Bare Angel

最終章

−友達だもんね。−

ふぅー。

ため息1つついてみる。

あと6時間。

記憶が消えちゃうんだ。

なんかに書きとめといたら忘れないかな。

でも、きっとそれは暗号に見えちゃうんだろうな。

忘れたくないよ。

だって・・大事だから。

GOと過ごした時間・・大事だったから。

でも、僕はどうしたらいいんだろう?

「よっ。」

え・・・?

「うひょひょ、お前なんつー顔してんだよ?まぬけー。」

「なんだよっ!!」

僕が求めた人物は、なにくわぬ顔で現れた。

「いつも・・突然やってくるんだね。」

「きまぐれだからな。俺前世ネコだったの。」

「ほんとにぃ?」

「うっそ。やーい信じてやんの。ばっかでー。」

「なんだよもうっ。」

いいよ、こんなやつの記憶なんていらないよもう。

まったく。

「なぁ。」

それまでの表情とはうってかわった感じで話しかけてきた。

「な・・なに?」

この後発する言葉はいつもろくでもないことばかりだ。

「・・・やっぱ・・いい。」

様子がおかしいことくらいわかるよ。

「なんだよー。言い始めて止めるなよ。」

「ほんとになんでもねぇよっ。」

・・・。

ヤバイ・・また泣きそうだ。

「GOの前世ってほんとにネコだったんじゃないの?」

「え?」

「起伏が激しいネーコ。」

「・・・。」

なんだよ。

結構、普通じゃねぇか、お前。

「ねぇ話してよ。もうこれ以上傷つくことなんてないからさ。」

そんな・・笑顔・・・俺に向けんなよ。

最近・・涙腺弱いんだよ、ホントに。

水不足になっちまう。

「ごーぉ。」

「・・んで・・」

「ん?」

「・・なんで・・なんでお前は・・健なんだ?」

「え?」

「なんでお前三宅健なわけ?」

「そ・・そういわれ・・ても・・・。」

「なんでだよ?」

「なんでっていわれても・・・お母さんが健康でありますようにって。健。」

「そうじゃ・・なくて・・・」

泣かないつもりだったのに。

「じゃぁなんだってんだよ。あーもぉ、今日のGOわけわかんない。」

「どうしたんだよ、お前らしくねぇぞ?言ってることわけわかんねぇよ。」

「また・・ケンカしちまったよ、親父と。」

「またぁ?お前はもぉー、どうしようもねぇやつだな。」

「キライなんだよ。」

「好きになれ。」

「やーだっ。」

「・・・。」

「んだよ?」

「お前ホントに俺と同じ年か?弟みてぇ。」

「なっ。。」

「ガーキっ。」

「お前に言われたくねぇよ。」

「やーいやーいこのガキっっ。」

「ちょっと待てっ、快彦っっ!!」


なんでお前は快彦と同じ境遇を歩んでいるのか?

嫌になるよ。

なんで・・その魂をとるのが・・・俺だったのか?

他のヤツだったら・・こんなにつらい思いしなくてすんだのに。

どうしてお前は快彦なんだよ?

「GO?どしたの?ねぇ、泣かないでよ。」

・・そうじゃない。

俺で・・よかったんだ。

だから、コイツの道を正しいとこに導かなきゃいかない。

お前に会えて・・よかったから。

「なぁ、お前さぁ、前世なんだったか・・教えてほしいか?」

「え・・・?」

GOの言いたい事がなにか、僕にはわからなかった。

前世なんて考えた事もない。

それを聞いたところで、僕になんの得があるのかさえもわからない。

「どうして?」

「・・・聞いてほしいんだ。」

「・・・。」

「俺・・お前を天使にしたくない。」

・・・え・・どうして?

「お前は・・天使になっちゃいけないんだ。」

なに・・言ってんの?

