ソルトレークシティーオリンピック見聞記 2
壁紙:会場内の売店。移動話はいらないという方はこちらまで。


2月11日(火) じたばたどたばたてんやわんや(移動、ペアフリー)
そういえば4年前のこの日もオリンピック観戦に出発していたのだった。


すっかりおなじみになった関西空港の国際線ロビーで今回の同室人kさんと合流。3時30分発サンフランシスコ行きの便で、そこからソルトレーク行きに乗りかえる。
昨年9月の同時多発テロの影響で空港の警戒体制が強化されているのはスケートカナダへ行った時に体験したが、今回はそれ以上の体験があった。搭乗ゲートで座る席がテープで区切られていて、そこへの入り口で係員がボディーチェックと靴の中身のチェックをしているのだ。ひゃー、さすがアメリカの飛行機会社。
しかしちょっと変わった海外旅行に行く善良なOLの私達はノーチェック。待っている間に売店でナイトガウンのような着物と寿司のマグネットを見つけたストイコのファンとヤグディンのファンが何を思ったのか…は、書かないでおこう(笑)。
飛行機に乗って、おしゃべりして、機内食。さあ一眠りという所なのだが。
眠れない。


午前発のヨーロッパ行きは早朝に起きるのでその反動で眠れたし、夕方発のカナダ行きは早めに寝る気分で何の問題もなく眠ることができた。しかし3時半発の飛行機では一段落ついてもせいぜい6時過ぎ、こんな時間にどうやって寝ろと言うのだ!
乗り物酔いを警戒して機内食の飲み物はいつも水にしているのだが、ビールかワインを頼んでおけばよかったかな。日本時間の真夜中に朝8時半のサンフランシスコに着くのでここで眠っておかないとあとで地獄を見るのだが、眠れない。着いてすぐペアフリーを見るのに。

国際線に乗っている時には到着直前まで時計を現地時間に合わせないようにしている。腕時計を見てソルトレークとサンフランシスコの時間を計算し、到着までの時間を逆算するということの繰り返し。今ソルトレークシティーは夜中の〇時、雪ちゃんとパンちゃんはちゃんと寝ているのだろうか。
世界選手権やオリンピックで優勝やメダル圏内の選手はフリー前日の夜をどう過ごしているのだろう。気が高ぶって一睡もできなかったりするのだろうか。いやそういう時にちゃんと睡眠をとれる選手だからこそ上位にいるのかもしれない。うー眠れない眠れない眠れない……。
眠ったという実感がないままサンフランシスコに着いてしまった。


ここで同行グループの東京発組と合流する。国際線から国内線へ移動する途中にホットドッグスタンドぐらいの小さな両替所があったのだが、もっと大きいのがあるだろうとやり過ごし、ボディーチェックを受けて(ここでは靴を脱いだ)から国内線のロビーへ。しかし店はあっても両替所が見つからない。ドルがないことにはお茶も飲めない。案内所で訊いてみると、さっきやり過ごした所しか両替所がないらしい。国際空港で両替所が一ヶ所だけ?そんなアホな。
仕方がないので国際線の建物へ引き返して両替し、再び国内線のロビーへ戻ったのだが、この時にまたボディーチェックを受けなければいけなかった。国内線から国際線への移動は別の通路を通って何もチェックされないのに、国際線から国内線への移動は通る度にチェックを受けなければいけないのだ。ああ面倒くさい。プラス換金レートが高くて1ドル150円!換金された金額を見て目が点になった。恐るべし円安…お土産はカードだな。
小さなことの積み重ねでテンションが下がり、飛行機で眠れなかったツケがここで出てきた。四人でお茶を飲みながらも死んでいた私。うー頭痛い〜気持ち悪い〜。

