CRJ-west(以下C):すごい基本的なところから始めたいんですけど、今回レーベルを始められたきっかけは何だったんでしょうか。

 

竹村(以下T):きっかけですか・・・。いっぱいあるんですけども、まあ単純に新譜を聴いていて面白いと思うものがあんまり無い、というのが先ずひとつと、あと、DJとかライヴとか割と全国でやるんですが、その度にデモテープをもらってるんですけど、それがとても面白いっていうか。それも、いわゆる大型店なんかで「今はコレや」みたいな感じでプッシュされてるもんよりも何百万倍も面白くって、何かできないかな・・・みたいなのがきっかけなんです。


C:でも、レーベルをやってCDを売るとなると、そういう大型店で推されるようなものとも同列に並べられることになるわけですよね。

 

T:まあ、そうなんですけど、物によりけりなんで。大型店っていうのは言い方が悪かったんだけど、何も考えずに「これが新しい」っていう情報操作をそのまま受け入れてるようなお店っていう意味です。


C:レコード店っていうのは、CDとかレコードとかっていう決まったフォーマットに対してお金を払う場所になるわけですよね。CDという媒体ならば、いわゆるメジャー・アーティスト達とも同様に、レコードならば、大量消費されるようなクラブものの12インチなんかとも同列で販売され、評価されるかたちになるわけですけども。同じ「商品」として。
  T:「商品」っていう意識は全然ないんですけど、てっとり早く知ってもらうにはCDっていう媒体が身近にあるっていうぐらいで。まあ、あくまで自分のリスナーとしての提案っぽい感じなんで。あと、世間のアナログ・バイヤーっていうのはDJとかDJになりたい人で成り立ってるんだけども、メディアが騒いでるほどダンスミュージックのレコードって売れてないし、いわゆるクラブものの雑誌の表紙を飾るような人でも、「枚数いくら売れたの?」って聞くと笑っちゃいますよ、きっと。だから、東京の一部のメディアを掴んでる人達が「これは凄いんだぜ」っていう憶測だけを撒き散らしてるだけで。すごい底辺のユーザーはあんな音聴いたって何とも思わないみたいだし。

C:竹村さん自身は、(チャイルディスクの音に対して)そういうリスナーの層っていうのは想定してるんですか?

 

T:いや、全然してないんですけども。リスナーとして、とか、レーベルのオーナーとしてじゃなくて、音楽つくる人間として(言えば)、僕のCD買ってくれた人っていうのは、そういうもの(世間一般の音楽シーン?)と無関係で好きな人が多くって。で、大阪とか東京とか、外に出るとそういう人とよく話すんですよ。すると、世間一般でありがたがられてる音楽とか、わかんないっていう人がすごく多くって。で、初めてクラブに来たっていうような人とかもいっぱいいるんですよ。 明らかにピュアな耳っていうか、何かに染まっていない人っていうのはいるんだけども、そこまで(理想の音に)辿りつくまでにすごい大変じゃないですか。すごい情報をとってる人なら見つけられるんだろうけど、そういう人っていうのは、それ自体ひとつの先入観で何かを狙ってる人達なわけじゃないですか。そういうのより、たまたま手に取って買って聴いてみて、「ああ、いいな」っていう直感で感じられる人っていうのを僕は求めてるんです。


C:直感で感じられる人・・・、それはレーベル名にもなってますけど、こどもの直感ってことですよね。曲名、タイトルにもよく「こども」って出てきますけど、竹村さんにとっての「こども」の概念ってどんな感じなんですか。

 

T:一般的な「こども」ですけどね。小・中学生よりももっと下の幼稚園ぐらいの。教育に入り込む前の無垢なものっていうか・・・。それは決して純粋でピュアで・・・っていうきれいごとだけじゃなくって、わかんないから出来てしまう、ちょっと残酷な部分もあったりするし。そういう部分も含めて好きだから、こどものつくるものは。 C:それはレーベルに所属してるアーティスト全てに共通して感じるものですか。 T:そうですね。今んところいる人全部そうです。


C:残酷な面を最も表わしてる人というと?

 

T:みんな持ってはいるんですけど、音に直接表われてるのは谷村(コオタ)とかだと思います。


C:レーベル発足時のプレス資料のようなものにも、「谷村コオタのリリースをきっかけに」とありましたね。

 

T:彼もDJをやってるときにテープを渡してくれた人で、それで手紙を書いて交流しだして。


C:所属されてる方っていうのは大体、竹村さんに直接テープを渡しに来た人なんですか。

 

T:そうです。でも今レーベルが立ち上がってチャイルディスクが有るっていう状況になってからもテープはすごいいっぱい送られてくるんですけども、なんかちょっと違うっていうか。谷村にしても、スッパ(マイクロ・パンチョップ)にしても、何か目的があってテープを渡しに来たっていうよりも、(無目的、無償で) 竹村さんの音楽が好きで自分も音楽つくってるんですよっていう・・・


C:ああ、手紙のような・・・。

 

T:ええ。それが今は、僕が好きそうなのを妙に狙ったような人がいっぱいいて。それがちょっと、がっかりします。


C:ところで、下世話な話になって恐縮なんですが、チャイルディスクの音源の売り上げはどうなんですか。

 

T:コンピレーションは売れるんですけど、単体のものはすごいきびしいです。まあ、それは始めっから解ってましたけど。大変というか(笑)。


C:理解のあるレコード店ではそれなりに推されてたりもするようですけど。

 

T:そうですねえ。でも、試聴機とか入っても、あんながやがやした所でヘッドホンとかしたところで、ちゃんとああいう繊細な音が感じ取ってもらえるかどうか、疑問ではあるんですけど。





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