![]() − 第116回 − 第六章 光の河III 18 |
「アンタ、何やってるか分かってるの? そんなモン出したらもう、ライダーでも暴走族でもなく、悪党よ!」 「うるせえ、黙ってろ!」 キョウスケは銃をあげたまま近寄ってくる。そして博士の眼の前に立つと、銃口の先を博士ではなく、タケルに向けた。 「……なにをする、その子は関係ない」 「うるせえってばよ、おっさん! おかげで段取りがメチャメチャだ。つまらんことでオレたちを仲違いさせようってつもりだろうが、ここまでだ。子供の命が惜しかったら、テープの在処(ありか)を白状しな! 研究所にはなかったんだから、この建物のどこかに隠してあるんだろ! ああ!?」 タケルは向けられた銃口から眼を離すことができない。しかしその銃口は上下左右にふらふらと揺れていた。 「やめなさいったら! そんなので怪我でもさせたら、アンタ本当に警察行きよ」 「ふっ。そしたらムネオの親父にまた頼めばいいのよ、なあ、ムネオ。このガキを撃って、おっさんの指紋を付けとけば、犯人はこのおっさんだ。 おっさんにも後で一発お見舞いすりゃあ、子供を殺して、後追い自殺ってなストーリーもできる。どうだ、いい考えだろ?」 すでにキョウスケの眼は狂気をはらんでいた。 「そんなにうまくいくわけないでしょ!」 「いくんだよそれが。現にこのガキの親父だって無実の罪をおっかぶされて投獄されたんだからな。ダムが完成するまでおとなしく留置されてれば良かったんだが、まさか死んじまうとはなあ。うちの親父も予想してなかったらしいぜ」 タケルは脳天に雷が落ちたような衝撃を受けた。やはり父は無実だったのだ。 「おーっと、タケルくんだっけ。喜ぶなよ。親父さんが無実だっつう証拠はどこにもないんだからな。ははははは」 ひきつれた笑い声が、よけいに恐怖をそそる。 「ま、待ちなさいよ、キョウスケ。アンタまだアタイの質問に答えてないわよ。本当に見返りを要求したの!?」 それに答えたのは博士だった。 「彼の態度を見ればわかるじゃないか。父親からたんまりとご褒美をいただいとるわい」 吐き捨てるように言い放った博士の言葉に、とうとうキョウスケは堪忍袋の緒を切った。 「もうゴタクは聞き飽きた! おまえから先に、オレの銃の餌食にしてやる!!」 |
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