証明<6>

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 太陽の日差しが照りつける夏真っ盛り。あれから三ヶ月程がたち、とうに怪我も全快していたオルは、ドワーフたちと共に汗を流しながら畑仕事に精を出していた。
 怪我が治ったら村を出ていくつもりでいたが、いまさらテグリムの軍に戻れるはずもなく故郷から遥か遠くの地にいては、下手に動いては行き倒れになるのが席の山である。男たちは相変わらず無愛想であるが、射すような視線を浴びせる事は無くなり、マイラが相変わらず世話を焼いてくれるので、ついつい出そびれてしまっていたのだ。
「オル。お昼ご飯よ」
 マイラが木の皮で編んだ弁当篭を持ってきた。中身はというと、野菜と鳥肉に岩塩をまぶして炒めた物。マイラが一番得意とする(というより唯一作れる)手料理なのだが、その味付けは決して誉められたものでない。しかし屈託のない笑顔で「いっぱい食べてね」と言われては、無理矢理にでも口にするしか術はない。もっとも三ヶ月も食べさせ続けられたせいで、今では少なくとも不味いとは感じなくなっているが・・・
「今日は暑いから疲れるでしょ?だから肉を増やしたの。おいしい?」
「ん?ああ」
 決して本音でない相槌をうつオルは、最近気になっている疑問を思い浮かべた。
 それは・・・『ドワーフは、人間と何が違うのか?』という事。
 確かにマイラを例にとって見ると、その腕と脚は可愛らしい顔立ちとは異様に不釣り合いな程に筋肉質である。他の女性たちも同様に筋骨隆々であるし、男たちが一様に無愛想なのも噂に聞いていた通りだ。それだけ見れば、ドワーフが人間ではないというのも頷けなくもない。ただ行動そのものや生活習慣、それに話す言葉が人間と変わらないのである。はたして異種族が日常生活において同じ言語を使用するのだろうか?そしてなによりもオルに疑問を抱かせた一番の理由は 、彼自身が三ヶ月も生活を共にして平気だという事である。
(人間同士でも、部族がちがうと気が合わずに一緒に住めない事もある。それなのに・・・)
 考えれば考える程に、謎が頭の中を駆け巡るばかりだ。オルの心の中では、好奇心が入道雲の様に広がっていった。

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