上の写真を見て「あれ?おかしいなぁ」とお思いになりましたか。そう、いつものカラー写真ではなく、モノクロ写真なのです。ちょっとわけがあって、もとはカラーだった写真をモノクロにしてみました。
それは、林直(はやし ただし)さんというプロの写真家の写真集のホームページをご紹介したいからなのです。まずは林直さんの写真集をご覧ください。
林直さんの写真集「いつみきとてか」
http://www.fujimoto-photo.co.jp/gallery/gallery1/page1.htm
私が最初にこの写真集を拝見したときは、びっくり仰天、実に何ともいえない感動の気持ちでいっぱいになりました。私が住んでいる京都相楽郡加茂町の風景が写し出されていたからという理由だけではありません。写っているものは日常のありきたりの風景なのに、写真そのものが生きて動いていて、輝いていて、温もりを感じるのです。家がある、おっちゃん、おばちゃんが笑っている、子供たちが遊んでいる、木が風に揺れている、畑や田んぼが広がっている、山がある、川がゆったり流れている。。。 モノクロ写真だというのに、色彩にあふれている。 実に新鮮な感動でした。
それに、写真を拝見したあとでホームページに書かれている文章を読み、林さんは私と同じ加茂町在住の方で、しかもプロの写真家であることがわかりました。こんなに身近にすごい方がおられたなんて、二度びっくりしました。
この写真集を見ていると、不思議に感じることがあります。私は、写真とは一瞬を止めて3次元の世界を2次元的に記録することだと思っていました。時間を切り取る行為とでもいうのでしょうか。しかし、林さんの写真には、時間が流れているのです。時間が流れているように感じるのです。次に再び同じ写真を見たら、変わっているかもしれない。1枚の写真が、過去 - 現在 - 未来 とつながっている。そんな不思議な気分になります。まさに「いつみきとてか」です。
インデックスのページでは、そこに林さんご自身の短いコメントが書かれています。そのコメントには、「私はよく木に惹かれる」とありました。確かに木の写真が少なくありません。その中で私が気に入っているのが、1本すっくと立っている木の写真と、2本の木が立っている写真です。私もなんとなくですが、野山をMTBで走り回っているうちにいつしか木が好きになっていましたので、うれしくなってしまいました。
それにしても、モノクロ写真って独特の味わいがありますよね。 モノクロ写真は、カラーの世界を白と黒の2色に減色したものですが、そのために虚飾が取れて、かえって写っているものの本質と、写した人の精神がよく見えてくるような気がします。
林さんの写真を見ていて、一眼レフカメラに凝っていた二十数年前のことを思い出しました。ある写真雑誌に、病気でほとんど寝たきりの少年が撮影したモノクロ写真が数枚掲載されていました。それは自分の家の庭で撮影したものですが、なんでもないもの、たとえば花や草だったり、犬の写真だったり、庭の木だったり、写っているのは本当に何でもない被写体なのです。モノクロ写真なのですが、光にあふれ、日常のありきたりの風景なのに妙に新鮮で、何よりもそれを見る者の心を和ませてくれるものでした。その写真を撮った少年の体は病気でも、彼の精神は少しも病んでいないどころか、実に自由で開放的で、やさしい心を持ち、前向きだと感じました。
そこへ行くと、このページに掲載の私の写真は、カラーをモノクロに変換しただけのものとはいえ、そのために写真のテーマがどこかに飛んで行ってしまっています。言い換えれば、私の写真には、本当に表現したかったものが実は捉えられていないことがわかります。私も、こうやって野山をMTBで走り回っては写真を撮っていますが、いつまでたっても思うような写真が撮れません。写真ってほんとうに難しくて厳しいですね。つくづく感じます。
追記
まったくの写真の素人がプロの写真家の方の写真集(ホームページ)を紹介し、しかもその写真に自分のコメントを付けるなんて、失礼を省みず大それたことをやってしまいました。
写真集「いつみきとてか」をご紹介する構想は、実は以前からあったのですが、文章を書き始めるとどうしても「意識」してしまい、とうとう今日になってしまいました。
それにしても、プロの写真家の写真集をご紹介しながら、自分の下手な写真もしっかりと掲載している自分の無神経さに、今更ながらあきれています。