『終らない夜の迷宮』 |
その頃シトは(シトリンはあくまでも愛称)焼きあがったイチゴのタルトを持ってガーネット達が居るであろう庭に向かっていました。 その時、何か黒い影が前を横切りました。 「………?」 その影はまっすぐ庭の方向に向かって行きました。 「シトリン遅いね〜まだかな?」 ガーネットは空を見上げながら言いました。 「…シトじゃなくてイチゴのタルトがだろ?」 「……細かいことは気にしな…わぁッ!?」 ガーネットは最後まで話ができませんでした。何かがガーネットに衝突し、その衝撃でガーネットは椅子から吹っ飛ばされました。 「ガーネット!?大丈夫か!?」 一番慌てたのはオニキスです。 オニキスの前に座って居たはずのガーネットが一瞬にして目の前から消え失せたのだから無理もありません。 オニキスはすぐさまテーブルの反対側にまわり込みました。 「………ッたぁぁぁ…」 何かが脇腹に直撃したおかげでしっかりしゃべれないらしく、ガーネットはわけのわからない言葉を発しながらのろのろと芝生の上に起き上がった。 「ガーネット何が起こ……」 オニキスは話を途中で切り絶句してガーネットの上に倒れ込んでいる人物を凝視していました。 「オニキスどうしたの…ッて、あれ??ハウライト?何でここにいるの?」 「やぁ、ガーネット・オニキス久しぶりだねぇ〜」 ガーネットを吹っ飛ばした犯人、カーネリアン卿ハウライトはにこやかに言った。 レイテンローズ国の東側の隣国にインカローズ国は位置しています。 レイテンローズ国の国王とインカローズ国の国王は代々大変仲が良く、どんなに忙しくても年に3〜4回は必ずお互いの国を訪問したりと、家族ぐるみ(王族ぐりみ?)の付き合いをしています。 そして、そのインカローズ国第一皇子がカーネリアン卿ハウライトで、オニキス・ガーネットとは幼馴染みに当たる人物です。 「で、なんでハウライトがレイテンローズに居るんだ?ぁ゛?」 オニキスはガーネットの上に倒れ込んでいるハウライトを蹴りながら言いました。文面からもわかるように怒っているようです。 「痛いッ!!オニキスはもっと優しくなるべきだね。カルシウムが足りてないな。魚を食え魚を!骨まで食え!!」 「お前が怒らせてるんだよ!!!!!」 ハウライトが余計なことを言ったおかげでオニキスの怒りも倍増したもようです。 「あのさ、ハウライトは何でレイテンローズに来たの?なんかの用事?」 ガーネットが2人の話に割って入りました。 「あぁ、ガーネットさっきはぶつかってごめん!そして久しぶり!」 ハウライトはガーネットに抱きつこうとしましたが、ガーネットに触れる前にオニキスに止められました。蹴られて。 「痛ッ!オニキス何回も蹴るなよ!!」 「うるさい馬鹿。ガーネットに触るな。アホがうつるだろ!」 オニキスがガーネットをハウライトから引き離しながら言いました。 「なんだと!?俺はこれでも一国の皇子だぞ!失礼な!」 「じゃあ馬鹿皇子だな。いや、バカ殿か?」 「違うッ!!」 オニキスとハウライトの言い合いは、シトがイチゴのタルトを持って庭に到着するまで続いていました。 「せかっく来たんだから、シトリンも一緒にお茶しようよ?」 イチゴのタルトを持ってきたシトにガーネットは言いました。 「いや、結構。晩御飯の準備があるからな」 そぅ言うと、シトは調理場に向かって歩きだしました。 「そっか。じゃあまた今度一緒にお茶しようね!」 ガーネットは残念そうにシトに手をふりながらに言いました。 「ガーネットってまだシトのことシトリンって言ってんの?」 ハウライトがオニキスに小声で質問しました。 「……あぁ。」 「そぅか……でもシトにリンをつけて呼ぶのにはとてつもない勇気が必要だな…」 ハウライトはガーネットを少し尊敬しました。 ハウライトにはとてもじゃないがシトにリンをつけて呼ぶ様な真似はできそうにないからです。「さて、イチゴのタルトも来たことだし、お茶にしよう!!ハウライトも一緒に飲むでしょ?」 ガーネットはハウライトに聞きました。 「もちろん!」 ハウライトは即答です。 ガーネットは人数が増えて嬉しそうです。ガーネットの横でオニキスが嫌そうな顔をしましたがなにも言いませんでした。 「よし、早速タルトを切ろう!何等分ぐらいかな?……8等分ぐらい?」 「ガーネットの好きなようにどうぞ。」 「好きなようにって言われると分けにくいわね…」 ガーネットとオニキスがタルトの分けかたを話していると、ハウライトが突然立ち上がりました。 「どうかした?ハウライト」 ガーネットはびっくりしてハウライトに言いました。オニキスも不思議そうにハウライトを見ています。 「今へんな音しなかったか?なんか銃声みたいな」 「いや、俺は聞いてな―」 ハウライトとオニキスの話は大きな音に遮られ、ガーネットの耳には届かなかった。 ドカァァァァァン と言う大きな爆音がレイテンローズ国の王宮に響きわたりました。 「………何?何の音?」 ガーネットは音のした方向を見ました。 モクモクと黒い煙が空へと吐き出されています。 「…爆音?一体何が起こったんだ……?」 オニキスは頭を抱えました。 「……ガス爆発か?なら爆発は調理場…!!」 ハウライトは言った瞬間しまったと言うように口を押さえました。 「調理…場……シトリンッ!?」 ガーネットは調理場に向かって走り出しました。 「おぃガーネット!!危ないから行くな!!オイッ!!!」 オニキスが止めるのも聞かずガーネットは調理場に急ぎました。 「ッ…このバカライト!!!だからおまえはバカ殿なんだよ!!!」 オニキスはハウライトにそぅ言い捨てるとガーネットを追って走り出しました。 「悪かったッてオニキス!でもバカ殿はないだろう!!」 ハウライトも2人を追い掛けて行きました。 ガーネットは爆発音がした場所に来ていました。 爆発はすさまじくそこにあったであろう部屋が一つまるまるなくなっていました。 「……………」 ガーネットは無言でそこに立ち尽くしていました。 「ガーネット………」 ガーネットに追い付いたオニキスは気遣わしげにガーネットの隣に立ちました。 「ねぇオニキス…あの部屋って調理場じゃないよね?あの部屋もしかしてさ…」 ガーネットは途中で言葉を切りました。 「あぁ、調理場じゃないな」 言われて見れば調理場は1階です。そして今自分達が見ている爆発があったであろう部屋は2階に位置していました。 じゃあ何の部屋が爆発したんだ?とオニキスが考えた直後オニキスは全身の血の気が引くのがわかりました。 「ガーネット…まさかあの部屋ッ!?」 「うん。…私の部屋…だよね?」 オニキスとガーネットはその場に立ち尽くしました。 |
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かまさんより連載小説その2。
うあああ、気になる展開になってきました。
何気にバカ殿好きです。(バカ殿言うな
「魚を食え!骨まで食え!」・・・最高です。(ぇ