「人間になれよ。」

お前のようなヤツが天使になるなんて、もったいないよ。

「ほ・・ほんとにきまぐれだね、GOは。」

「え?」

「・・・そんなに僕のことキライ?」

「そうじゃないっ。」

「キライなんでしょ?だからそういうこと言うんだ。」

「違うっ。」

「じゃぁなんで?死んだ後なんて僕の勝手でしょ?GOにはかんけーないっ。」

・・・。

なぁ快彦・・俺・・どうしたらいい?

 

 

「HIROSHIさん。」

「どした?KANA。」

「GOがさ、悪魔になったら・・どうしよう?」

「えっ?」

「ねぇ、なんとかならないかな?」

「ま、、まさか。最後だってこと、ちゃんとわかってるよGOは。そんなヘマしないだろ?」

「・・・第六条、両者の合意のみに成立する。どちらか一方が反発する場合は永久に追放となる。」

「・・・何が言いたい?」

「ずっと、ずっとGOはそうでしたよね?この法律にひっかかってたんですよね?」

「それがどうした?」

「・・・あたし・・ヤですよ。GOがいなくなるの。」

「・・・それは・・ずっと考えてたことだ。」

「えっ?」

「元々は悪魔になるはずだったんだ。ここまで来れたのも奇跡だったんだよ。」

「そんな・・・」

「三宅健をちゃんとした意思で連れて行かなければ、それまでのヤツだったってことだ。」

「そんなの、ひどいですよ。」

「仕方ないだろっ、なんのための掟だと思ってるんだ?」

アイツがここにきてから、ちゃんと仕事ができたのは一回だけだった。

最初はそれでもいいと思った。

たとえ一度でも犯罪を犯した者。

これから強くなる。

そう信じていた。

しかし、現実は違ってた。

情にもろいことは知っている。

だけどそれは、彼の想像以上だった。

「それは・・GOが決めることだ。」

 

 