銃は持っていないが迷彩服を着た人が立っている。ネタにしたい所だったが、気軽に写真を撮れる対象ではない。


ソルトレークシティー行きの飛行機で爆睡して体調回復。
来たよ。
飛行機がランディングする度に胸の中でつぶやくのもこれが多分最後。


警戒態勢について話題になっていたソルトレークシティーの空港だが、警官や軍服姿の人間はいなくて「警戒している」という物々しい雰囲気はない。
タクシー乗り場では一人一人呼びとめて人数を確認してから無線で連絡をとり、四人グループで荷物の多い私達のために小型のバンを呼んでくれた。すごい、こんなことまでしてくれるなんて迎える準備が半端ではない。ボランティアだったら大変な労力だ。

B&Bのご主人のメールによると「車で20分」らしいが、車での道順と地図を照らし合わせるととても20分で行ける距離ではない。まあ宣伝文句だから…と気にとめていなかったのだが、ハイウェイをぶっ飛ばして本当に20分と少しで着いてしまった。
ご主人のGさんは60代後半といったところ。顔を合わせるなりあいさつもそこそこに、「ペアフリー見たいんでしょ君達急がなきゃ!(あらかじめ打ち合わせしてくれていた)はい部屋はここ、トイレとバスルームはここ、鍵はこれ。英語誰か話せる?バスの路線図はこれ、最終バスはこの時間まであるからね、この表示は間違っているから運転手にこの名前を言ってそこで降ろしてもらうんだよ!
手加減なしのスピードでしゃべりまくるので耳が追いつかなくて、ちゃんとした返事ができない。親切はありがたいがもっとゆっくりしゃべってくれ!バンの運転手を待たせているので大慌てで荷物を運び込んで、カメラをバッグに入れかえてさあ行くぞ…って、きゃーフィルム忘れてる!
ハイウェイの途中で手荷物に中国国旗を入れ忘れていた事に気がついた。


バンはオリンピックと全然関係のない建物の前で止まった。車両規制でこれ以上近づけないらしい。「この通りをまっすぐ行って、二つ目のコーナーを右に曲がって次のコーナーをまた右に曲がるんだよ!」と教えてもらって歩き出したのはいいが…延々とフェンスしか見えない。
二回角を曲がって人の流れについていくと「チケット持ってる?」とチェック。そこから柵で区切られた通路を歩いて途中でもう一度軽いチェック。相当厳しくチェックされるのだろう。

ようやく入場ゲートにたどり着いた…のだが人がたまっていて、また列の進みが遅い。普通の試合を見る時間感覚で行っていたらとても試合開始には間に合わないだろう。道理でペアショートの最初の方の観客席ががらがらだったわけだ。音楽を流したり係員がDJ風に何か言うと周りの人がそれに盛りあがったりと、待ち時間を楽しもうというノリになっている。

荷物チェックの担当はいかにもボランティアといった感じのおばちゃん達。荷物の中身は全て取り出されるが、「あらーすごいカメラねえ〜」とほのぼのしたもの。オリンピックの公式ページには会場に持ち込む荷物のサイズの上限が書かれていたので、わざわざサイズぎりぎりのカバンにカメラを詰めこんで持ってきたのだが、「荷物小さいわね。Good!」と褒められただけでサイズにこだわる様子はない。これなら普通にリュックサックに入れて持って来ても大丈夫だったかもしれない。
「Have fun!」の言葉に送ってもらって金属探知機を通りぬけてさあ行くぞ、雪ちゃん宏博兄さん今行くわ!(←おい)と、走り出したい所だったのだが。
会場、どこ!?


