のような艶々の髪質という設定になっていますので、読者の皆さんも、井上夕紀の名前を目にしたら、この表紙の画像を思い出して下さい
 さて、第17話は、やたらと長い上に、沙也香パートで、メールのやりとりという本作では初めてのことがあったので、編集にも色々と御苦労があったと思います。メール画面がどんな風に仕上がっているのか楽しみにしていましたが、視覚的にも非常に分かりやすく読者の皆さんに伝わったのではないかと思います。ありがとうございました。
 また、沙也香パートのバナナの皮の横にあるイラストも実に可愛らしくていいですねー。一応、沙也香のモデルになったのは、「新垣里沙」さんということでしたが、今はとても残念な状態になっていますよね。そういう意味では、沙也香のイメージ回復にとても有効だったと思います。重ねて、お礼申し上げます。


全国のお兄ちゃんへ

 今回は、砂良の旅立ちの前夜に、自分が良介だったら、こんなことをさせて欲しい、こんなことをしてもらいたいということをとりあえず並べてみましたが、いかがでしたでしょうか?
 と、その前に、今回のタイトル「鏡の中のベビーフェイス」についてですが、殆どの方は、ご存知ないでしょうが、約20年程前に発売された曲のタイトルをそのまま使わせて頂きました。私も、1度しか聞いたことがないので、確信は持てませんが、女の子が美容院で髪を切って、鏡に映ったショートヘアーの自分がロングの時よりも幼く見えた、という内容の歌詞だったと思います。
 本話で、砂良が鏡に映る自分が幼く見えたのは、だた大人の言いなりになるしかない己の無力さを悔いてのことなのか、不自由な大人になっていく自分を否定したい為なのか、或いは、どちらでもないのかもしれません。何れにせよ、これから待ち受ける困難に、砂良がどう立ち向かっていくのか、それを乗り越えた先には何があるのか、今後の展開に目が離せませんね。

 それでは、番外編的な位置付けで、今回は2つのパートがありますが、先ずは、川野姉妹パートからいきましょう。三ツ星に合格したのに、髪を伸ばさない愛里。12才と言えば、まだまだ反抗期、髪の長〜い姉に色々とちょっかいを仕掛けてきます。実際の女同士の姉妹がどうなのかは知りませんが、この年頃ならではの美髪シーンを今後も書いていけたらと思います。
 そして、ここでも、意味ありげな言葉が出てきましたね。「卒業の儀式」とは、何なのか?実は、この次の沙也香パートのメールの中に、そのヒントがあります。この2つの話は、全然関係ないようですが、並べてあるのには、それなりの理由があるということですね。
 卒業の儀式の内容が明らかにあるのは、恐らく、第4章の後半になるでしょう。そして、同時に、なぜ愛子がしとりの泉に興味を持ったのか、なぜ愛里はショートカットになったのかも明らかになるでしょう。
 続いて、沙也香パートですが、今まで明かされなかった栞へのメールの内容が、栞からの返信メールという形で示されたので、分かりにくかったかもしれませんね。
 要するに、
  1. 沙也香は、親友の栞に内緒で、名門「三ツ星才女学院」を受験したが、合格出来なかった。
  2. 栞は、今度の柔道の大会で優勝したら、私立一の木学園の特待生に推薦される。
ということですね。
 この二人の関係が、これからどうなっていくのか、栞の進路はどうなるのか、ヒロインの砂良の話と平行して進んでいくでしょうが、こちらも目が離せないですね。

 それでは、今回のメインパートである「禁断の詩鳥兄妹編」についてですが、もしも自分に砂良のような長〜い髪の妹がいたらということを実現性を無視して書き並べたので、とても気持ち良かったです(笑)。
 良介の年頃もそうですが、小6の女の子というのも、実に、微妙な存在なんですよね。ぎりぎり子供だけど、ある程度は体も成長している。一日毎の心の変化も、我々の想像を越えていることでしょう。
 そういう意味では、もう昨夜のようなことはしてくれない可能性もあります。果たして、禁断の第2回戦はあるのか?もしあったら、R指定が付きそうですが、今後の詩鳥家の危ない夜にも、どうぞご期待ください。

 では、最後に次回の予告です。
 長い夜が明け、遂に、運命の日を迎えてしまった砂良達が、旅立つ時が来ました。遊び感覚の彩乃と、案内役として、妙に人脈の広い謎の美少女転校生も、勿論、同行していきます。
 この小旅行で、砂良達は、何を目にし、どんな体験をするのか?そして、どんな髪型にされてしまうのでしょうか?いよいよ第2章もクライマックスが近づいてきました。
 皆さんも、初めて都会に旅立った日のことを思い出しながら、第18話を期待してお待ち下さい。

感 想





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「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2007.10.14(Vol.801) 初出___Cont.No.snake15    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第15話「髪風船」
アールジェタンさん、「バージン・ヘア」の新作、第15話「髪風船」のご執筆・ご投稿 ありがとうございました。
実は今回、原稿を受け取りまして先ずはタイトルを見ました時に私は、かつてあの「髪長美女大会」の共通ゲームなどで見ることがあった、 あの髪に風船をつけて舞い上がらせるシーンを連想したのですよ。例えばさらつや姉妹が部屋の中でそうやって遊んでいる光景とかを ....ところが美容院の名前だったのですねぇ、しかも神永小学校6年の少女たちの運命を握っていそうな。
そして内容でございますが、前回まで約5年・14話に亘って描かれてきた “砂良ちゃんたちにとって1番長い一日” が遂に終わりまして、 いよいよ今回より新たな一日が始まりましたが....いや〜〜『ついに(あるいは、早くも)動き始めたかぁ!』と感じてしまう 衝撃的なエンディングシーンでしたねぇ。しかも大親友の彩乃ちゃんがその最初の1人目となってしまうのですかぁ....!?

ま、その衝撃のエンディングはまた後に触れることにいたしまして....今回もそこに至るまでの間に、 数々の魅惑的・官能的なシーンが惜しげもなく挿入されていましたね。それらがアールジェタンさんの巧みな手綱さばきによって、 見事にストーリーとして結合しておりまして、いつもながら感心いたしました。先ずは冒頭の砂良ちゃんの三つ編み記念日 (そうそう、今回久々に砂良ちゃんが主役に返り咲きましたね ^_^ ).... そう言えば「バージン・ヘア」の記念すべき第1話のタイトルが「三つ編みの少女」でしたし、三つ編みが砂良ちゃんの トレードマークみたいなものでしたが、こういう経緯にて三つ編みさくらんぼ少女になったのですね。 第6話「彩ちゃんのさくらんぼ」の中で> 砂良をあの事件のショックから立ち直らせた大恩人 と紹介されていた彩乃ちゃんが導いたのでしたか。その彩乃ちゃんが今回のエンディングでは(8年前の砂良ちゃんと入れ替わって) 最大の危機に陥ろうとしているのですねぇ....その意味で『なにかすごく因縁めいた始まりと終わりだなぁ』と思いましたし、 その(彩ちゃんのさくらんぼによる)サンドウィッチの仕方が今回とても上手いなと思いました。

