C:このあいだの「こどもと魔法」のリミックス盤はチャイルディスクの面々がフィーチャーされた内容になってましたが、それはやはり、メジャーのフィールドを使って彼等の音を紹介しようという目的があったんですか。

 

T:そうですね。単純にリミックス・アルバムって、なんか有名な人に金積んで頼んで、っていうのいっぱいあるじゃないですか。それがすごい嫌だったので、本当に好きな人達に、チャイルディスクの人達に、やって欲しいなと思って。


C:個人的な思い入れもありますけど、特にHYUのミックスは素晴しいですね。
  T:はい、はい。ええ、素晴しいですね。

C:あのぐらいビートがたってれば、クラブとかでも使えませんか?

 

T:どうですかね。確かにビートはありますけど、踊れるビートではないですよね、きっと。ドラムからベースから上ものから全部が踊るために機能してる音楽が当り前じゃないですか、ああいうクラブっていう場所では。そのなかでHYUみたいな、まあビートはあるんだけど、ちょっと違う方向のは・・・。声の扱い方にしたって違う方向に向いてるから。 そういえば、海外にDJでツアーにこないだ行ってたんですけど、『CHILDISC vol.1』に入ってる彼の曲をかけたら、すごい評判が良くって。でも帰ってきて日本でかけたら、全然誰も踊んなくって(笑) そんなもんだな、ってまたショックを受けたんですけど。


C:海外のほうが、より素直な反応が得られる・・・と。そういえば竹村さんはシカゴ周辺の人脈ともかなり交流が深いようですが、それもそういう理由からですか。

 

T:僕も始めはそんなに知らなかったんだけど、トータスが最初に来日する一ヵ月前にたまたま知って。むこうが竹村のファンで、前座やらしてくれって言われて。「それ誰?」って最初は言ってたんですけど、聴いてみたら、めちゃくちゃ、なんか、言葉にできないくらい「わかる」っていうか。その、なんでこういう音になってるのかっていうのが。それで、それからリミックスやったりとか。(トータス『TNT』国内盤に収録。これもトータス・サイドの熱烈な希望で実現したとか。)今度、自分のサード・アルバムがスリル・ジョッキーから出るんですけど・・・それとかも何か・・・なんて言うのかな・・・全然かたちはバラバラなんですけど、すごい根底の部分で通じ合ってるっていうか。トータスとかも全部生でやってたりするんですけど、いわゆるミュージシャンの演奏できるから凄いんだぞっていう人を見下した感じがないんですよね。そこが一番通じる部分かな。本当、直感でトータス聴いたときには、「やっと出逢えた」って感じで、すごい嬉しかったです。


C:新譜には期待してない、っていうことをよく言われてますけど、やはり、そのあたり以外には通じ合える人っていないですか。

 

T:ああ、本当もう、数えるくらいしかいないです。あとは、マウス・オン・マーズ周辺のドイツの人達くらいで。ジム・オルークにしたって、彼も僕のこと全然知らずにたまたま輸入盤で『こどもと魔法』を買って。それですごい興奮して佐々木敦のところに「竹村って誰やねん?」って電話してきて。それで、そういう話しになって、こないだ会ったんですけど、もしかしたら共作とかつくるかもしれない。


C:ハイラマズの人とかもそんな感じみたいですね。

 

T:ああ、ねえ。全然僕も聴いたことなかったんですけど、言われてから聴きだして。なるほど(笑)とか思ったり。


C:先程からの話のように、国外だと竹村さんに対する先入観や予備知識もなく、本当に音だけ聴いて理解されるような状況が、むこうに受け入れる用意があるというわけですよね。

 

T:だから嬉しいんですよ。


C:それならチャイルディスクの音源もむこうで流通させてみよう、というような考えは無いんですか。

 

T:いやあ、考えたいんですけど、その、スタッフがいないもんで(笑)。なんか大変なんですよいろいろ。とりあえず、無理はせずに続けることを第一にやろうと思ってます。余裕が出来たらそれも考えます。


C:最近だとインターネットを使った音楽の配信とかも選択肢としてあるわけですけど。

 

T:でもね、インターネットって、それだけ量が莫大な量になればなるほど、例えば一時間にかける人間の集中力って落ちちゃうと思うんですよ。だから何も意味しないと思うんです。結局僕らが若いときよりもレコードとかCDとかって全然安くなってて、同じ小遣いとかでも今の人のほうが全然多く聴けると思うんだけど、それが逆に変な方向に行ってるなあ、と思うんですよ。


C:でも媒体を限定していくと「物神信仰」みたいのから、いつまでたっても抜け出せないような気もするんですが。

 

T:音楽に魅かれるのは正にその、目に見えないから魅かれるんであって、確かにそのCDっていうものが有るからなんか錯覚する人がいっぱい出てくるんだけど。なんかコレクターとかが偉そうな顔してるし。あれは本当、なんか本末転倒というか(笑)。理解出来ないですけど。


C:今後何か新しい音楽のシステムのようなものが出てきたなら、それを試してみようとは思いますか。

 

T:勿論、それはやりたいと思いますよ。ねえ、でもそこまで大きい視野では考えてなかったです。ただ単に好きなものを先ずかたちにするには・・・っていうのでCDだっただけで。


C:これはもっと可愛い意味ですけどパッケージングされたものには愛着がありますか。

 

T:音楽に関してはそれは無いですけど。でも一般の人はそうだろうなあ、というのは痛いほどわかるし。まあ、その「一般の人」が指してる人種によるんでしょうけど。僕はでもOLとか学生とかって決して耳が悪いとは思ってなくって。それこそDJ予備軍が一番耳が悪いと思ってるから。そういう何かに染まってない人にチャイルディスクの音を知って欲しいと思います。それは資本をかければ簡単なんだけど、すごい手作り感覚でやってるから方法模索中っていうか。


C: チャイルディスクのことがメディアで紹介される可能性があるという現状は、やはり竹村さんがやってるレーベル、という条件があるからだと思うんです。そういう自身の広告塔的な役割についてはどう思いますか。

 

T:正直言って嫌ですけどね(笑)。独り立ちしてくれれば嬉しいけれど、最初は仕方ないな、と。一部の人・・・僕が好きで推してるものを信頼してくれてる一部のリスナーもいるんで、そういう人達は絶対チャイルディスクを買って「はずした」とは思わないだろうし、自信持ってますけど。


C: 逆に竹村さんのいままでのイメージによって、リスナーの層が限定されてしまっているという現状もあるわけですよね。

 

T:そうですね。それは思います。でもそれだけで固まろうとかいうのは全然ないです。僕がある程度いろいろ音楽やってきてるから、ああいう人だっていう先入観があって見られているので、それがちょっとつらいところではあるんです。





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