ステージ(撮ったのは別の日)入場ゲートを通り抜けても見えるのはフェンスだけ。どうも街の一区画をフェンスで囲っていて、博覧会の会場のようになっているらしい。
案内にそって歩くとすぐ建物が見えてきたが、その途中にステージがあり、スポンサーのロゴが入ったパビリオンのような建物も見える。
頭に白いコーヒーカップをかぶって「大草原の小さな家」に出てくるような衣装を着た女性達が何か配っている。とどのつまりここはチケットを持った人だけがオリンピックのイベントを楽しむことができる非日常の世界、ディズニーランドみたいなものということか。


幸い第1グループを見逃しただけですんだ。のはいいのだが。
この席、た、たたたたた高い!また、遠い!バンクーバーの3階席も高くて遠いと思ったが、ここの3階席はそれ以上!
おかげで観戦している時の感覚がつかめなくて第2グループの始めの2組の演技は全く集中して見ることができず、自分が結構高所恐怖症ということに気がついた。


ラングロワ&アルチェット組はパンちゃん達がスケートカナダで負けて表彰台を逃した時から「中国vsカナダ、2番手同士のペア対決!」と燃えていた対象のペア。少しミスはあったが終わった後に大喜びのラングロワ。会場全体をスタンディングオベーションに巻きこんだスケートカナダの演技を生で見ているだけに物足りない気はするが、ショートから考えるとよく立ち直ったといえるのかもしれない。

カナダ選手権で2位だったラリビエール&フォスティーノ組は本田君のいるMariposaで練習しているペア。男性のレニー君は偶然見かけたHPにとてもおもしろい旭川NHK杯参戦記を寄稿していた。そういう先入観があるせいか体格差が大きいせいか、男性の演技っぷりが目を惹く。「ロミオとジュリエット」なので男性が目立つくらいでちょうどいいだろう。演技の雰囲気が北米というよりヨーロッパのペアに似ているような気がするのは私だけだろうか。
少しミスはあったがこちらもよくまとめた演技。 全世界クラスの試合のデビュー戦がオリンピックになったカナダの若手ペア、2組ともフリーをいい演技内容で終わる事ができてよかった。ある程度まとまったラングロワ組といかにも発展途上のラリビエール組、来シーズンのカナダのペアはこの2組の争いが面白くなりそう。


スターティングオーダーを見直して驚いた。去年のバンクーバー世界選手権で第3グループクラスのペアが見事に第2グループから第3グループにばらついているのだ。第4−5グループに目が行っていて気がつかなかったのだが、このクラスも思っている以上に激戦区だったのか。

その激戦区から抜け出すことを狙ったかのように思いきりグレードアップしたプログラムを持ってきたパンちゃん達。スケートカナダでは苦戦していたが、シーズン終わりには滑りこなしてくるだろうと心配より期待の方が大きかった。期待通りのいい演技で観客の反応も上々。やったね!点数がどこまで出るかが楽しみだ。

中国の3番手、張&張(姉弟ではない)。ツイストリフトが中国勢には珍しくぎりぎりの位置でのキャッチ。さりげなくクワドをやってなかったか?いやこの会場の様子だと違うのだろう。ショートであれだけ盛り上がっていたのだ、クワドのツイストリフトだったらただではすまない。
調子よく技をきめていたが、中盤のソロジャンプで女の子がミス。スロージャンプも失敗し、みるみる勢いが落ちていった。ショートでいきなり9位につけた時「下手したら来シーズンパンちゃん達抜くんじゃ…」と思ったが、フリーを見ていると上手なジュニアが健闘したという印象。しかしこの二人は本当に観客に人気がある。
丹ちゃんの髪型が昔の雪ちゃんと重なるが、演技に変なくせがなくて昔の雪ちゃん達より洗練されていると思う。さりげなくパンちゃん達よりいい衣装を着ている気がするのだが。


当たり前の話なのだが、イナ組が出てきた時の観客の盛り上がりはすごい。
そしてこの時の二人はそれだけ観客を盛り上げる演技だった。ジマーマンがんばったよ〜〜!密度が濃くて隙がないのはモスクビナコーチのプログラムの特徴なのだろうか。ベレズナヤ組にない独特の味付け、二人の演技の完成形がやっと見られたような気がする。どうも特徴がつかめなかったのだが、これだけすごいペアだったのか!