そうして夢から覚めた(?)砂良ちゃんですが、ここですぐに起き上がって支度に取り掛からせず、 尋常ならぬ詩鳥家の官能の早朝風景を紹介してくださるアールジェタンさんの誠実さに感動いたしました(^_^ )。 > ラプンツェルのオーロラ! しかも > 部屋の窓は東向きにある・・・日の光が低い角度から差し込んでくる・・・通夜の長い黒髪がカーテンとなり、下の段で寝ている砂良に差し込む日の光を和らげてくれる .... う〜〜んっ「素晴らしい!」の一言です。部屋の間取りまでをも考案されて実に説得力豊かに、 いかに通夜ちゃんの髪が長くて豊かで美しいかを実に科学的に緻密に更には詩的にも描かれておりました。
> 一本一本が怪しい光を放っている。何たる自然の神秘の奥深いことか .... なんとなく旅先で見る例えば山から昇る朝焼けの美しさに通ずるような感動(「絶景かな、絶景かな」)を覚えましたデス。 その意味ではこの詩鳥家のさらつや姉妹の部屋の早朝風景は “日本の絶景百選” に選ばれても良いのではないでしょーーか (もしかしたら世界遺産級かも ^_^ )。
> その発育が殆ど髪に偏っているようだ .... ねぇ、本当にこんな女性がいたら素晴らしいでしょうねぇ。


で、支度を済ませて家を出た砂良ちゃん.... > 日常から、非日常へ 。かつてアールジェタンさんは 第11話のあとがきの中で > 非日常的な場面に移行した時に、いよいよ第2章の本題のスタートとなります そして 第14話のあとがきの中で > 非日常を書いていくことになり、いよいよ物語も、新たな局面に入っていきます と仰ってましたが、いよいよ、その“非日常”が始まったわけなのですね。 読者である私もこれからは一層心して読まなければいけませんね。
して、その非日常とは砂良ちゃんの小冒険の始まりなのですね。神永町の中を移動しているだけなのに、 かつて髪切り魔に襲われた恐怖症が残っていてそれ以降外出も控えている砂良ちゃんにとっては 冒険になるのですねぇ。なんとも不憫です。
さて、前回のあとがきの中でアールジェタンさんは > 新キャラが登場する予定ですが、今度は、全員女性です と仰ってましたが、その1人目椿薫嬢の登場。いや〜〜すごい名前ですね〜〜(私が当人なら、ちと恥ずかしいかもしれない ^_^ )。
> 店の前に置かれた古い木製の長椅子に、綺麗に澄んだ瞳の浴衣の少女がただ腰かけている。 彼女の艶やかな黒髪は、1本のかんざしでまとめられて・・・古い時代にタイムスリップしたかのようである .... まさしく昔〜〜昔(そう大正から昭和初期くらいカナ)にタイムスリップしたようななにかセピア色のような でもなんとも清楚なレトロムードが画面から漂ってまいりました。 現代見かけるあのひっきりなしに携帯をぴこぴこさせてるギャルたちにはとてもこのムードは醸し出せないでしょうねぇ。 > 「椿の妖精」 とはまさに言い得て妙でしょう。そんなレトロ美少女を店の看板娘に仕立て上げてしまい、我々読者を古き良き時代にタイムスリップさせてしまう アールジェタンさんの発想力にはまことに感心いたしました。でも > 彼女自身も、女優を目指していて と現代っ子の一面も持ち合わせてるのですね。

そんな椿の妖精・薫ちゃんは > パッツン系 美少女とのことで、これってまさしくレトロチック美少女って感じです。今は誰もが栗山千明さんを真っ先に思い浮かべるでしょうけど、 その昔はデビュー時〜「マドララ」頃までの岩崎宏美さん、トワエモアの山室(白鳥)英美子さん、そして私が1番愛着を持っているパッツン系ロングヘアー美少女と言えば ....速水栄子さん! ワンレンのみならず、今回後半でも活躍してくれるひかりちゃん共々パッツン系レトロ美少女をも登場させてくださるところが、 さすが “美少女” を熟知なさったておられるアールジェタンさんです。
そんなレトロ美少女(すみません、勝手にこう名付けてしまって ^_^ )薫ちゃんの口からポツッと漏れた謎めいた言葉.... > しとりの泉の伝説 .... う〜〜んっ、なんともメルヘンチックというかファンタスティックなこの言葉の響き。 泉って私には西洋のおとぎ話によく登場するイメージがあるんですね。日本的美少女と西洋的おとぎ話が 合体したかのような不思議な清々しさを感じました。また > 誰かに切られそうになっても・・・守ってくれる .... まさに乙女の味方、というか髪長少女たちの夢のこもった噂話がいつしか伝説に化してしまったような感じもするのですが、 でも、もしかしたら、まんざら噂話だけでもなさそうな予感がしますね。なにか砂良ちゃんたちの運命をも左右しそうな予感が....。
ま、とにかく、「椿の妖精」「しとりの泉の伝説」と、可憐なイメージを次々に紡いで物語を織り上げて行かれる アールジェタンさんの手腕にはいつもながら感心いたします。


さて、椿ちゃんと別れてひかりちゃんとの待ち合わせ場所に到着した砂良ちゃん....
> 主要駅(快速も停まる)の正面口前にある大きな噴水 .... これってもしかしてアールジェタンさんの馴染みの駅かなにかをモデルにしてらっしゃるんですか?(^_^ )  ロングヘアとは直接関係無くてもこういう細かい描写が物語にリアリティを加えてくれますよね。
> 歩道橋を上ってひかりが来そうな方面の様子を見に行くことにした・・・ 砂良の視界に入ったのは美容室「髪風船」 .... このあたりも、早く到着し過ぎて時間をもてあましている小学生の(じっとしていられない)行動をよく捉えてらっしゃるなと思いました。 そして歩道橋の上から視界に入った(今回の主題である)美容室「髪風船」....う〜〜んっ実に上手いシチュエーション作りだなとここもまた感心しましたし、 “歩道橋の上の砂良ちゃんが見下ろしている美容室” という立体的構図が目に浮かぶようで、絵的にも素晴らしいだろうなと(イラストを描く人間として)思いました。 またこの「髪風船」という店名も先の「椿の妖精」「しとりの泉の伝説」同様とても詩的な響きが素敵な名前ですよね。そして > 新キャラが登場 の2人目はこの美容室のオーナーの青井風子嬢だったのですね。
> 美しいストレートヘアにパーマをかけようとしたり、失恋して長い髪をばっさり切ろうする客に説教して .... これぞ美容師の鏡って感じですね。あのロングヘアー好きの美容師のジョージ・マイケルをなんとなく思い出しました。 > もしらなければならないのならこの店で、風子さんに切ってもらいたい .... これもかつてシンディクリスチャンが結婚を機に「ぜひジョージ・マイケルに」と断髪した時のことを思い出しました。 風子嬢は髪長少女たちが命を託せる本当のカリスマ美容師なのですねぇ。 > やたらと重いだの流行りでないだのと難癖をつけ・・・金の亡者とは違う .... この怒りのこもったご主張も素晴らしかったです。

