
第八夜 負けてへん!ちょっと預けてあるだけや。
この後、「来週引き出しにいくんじゃボケッ!なんぼ欲しいねん!」と豪語するか「暗証番号忘れたさかい。まっ、ぼちぼちと・・・」とでも続くかである。賭けるか賭けないかにかかわらず、勝負事というのは勝ち負けがはっきりしている。
あたりまえである。だから勝負事と言うのである。
しかし、これがいったん賭ける側の問題となるといささかあいまいになってくるのである。なにを持って勝ちとするのか?もちろん1レースごとに勝負はついている。ついているのだが、1レースはずしたからと言って、あっ〜負けたぁ〜とは思わないのである。よっぽどの勝負レースか一日1レースしかやらない人以外はそれほど心に刺さりはしないのである。
では1日ではどうだろうか。これはもう「きょうは負けたなぁ〜、ヨメはんには黙っとこかなぁ」ぐらいの落ち込みは生じる。しかしこれも「日曜があるもんね。こういうこともあろうかと5千円だけおいてあるけんね」などと言う人もいるだろう。
1開催や月単位で収支を出していても、今年に入って、たまたま8月がマイナスになった人と、8ヶ月の内5ヶ月マイナス収支の人が8月を同じように負けてもイメージは違うだろう。前者が「たまたま今月マイナスになりましたが、もう7ヶ月連続プラスですから平気ですよ。わっはっはっ」と言うのに対し後者が「勝てる月があると言うことは、来月勝てる可能性がある言うこっちゃ」といってもなにか負け惜しみのように聞えてくる、しかし月単位で勝ち負けを出すのなら両者とも8月は負けである。
1年で勝ち負けを決めるのなら、後者にもまだまだチャンスはあるのだ。
結局、競馬というものをやっている間は進行形で、決着がついていないという状態に逃げ込んでいる部分があるのではないだろうか。10年で1000万円負けても、200円の単勝に1000万円ぶち込む金と勇気があれば、わずか1日で戻せることになる。詭弁ではない。賭け事の本質とはそういうものである。できればということである。これが実際なかなかできないのが本質と言う意味である。
年単位で見ていくと、競馬暦20年30年と言う人はどうだろう。多くの人が所詮賭け事と言うのは最後には負けるようになっているんだからと言う。事実大多数の人が負けているのだと思う。わたしもそうである。師匠の出馬表をいただくようになって約1年と少しになるが、やっとこさっとこプラスになったという感じである。それ以前に負けている額など計算したらとても競馬に勝っているなどと言えないし、いまでも思い出すだけで気絶しそうになるのである。
ただ、わたしにはこれから競馬を続ければ生涯トータルをプラスにもっていく可能性はまだ残っていると思う。実は、この感覚が負けていないという状態なのである。
競馬歴45年ターフ物産勤続42年第一商品課次長補佐代理、縦目
抜次郎さん65歳の場合だとどうだろう。負けている金額にもよるが、残された時間も少ない。感覚的には競馬に対して負けたというものがあるのだろうか?そういう人達はギャンブルとしてではなくホビーとして競馬をしているのだろうか?それとも、今までの事は無かった事になっているのだろうか。
長々と書いてきたが、競馬に勝つためには、勝つということがしっかり定義されていないと勝てないのではないかと思うのである。つまり勝ち負けがきちんとあるということは、終わりがあると言うことなのである。今のままでは競馬をやめるか、死ぬかしなければ競馬にたいしての結果がでないというあいまいさが、無意識の内に浸透しているのではないだろうか。
競馬というものはやはりはずれることのほうが多いし、事実36レース予想しても全部当てられる自信のある人はいないだろう。ところが、自分の買いたいレースというのは全部来そうなのである。でなければ買わないし、買う気もおきないだろう。ここに勝負のケジメをつけたほうが良い理由があるのだ。
例えば、自分の勝ち負けの単位を1日とした場合。
買い方は1レースあたりの投入金額を均等とし、何レース買っても良いとする。そうすると自分の的中率と回収率をある程度把握できていれば、1日6レースを予想したとして、3レースか4レース終了時点で勝ち負けがわかる場合がある。自分の負けと残りレースの回収期待値がマイナスになればその日は負けである。ゲームオーバーで残りレースは買わない。
これはあくまで1例だが、買わなければ負けないのである。もちろん、資金配分や投資金額などいろいろなパターンがあるだろうし、勝ち負けの単位を1開催とした場合はまた作戦も変わってくるだろう。わたしがここで言いたかったのは、ゲームのルールを決めないと勝ちも負けもないのではないかということである。
最近でこそ的中率と回収率の関係が普及して、買い目期待値が規定まで届かないと買っても意味ないという事が知られてきたと思う。この的中率と回収率の部分がはっきりしていたら、勝ちや負けが決定するルールを自分に作ればそれなりに効果はあるのではないかと思う。
第九夜