*舟越保武(ふなこし・やすたけ)氏という彫刻家の事を知ったのは3年ほど前。TVで、日本を代表する彫刻家、舟越保武・佐藤忠良両氏の作品と長年に渡る友情についてのドキュメンタリー番組を見て、あまりに美しく敬虔なその作品と両氏の友情にすっかり魅了されてしまいました。それ以前は氏のご子息でやはり彫刻家の舟越桂氏の事は知っていて、不思議な表情をたたえた人物像に惹かれていたので、なおさら感慨深い物がありました。(舟越桂氏の作品については、最近では"永遠の仔"単行本の表紙の木彫の人物像の作者と言うとわかる方も多いでしょうか)それからほどなく長崎に旅行に行く事になり、舟越保武氏の代表作である「長崎26殉教者記念像」は絶対に見てこようと勇んで出かけました。長崎市内を見渡せる小高い丘の上にその像はあり、長崎駅から徒歩5分くらいのとても便利な場所にあるわりに、観光コースに入っていないのかひっそりと静まりかえっていました。その横に記念館があるのですが、ガウディの建築に似せたような異様なたたずまい・・。殉死していったキリシタンの記録と鎮魂のための記念館という事もあり、もともとはしゃいでいい雰囲気ではないのですが、なんともいえない静けさと、他に誰も人がいなかった事もあって、本当に怖かった。母親と2人、急ぎ足で見学しました。そして改めて外の壁にある26殉教者記念像と向かい合っても、ここはまさにこの人達が処刑されたその場所なんだと思うと作品を鑑賞するより怖さが先に立ってしまったと言うのが情けないながら本当の気持ちで、記念写
真を撮ったりする気分にもなれず、しばらく無言で像を見つめるだけでした。
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