そんな「髪風船」のウインドウ越しに遠めに見えた自分と同様の長〜〜〜い三つ編みの少女.... この時は誰だか分からずただ『気になる子がいる』くらいだったのが、下に降りてその店の前を通りがかった時にその子が、 親友のしかも今回の冒頭で砂良ちゃんを三つ編み娘に誘った彩乃ちゃんだったと分かった.... う〜〜んっこのあたりも見事な展開ですね〜〜。けっして取って付けたようでなく、ごく自然な流れとして受け入れられます。
> うつむいて2本の三つ編みをしっかりと握りしめていた・・・最初はかたくなに動こうとはしなかったが、やがて立ち上がって静かに三つ編みを握っていた手を離した .... まあ彩乃ちゃんが髪を切りに来たのかどうかまだ定かではありませんが、でももしそうだとしたら、 > 「本当は、切りたくない!このまま、順番が来ない方がいい」 と思い悩む切ない少女の気持ちが本当によく現れている一連の仕草ですよねぇ。 私もかつて中学進学時丸坊主にさせられましたので、よく分かりますヨ。
ところで、ここで「待ってましたーー!」の “太股少女” 立花ひかりちゃんの再登場ですが、 > ひかりのことだけを見ていると思っていたが、実はそうではないことが分かってしまった。 .... これって、砂良ちゃんが> あ・・・カ・ワ・イ・イ 第9話参照) からなのでしょうか? それとも、超ロングヘアーの女の子が2人連れで歩いているからでしょうか?


で、実は私、今回ちょっと気になった点があったのですが....冒頭(今から約6年前ですね) 彩乃ちゃんが砂良ちゃんに赤い(さくらんぼの?)玉を送りましたよね。 そして、これから髪をカットしようとしている(?)彩乃ちゃんとそれを見つけてしまった砂良ちゃんは ともにそのお揃いの4つの赤いさくらんぼを付けていますよねぇ。今回3回に亘って文中に登場した“赤い玉”.... これが何か彩乃ちゃんの運命を握っていそうな予感が私はするのですが....。 それと先程もちょっと触れましたが、「しとりの泉の伝説」....これもなにか関わりそうな予感がぁ....ぁ。
それとそれと(話は前に戻りますが) > 「このオーディションに受かったらね。この髪・・・」 .... この椿薫ちゃんの意味深な言葉も気になりますねぇ。
ところで、今回1つ大きなことに気が付きましたが....なんと、お約束のシーンのっぺらぼーが出てきませんでしたねぇ!  『もしかして今回が初めて?』とこれまでの14話をざっと読み返しましたが、あのなゆきちゃんのポニーテールを解いた 第4話第5話以来のことだったんですね。

さて、これから起きようとしている悲劇(?)をウインドウの外から発見してしまった砂良ちゃん(&ひかりちゃん。そして風子嬢も?)は はたしてどのような行動に出るのか、あるいはただ見守るしかないのか....次回はすっごく重要なお話になりそうな予感がしますねぇ、 今後の砂良ちゃんも含めた6年5組少女たちの運命をも左右しそうな....。
なにやら、激動の1日目をさらに上回りそうな大激動・大衝撃が待っていそうな予感がする2日目の幕開けでもありました、 今回もまたまた大力作でした第15話「髪風船」のご執筆・ご投稿まことにありがとうございました。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
長 友三 さん  2007.10.16(Vol.803) 初出___Cont.No.yuzo014    
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「髪に優しき美容室・髪風船」

美容室髪風船は長い黒髪を奨励している、文字通りの美髪室です。その美容室のカリスマ美容師青井風子さんは、長い黒髪の女性たちが来店したら、長い黒髪を大切に扱ってくれる良心的な美を大切にしてくれる、長い黒髪を愛している美の表現者であり、美の創造者でもあります。
長く艶やかな黒髪を鋏で短く切り落とす事や、パーマで黒髪を痛めつける事は美容師の良心に反すると考えている、美の守護者でもあります。髪を切ってカット料金を稼ぐ・パーマを薦めてパーマ代で利益を得る・髪を染めさせて収益アップを企む。これら短期的利益よりも、長い黒髪と言う究極・至高の美を育てる事により、美を創造する美容室でありたく思っている、心美しき美容師風子さんです。
しかし中学入学式が近づくと、意に反して長い黒髪を泣く泣く短く切り落とさなければならない少女達が悲しい表情で、美容室に来店する時期になります。今日もそれらしき少女が長い黒髪を切り落とす為でしょうか?髪風船美容室で順番を待っています。
少女達にとっても、風子さんにとっても、心痛められる初春の断髪シーズンです。

長 友三 さん、「バージンヘア」にご感想をくださいまして、
まことにありがとうございました。

by SNAKEHEART(HP編集・発行者)

「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2007.10.25(Vol.806) 初出___Cont.No.snake15a    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第15話「髪風船」の後書き
アールジェタンさん、今回もお待ちかねの読み物後書きのご投稿ありがとうございました
まあ、868号はまず間違いなく超えるでしょうネ。じゃあその次の目標は当然、千号ということになりますか。

> このHPもウイルスに侵されたりと大変なことも多いでしょうが .... あっいや、侵されたことは無いと思うんですよ。ただ3年ほど前に一時期異常にウイルスメールが沢山送られてきた ことがあったということなんですヨ。ここしばらくはウイルスはなんとか来なくなりました。
> Vol.799だったんですねー。惜しいことをしました。ところで、恋人の由香さんはお元気ですか? .... 999(スリーナイン)を目指されても面白いのでは?(^_^ ) 由香さんはねぇ、今はもう忙しくて 作ってる時間が取れませんで....。「ロンゲルゲ」で使ってもらってる状況でございます。
> 「速水栄子」さん・・・ムチャクチャ可愛いですねー .... でしょでしょ(^_^ )。実は私もしばらく忘れていたのでしたが、久々に思い出しました。 1970年代のアイドルってなんか、独特の透明感があるんですよね〜〜。

> 「髪風船」・・・第2章の冒頭の謎の男の意味不明な台詞の中に出てきます .... なーーるほど、そういうことだったんですか。 あの時は私ホント意味が分からなかったんですが、『ヘアカタログ誌かなにかの名前かな? 多分私が無知なため知らないだけなんだろな』と 思ってすぐ忘れてしまっておりました。
> 沙也香からのメールの内容は? ・・・これは、早いうちにやらないと、関心が薄れてしまいますね .... ああ〜〜それから、サーラのこともお忘れなく....ネ(^_^)
> 第16話「処刑台」 .... こわーーーー!!!!

