第十七夜 むかし、むかし

 オッズのことを考えていたら、ブックメーカーのことを思い出した。
ご存知の方もあるかと思うが、ブックメーカーというのはイギリスの賭け屋のことである。イギリスには私設というのか、民営といったら良いのか、とにかく大小多くの賭け屋があります。
 もちろん政府の許可をとって営業しますので、きびしい審査基準をパスした物だけが営業できるので安心です。なにより、生活に密着した伝統があるので、そのへんのモラルはきっちりしてるようです。
 イギリス人というと日本ではあまり賭け事好きというイメージはないようですが、めちゃくちゃ好きですね。それもちょっとした小銭を賭けるといったような、どちらかというと運試しみたいなことに賭けるようです。
 身近なところでは、よくいう、次の角を曲がってくるのは男か女かとか、次の選挙で労働党が勝つかどうかといったたぐいのことです。
 ですから、ブックメーカーはありとあらゆることを賭けの対象にしています。お客が出した賭けの対象でもオッズを客が了承すれば受けます。有名なのはノストラダムスの予言通り地球が滅亡するという賭けです。結果はお客側の負けでしたが、お客が勝っても地球が滅亡してたら誰が払うねんといったこともあったそうですが、これはシャレで受けたようです。たしか1000円くらいで3臆くらいもらえるようになってたと思います。

 もう15年くらい前の話しになります。そういった賭け屋があって、日本でもFAXでやりとりして賭けている人がいるという記事を週刊誌で読みました。ただ、そこにはSSPというブックメーカーの名前だけが書いてあって連絡先もなにもありませんでした。
 昔からボクシング好きだったわたしは、ラスベガスからの中継で地元のブックメーカーの賭け率が発表される度に、俺やったら連戦連勝やんと思っていました。
 それだけに、これや!と思いなんとか捜すことにしました。わかっているのはSSPという名前だけ、しかも、おそらくそれは何かの略のはずが、全然わかっていません。
 とにかく電話やと思い、もしかしたらKDDにも番号案内があるかもとかけてみました。

「あ〜、もしもしKDDさんですか」
「はい、KDDでございます」
「あの〜、電話番号調べたいんですが、わかりますかね」
「どちらの電話番号でしょうか」
「イギリスなんですが」
「イギリスのどちらでしょうか」
「えっ、ロッ、ロンドンです。(ほんまか(-_-;)リヴァプールやったらどうするねん)」
「少々お待ちください。係りのものと替わりますので」

ええ〜っ、番号案内あるんかいな。ジンバブエとかでも係りのもんおるんかいな。とか考えていると。
「お待たせ致しました」
「ええ〜と、SSPという会社なんですが・・・」
「ハイ、ご住所は?」
「そ、それが、わからないんですが」
「ロンドン市内でしょうか」
「( ̄□ ̄)、(たぶん賭け屋やからロンドンやろな)ハイ、市内です。」
「フルネームでおわかりになるでしょうか」
「いや〜、それがわからないんですよ。」
「どういった業種の会社でしょうか」
「( ̄□ ̄)、え〜っと、その〜、ブックメーカーなんですけど、別に本とか作ってる会社じゃないんです。賭けをね、え〜、受ける、ノミ屋みたいな・・・」
「ハァ?」
「え〜っと、例えばねボクシングの試合が/中略/で、賭け事を/再び略/で、あーなって、こーなって、延々/三度略/というような会社なんです」
「???、とりあえず、SSPだけで捜して見ます」

てなやりとりがあって、SSPの電話番号が見つかりました。電話してみると、何やら留守電のようになっています。テープは終わると自動的に切れるようになっていて、8回くらいかけてやっと聞き取る事が出来ました。
 どうやら会社が移転したのでそちらの方にかけるようにという内容でした。同時に住所も言うてましたが、スペルがわからないので同じです。
 とりあえず、電話して、相手の言うことはよくわからなくても案内書みたいなのを送れの一点張りで通しました。そして、めでたく案内書が送られてきました。

 やはり週刊誌で紹介されてから、色々と問い合わせが多く、SSPとしても日本で顧客を獲得したいようでした。1ヶ月後くらいをめどに、法的に問題ないか調査した上で正式に日本語で業務を始める予定であるということでした。
そうして、対ブックメーカーとの日々が始まったのです。

 当時のシステムは、だいたい水曜までに封書で週末の賭けのオッズやFAXシートが送られてきます。電話で申し込んでもいいのですが、言葉の問題でミスがあってはいけないのでほとんどの人がFAXだったようです。
 賭けの種類は、野球、これは土曜か日曜の対戦の勝ち負けを4試合から全部当てるというものでした。ですから、6ゲームあって、それぞれにハンデが振られています。他はF1とかゴルフ、もちろんボクシングも試合のある時はあります。テニスやサッカーもありました。
 儲かったのは相撲です。オッズをつけてる日本人(たぶんイギリスで雇われてる人だと思う)が相撲をあまり知らないみたいで、ほぼ毎場所勝てました。