「言葉にしたら、たぶんうまく言えないんだ。」

「うん。」

泣き止んだ彼と疑いの彼は、お互いが冷静になった時に背中合わせでもう一度向き合うことにした。

「お前の前世ってさ、俺の親友だった。」

「うん。」

「驚かないんだな。」

「言ったでしょ?これ以上傷つくことなんて、なぁーんにもないの。」

「・・・うん。」

「で?」

「快彦って言うんだ。」

「うん。」

「にこにこしたやつでさぁ、なんかおおざっぱで、適当なとこあるし、たまにいい加減なとこあるし、目細いし。」

「目細いのは関係ないよー。」

聞いた彼はちょっと笑ってる。

「でも・・・すげー優しいとこあるし、人に弱み見せないし、ホントは強くて、自分よりも他のヤツのこと考えてて。」

「うん。」

「お前に・・そっくりなんだ。」

彼はちょっと困ったように言う。

「僕そんなにいいやつじゃないよ。」

って。

それは・・本人にはわからないかもしれないけど、俺にはわかる。

「2人の親友の俺が言うんだぜ?間違いないよ。」

「・・・僕のこと、親友って思ってくれてる?」

「当たり前じゃん。」

友達と親友の違いなんてわからない。

親友なんて言葉、そう簡単に使いたくない。

けど、健は親友ってちゃんと言えるよ。

もちろん、快彦だって親友だ。

大事な・・友達。

もうねぇけど、命だってかけてやれる友達。

「そっか。」

「ん?」

「僕、GOの親友か。」

「お前は?」

「ん?」

「お前にとって、俺ってなんだ?」

「そうだなー。」

「悩んじゃうんだ。」

「イキナリ現れるし、きまぐれだし、めちゃくちゃ言うし、羽根黒いし・・・」

「羽根黒いはかんけーねぇだろ?」

むっとした表情をした彼に少し笑って最後の一言を伝えた。

「言葉にできない。」

「・・・そっか。」

それは、お互い一緒だもん、思ってること。

「大事な・・大事すぎる友達。親友かな。ううん。もっと上。」

「じゃぁ俺はそのもーっと上。」

子供みたいな会話に2人ともくすくす笑い合う。

「どうする?」

「どうしよー?」

「困ったね。」

「困ったな。」

「GOは、僕が人間になっても、天使になっても悪魔になっちゃうことはないんでしょ?」

真っ黒な羽根になるのは、掟を破った時だけ。

つまり、両者が合意してしまえば、別に掟を破った事にはならない。

「ああ、まぁな。」

「ふーん。」

話さなくなると・・ちょっと緊張する。

「ずーっと一緒にいたいね。」

「そだな。」

「なーんにも考えないでさ。」

「ああ。」

「でも・・できないよね。」

「・・・うん。」

「ねぇGO。」

「ん?」

「GOは、ずっと僕のこと覚えててくれる?」

その声はどこか、決意にも似た感じのものに思えた。

「僕が人間になっても、その快彦ってヤツじゃなくて、同じ人物じゃなくて『三宅健』として、覚えていてくれる?」

当たり前だよ。

ちゃんと覚えてる。

「当たりめぇだろっ!」

そう言って頭どうしをぶつけた。

背中合わせしている彼らは、背丈が良く似てるせいかちょうど頭の位置が同じになる。

「いたいよもー。」

「俺もいたいよー。」

くすくす。

「こういう時間が一番好き。」

「どうゆうこと?」

「友達とただなんかくだらない話してんの。その時間がすごく好き。だらだらだらだらやってんの。」

「くだらなくねぇよ。俺達の未来がかかった大事な話。」

「だって全然前進んでないよ、さっきから。」

「そっ、それはお前がはっきりしねぇからだろ。」

そんな彼はずっとにこにこしてやがる。

・・・かなわねぇな。

「ふふ、くだらないよ。そんなの。くだらねぇーよ。」

何言ってんだよ?っておもったけど、そうだな。

ばかばかしいわ。

こうやって頭で考えてんの。

「なぁーんにも考えたくない。もう、疲れちゃった。」

「・・・。」

「・・疲れちゃったよ。」

「・・・。」

彼は、何も言わなかった。

「短かったね。GOとすごした時間。」

「そうだな。」

「目を閉じたら、全部全部が戻ってくる。」

「うん。」

「楽しかった。」

「俺も、楽しかった。」

「楽しすぎて・・もう涙なんて出ないよ、僕。」

そっか。

根は強いもんな。

だって、快彦だから。

「あー、今その快彦ってヤツと一緒にしたでしょ?」

「え?」

「だからぁ、一緒にしないでって言ってるでしょー?」

「だれがっ、お前なんてなぁ、快彦の足下にも及ばねぇっつーの。」

「別にいいですよーっだっ。」

・・・。

「でも・・・」

「なに?」

「健は・・快彦にないもの、ちゃんと持ってるよ。」

「・・今日は素直だね、GO。」

「それじゃ俺がいつも意地っ張りみてぇじゃねぇか。」

「えーっ、違うの?」

当たってるから、逆に言葉もでない。

「図星だ図星。」

「あーそーだよ、どうせ俺は意地っ張りですよーだっ。」

・・・。

沈黙は、彼らの本来の目的を考える時間。

脱線してしまうのは、逃げたいから。

