− 第175回 −
終章 5
「それでもぼくがここまでたどり着けたのは自分の力だけじゃないよ。ここにいる仲間たちの助けなしじゃ進めなかったし、黄金の光に導かれたし……」
 ──でも、チャンスを逃さず、どう行動するか判断を下したのはタケル自身なんだよ。タケルの意志なんだよ。
「そうなのかな……。ぼくはうまく操られただけかもしれないよ」
 ──そんなことはない。精霊に人の心を操ったりする力はない。現に父さんがアフリカで出会った“光の河”に父さんが付いていこうと思わなければ助かっていなかった。実際にあった話だが、遭難して命を落とした人の日記の中に『あの光に従っていれば』と書き残した例があるそうだ。……タケルは自信を持っていいんだよ。
「よかった……」
 ぼくは初めて癒された思いがした。
 ──でもタケルと母さんの両方に会うことは許されなかった……。母さんは元気か?
「うん、一時は倒れたりしたけど、いまはずいぶん良くなってる。大丈夫だよ」
 ──そうか。タケルがいれば安心だ。
「それにね、父さんの無実はちゃんと晴れたよ。新出博士もすっごく助けてくれたし」
 ──博士か。ははは、懐かしいなあ。
「ぼくたちは“黄金塊”って呼んでるんだけど、父さん覚えてる? ずっと以前に波多野のおじさんに預けてたんだってね」
 ぼくの口からはとても、波多野守が犯人だったなんて言えない。でも父さんは気づいているのかもしれない。
 ──そうそう、あれも懐かしいな。あれこそが長老にもらったアフリカ最大のおみやげだったんだよ。父さんの顔に似てるって言われてね。
 ぼくはにんまりと笑った。
「父さん、反対側を見てみて」
 父さんが不思議そうな顔をしながら首をめぐらすと、そこにモンダイの“黄金塊”があった。
 ──ああこれだ。父さんの知ってるのより綺麗だなあ。そうか、この時代からあったんだな。
 父さんは“黄金塊”を愛おしむように撫でた。
 ──これが手元になかったので、父さんの願いが精霊に届くかどうか心配だったんだよ……でもちゃんとかなえてくれたな。いや、タケルのこの七ヶ月間のがんばりの成果なんだ。ありがとう、タケル……。
 父さんの眼に、突然涙があふれた。
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