D×D

第3話
ーあなたはだれ?ー

毎日同じ朝が続く。

最近はとらの調子がいい。

地震も起きない。

そのかわり、痩せた。

元々太った方じゃなかったとらが、いつも以上に痩せている。

痩せこけている。

そして、いつも何かを考えている。
 

 

「とら?」

「なんや?」

「なんか、思い出したか?」

「俺は、ちぐちゃんに嫌われてたんや。」

毎朝その言葉しか言わない。

とらにとっての、それほどまでの人物。

「なんでこんな大事に思ってた人やのに、思い出されへんねや。」

「・・・。」

「あほみたいな話やな。こんなに好きやった人やのに、何も覚えてへん。さいてーや。」

俺は、答える事ができなかった。

今までとらとつきあってきた時間は短かったけど、ここまでへこんだとらを見たのは、あの時以来。

あの、家族の話をしてくれた時以来のことだった。

とらにとっての子供時代は、なにやら複雑すぎて、俺にはわからない。
 

 

「とらのすけぇーっ♪」

「あー、なんやねんりかっ!!毎朝毎朝おしかけてきよって!」

「なんやとはなんやねん、人がせっかく買い物行ってきたのに!」

「そりゃどうもー、ほら、さっさとそれ置いてでてけ!!」

「なんやねん腹立つわぁ。金払えやっ!!」

「お前が勝手に買って来たんやろうが!」

「なら食うなや!うちは悟さんに買って来たんやからな!!」

朝っぱらからいいかげんにしろよな・・・。

ちょっと世話焼きなりかさんと、世話されるのが好きじゃないとら。

けど、好きじゃないわけじゃなくて、たぶん、慣れてないだけだと思う。

最近やっとわかったことだけど、地震のやむ理由。

あの時はとらの心は子供の心になってると思う。

ずっと1人で生きてきたから、きっと寂しいんだ。

「だいたい、人がせっかく気ぃつこたってんねんから、人の好意くらい素直に受け取りいや!!」

「だからもらうもんはもらうゆうねん!!」

「ちょー最低。」

「んだとぉっっ!!」

俺から見たら十分こいつらの方がお似合いなんだけど・・・。

「あっ、虎之介ちょっと外きてや。」

「なんやねん、急に素にもどんなや。」

「ちょっとごめんなぁ、悟さん。」

「ああ。」

仲いいんだか悪いんだか。
 

 

「なんやねん、金なら払わへんで。」

「んなことちゃうわ!!」

りかはカバンからなんかを取り出している。

「はい。」

「・・・なんやこれ?」

俺の手の上に乗ってるもらいものは、昔のジュースのタブやった。

それもご丁寧なことに赤色の絵の具が塗られている。

「これな、ちぐと虎之介の婚約指輪やで。」

「こんやくゆびわぁ??」

「そうや。」

「これが??」

「これが。」

いい天気の空にちょっとかざしてみる。

よく見てみると、太陽の光と変にマッチする。

「・・・俺のは?」

「知らんわそんなん。」

「これは誰の??」

「これはちぐの。」

婚約指輪やったら俺も持ってることになるよな?

「どこやったんやろうか??」

うーん、わからへんなぁ。。

「けど、なんでお前が持ってんねん?」

「ちぐにもらったもん。」

「なんでや??」

「知らんやん、くれてんもん。」
 

 

「とらちゃんなんかだいっきらいっっ!!」
 

 

そうやんな。

俺は嫌われてるんやしな。

「早く、思い出さないとね。」

「約束の日ってさぁ、いつなん?」

「言われへん。」

「そっか。」

「・・・知りたい?」

「まぁ。」

「7月7日。」

「七夕?」

「違う。」

「じゃぁなんやねん。」

「あー、時間や。」

「ちょーまてや、そこまで言われたらきになるやん。」

「そっからは自分で考え!よく考えればわかるこっちゃ!」
 

 

部屋に戻るとカレンダーを探した。

よく考えれば・・・か。

7月7日。

赤い丸印。

なんで?

そういや俺は、カレンダーをもらうとすぐに7月7日に丸をつける。

・・・なんでやっけ?

もう条件反射になってしもたみたいやな。

うーん。

約束の日が7月7日。

なんかの記念日やっけ?

七夕さんやろ。

おとんとおかんの結婚記念日でもないし、命日でもない。

誕生日・・・。

ん?

誕生日??

「あーっっっ!!!」

「どうしたとら!!」

のん気にテレビを見てた悟がびっくりする。

「誕生日や、ちぐちゃんの誕生日!!」

「いつ、いつだよ!」

「7月7日、この日はちぐちゃんの誕生日や!!」

「おー、なるほど。。」

今までのカレンダーの印がやっとわかった。

あとは、この・・・

「これなんだ?」

「俺とちぐちゃんの婚約指輪。」

「お前の?」

「違う、ちぐちゃんの。」

「りかさんから?」

「そう。」

「なんで持ってんの?」

「もらったんやって。」

「・・・おかしくない?」

「なんで?」

「だって婚約指輪だぜ??なんで他の人に渡す必要があんだよ!!」

「俺は嫌われとったんや。だからちゃうん?」

「じゃぁなんでそれがりかさんなんだよ?」

よくよく考えてみればそうや。

さっきは思い出した事で有頂天になってたけど、確かにそうや。

なんでりかやねん?

「りかさんって・・・何者なんだろう?」

「わからへん・・・。」

「りかさんは??」

「時間っつってどっか行った。」

「探そ!!」
 

 

「俺駅とかの方探してくっから、とらこのへんの公園とか。」

「了解。」
 

 

容易なことに、りかはとらの目にすぐに映った。

1つ遠い方の公園。

けど、寒気がした。

霊がいる。

なんで??

「り・・・か・・・?」

俺には見えた。

普通に見たらベンチに座ってるだけの彼女。

けど、彼女の手の差し伸べた先には犬がいる。

霊の犬が。

やばいんちゃうんか?

はよ逃げな、食われてまうで!!

そう焦ってるのは俺だけなんかもしれへん。
 

 

りかは少し笑って、そしてその犬を包み込むようなシャボン玉が出る。

・・・なんや、、あれは??

シャボン玉に入った犬は天に上っている。

明らかに、あれは成仏してるようにしか見えへん。

俺は、思わず腰を抜かす。

そんな俺にあいつは気がついたみたいや。

「と・・ら。。」

立てなくて、答えられない俺にあいつは近づいてくる。

「なにやってんの??」

それはこっちの台詞やで。。

「な、、なななん。。」

けど、言葉にできへん。

「見た?」

黙って思いっきりうなづいてみる。

「ばれちゃった・・・か。」

平然としてる彼女が怖かった。

「うちのことキライになる?」

どういうことや??

「うちさぁ、霊能力者やねん。」

俺と、同じ?

「びっくりした?」

「なんで言ってくれへんかってん?」

「そんなんゆってもしゃーないやん。」

「そら・・せやけど・・・。」

「ほな、虎之介はいつゆってくれるん?」

「えっ?」

「あんたも、そうなんやろ?」

「なんで知って・・・。」

「ほんまは・・・ウソ。」

「ああっっ??」

「言えへんかったんやない。言わない事が約束だったから。」

「約束??」

「そうや。ちぐとの・・・約束。」

to be continue