2人の時間がほしいから。

「どっか行っちゃおうか。2人で。」

「ええ?」

「だって、天使になったってGOは納得してくれないんでしょ?」

そういう訳じゃなかった。

正直言って心強いことは確かだった。

でも、どこかで納得いかなかったのは事実。

「ねぇ・・聞きたかったこと・・あるんだ。」

「なに?」

「もし、僕が決断できなくて、最後の今日の日を過ぎてしまったら、どうなるの?」

それは、一番触れたくなかったこと。

「追放。」

できれば言いたくはなかった。

だけど、答えないわけにはいかない。

けど、どうしていいかわからない。

だから、端的に答えた。

そして、その言葉を健が理解するには少し時間がかかっていた。

「どこから。」

「人間からも、天使からも、悪魔からも追放。それさえもやる権利がないんだ。だってそれは、自分の意思のないやつだから。」

「ふーん。」

「人間の基盤ってさぁ、意思があるかないかとかだと思うんだよねー。・・あとは、優しさと思いやりかな。」

「そっか。」

「うん。」

・・・。

「GOはもう、人間になれないの?」

「・・たぶんな。」

「そっか。」

「なれたとしても、こんな落ちこぼれじゃ無理だよ。」

「じゃぁ・・・一緒に追放されちゃおうか。」

予想外の一言に驚きを隠せない。

「なんで?」

「だって・・もし僕が人間になっても、また死ぬ時にGOが苦しむんでしょ?」

「それは・・・」

「見たくないよ、そんなの。」

・・・。

「見たく・・ないよ。寂しいだけじゃん。」

・・・。

「でも・・でも俺は・・・」

「僕の魂のせいで・・苦しまないで。」

・・・。

「お願い・・・。」

「だったら・・・」

「え?」

彼はそっと健の耳元で言った。

「おれのせいで、いなくならないで。」

小さな声だった。

けど、静かな2人だけの部屋には十分な大きさの声。

「1人に・・しないで。」

「ご・・う?」

「俺を・・1人にすんなよ。」

それは、僕の予想外の答え。

「お前のためだったら、耐えるよ。耐えてやるよ。」

「・・・。」

「俺、お前がいたから。お前のおかげで・・記憶戻ってきたんだよ。」

「・・・。」

「お前がいたから・・・。」

泣かないでよ。

「GOの泣き虫。」

見かけや外見からは想像できないほど、初めて会った頃に比べると印象は全然違う。

なんだか、事あるたびに泣いてる気がする。

きっと、情にもろいんだね。

「うるせぇよ。」

「GOって、すごい強そうなのに。」

自分でも信じられねんだよ。

なんでこんなに泣いてんのか。

健はそんな俺をみてなだめてくれる。

泣き方なんて知らなかった。

人間の時にないたのはおふくろの前と、快彦の前だけだった。

それでも強がって生きてきた。

そっか、俺、泣き場所だったんだ。

健といると素直になれる。

そうだったんだ。

「健といると・・ホッとするからだよ。」

ほんと、言葉にするって難しいよな。

「僕だってホッとするんだよ?」

そうだね。

僕達考えてること一緒だもんね。

言葉にできないもの、共有できるもんね。

忘れそうになってたよ。

そうだったね。

楽しい時は2人とも楽しかったね。

うれしい時は2人ともうれしかったね。

悔しい時は2人とも悔しかったね。

・・・苦しい時も・・一緒だよね。

「一緒だもんね、僕達。」

「ずっと一緒だもんな。」

 

 

おやすみ。

うん。

 

 

「おかえり。」

「・・・ああ。」

「・・・。」

「なに?」

「・・・別に・・・。」

「お前には迷惑ばっかかけたな。」

「ほーんと。」

「・・素直じゃねぇの。」

「だって事実だもん。」

「るせーよ。」

・・・。

「俺、準備しなくちゃいけないから。」

「GO。」

「なに?」

「・・・いなくならないで。」

「え?」

「ここから、いなくならないでね。」

「・・・。」

「ずっと・・ずっと一緒に仕事してきたじゃない、仲間でしょ?」

「・・ああ。」

「ずっと・・好きだったよ。私。」

・・・。

「私、ずっと好きだった。GOのこと。」

彼は・・何も言わなかった。

「俺・・・」

・・抱きしめても抱きしめても、すり抜けちゃうんだね。

「俺さ・・・」

「いいの。」

そんな顔・・しないでよ。

「言っておきたかっただけだから。」

「KANA・・KANA俺は・・・」

「ちゃんとこなしてね。仕事。承知しないんだから。今度失敗なんてしたら。」

「わかってるよ。」

「わかってない。」

「・・心配すんな。」

「心配だよ。」

「・・そうだよな。」

「そうだよ。」

彼女にはわかるみたいだった。

俺が不安で不安で仕方ないこと。

「元気の出るおまじない。」

そういってアイツはほっぺにキスをする。

「ここで一番優秀な私がちゅうしてやったんだよ?大丈夫。大丈夫だよ。」

ありがと。

なんか・・・安心した。

 