 競馬もありましたが、最初はG1の単勝だけでした。後で少し主だった組合せの連単もあったような気がしますが買ってないので忘れました。3連単、5連単もありました。たしかトライキャスト、ビクトリーファイブといったと思います。
 これはJRAの番組ならどれでもOKで、専用のマークシートに馬番を書きこみます。オッズは3連単なら3頭、5連単なら5頭の単勝オッズを順番にかけていったものです。ですから5連単なんかはビックリするようなオッズになります。

 いま思うと、G1の単勝なんかは固定オッズなんでブックメーカーで買った方がよかったかもしれません。
 基本的にすべてが固定オッズですが、ボクシングなんかは、カードが決まった時点で投票した方がオッズはいいです。試合が近づくと大体下がってきますので。
 勝金はブックメーカーに作った自分の口座にプールしとくんですが、引き出すときの海外送金の手数料とか、結構かかるので、まとまらないとなかなか出せませんでした。

 いまはどうなってるのか知りませんが、ある程度セキュリティだけしっかりさせればネット上で、以前よりはるかに安い手数料で遊べるのじゃないでしょうかね。
 今だったら、人気サイドの単勝は絶対いいと思うけど、やってるのかな。また1回調べて見ます。

 こんな昔の話を思い出したのは、連単の導入とオッズの事を考えてたからなんです。
最近はオッズマネージャーを手放せなくなってしまって、オッズのことをぐだぐだ考えてたりしますが、ふと今やってる回収期待値が300%という設定は馬連で初めてできる事だと、アホみたいに気付いた訳です。
 当然、競馬を始めたときから馬連があったという人にとっては、なんてことは無いでしょうが、われわれオッサンにとってはビックリすることです。
 大体、いまでも枠連でやってみたら分かりますが、本線で3倍〜4倍のオッズの馬券を買ったら押さえに廻しても2点買えるか買えないかです。すなわち、300%の設定ができるレースなんてほとんど無いわけで、裏を返せば枠連しかない時代は、的中率が40〜50%ぐらい無いと勝てないという理屈です。
 はっきり言うてわたしらは長い間、勝てない勝負をしていた事になるわけですわ。これはちょっとショックでした。自分には出来ないがやり方次第では勝てると思ってたからです。改めて自分のマヌケさに腹立ちますわ。

 済んだ事はもう置いときますが、馬単と言うのはそう言う意味で、どれくらいのオッズがつくか分からないのですが、新たな戦略が組めるのではないかと思います。ワイド自身はオッズが低い事もあって、現在の馬連と組合せて回収期待値を設定していくには限られたパターンしかないと思います。
 逆に、馬単とワイドでなら結構面白い組合せが出来るんじゃないかとも思います。おそらく、馬単が導入されても馬単は馬単だけの範囲でオッズが動いて行くと思います。
 少し分かりにくいと思いますが、枠連と馬連は両方をにらみながら、最終オッズはほぼ同じ水準に落ち着く形になっています。これはオッズボードを見れば誰でもわかるから、そういう形に収束していく訳です。

 これは、わたしの推測ですが、オッマネージャー等のソフトを使って資金配分をしていくと、例えば買い目が馬連の1番から2・3・4番の3点となったような場合、馬単1−2・3・4とそれを補完するための馬連1点、ワイド1点、あるいはワイド3点といったように組合せたときに、おもわぬオッズの乖離があっておいしい組合せが出ると考えています。
 なぜなら、暗算やちょっと考えた組合せでは、現場で新聞片手に買ってる人には分からない組み合わせが存在するからです。

 馬単のオッズがどんなものなのかはっきりしないので、これ以上書いてもほんとの机上の空論になると思いますが、ワイドも馬単が出る事によって今以上の使い道が出てくるんじゃないでしょうか。
 それと、単勝というものの重要度がもっと出てくるんじゃないかと思います。
 結局、単勝で勝負した事の無い人は、馬単も本当の馬券として買えないと思いますね。結局裏表買うはめに陥ってしまうか、ただの万馬券狙いにだけ買うといった事になるのではないでしょうか。

 3種類の馬券が相互に作用するといっても、ほとんどの人が頭の中で組み立てるのは目に見えています。
 PATの人口が増え、その内の何割かがPC競馬をし、スピード指数をあやつっていたとしても、資金配分のソフトまでというと、どんどん少なくなるんではないでしょうか。もちろん的中させる力がなければ、どんなに良い回収期待値でも絵に描いた餅です。
 しかし、買いかたの組み合わせと言うものをもう一度考え直して見る価値はあると思います。

 競馬の基本は単勝と言います。わたしもそう思います。どこぞのボンクラがいまどき単勝なんか買ってる奴はいないと豪語してましたが、その単勝買ってる人間が勝ってるとい事を知らんだけですわ。ちなみにボンクラとは盆暗と書いて盆に暗い、つまり博打にうといと言う意味です。

 単勝買えなかったら、馬単は絶対に買えませんわ。何事も基本ですね。というこ
 

第十八夜