またしても地元のペアの後で会場が騒然とした後で滑る事になってしまったペトロワ組。とことん滑走順の運がない。
出来は悪くないのに今までにあった何かがない。悲しい旋律が問題なのだろうか。太って見える衣装が問題なのだろうか。ティホノフさん、力が落ちたのでは……見ていてひどく悲しい気分になった。

ショート7位のベランコワ組(チェコ)は申し訳ないが完全にノーマークだった。一つ一つの技がしっかりしたクラシカルなペア。これだけうまいのになぜ今まで目につかなかったのだろう?
演技のスタイルが4、5年前のようで第4グループで滑ると苦しいものがあるが、第3グループで滑っても反対の意味で浮いていただろう。パンちゃん達の当面の目標はここということか。


製氷、そして最終グループのウォームアップ。
生観戦のよさはいろいろあるが、ウォームアップの間ずっと同じ選手を見られるということも挙げられる。ショートをテレビで見ている時、次々切り替わる画面についいらだち(選手をまんべんなく映さなければいけないのはもちろんわかっているが)、ウォームアップを見られることが自分にとっていかに大きいことだったのかこの時初めて気がついた。
ほとんどの時間を別々に滑っていた雪ちゃんと宏博兄さん。雪ちゃんはもちろん、宏博兄さんも普通にトリプルを降りている。だが結局ショートを見た時の印象が強くなった。
悪くはない。だが上の2組には勝てない。

他のスケーターを見ようか…と視線を変えた先で、サレー!どうしたのよ、視界に何も入ってなかったみたいじゃない!
国内選手権では優勝したもののミスが多くてペルティエがサレーとコーチ相手にブチ切れたり(記者会見でペルティエ自身がこのことを全て語り、その場で二人に謝った)、ショートでは動きはよかったのにフィニッシュで変に崩れたりとどうも最近のこの組はおかしいのだ。フィギュアスケートの金メダル候補によせるカナダ人の期待の大きさはただ事ではない。ごたごたあって精神のバランスを崩しているんじゃ。大丈夫なの!?
ぶつかった時に腕でガードしていたように思うが、なかなか立ち上がれないサレー。シハルリーゼは大丈夫そうだがいかにも人のよさそうな彼、顔がこわばっている。ああもう〜〜せっかくの大勝負の舞台でなんてこと。


バンクーバーで「来シーズン来るよ!」と思ったトトミアニナ組。伸び盛りの若手ペアはオリンピックシーズンで思いきりグレードアップした大人っぽいプログラムをもって来るだろうと思い、オリンピックの最終グループはもちろん、雪ちゃん達との3位争いも覚悟していた。なので去年と同じプログラムというのは肩すかしであり、残念な気もする。考えも事情もあってのことだろうが。
序盤のミスに続きシャープな雰囲気の音楽のせいか観客が静まり返り、終盤で曲調が変わってもノッてこない。最終グループでこの反応は気の毒になってくるが…仕方がないと思わせる面もある。全体的にスケートカナダの方が出来がよかったと思う。


ベレズナヤ組の衣装はファイナルの物が好きだったので、新しい衣装を見てテンションが下がっていた。シハルリーゼのステップアウトでさらに下がる。しかし中盤から二人の世界がじわじわ効いてきた。スケーティングの美しさ、エッジワーク、凝ったポーズ、どこを切り取っても隙がない「世界一美しいペア」のコピーがつく二人の路線の集大成。雪ちゃん達にないものをこれでもか、これでもかと見せつけてくる。

勝てない。

二人の間に常に磁力が働いていて、離れていてもすぐ引き寄せられて一つに戻れるようなユニゾンも、滑っているだけで美しいとほうっと思うベレズナヤの姿も、情熱的なシハルリーゼの表現も。そりゃジャッジはこのペアに点数出すわよ、このペアを基準にされちゃ雪ちゃん達のプレゼンは下がるわよ。ソロジャンプのステップアウトくらいじゃひっくり返せないわよ。
ヘルシンキで目標と意識して、バンクーバーで射程距離まで差を縮めた。今シーズンラストスパートをかけてソルトレークシティーで勝負!と思っていたが、スパートをかけられて逆に差を広げられた気分だ。
ファイナルからオリンピックの短期間でこれだけ印象が違うなんて、タイスのよさが初めてわかった。それと同時にこの出来だと余地がかなりあるようにも思う。シーズン初めからこのプログラムにして滑りこんだ状態での演技が見たかった。どのペアも太刀打ちできない無敵のプログラムになっていただろうに。