ではでは次回第16話を楽しみに待たせて頂こうと思います(ただし、切られないでほしいのが本心ではございますが)。
今回もご投稿まことにありがとうございました。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2008.1.10(Vol.813) 初出___Cont.No.snake16    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第16話「処刑台」
アールジェタンさん、あけましておめでとうございます。そして、一昨年(2006年)・去年(2007年)に続きまして今年もまたまた、新年の幕開けに本当に相応しい力作「バージン・ヘア」の新作、 第16話「処刑台」のご執筆・ご投稿ありがとうございました。
実は本音を申しますと、最初は『新年早々、“処刑台” ってちと過激過ぎでは....?』と心配(?)もしたのでしたが、 読み終わっての感想はズバリ・・・『面白かった』。
前半部のハラハラドキドキも読み終えると丁度良い刺激になっておりました。そして後半部の急転直下の怒涛の展開! ....こういう展開になるとはとても予想しておりませんでした。こういう予想外の展開ってのは読者としてまったくの快感でございまして、 正月に相応しい素敵なお年玉をいただきました心境でございます。ありがとうございました(^_^ ) ....とは言え、砂良ちゃんが東京に連れて行かれて髪を切られるかもしれないという心配もあるわけですが、 ただ今回は取りあえずは彩乃ちゃんの髪が守られたということで....ひとまずは “ホッ”

> こんなにも早く、その問題に直面しようとは .... まさに私も感じたとおりでございます、一夜明けて早速実行に移す娘がいたとは、しかもそれが大親友の彩乃ちゃんとは ....しかし、彩乃ちゃんは今回結果的にはこうして砂良ちゃんに止められてひとまずは助かった訳ですが、もしかしたら、 別の美容院に行ってそして(誰からも止められず)切ってしまった5組の娘もいるかも知れませんねぇ?.... そう想像するとなんか胸が痛む思いがします。
> こんなに可愛くて、髪の綺麗な女の子が、お客さんで良かったというような表情 .... “その人の髪本来の美しさを引き出す技術” を持ち “この国が失いかけた本来の美しさを取り戻すことに命を懸けている”(いずれも前話からの引用 ^_^ ) 美容師の鏡・風子さんはきっと最初は『この娘と髪をさらに美しく輝かせられるなんて....わあ久しぶりに超やりがいのある仕事だわ』ってな 感じだったんじゃあないでしょうかねぇ(?)。ですが....
> それまでの風子の嬉しそうな表情が、急に曇った .... (これまた前話からの引用) “パーマをかけようとしたり、失恋して長い髪をばっさり切ろうする客に、説教” までしてしまう 風子さんが(不本意そうでも)折れてしまったということは、彩乃ちゃんがおそらく「校則だから、仕方がないの」といった旨を告げたんじゃあないでしょうかねぇ(?)
それにしても、> あと数分で、髪長美少女、片瀬彩乃は死亡する。そこに残される死体は、ただの短髪少女 .... いや〜〜〜上手い表現ですね〜〜〜、実に。以前に私が書きました体験談「お尻を超えた3つ編みの少女」で、 その少女が断髪してしまった姿を見た時まさに、その娘が死んでしまったように私には見えましたもんね。 本当に的を射られた素晴らしい表現ですし、それはやはりアールジェタンさんが黒髪バージンヘアをこよなく愛しておられ、 それを断髪することに深い悲しみを感じておられる証拠なのでしょうねぇ。


さて、そうして彩乃ちゃんは処刑台へと導かれたのでしたが....ここからはおそらく今回の半分くらいを占めていたでしょうか、 “彩乃ちゃんの断髪(未遂)シーン”は、 髪が切られようとする段階を追った手順と、三つ編みからのっぺらぼーへと徐々に変化していく髪の美しさの描写、 徐々に死刑執行が迫ってくる彩乃ちゃんの悲しみなどがとてもリアルに丁寧に(なにか映画のカット割のように)描かれており、 そして切られてしまう髪に漂うえも言われぬ哀愁も絡んで、まことに臨場感溢れる名シーンを紡ぎ上げていたように感じました。 まさに彩乃ちゃんの心境になりきってこのシーンを作り上げられたんじゃあないでしょうかねぇ?
(これは、私が断髪好きのために名シーンに感じた訳ではなく、あくまで冷静に客観的に “描写テクニック” として 感心した訳です。私はあくまで断髪嫌いでございます)
> 「髪を解くので、そのゴム取りますね」というようなことを言われて、反射的に手が出てしまったのだろう .... 先ずは当然、三つ編みを解くことから始めますよね。それに対して『切りたくない』という彩乃ちゃんの本心が思わず “隠す” という行為に出た訳ですよね。よく考えられてます。そして次に....
> 「この赤い玉が、恐いおじさんから守ってくれるよ」・・・4つの赤いさくらんぼを、じっと見つめていた .... ここで、砂良ちゃんとのさくらんぼの思い出がフラッシュバックする演出が素晴らしい。その思い出が脳裏を過っているかのような 彩乃ちゃんの寂しげな表情が目に浮かぶようです。
> 真っ白なケープ一面に最高の芸術を広げていった・・・三つ編みの跡が全く付いていない .... 三つ編みを解けば次は当然、髪を広げますよね。この真っ白なケープと漆黒のストレートヘアのコントラストの美しさが 本当に画面から伝わってくるようです。そして “三つ編みの跡が付いていない” という感激の言葉からも、 いかに彩乃ちゃんの髪が美しいかそしてこの髪が切られるなんてどれほど重大な損失であるかが強調されていますね。
> あごの辺りに手を当てて、アイ〜ン・・・人差し指を眉のある辺りに「一」の字を書くように .... この彩乃ちゃんのように『本当は切りたくない』と思っている娘って、 「ここで切ってください」とはなかなか言葉では言えず、手のアクションでそれを伝えようとするものでしょうねぇ。 そのあたりの心理状態を反映した仕草も実に的を射ておられると思いました。

> 「あの子、片瀬さんじゃない?砂良ちゃん、あれ?」・・・断髪恐怖症の砂良がとても直視出来る場面ではない .... ここでギャラリー(?)のひかりちゃんに画面が切り替わる演出がまた素晴らしいですし、そして、 本当は止めに走った砂良ちゃんがまるで “逃げた” かのように我々に思わせる文章の挿入がまた上手い! こういう風に 文章によって読者を瞬間的にはぐらかせることができるのは(映像ではできない)小説の特権かと感じましたネ。そして....
> 片瀬彩乃の最後の最後の本当に最後のーーのっぺらぼーー .... こうした大緊迫のシチュエーションの中で、「バージン・ヘア」最大の売り物であるのっぺらぼーを登場させる、 この大胆不敵さ!....もとい(^_^ )、サービス精神・エンターテイメントを忘れていないところが素晴らしかったです。
> 真っ白なケープに360度広がる黒髪バージン・ヘア .... これはもうまるで地上に向かって360度末広がりに降りてきた、黒髪のピラミッド、黒髪の富士山のような光景なのでしょうねぇ。 360度ですからそれはそれはもうこの世のものとは思えない美しさでしょう。ヘアカットの1段階であることを忘れてしまいそうです。 更には....
> この適度な湿り気がキューティクルを増幅させたかのようにこの上ない輝きを放っている .... 濡れた黒髪の美しさと光沢(カラスの濡れ羽色と言われる)は、乾いたさらさらの黒髪の美しさとはまた違った 官能的な、なにかもう(髪の水分の張力によって)吸い付けられるような美しさを持っているものです。 このあたりはもう連続してまるで “切られようとする髪の最後の抵抗” あるいは “燃え尽きる前の花火の輝き” のような 力強さと哀愁がなにか感じられました。
> 櫛の柄の部分でこめかみの辺りから、前髪とその他に分かれるように、左右2カ所に隙間を作った .... いや〜〜このあたりは美容師の手業を熟知しておられるなぁと思いました。 とは言え実は私、美容院って入ったことがないんですけど(^_^ )。そして遂に....
> 一筋の涙・・・「・・・お願いします」 .... 涙がこぼれてしまいましたね〜〜〜。しばらくのっぺらぼーで隠れていた彩乃ちゃんの表情は確実に曇っていってたことが分かりました。 ここまでは真綿で首を絞めるようにジワジワと来ていたものが、この彩乃ちゃんの涙によってまるでダムが決壊したように、 ここから一気に崩壊に向かって雪崩ていったようでした。
> 遂にあの銀色に輝く物体を手にした。それはハ・サ・ミである・・・バージン・ヘアとギロチンまでの距離、3ミリ・2ミリ・・1ミリ・・・
> さらに多くの涙がこぼれた・・・「うっ、・・・、うっ、・・・」 .... このあたりは、迫りくるハサミと彩乃ちゃんの表情とが交互にカット割されて異常な盛り上がりとなっておりましたねぇ。 ハサミをギロチンと言い換えてしまうところも、この超ハイテンションの中でとても的確でした。

