『終らない夜の迷宮』



「ガーネット、いったん部屋に戻ろう。」
オニキスが周囲を見回しながら、ガーネットに言った。
「え、うん?」
ガーネットは状況が全く把握できていない。
オニキスは周囲を警戒しながらできるだけ早く歩いた(急いでいても歩調はガーネットに合わせる)。
ひどく嫌な予感がした。

歩きながらガーネットは考えていた。
〔一体何がどうなってるの?なんでオニキスはこんなに焦ってるの?ハウライトはどこいっちゃったの!?さっぱりわかんないわ…〕
ガーネットはそんなことを考えながら歩いていたため、前を歩くオニキスとの間に少し距離ができた。
「…あ」
それに気付いたガーネットが距離をつめようと小走りをした瞬間にそれは起こった。


ガーネットSIDE

一筋の青い閃光が目の前の壁を破壊した。
「……あれ?」
何秒か思考が停止したあと、口から出た言葉は自分でも驚くほど気の抜けたまぬけな声だった。
しばらく破壊された壁を凝視したまま動けなかった。何が起こったかさっぱりわからない。頭の中が真っ白になっていた。
「ガーネット!!」
急にオニキスに名前を呼ばれ、一瞬ビクついたあとのろのろとオニキスの方を向く。
「ガーネット!!!!」
2回目に呼ばれた時には完全に脳が覚醒し一気に現実に引き戻され、すぐに閃光が飛んできた方向に顔を向けた。
「……ッうわぁ!!」
飛んできた方向からはもう2発目の閃光が迫ってきていた。
それを尻餅をつきながらなんとかかわす。
ガーネットに当たり損ねた閃光は、壁に当たり白煙をあげながら辺りの視界を遮っていった。


オニキスSIDE

ひどく嫌な予感がしていた。
いつもなら一緒になって部屋を飛び出したガーネットを追いかけてきているはずのハウライトが来ていないのも気になる。
昔からハウライトがついてこない時は何かあった時なので今回も何かあったと見てまず間違いないだろう。おそらくガーネットの部屋の爆発と関係があるとみて間違いない。
「……クソッ」
悪態をつきながら自分の隣の壁に拳を叩きつける。
壁が鈍い音をたて、掛っていた絵画がカタカタと音をたてて揺れた。
「…………」
何秒か叩いた壁を凝視したあと、後を歩いているはずのガーネットの足音が小さくなっているような気がした。
「…………?」
オニキスはガーネットの方に顔を向けた。
ちょうどガーネットが離れた距離を埋めようと小走りをした瞬間だった。
オニキスはいつものように立ち止まってガーネットが追い付くのを待っていた。
その時オニキスは視界に端に光るものが映った。
〔…何だ?〕
オニキスが光った方向に目を向けると、青い閃光がオニキスの脇を通過して廊下の壁を破壊していた。
数秒思考が停止したあとガーネットが居たことに気付いた。
「ガーネット!!」
ガーネットは急な出来事に驚いているらしく一点を凝視したまま固まっていた。名前を呼ぶとのろのろと顔をオニキスの方に向けた。
「ガーネット!!!」
もう一度名前を呼ぶと今度はしっかりと反応があった。
その直後2発目の閃光がガーネットに襲いかかっていた。
「!!!」
オニキスはもう一度ガーネットの名前を呼ぼうとしたが、声は喉に張り付いて出てこなかった。
ガーネットを襲った閃光は目標を外れて壁に当たり白煙を上げて視界を遮って行く。


ガーネットは白煙の中で、呆然と辺りを見回していた。
「けほっ……」
煙を吸い込み咳きこんだ。
辺りにはまだ白煙がたちこめていた。すぐに白煙が引かない所を見ると結構壁が壊れたらしい。
「……オニキス大丈夫?」
ガーネットはおそるおそるオニキスが居た方向に向かって声をかけた。返事は無い。
「オニキス?」
もう一度声をかけてみた。
相変わらず返事は返ってこない。
「オニ…んっ!?」
ガーネットが一度声をかけようとした途端、背後から口を塞がれて物陰に引きずり込まれた。
物陰までひっぱられると、口から手が離れたのでガーネットはおそるおそる自分の口を塞いで物陰に引きずり込んだ人物を見た。
「!?オっんんん!?」
ガーネットは驚いて大声をあげそうになり、慌てたオニキスに再び口を塞がれた。
「ガーネット!!静かに!!」
オニキスは小声でガーネットに言った。
「あ…ごめん」
「もう大きな声出さないでくれ」
オニキスはそう言うと物陰に隠れながら閃光が飛んできた方向を睨んだ。
「ねぇオニキス。どうやってこの物陰まで来……」
ガーネットはオニキスの方を向いて質問した……が、ガーネットの視線はオニキスを見ておらずオニキスの背後を見つめて固まっていた。
「……ガーネット?どうした?」
オニキスはガーネットの顔を不審そうにのぞきこんだ。
「…ハッ」
ガーネットはオニキスのうしろを指差しながら言った。
「ハ?はってなん…うわッ!?」
オニキスは自分のうしろを振り返り、自分の背後にいた人物を見て驚いた。

