![]() − 第151回 − 第六章 光の河III 53 |
「タ、タ、タンクさん!!」 叫び声に顔を向けると、ホーダイが自分を目ざして走ってくる。後ろに新たな土石流を率いて。 ゴゴゴゴゴゴ。 「バ、バカヤロー。そんなモン連れてくるな!!」 「知らないっスよー。怖いっスよー」 タンクは大事な紙束を上着の内ポケットに入れると、ホーダイと並んで逃げ出した。しかし二三歩走ったところで、アッと後ろを振り返った。 ──“黄金塊”。 「立ち止まっちゃダメっスー」 タンクはあきらめて、ホーダイの後を追った。 土石流はものすごい速さで追いかけてくる。タンクは死にものぐるいで駆けた。駆けながら上着のポケットを服の上から押さえた。その感触に、複雑な思いをめぐらせながら。 新出博士は即日入院となったが、肋骨が数本折れ、足はひどい捻挫というだけで命に別状はなく、タケルを安堵させた。 「アタイが連中を締め上げるのに手こずったんで、あなたたちを追いかけたときは、もう日暮れ寸前だったわ。おっそろしく崩れた場所に行き当たったんで、ねんのため「オーイ」って声をかけてみたの。そしたら「ハーイ」って返事が返ってくるじゃないの。崖の端から覗き込んだら、それが博士さんだった。そこからが大変。いつ崩れてくるか分かんないし、思い切って飛び降りてやった。博士さんは動けないっていうから、抱っこしたままずっと降りてきた。さすがに両腕が疲れたわ」 ベッド上の博士が苦笑した。博士は下山してすぐこの病院に入院したのだ。 「胸に痛みが走るので、負ぶってもらうわけにもいかず、迷惑をかけたよ」 「ところでキョウスケたちは、どうやって締め上げたの?」 タケルは訊かずにはいられなかった。 「もうナイフや銃はなかったんで、腕っぷし勝負よ。見せたかったわ、十対一の死闘。でも最後は正義は勝つ。で全員地下室にブチ込んできたってわけ。町の救世主に乱暴を働いたんだから、今頃、警察で絞られてるでしょうね」 「ケイサツかあ。ムネオなんかすぐに出てくるんじゃないかなあ……」 救世主の博士は病院でもVIP待遇だ。当然病室も広い個室である。その個室の扉があわただしく開き、井沢先生が息を弾ませて飛び込んできた。 「大変よ!! ニュース観た!?」 |
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