そして遂に “ジャキッ!” という死刑執行の音が鳴り響くと思いきや....
> 「彩ちゃん、ダメーー!」、ガチャーン、バキバキッ、ボコーン .... いや〜〜〜サイコーですね〜〜〜、ホント。この子供らしいドジさが溢れた擬音がまた実に面白可愛かったです。
まあねえ、ここまで盛り上げてしまった上で本当に切ってしまったら、それこそ髪切り小説になってしまいますもんね。 結局は助かってしまうというオチが有ればこその盛り上がりですよね。ま兎に角、 アールジェタンさんが毎回のあとがきの中でよく、映像関係者の方々に「・・・こういう風にしてください」と注文をつけておられますが、 今回のこの “彩乃ちゃんの断髪未遂シーン” ではまさしく演出家(監督)として彼らにお手本を具体的に示されたように思えました。 それほど(髪切りが好きか否かに関係なく)臨場感溢れる名シーンだったと思います。

まあ実は本音を申しますと、砂良ちゃんが止めに入ることは前回からある程度は想像しておりましたが、 でも一筋縄ではいかない見所も満載でしたし、そしてなにより(最初にも申しましたが) 砂良ちゃん(の髪)が風子さんのお眼鏡にかないスカウトされるなんて展開はまったく想像しておりませんでした。 そーーーかそーーだったのか、これがこれまでしばしばあとがきの中で仰られていた “非日常” の入り口に入ったってことでしょうかねぇ?
> 店の中の器具を壊してしまった・・・三つ編みが片方だけ解けたのはその所為だった .... ただ止めに入っただけでなく、器具を壊したことで風子さんとの繋がりを作り、そして同時に三つ編みを解けさせるという サービス精神。そしてこの時の砂良ちゃんの慌てふためいた心境がこの三つ編みの乱れに表れているようにも見えますよね ....さすがロングヘアー小説を作り続けて6年目に突入したテクニックが冴えてますね。
それにしても砂良ちゃんってホント三つ編みが解けやすい娘ですね〜〜〜(^_^ )。それはいかに彼女が つるつるすべすべのバージンヘアを有しているかの証でしょうネ。それにしても....
> 何と!ひかりは、風子と知り合いだったのである .... いや〜〜〜この娘もまた不思議な少女ですね〜〜〜。なんかまだまだいっぱい謎を秘めていそうな予感がしますし、 今後のストーリーの鍵もまた握っていそうな予感すらしますね〜〜〜(あくまで私の予感 ^_^ )
> 「うちの店のヘアーモデルになってくれたら弁償しなくてもよくしてあげる」 .... ふふふ、まあ本当は風子さんは壊れた器具はそれほど気にしていなくて、寧ろ『この娘をモデルにするための良い口実ができた』 みたいにほくそ笑んでるんじゃあないでしょうかネ? 先程の > 「サーラみたいだね」 の台詞と言い、風子さんってなかなかお茶目で調子の良い女性のようですねぇ。
それにしても、つい今し方までは地味で目立たない普通の少女だった砂良ちゃんが、その美しい長〜〜〜い髪ゆえに、 突然スターへの道が開けるかもしれないという、シンデレラ的な展開が実に痛快でした....って、これも あくまで私の個人的な予感(^_^ )。 でも現実世界でも、“髪でスターになるアイドル” が誕生してほしいですよね。


ですが、砂良ちゃん(&彩乃ちゃん)が風子さんのお眼鏡にかなったとはいえ、ヘアーモデルってのは髪に何をされるか分かったものじゃありませんし(染められたり、クセ付けられたりもありえますもんね)、 それにどうやら東京では風子さんが担当してくれるようではなさそうですし.... 今回とりあえず彩乃ちゃんが助かったとは言えまだまだ予断を許さないようですねぇ。
では、今回もまたまた傑作でした第16話「処刑台」をご執筆・ご投稿くださいまして、そして、 今年もまた正月早々楽しませていただきまして、まことにありがとうございました。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2008.1.15(Vol.815) 初出___Cont.No.snake16a    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第16話「処刑台」の後書き
アールジェタンさん、今回もお待ちかねの読み物後書きのご投稿ありがとうございました

> 今年こそ、あの名作漫画の続編を期待してもよろしいですよね? .... ああ〜〜どうも期待していただきましてとても嬉しく思いますが、今年もちょっと無理かなぁ....今年は私にとって ちょっとばかり大切な年になりそうな気がしますので時間がちょっと....ま、その代わりと言っては失礼かもしれませんが、 小説のイメージイラストを3〜4回くらい発表したいなとは思っております。
> そのまま「スターへの道」となっていくのか?まあ、ヘアーモデルになっただけでは、そうはならないでしょうが .... ヘアーモデルというだけでは、どんなモデルになるのかも今のところはちょっと想像が付きませんもんね。 また物語の中では “現在、ロングヘアーブームの真っ只中” ということなので、果たして髪が長くて綺麗なだけで(まあ、顔もなかなかカワイイようでうが)、 砂良ちゃんがスターになれるかどうか分かりませんもんね。 その分尚更、次回以降読むのが楽しみになってきました
> 結局、切らないわけですから、そこまでのドキドキハラハラの過程を楽しんで頂けたなら .... まあ、考えたら、例えば仮面ライダーとかでも最後には必ずヒーローが勝つことは分かっているのですが、 でも途中まで視聴者は『もしかしたらヒーローが負けるのでは?』とハラハラすることも時には有りますもんね。
でも、「バージン・ヘア」では “絶対に切られることは無い!” との断言は常にはできませんよね?? ....もしかして切られることも1度か2度くらいは有るかも....??(^_^ )
> ロングヘアフェチのお兄ちゃん必見の第17話にどうぞご期待下さい .... では。期待して待たせていただきま〜〜〜す。

今回もご投稿まことにありがとうございました。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
長 友三 さん  2008.1.31(Vol.817) 初出___Cont.No.yuzo015    
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「彩乃の断髪を阻止した砂良」第16話「処刑台」