「「ハウライト!」」

「よッ」
いつのまにかオニキスの背後に居たハウライトは笑顔で手を振っていた。
「ハッ……ハウライト!?どうしてここにいるの!?」
ガーネットはオニキスのうしろで手を振っているハウライトに言った。慌てていても、ちゃんと小声で。
「ガーネット怪我は無い?大丈夫?」
ハウライトは微笑みながらガーネットに訪ねた。
「……ハウライトおまえどっから来た?」
オニキスは不機嫌そうに言った。
オニキスは怒った時かなり迫力がある。オニキスは怒ると眼つきが鋭くなり(普段も割りと鋭いが)妙な威圧感があるのだ。美形が怒ると結構怖い。
だが普段もオニキスを怒らしているハウライトは動じない。
「そんなの決まってるじゃないか、君たちが居るここの後ろ…つまり俺が立ってるすぐ後ろの壁が崩れて隣の部屋をぶち抜いてるんだよ。そこから入って救出しにここへ来たってわけ。……あのさオニキス、俺が来たからっていちいち不機嫌にならないで欲しいんだけど」
ハウライトは呆れ半分で首をすくめながら言った。どうやらまだガーネットに怪我をさしたのを怒っているらしい。
「後ろの壁が壊れてるってことは……この先は……何の部屋?」
ガーネットは首を傾げながらオニキスに聞いた。
「恐らくただの空室。なんにも置いてない部屋のはずだ」
オニキスはガーネットの頭についた埃をはらい落としながら言った。
「いや、この先は第一応接室だよ。ガーネット」
ハウライトはにこにこと微笑みながらガーネットを見ている。
「え、空室じゃないの?」
「空室は跡形もなく吹き飛んでたから。要するに1部屋ぶち抜いて次の部屋に続いてるんだよ」
ハウライトは何でもない事のように笑顔で言ったのでガーネットは危うく聞き流す所だった。
「…吹き飛んだ?」
ガーネットは目を丸くしてハウライトを見た。オニキスもガーネットの頭の埃をはらう手を止めてハウライトを凝視していた。
ハウライトは二人を楽しそうに眺めていた。
ガーネットとオニキスがハウライトを凝視している間に再度青い閃光が飛んできて、ガーネットのすぐ左側の壁がまた削り取られた。
「と、とにかく!今はここから出ようよッ危ないから!!」
呆然と削られた壁を数秒凝視したあと、ガーネットが提案した。
「「賛成。」」
オニキスとハウライトも同意し、満場一致でひとまず脱出することになった。
三人とも視線が固定されているかのように削られている壁に向いている。
「じゃあ早いとこ脱出しようか。ここもあんまりもちそうもないし。なぁオニキスいったい警備兵はなにしてるんだ?」
ハウライトはたえま無く飛んでくる銃弾のおかげで、次々と削られて行く壁を見ながら言った。
「…俺が知ってるわけないだろう。ガーネット行こう」
オニキスはそう言うとガーネットの方に手を差し出した。
「あ、うん」
ガーネットがオニキスの手を握ると、オニキスは不機嫌そうに少し目を細めてガーネットの手を数秒見つめたあと、ガーネットの手を引いてハウライトが来た壁の穴の方へ歩き出した。

「…?」
ガーネットは不思議そうにオニキスに引っ張られている自分の手を見つめた。
見た所あっちこっちにかすり傷ができており多少血がにじんではいるが、別段おかしな所は無い。
「……?」
再度よく考えてみたがオニキスが不機嫌になった理由はわからなかった。
「ハウライト!行くよ〜!!」
ひとまず頭の中の疑問は振り払い、首を捻って後ろ側にいるハウライトに声をかけた。
「…今行く。」
ハウライトは何かを拾っているようだった。
それがなんなのかはガーネットからはよく見えない。(何拾ってるんだろう?こんな崩れかけの部屋にわざわざ持ち出さないといけないような物あるかなぁ…)せっかく頭から振り払ったのにまた疑問が増えてしまった。
その疑問もまた頭から追い出してガーネットは部屋から出ていった。



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かまさんより連載小説その4。

うああああ、かなり、かーなーり展開が!凄いことに!!
鈍いよガーネット!!(笑
っていうか物壊しすぎだよね!(爆
それにしても、姫を守る二人、格好よすぎです〜vvうへへへへ(きもい
次回はいよいよ、あの方が登場ですね!
っつーか、かまさんがいうには、この話のお色気担当はシトリンだそうです。
はーい、みんなちゃんとノート取ったかー?ここテストに出るぞー!!(えぇー