心配するんじゃなかった。先シーズンあれだけソロジャンプが不安定だったサレーが安定したランディング。これで一気に会場に火が点いた。
オフアイスをそのまま持ちこんで、演技がいらないような明るさと自然さ。常に二人寄り添っていて、離れることがないようなユニゾン。それより何よりすいすい滑っていくこの勢い!以前代々木のファイナルでもサレーの存在を忘れそうなペルティエのリフトに叫んだが、私が叫ぶくらいだからこの観客が黙っているはずがない。観客の歓声さえもはやBGM、ベレズナヤ組に続いてサレー組にこれだけの演技をされたらこちらとしてはもう感動するしかない。
負けた負けた負けた―――っ!!
この演技されちゃいくら雪ちゃん達がスローのクワドきめたって勝てないわよ! さあへなCHOCOにどんなお祝いのコメントを書こうかしらね!

始まりと同じポーズからサレーが去っていくフィニッシュ。
座った姿勢からしばらくしてリンクにキスをし、スライディングしてガッツポーズするペルティエ。サレーはこの時突っ立ったままだったのだろうか。いつもと違い、二人がそれぞれで浸っているのが逆に成し遂げたという感動の大きさを感じさせる。
ようやく二人で喜びを爆発させる。ハイタッチするあたりがこの二人だ(笑)。長年トップクラスにい続けている選手達とは違う、隣近所のジェイミーとデヴィッドというこんな無邪気さがこの二人の魅力。この大舞台でこれだけの演技ができたのだ、心ゆくまでその場で喜ばせてあげたい。でもね。
あなた達最終滑走じゃないのよ……(^^;)。

雪ちゃん達がリンクに降りる前に点数が出るようなことになったらとやきもきしていたのだが、サレー達がキス&クライに座ってもなかなか点数が出ない。何?点数の出し方迷ってるの?
やっとテクニカルが出た、はいプレゼンドーンと6.0!と思ったが意外に伸びない。まあテクニカルできっちり差がついているんだから1位には変わりない…って、え?
2位!?


驚き、そしてブーイング。現実のこととは思えなくて私も一瞬混乱したが、それどころではない、次雪ちゃん達なのだ。黙れ!まだ滑る人間がいるんだよ、眼中にないのか!と思いもするが、それも無理はない、この混乱ぶりもやむをえないという気持ちの方が大きい。
滑ってもいないうちから敗北を認めるというのはファンとしては選手を裏切るクラスの行為かもしれない。しかもこんな時に中国国旗を忘れるなんて、なんて大抜かりをしたものだろう。いかに自分の注意力が偏っていたかがわかった、自称アジアン応援人が聞いてあきれる。
それなのになんでこんな私しか登場してきた時に歓声をあげる人間がいないのよ、なんでアメリカに中国系は山ほどいるのになんで誰も中国国旗を持ってないのよ!