彩乃は中学進学に伴い断髪校則に従わざるを得なくなりました。意に反して長い黒髪を切り、短くオカッパ髪に切り落すべく、髪風船に行きました。同店の美容師風子にとっても心が痛む時期です。
彩乃の大切にしていたご自慢の黒髪に冷酷な校則は情はありません。彩乃の三つ網にしていた長い黒髪を解いた風子、彩乃は複雑な思いで長い髪を切って下さいと、髪に鋏を入れる位置を示しました。風子も重い手つきで鋏を手にしました。風子の手にした鋏が彩乃の長い黒髪に近づいて行きました。見つめていた砂良、見ていられなくなりました。思わず彩乃の長い黒髪を切られる事から阻止守るべく、美容院内に飛び入ってしまいました。
彩乃の長い黒髪は一瞬のところで切り犯されるのが防げました。しかし、砂良は飛び入った際に高価な美容機器を壊してしまいました。大変なことをしてしまった罪悪感に苛まれている砂良。すると‘ひかり‘が上手く間にはいってくれました。美容機器が壊れた事を酌量してもらえました。しかし砂良の黒髪の美しさに魅了された美容師風子、ヘアーモデルになって欲しいと頼まれます。美容機器を壊した砂良、断わるつもりはありません。しかしヘアーモデルをすることは、髪にどのような事が施されるのか不安でなりません。砂良に加えて彩乃もヘアーモデルをすることになり、髪風船東京本店に行くことになった砂良と彩乃。二人の長く美しい黒髪に待ち構えている運命は?不安と緊張に置かれている砂良と彩乃です。

長 友三 さん、「バージンヘア」にご感想をくださいまして、
まことにありがとうございました。

by SNAKEHEART(HP編集・発行者)

「バージン・ヘア」(ご感想)パート
アールジェタン さん  2008.2.4(Vol.818) 初出___Cont.No.RV0216b    
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長友三さん

 第16話の感想を頂きまして、ありがとうございます。今回も、また、 砂良の髪のように長たらしい文章を御本人の解釈を交えつつ、簡潔にまとめてくださいましたね。
 もしも、バージン・ヘアの本文を一度もご覧になっていない方は、 長友三さんの感想だけでも、さらっと読んでみてはどうでしょうか。活字の苦手な作者からも お勧めできます。
 今回は、彩乃の断髪は阻止されましたが、次回は、ヒロインの砂良自身が、 責任を取らなくてはいけなくなってしまいました。神永中学入学を前に、砂良と彩乃は、 どんな髪型にされてしまうのか?第17話以降も目が離せない展開になるでしょう。

 それから、これは、第16話の後書きで書き忘れたことですが、 第16話だけを読むと、作者が「おかっぱ頭」を情けなくてみっともない髪型だと思っているように 感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
 刈り上げてないおかっぱなら、かなり好きです。実際、ある時期までは、 ワンレングスよりも、好きでした。天使の輪もできるし、 髪の美しさを一番表現出来る髪型の1つであることは、間違いないですよね。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
長 友三 さん  2008.4.24(Vol.829) 初出___Cont.No.yuzo016    
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「中学進学を目前にして」第17話「鏡の中のベビーフェイス」

中学への進学を目前に控えた登場少女たち、置かれた状況が少女たちに期待と希望と、断髪への恐怖をもたらしています。
名門三ツ星才女学院に進学する少女たち、ブレザーの制服がかっこよく見えているのですね。長い黒髪も似合うブレザー制服でしょうか?最近の女子中学生の制服はかわいらしく若々しいブレザーか、新感覚のセーラー服になってきましたね。我々の頃は女子同級生は野暮ったくダサい灰色ネクタイもリボンもない、身を包むに過ぎないようなブレザースーツ制服を着せられてました。制服の色が灰色なので暗いジュニア灰スクール生活を強いられました。神永中学に進学する少女たちはセーラー服でしたね。長い黒髪が似合うセーラー服制服。でも神永中学には悪名高き女子生徒断髪強制校則があります。10代になったことを実感できるはずの中学制服、女学生の制服として長く愛されてきたセーラー服。でも憧れのセーラー服を着る引き換えに、少女達は泣く泣く長い髪を短く切り落とさなければならない宿命にあります。
前回砂良が美容院の器具を破損したお詫びに、同美容院ヘアーモデルを引き受けさせられました。やむなくヘアーモデルを引き受けたたものの、大切に伸ばし続けてきた長い黒髪に刃が入り、無残にも短く髪を切られてしまうのでは?と脅えています。ヘアーモデルを引き受けさせた美容師さん、良識的な優しそうな人に前回は感じられましたが、少女たちの長い髪をも大切にしてくれるのでしょうか?砂良の長い黒髪をバッサリと短く切る意志がないことを切に願ってます。

長 友三 さん、「バージンヘア」にご感想をくださいまして、
まことにありがとうございました。
休暇を取っておりました為に、掲載が遅れて申し訳ございませんでした。

by SNAKEHEART(HP編集・発行者)

「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2008.5.5(Vol.830) 初出___Cont.No.snake17    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第17話「鏡の中のベビーフェイス」
アールジェタンさん、「バージン・ヘア」の新作、第17話「鏡の中のベビーフェイス」のご執筆・ご投稿ありがとうございました。
今回もまた大きな作品でしたねぇ。なにかまるで砂良ちゃんの旅立ちを前に、神永町に於いて全てを清算していったかのような、“超強力豪華3本立て” って感じでした。 ゆえに今回感想がちょっと遅くなってしまいまして(それとまあ休暇も挿んでおりましたし)すみませんでした。
ところで今回ご投稿くださったのが4月8日でしたが、もしかして創刊9周年の日に合わせて下さったのでしょーーーか??(^_^ )

