no.13
2086年1月3日 (4)
 

 私は、自分の名前の登場する前後の文章に目を走らせた。
 彼らは計画を私に知らせるべきかどうかで議論していた。彼らの同士たちは、高齢で亡くなったり、最後は家族といることを希望したりで、櫛の歯が抜けるように、ひとりまたひとりと抜けていっていた。
 だから、協力者はひとりでも欲しかった。
 議論がなされた時期は、最後のが非業の死を迎える6年前のことだった。
 この時点で仲間はを含めて、たったの三人。以外は八十代と七十代の老科学者だった。
 そのふたりは、急いで私に計画の全貌を伝え、仲間として迎え入れるべきだと強硬に主張していた。彼らは自分たちが倒れたり、手伝えなくなったりする事態を怖れたのだ。
 しかしは、最後まで頑として聞き入れなかった。
『我々と行動を共にした結果を想像してほしい。コピードに計画が発覚すれば、誰が後を引き継ぐんですか?』
 肉声が伝わってくるような強い言葉だった。
 私はすべてを理解した。

 少年が帰宅し、私は風呂を沸かして入り、早々に床に就いた。
 議論が交わされた後、わずか一年では二人の同士を失った。ともに病死だった。
 以後、はひとりであの研究施設で過ごした。
 五年間。
 たった数キロの距離に、人類唯一の相方がいたにもかかわらず、一切の連絡を取ることもなく。
 さらに読み進むと、も物心がついてから、ずっと天涯孤独の身の上であったことが判明した。
 私はに代わって、過ぎ去った年月に思いを馳せた。
 しかしが、最後の五年間をどんな想いで過ごしたのかまでは、ファイルは語っていなかった。

 今日の日記はここまでとする。
 明日、やるべきことが決まった。
 今夜はぐっすり眠っておくとしよう。

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