− 第147回 −
第六章 光の河III 49
「タンクさん!」
「おお、タケル君!」
 ふたりは再会した。駅前に作られた緊急対策本部の脇にある救護所の前だった。
「ここで何をしてるんだい?」
「祖父ちゃんらといっしょに、怪我人を運んだり手当てしたり、お手伝いしてます」
「偉いな。それじゃこの御仁もよろしく頼む」
 言われてタケルは、タンクが人を背負っているのに気づいた。しかし気を失っているその顔を見たとたん、アッと叫んだ。
「波多野のおじさん……」
「そうだ、波多野守だ。壁にはさまれて血を吐いたから内臓ぐらい破裂してるかもしれねえ。手当てしてやってくれ」
「じゃ、じゃあこちらです」
 タケルはタンクを案内した。そしてどうにか空いているベッドを見つけ、波多野を寝かせた。
「さてと──それじゃ行ってくるな」
「どちらへ?」
「ホーダイだ。眺めたところまだ発見されてないようだ。戻って探してくるよ。またあとでな」
「気をつけて」
 タンクは残骸と化した波多野御殿の方向に取って返した。

 ホーダイの姿は、タンクたちがいた場所よりさらに上のほうにあった。
「タンクさーん。会いたかったっスー」
「情けねえ声出すなよ。怪我はないか。──待て、カメラのこと訊いてんじゃねえぞ」
「三脚は無事っス」
「生身の足は無事じゃないのか!? ええおい!」
「……そんな怒んなくたってえ。軽い捻挫ス」
 タンクは相手にせず、辺りを見回した。高級そうな家具や調度品が土砂にまみれて散らばっている。火事場泥棒なら稼ぎ時だ。
 ふと、頭の中に何かよぎるものを感じた。
 どこか近くに自分を呼んでる奴がいる──。
 タンクはふらっと足を踏み出した。
 ズボリと泥にはまっても、かまわず前に進む。
 ──この辺だ。
 タンクは両手で泥を掻き分け始めた。
「タンクさーん。何してるんスかー」
 応えずさらに泥の下をまさぐる。硬いものに手が当たった。周囲の泥を除けていく。
 金庫だ! エラいもんが出てきやがった。こんなデカブツ、持ち逃げすることもできやしねえ!
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