さて、今回の第17話は2つのギュイーーーンによって、3つのパートに区切られていたと言えましょうか。 その各パートそれぞれにちゃんと律儀にのっぺらぼーシーンをご用意くださってましたヨネ(^_^ )
で、先ずは第1パート−−“川野愛子・愛里姉妹”ですが....
> あの三つ編みの少女は砂良のクラスメートの川野愛里の姉、川野愛子ですね .... なるほど、こういうことだったんですね。第9話の本編で愛里ちゃんにちょっと触れられた時は “単なる頭数合わせキャラ” だと 思ってましたが、お姉さんという隠し玉を持った少女だったとは、さすがはアールジェタンさん、1人たりとも無駄キャラを作らないんですね〜〜。
それにしても、> 「卒業の儀式のことだけど・・・」 .... う〜〜んっ、この “儀式” とは何なんでしょう?(ちょっと気になったので赤文字にしたのですが)。 この「バージン・ヘア」は、砂良ちゃんたち小6少女たちのみならず、中3少女にもなにか試練が待っているのでしょうか??
そして更に、> 「しとりの泉って、聞いたことある?」 .... う〜〜んっ、またもや出てきましたね〜〜 “しとりの泉”。第15話「髪風船」で椿薫ちゃんがポツッと言ってましたけど。 先の愛子ちゃんの “儀式” という言葉も気になりますし、薫ちゃんもしとりの泉の話を持ち出してきた時には悩みを持っていたようでしたし ....この “しとりの泉” ってなにか悩める髪長少女の心の拠り所のような感じがしますし、今後、しとりの泉を巡って不思議な展開になりそうな予感もするのですけどぉぉぉ ....でもこういう謎のキーワードを実にうまく作られますよね。それによって我々読者は色んな想像力を膨らませてしまいますし、 物語にも一種神秘性を感じますよね。
> その毛先が、愛子の瞳をつんつん攻撃してくるのである .... “つんつん攻撃” とは実に的確かつユーモラスで可憐な素晴らしい表現ですねぇ。たしかにこのくらいの長さの前髪の少女を 見かけると私『目ぇ痛ないのかなぁ?』と心配してしまいますもんね。
> 愛子の三つ編みを結んでいたゴムを気付かれないように抜き取っていたのである .... 前髪のピンを取ったり今度はゴムを外したり、随分やんちゃな妹なんですねぇ。と言うか読者へのサービス精神旺盛な 妹と言うべきか....本人自身は味気ない娘なんですけどねぇ(^_^ )
> 回転する椅子の後ろに倒れ落ち・・・倒れこんだ愛子の顔に絡みついて、のっぺらぼーーーーー .... おおーー椅子で後ろに倒れるって、子供時代は私もよくありましたね〜〜。勿論大人になってからは経験がありませんが、 こういう子供時代特有の(人生経験不足ゆえの)ドジさをホントによく思い出されて、のっぺらぼーシチュエーションを 巧みに作り出されますよね〜〜、感心いたしますデス。
そしてそこに更に追い討ちを掛けるような > 「お姉ちゃん・・・顔何処?」 .... いや〜〜〜コミカルながら実に粋な台詞ですね〜〜〜。というか、ピンを取ったりゴムを外したりしたのは、 元々はこの台詞を言うための確信犯だったような気が(^_^ )
思い返せばかつて「髪長美女大会」で、髪長の姉と(推薦者の)短髪の妹が出てきて、そして姉の長い髪に対して嫌味を言ってたことが 何回かありましたねぇ。今回のこの第1パート−−“川野愛子・愛里姉妹” は、そんな姉妹間の一種の意地の張り合いを見た思いがしましたし、 そして『この「バージン・ヘア」は中3の少女をも巻き込んで、不思議な展開が待っているんだろうか?』(by “しとりの泉”) との想像をも掻き立てられました。


続きまして第2パート−−“沙也香ちゃん&栞ちゃん”ですが....
> つる〜〜〜ん こんな時のこんな場所にバナナの皮が落ちているなんて!! .... ハハ、良いですよねぇ、バナナの皮で滑るって昔の漫画によくあったと思いますしなんだか懐かしかったです。 先程の愛子ちゃんと同様、子供がやるとホント可愛いですし、これをのっぺらぼーシチュエーションに採用する発想の柔軟さ にも敬服いたしますデス。
> 実はね、私、三ツ星受験してたの .... なるほど、第13話のラストの栞ちゃんの「えーーーっ!!」は、 こういうことだったんですね。私あの時はこのメールの内容を2通り想像しました。1つは『中学に進学しても髪を切らなくて良い様になったらしいよ』的な内容。 もう1つは『詩鳥さんに仕返ししてやろうよ』的な内容でした。でもさすがはアールジェタンさん、ホントに現実の 乙女らしいメールの内容にされましたネ、私ではとても考えつかないです。 > 一緒に制服まで買っていて、それぞれが、別の中学に行くことを考えていたのだ .... こういう抜け駆け(?)もいかにもそれらしいですよね〜〜。そしてメールの中で、文章が途切れ途切れになってたり、 所々カタカナが使われてるのもいかにも乙女のメールらしくて、よく練られてられるなと思いました。 とても細部にまで繊細に気を配って文章を作って行かれてますよね
それにしても、“柔道少女−−一芸合格”....う〜〜んっ、よく考えられましたよね。 同じクラスには不思議霊感少女とかちょっとコワイ3人組とかアイドルの卵も居ましたし、 妙に人脈の広い謎を秘めた転校生ありと、ホント個性豊かなクラスですよね、6年5組って。これまでどんな楽しい教室だったのか目に浮かぶようです。 でも楽しさだけでなく、子供同士の中でも(主に家庭環境の違いから来る)世知辛さもピリッと効かせてらっしゃいますし、 まさにアールジェタンさんが丸々クラス1つを造り出したって感じですよね。
そして> 写真3・・・出たーー!!沙也香ののっぺらぼーー!!! .... おお〜〜変身する時まで、その過程でのっぺらぼーになるとは、この抜け目無さがまた素晴らしい!
今回のこの第2パート−−“沙也香ちゃん&栞ちゃん” は、親友同士の微妙な関係−−信頼と運命共同 VS 自己本位と抜け駆け−− のジレンマに悩む乙女らしさ(これがもっと人生経験を積めば、上手く割り切れるようになれる)が実に上手く作り上げられていたなぁと感じました。 アールジェタンさんの人間観察力の鋭さと言っても良いんじゃあないでしょうかねぇ。


さて、それではなんと言っても今回のクライマックスであったことはもう間違いない第3パート−−“砂良ちゃん&良介君”ですが ....えっ、でも、兄妹の間でこんな過激な....そ、そんな、許されるんだろうか!?!?!?.... でもそういう私もかつて姉弟の間でちょっとキワドイ事させたことが有ったっけ(^_^ ) ....そう、一線さえ越えなければ、兄妹あるいは姉弟の間ってのは実は非常ーーに刺激的なプロットが作れるんですよね〜〜〜。
> 今の三つ編みを解いて、朝、起きてからする三つ編みが、最後なのかもしれない .... うーーーんっ、もしかして第10話のタイトル「三つ編みにサ・ヨ・ナ・ラ」ってのは、このことを暗示していたのカナ???(^_^ )
> 「やっぱ、由香さんは最高だよなー」 .... アハッ、良介様、「中年ロングヘアー」と「由香さん」をごひいき下さいまして、まことにありがとうございます(^_^ )。 でもこういう超ロングヘアーの妹2人と生活していても(ロングヘアーに食傷せず)ちゃんと真っ当な成長を遂げておられるんですねぇ。良いことデス。
> 「砂良ね、こんなに髪伸びたんだよ」 .... うっ、シンプルながら、我々のような人種−−−勿論、良介君も既に仲間入りを果たしている−−−にとって、 なんという刺激的かつ挑発的な言葉!!! 言った本人はそれほどの意識は無いんでしょうけど。
> 「ねえ、解いた方が良い?」・・・4つの赤いさくらんぼを差し出した・・・「はい、どうぞ」 .... おいおいおいおい!!!!! そこまで言うーーー、そこまでやるーーーー!?!?!? だから遂に、 > さくらんぼをその手で掴んだ .... ほーーーっら良介君、ついにキレちゃったじゃないの(^_^ )。
> 良介の顔をペロリと舐めて .... どっひぇーーーー!!!!! もう全身が総毛立ちそうですぅぅぅぅーーーーー。
> 上を向いて、背中を反らしてみせた。ああ、確かに、砂良の髪は、床に付いている .... おおーー、イナバウアーですねぇ。たしかに砂良ちゃんのように床まであと少しって長さだと、これって実に官能的なんですよね。 実は何を隠そう私もイナバウアーを用いたプロット −−−「由香さんの髪長エレベーターガール」といって、何故かデパートのエレベーターガールのお仕事をさせられた由香さんが、 停電で止まってしまったエレベーター(つまり個室)の中で、客をリラックスさせるために(今回の砂良ちゃんのように) イナバウアーをして髪を床に届かせて見せる−−−を考えていたのですよ。
> 顔で砂良の解きたてのバージン・ヘアを受け止めて支えた .... えっ、ちょっ、ちょっとちょっとぉ、アールジェタンさん、いくらなんでも良介君をいたぶり過ぎでは!?!?(^_^ ) いやいや、 もう遠慮なしにとことん官能ワールドに誘いくださいまして、ありがとうございます。

