『終らない夜の迷宮』



水の国レイテンローズ。
世界で一番美しいとされている(ってもこの話の中だけですが)国です。この話はそんな異世界で暮らしている、一風変わった人生をおくっている少女の話です。

「うわぁぁッ」
レイテンローズ国第一王女・フローライト卿ガーネットの自室からけたたましい叫び声が聞こえたのは、まだお昼過ぎだった。
「ガーネット!?無事!?」
叫び声が聞こえた30秒後にガーネットの部屋の扉が開いた。
レイテンローズ国第一皇子ロードナイト卿オニキスである。この二人に血の繋がりは無い。
「あ、オニキスお仕事終わったの?」
話が噛み合っていない。
「ガーネット何があった!?ってかなんで心なしか煙たいんだ!?」
オニキスの言う通りガーネットの部屋は煙たい。
「今日の晩御飯はサンマかしらね?」
「ガーネット!!何で部屋が煙たいんだ!!?」
オニキスが少しきつく言った。
「城は燃やさないから安心して!」ガーネットが笑顔で答えた。
オニキスは溜め息をついただけであとは何も言わなかった。結局オニキスはガーネットに甘いのだ。それはガーネットの美しさのせいではない。惚れた弱味というやつだ。
〔城の心配をしたわけじゃないんだけどな…〕
一方ガーネットがオニキスの気持ちに気付く気配は皆無だった。ガーネットは自分の事にはすさまじく鈍いのだった。
「そぅだ、オニキスお仕事終わったならお茶にしようよ。今日は天気がいいから庭にでよう?」
ガーネットは心底嬉しそうに笑顔で言った。
「そぅだな」
オニキスはガーネットを見て心底嬉しそうに笑った。その笑顔で何人の女の子が脳殺されるだろぅか…本人達は気付いていないが2人ともすさまじく美しい顔立ちだった。
「さぁそうと決まれば早く行かないと!オニキス急いで!」
ガーネットがオニキスをひっぱり2人は部屋をあとにした。



「さて。オニキスはお茶受けは何がいい?」
ガーネットは歩きながらオニキスに聞いた。
「…特にこれと言って食べたいものは無いな」
「ん〜迷うわねぇ。オニキスが甘党とかなら決めるの楽チンなのに」
あいにくオニキスは甘党ではない。むしろあまり自分から食べない方である。
「ケーキにしようかタルトにしようか…迷うわ〜!!クッキーも捨てがたいわね!!」
ガーネットは本気で悩んでいる。
「別に何でもいいんじゃないか?別に変わらないだろ?」
「変わるのよ!!気分が全然違うの!!」
ガーネットはそっぽを向きながら言った。
「……よし、今日はタルトにしようねオニキス!イチゴのタルト!」
「おぅ」
ガーネットはお茶受けが決まって嬉しそうだか、オニキス的にはなんでも変わらない。
「そうときまれば早速コックのシトリンにお願いしてこよう☆」
余談だが、シトリンことコック長のシトは身長2b近くのマッチョである。だが、その外見には似合わずデザート作りが神業的に上手い。
オニキスはあまり好きではないが(見た目的に)、ガーネットはお友達らしぃ。(よくお茶受けをもらいに行くため必然的に)
「…いってらっしゃい」
オニキスに調理場についていく気はまったく無いので先に庭に行っていることにした。
「じゃあお願いしてくるから庭で待っててね!勝手にどっかに行かないでね?」
ガーネットはオニキスにそう言うとパタパタと調理場の方向に消えていった。
「…心配しなくても絶対消えないのに」
オニキスはよっぽどの事が無い限りほぼ毎日ガーネットと一緒に居る(って言うかオニキスがガーネットに会いに行く)
「さて、庭に行くかな」
オニキスはガーネットとの約束通り庭へと歩きだした。



ガーネットは今調理場の扉の前に立っている。オニキスとわかれてからずっと走って来たので息が荒い。
「ふぅ。よしッ」何がよしなのか自分でもよくわからない。
「シトリン〜」
ガーネットは扉を開けて調理場を覗いた。
「ががガーネット様!?何故この様な所に!!」
ガーネットに気付いた若いコックがあからさまにうろたえた。
「シトリン居る?」
ガーネットは扉の近くに居た若いコックに聞いてみた。もちろん自分が呼んでいる愛称でだが。
「……シトリン?あぁ、シト料理長ですか?」
新入りの若いコックは口を手で押さえて必死に笑いをこらえようとした。
〔あのコック長がシトリン!?うわぁ似合わねぇ〜!それにしてもシトリン…あはははははは…〕

