『終らない夜の迷宮』 |
「くそッオニキス様はどこにおられるんだ!?」 レイテンローズの騎士ゼノン・ゼウスは大股で廊下を歩きながら(早歩きで)ながら叫んでいる。 「ゼノン、おまえちょっとうるさいよ。もっと余裕を持って生きたら?」 そう言って隣を歩いて居るのはレイテンローズの王宮に使えている賢者のオデム・カルサイトである。 すれ違う人が振り向くほどの綺麗な銀髪の美青年である。 「オデム!おまえはいつも緊張感がなさすぎる!!少しは焦ったりしたらどうなんだ!?」 ゼノンはオデムを横目で睨みながら言った。 「失礼な。オレだって焦ったりするよ?大事な人が危ないときはね」 オデムは誰もが溜め息をつくほど綺麗に笑った。 「嘘をつくな!!おまえの大切な人など見たことないぞ!!」 ゼノンはさらに歩調を早めながら言った。 「おまえガーネット見たこと無いの?」 「………は?」 オデムがあまりにもさらっと言ったので、ゼノンは思わず立ち止まった。 「どうした?オニキス探しに行かないのか?」 オデムは何事もなかったかのようにゼノンを見た。 「…オデムおまえまさかガーネット様を!?」 ゼノンは驚きのあまりうろたえだした。 「あ〜違う違う。好きとか愛してるとかとは少し違うな。まぁ好きだし愛しているけど一般的な意味じゃない。何て言うか……え〜と…」 最後の方の言葉は完全な独り言になっていた。 「………」 ゼノンは悩むオデムを見ながら静かに、だがとても大きな溜め息をついた。 部屋から出てしばらく走り、ガーネット達は中庭に戻って来た。 当然紅茶はすっかり冷たくなっている。 「はぁ…ここまで来れ…ば大丈……夫だよね」 ガーネットがゆっくりと深呼吸しながら言った。 「大丈夫だと思うけど完全に安全だとは言えないね。……ガーネット大丈夫?」 ハウライトがガーネットの背中をさすりながら聞いた。 「まずゼノンを探そう。いろいろと頼りになるからな…」 オニキスはガーネットとハウライトを見てわずかに眉を寄せながら言った。 「なん…で…オニキスた…ちは…息…切れてな…いの…!?」 ガーネットが恨めしそうに2人を見上げた。 「そりゃあ華の男の子ですから」 ハウライトが笑顔で言った。 「……なんかくやしい…よしッ私だって鍛えてやる!腹筋割るんだから!」 「「絶対止めて下さい。」」 男2人が腹筋を割ったガーネットを想像し一気に青ざめて言った。 ガーネット達が中庭でわけのわからない会話をしている頃、ゼノンとオデムもまた中庭につづく廊下を進んでいた。 「オデム、おまえ賢者なんだからその力使ってオニキス様達を探せないのか?」 ゼノンが隣を歩いて居るオデムに聞いた。 「もちろん探せる。」 オデムはさも当たり前の事のように言った。 「じゃあ最初から探せよ!!」 ゼノンは思わず怒鳴った。 「だからうるさいって言ってんだろうがッ!!」 耳元で怒鳴られ明らかに不機嫌になったオデムが言った。 「ちゃんと探したし、居るところも分かってるに決まってんだろうが。さっきから移動してたが今は止まってるな、この先の中庭だ。なかに…」 それを聞いたゼノンはオデムを置いて中庭に向かって一目散に駆け出した。 「……」 最後までしゃべれなかったオデムはゼノンの後ろ姿を見ながら次に新薬を調合するときはゼノンに飲ませようと、かたく心に誓った。 「……?」 オニキスは誰かに呼ばれた様な気がして城のある方を見つめた。 「オニキスどうしたの?」 いくらか呼吸がもと通りになったガーネットが不思議そうにオニキスを見た。 「いや、誰かに呼ばれた様な…」 (気のせいか……) オニキスは気を取り直してガーネットの方に向き直った。 「ガーネット、あのさ…」 「オニキス様!!良くぞご無事で!!」 ちょうどオニキスの声に誰かの声が重なり、次の瞬間にはオニキスに飛び付いていた。 「うわッ……ゼノン!?」 急に飛び付かれてオニキスはバランスを崩し、しりもちをついた。 「オニキス様お怪我はありませんか!?」 「無い無い!無いから離せ!!」 オニキスはゼノンを引きはがしながら言った。 ハウライトはその光景を指差しながら「オニキスがスッゴい青ざめてる!!」と涙が出るほど笑いながら見ている。 「ゼノンッおまえなぁ!!お礼ぐらい言ったらどうなんだ?オニキスを見付けられたのは俺のおかげだぞ!」 急にどこからか声が聞こえてきて声がした方を見ると、ゼノンより少し遅れてこちらに向かってくる人物が居た。 ゼノンに向かって何か叫んでいるが叫ばれている本人のゼノンは聞いていない。 「…………?」 ガーネットは地面に座りながら歩いて来る人物を見ていた。 「……オデムぅ?」 なんとも力の抜けたまぬけな声で歩いて来る人物の名前を呼んでしまった。 「ガーネット!!怪我無いか?」 銀髪の賢者は世界中の女性を即倒させんばかりの笑顔でガーネットの名を呼んだ。 「オデム!?なんでここに居るの!?え!?仕事は!?」 ガーネットはそう言いながら驚いてオデムを見上げていた。 「ガーネット、仕事なんてそんなに頑張ってしなくていいんだよ?」 オデムはガーネットを見ながら満面の笑みで答えている。 もっともらしく自信満々に答えているが、言っている事は完璧に間違っている。 「…また仕事サボったんだ……アシュレイさんにまた怒られるよ?」 ガーネットは溜め息をつきながら立ち上がり、スカートについた草をはらい落としている。 「オデム!!ゼノンをなんとかしろよ!!お前の親友だろ!!」 オニキスが張り付いたままのゼノンから必死に離れようとしている。 オデムはオニキスとゼノンを交互に見ると「俺、人に命令されんの嫌いなんだよ」と、笑いながらガーネットの頭についた草を取りながら言った。 |
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かまさんより連載小説その5。
久々の終夜〜♪今か今かと待ってましたよイェアー!!(大興奮ですか
腹筋発言に非常に笑いましたYO!(笑
新キャラゼノンとオデムもいい味出してますな!!
アシュレイさん最強。素敵すぎv
いやいや、みんなの掛け合いを非常に楽しませてもらってますよ。
次回も期待してますぜ!!