> 試鳥家名物の元祖!「マフラー屋さん殺人事件」・・・「黒髪ののれん」、髪を被せて「御臨終」、髪を巻きつけて「ミイラ」 .... ハハハハハ、いや〜〜いかにも子供らしい実にゴーイン(少々毒気もアリ)なお遊戯を、上手く考え付かれましたね〜〜〜。 日本人の子供って “死” とか “殺” という言葉を抵抗無くポンポン使いますもんね。 でも小さかった頃にやった時と今とではもう感じ方が全然違うでしょうねぇ。 > さらにスーパーロングになった今では・・・これこそ、「大人の遊び」 .... そう、そのレベルに達しているということでしょうネ。
> 「お兄ちゃん、昔みたいに、砂良の髪で遊ぼ」 .... そうかぁ、良介君、砂良ちゃんとかつてはこういうことをして遊んでたんですかーーー。 ちなみに通夜ちゃんとはどういうことをして遊んでいたのでしょーーー???
しかしそれにしても砂良ちゃん、お兄ちゃんが中3といえば今思春期の真っ只中でムンムンしまくっている年頃だってこと、 やはり知らないのかなぁ?? もし知っていながらこういう誘いを掛けてきたとしたら、これって相当な罪ですよーーー(^_^ )
> 「それじゃー、まず、モデルさんの髪を直さないと」 .... いや〜〜でも兄ちゃんも慣れてきたせいか、段々図々しくなってきましたね〜〜〜(^_^ )。 でも、> 今日で最後になるかもしれない のでしたら、遠慮などしていると後悔してしまいますもんね(私もこれまでの苦々しい経験が多々アリ ^_^ )。
> 幸せを噛みしめながら愛しい妹のバージン・ヘアにブラシを通した .... もしこれが妹でなければ、思いっきりこのバージン・ヘアを愛撫してしまうことでしょうねぇ。 でも今回その手前で抑制させたところが作品の良心だったなと思いました。
でもこんな究極の髪をもつ女の子が妹だったことって、はたして良介君にとって幸運だったのか?、それとも逆に不運だったのか?
> 伝家の宝刀、のっぺらぼーーーー ただし、後ろ姿との違いは、つま先が見えるか、かかとが見えるかだけであるが .... うふふ、例えばこの(右の画像の)「第3回髪長美女大会」3番目の出場者のような感じでしょうかねぇ??  このヒトも実は前向きで立ってるんですけど。
> 「お兄ちゃん、大好きだよ」 .... いや〜〜こんなことを超ロングヘアーの妹から言われたなら、私ならば生命を賭してでも妹の長い髪を守ろうとするかも。 まあでもたしかに> これから普通の恋愛が出来るかどうか心配である .... こりゃホント、砂良ちゃん以上の髪の長さの美女が現れないと、心が動かないでしょうなぁ(^_^ )
> 黒孔雀は、羽根を休めるように、静かな眠りについた .... そりゃあ砂良ちゃんはこれで眠りに就けて良かったけど、でもお兄ちゃんはとても今晩は眠れないんじゃあないの?(^_^ )
今回のこの第3パート−−“砂良ちゃん&良介君” は、ゾクゾクする数々の官能シチュエーションと共に、 『でも兄妹同士で良いのだろーーか....』というハラハラスリルも存分に味わわせていただきました。


さて、> 夜が明け、遂に、運命の日の朝を迎えた .... そうですかぁ、遂に朝が来ましたか。これは次回第18話は本当にいよいよ運命の日 −−−砂良ちゃん(&彩乃ちゃん。もしかしてひかりちゃんも?)が東京へ旅立ち、新たな世界に一歩を踏み入れる??−−− になってしまう訳ですね。こりゃあ、「バージン・ヘア」の一読者であり砂良ちゃんの一ファンでもある私も心して次回を待たなければ....。
それと同時に実は、砂良ちゃんたちが東京に行っている間に、というか、もしもその滞在が長引いてしまったならば、 その間に5組の少女たちが続々と髪を切ってしまわないだろうか?....という心配ももっております。

では今回もまたまた大作でした第17話「鏡の中のベビーフェイス」のご執筆・ご投稿まことにありがとうございました。
「バージン・ヘア」(ご感想)パート
SNAKEHEART  2008.5.15(Vol.832) 初出___Cont.No.snake17a    
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編集・発行者からの御礼−−第2章 第17話「鏡の中のベビーフェイス」の後書き
アールジェタンさん、今回もお待ちかねの読み物後書きのご投稿ありがとうございました

> 砂良が中学に入学する日、果たして、どんな姿になっているのか .... ふ〜〜〜む、その砂良ちゃんが中学に入学するのは第何章になるのでしょうかねぇ? そして中学に入学して "The End" ではなく、 中学生になってからも更に物語りは続くのか?....ホント色々と今後の展開を想像してしまいますねぇ。
> 創刊9周年おめでとうございます・・・自分がこうして作品を投稿するようになるとは夢にも思いませんでした .... ありがとうございます。まあ『(ロングヘアーに関する)オリジナル作品を集めてみても面白いんじゃあないか』というのも当サイトの当初からの目的でもあったんですヨ。 そういうクリエイティブさが好きでして。
> 井上夕紀の名前を目にしたら、この表紙の画像を思い出して下さい .... そうですか。そしたら、もうしばらくの間、今の表紙のままにさせていただきますね

> バナナの皮の横にあるイラストも実に可愛らしくていいですね .... うふふ、本当はねぇ、皮がむけたイラストの方が良かったんですけど、バナナのイラスト素材がこれしかなかったもので....(^_^ )
> 「卒業の儀式」とは、何なのか?実は、この次の沙也香パートのメールの中に、そのヒントがあります .... はあ〜〜〜奥深いんですねぇ。こりゃあホント、この “あとがき” が無ければ、とても私ではその関連が思いつかなかったです。
> どんな髪型にされてしまうのでしょうか? .... ああーーー、つまり、短くなるかどうかは別にしても、とにかく砂良ちゃんたちは髪型を変えられてしまう ....ということなんですね?????

今回もご投稿まことにありがとうございました。次回も楽しみに待たせていただきます。






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1日も早く、ウイルス・迷惑(SPAM)メールが絶滅しますように!(怒)



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