ああもう雪ちゃんがガチガチ。

とにかく山は始めのスローサルコウ。降りたと思いきや、雪ちゃんが滑っていく派手な転倒。実はこのスローサルコウをトリプルだと思っていたのだ。コンディションがあまりよくないのでトリプルでセーブしたのが裏目に出てしまったのだと…。
スロージャンプを失敗したダメージは転んだ雪ちゃんより宏博兄さんの方が大きかった様子。この後のソロジャンプは宏博兄さんがかなりきわどかったし、さらにこの後のリフトでがたがたになっている。こんなひどいのを見たのは初めて、兄さんしっかりして、雪ちゃん落ちそうだよ!!完全にパニック状態の私、こうなるともうトゥーランドットの世界を楽しむどころではない。
ペアスピンは…セーフ。スローループはいつもの彼女達のもの。このスロージャンプで始めのスローサルコウがクワドを狙っていたことを初めて理解した。(私の見る目はこの程度だということだ^^;)この辺からやっともち直したような気がする。
落ちついて見ればパニックになるほど悪くはないのだ。大きなミスは始めのスローサルコウだけ。なんとかまとめた。まとめたが……。

観客にあいさつする雪ちゃんの笑顔がかえって辛い。キス&クライではテクニカルが出た時点でもう立ち上がっている。プレゼンが出るまではそこにいてね。3位の表示が出てキス&クライで抱き合う二人。この出来でメダルが獲れるとは思わなかった……!
ミスをしてもある程度の評価をされる存在になっていたらしい。


しかしこれは……荒れるぞ。何が起こるか察しがつくだけに気が重い。


ざわめきが収まらないまま始まった表彰式での選手紹介はブロンズメダリストから。歓声も拍手もそれなりにあるが、場所移動中の観客がやたらに多い。こっちを向いて挨拶している雪ちゃん達の写真を撮ろうとカメラを向けるが、その先10列くらい前にいる観客が座席移動の最中で雪ちゃん達が隠れてしまった。どけ!表彰式始まっとるんじゃ、座れ!
その観客の所へぶん殴りに行こうかとも思ったが、まあここの観客はブロンズメダリストに用はないということなのだろう。マナー、いやそれ以前の問題、常識もわきまえていないのか。というよりスケートに対する愛情の性質の違い…というか観戦のノリが違うということだ。
しかしバンクーバーのように引き上げていったりヘルシンキのようにチャンピオンをブーイングで迎えるようなことはなかったということを、現場にいた中国ファンの証言として記しておく。拍手の大きさに差はあったが、地元選手とそれ以外の選手の差は仕方がないだろう。

表彰式後のメダリスト
表彰式が終わり、ビクトリーラン、カメラマン向けの写真撮影の後はスケーターと観客席にいるファンのささやかなふれあいの時間。熱烈なファンを見つけた時にスケーターの意外な一面が見られることもある。
しかし雪ちゃん達にアピールするファンが1階席にいないのだ。誰か雪ちゃん達の大物ファン、いないの!?会場のアメリカ人にブロンズメダリストの気合いが入ったファンがいないと思われるのは非常におもしろくない。
3階席からでは声は届かない。旗を振ってアピールしようにもリンクから3階席が見えるはずがない。そもそも国旗を持っていない。幸いリンクサイドに中国人がいたようで、二人の花束はそこへ。


最後までリンクに残っていたのはサレー組。サレーはずっと泣き顔だった。


あれ?フィルムが一個足りない……。


試合が終わってからバンの運転手に電話をかけて迎えに来てもらった。B&Bまで往復送り迎えなんて、ゴージャス☆(←貧乏性)本当に便利なのだが、費用の方もバカにならない。ああ20ドル札がまた一枚飛んでいく…。
街の様子を把握していない初日の出費は授業料と割り切るしかないとはいえ、この交通費はシャレにならない。早く公共機関での会場への行き方をマスターしないと。



B&Bに帰り着いた時には夜11時をまわっていたと思う。かなりへろへろだった私はベッドに直行したのだが、kさんはその後ペアフリーの放映をおばちゃんと一緒に見たらしい。

続く

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追記:
・結局フィルムを一個なくしていたためにメダリスト以外の写真が全くありません。豆粒サイズとはいえ、メダリストの写真だけでも残っていてよかった…(^^;)

・帰りのバンでB&Bへの道順を説明するために私が助手席に乗ったのですが、同行していた皆様、この場で白状します。すみません、途中から寝てました。
疲れが一気に出てしまって(^^;)