ゴツッ

なんとも鈍い音が調理場に響いた。殴られた若いコックは頭を押さえてその場に倒れた…いや、そのコックにもぅ意識は無い。気絶だ。
「ガーネット。今日は何を作ればいいんだ?」
殴った本人。シトリンことシトはガーネットに聞いた。シトはガーネットに様を付けて呼ばない。それは、ガーネットが初めて調理場にお茶受けを頼みに来た時に様を付けて呼ぶと、
「私は様を付けて呼ばれるような人間じゃないの!だからガーネットって普通に呼んで下さいッ」
と、言ったからである。もちろんコック達は猛反対した。自分達の国の王女を呼び捨てで呼ぶなんてできるはずがない。
なので仕方なくガーネットはコック長のシトだけはと思い、シトもそれを仕方なく承諾した。
その時は仕方なくだったが今では2人は仲良しだった。
「あ、シトリン!今日はイチゴのタルトをお願いしていい?」
ガーネットは笑顔で言った。
倒れた若いコックの事はもぅ頭には無い。
「了解した」
シトは快く承諾してくれた。
「じゃあ出来たら取りに…」
「持って行くから大丈夫だ。今日はどこでお茶してるんだ?」
シトはガーネットの言葉を途中でさえぎり聞いた。
「ありがとう。今日は庭なの!じゃあオニキスが待ってるから行くね!また後でねシトリン!」
ガーネットはパタパタと音をたてながら調理場をあとにした。
「さて、イチゴのタルトを作らないと」
あとに残されたシトリンことシトが調理にとりかかるとガーネットとシトの会話を聞いていた他のコック達も晩御飯の支度にとりかかった。
床にはまだ若いコックが気を失ったままだった。  



「早くオニキスの所に行ってお茶飲んどこう」
ガーネットは廊下をパタパタと走りながらつぶやきました。
「……近道しちゃえッ」
そう言うとガーネットは窓枠に足をかけて勢いよく飛びました。

ドサッ

ガーネットは足が地面につくまえに何者かに抱きとめられました。
「…ガーネット。なんでそうやって怪我しそうなことするんだよ…」
オニキスが溜め息混じりに言いました。
「オニキス!?あれ?なんでここに居るの!?」
「ガーネットが遅いから散歩してたんだよ。そしたらちょうど誰かが窓から飛び降りようとしてたから、まさかと思って近づいたら案の定………」
オニキスはもぅ勘弁してくれと言うような顔でいいました。
「大丈夫!だってここ1階だし、怪我しても擦り傷ぐらいよ。それに今みたいにオニキスが助けてくれるでしょう?」
ガーネットは笑顔で言いました。
「……ッ」
言葉にならない事を言うと突然ガーネットを抱えていた手を放しました。当然ガーネットは地面に落ちます。
「痛いッ何!?突然放して。私がそんなに重かったって言うの!?失礼ねっ」
ガーネットが何か抗議してもオニキスは聞いていませんでした。
オニキスはあきれていました。ガーネットにでは無く自分に。
結局オニキスはガーネットが心配で仕方がないし、助けるなって言われても絶対たすけてしまうでしょう。でも、オニキスはそんな自分が結構好きだったりします。
「オニキス?」
オニキスが黙ったままなので心配になったのか、ガーネットは心配そうにオニキスの顔を覗きこんでいます。
オニキスはそんなガーネットを見て微笑むと、手を差し出しました。
「ほら、早く行くぞ。お茶を飲むんだろう?」
「もちろんッ」
ガーネットはオニキスの手を取り立ち上がると、2人は庭のテーブルに向かって歩きだしました。



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かまさんより連載小説頂きました。

甘い!甘い!!
でもこんな展開大好きですコノヤロ―――!(黙れ
ちなみにご本人は穴という穴から砂出しながら書いたそうですよv(ぇ
後の展開が気になります〜!