 

「行ってきます。」

「俺も行く。」

「大丈夫ですよ。もう泣きませんから。」

「けど・・」

「行かせてください。俺1人で・・行かせてください。」

「・・・わかった。」

「終わったら、また泣いてもいいかな?」

それは、GOが初めて見せた、HIROSHIへの弱いところ。

  

 

「・・・。」

「あーっ。」

「久しぶりだな。」

そこには、俺を助けてくれたヤツがいた。

「あん時は、お世話になりました。」

「なっ・・・」

そう言ってやったら、アイツはぎょっとした顔しやがった。

んだよ、人がせっかく素直に言ってやったっていうのに。

「それはどういたしましてー。」

・・・。

「こっちに来たらぶっとばすからな。」

「はっ、だーれが行くもんか。」

「お前は天使の仕事が向いてるよ。」

「・・そっか。」

「がんばれよ。」

「変な感じだな、悪魔に応援されるなんてよ。」

「俺はただお前にこっちに来てほしくないだけだ。」

「好んで行くやつがどこにいるんだ。お前は変だっ。奇人だ奇人っ。」

そういうとちょっと・・いや、かなり怒った表情でつっかかってきやがる。

「その奇人のおかげで助かったんだろっ!」

「だからさっき言っただろ?世話になったってっ。」

お互いにらみつけたままだった。

「・・・GO、時間いいのか?」

げっ。

「・・・早く行けよ。」

「わぁってるよっ。」

いーだ。

・・・お互い話すと絶対つっかかるけど、これでも感謝してるんだぜ?

あんたがいなきゃ、俺は今ここにいないんだからな。

マサユキさんよぉ。

 

 

よぉ。

「よぉ。」

「・・・えっ?」

「よぉ。」

「お前、俺様がよぉ。って言ってんのに返事しろよな?」

「あ・・・。・・ど、どうも。。」

「ってぇー・・・なにすんだよ!!」

「どうもじゃなくて、よぉだろ!」

「よぉ。」

「よぉ!やっと言ったな。」

よぉ。

ニヤって笑ってやる。

「俺様実はさぁ、天使なんだ・・・。」

元気?

わかんないよ、夢のなかだもん。

「な、、ななな、なにすんだよぉっっ!!」

「だってうれしいんだもん♪」

「俺そういう趣味ねぇかんなっっ!!」

「そんな深くとらないでよーっ!」

「・・・人間ってうれしいとちゅうするもんなのか?」

「健は俺様にほれているのか?」

「な、んなわけないじゃん。だからぁ深くとらないでよー!」

もう、会えなくなっちゃうね。

・・・そうだな。

「よぉ。」

「・・・なんで?」

僕・・三宅健っていうんだよ。

・・ああ。

ちゃんと、覚えていてよね。

「GOはさ・・・僕が死んだら悲しい?」

わかってるよ。

「毎日また、いつもみたいに来てよ。」

わかってる。

「ねぇ、お願い。GOは、僕の友達だから。」

忘れない。

「GO久々に『俺様』ってゆったぁ!!」

「えっ?」

「そのほうがGOらしいよ!」

健が忘れても、俺様は絶対忘れない。

「僕さ、天使になりたい。」

言い忘れてたけどさ、健が天使になるって言ってくれたこと・・うれしかったから。

わかってるよ。

俺と一緒だって言ってくれたこと、うれしかったから。

「一緒だもんね、僕達。」

「ずっと一緒だもんな。」

友達だもんね、僕達。

ああ、ずっと、ずっと友達だもんな。

 

 

ー5年後ー

「うるせぇなー、行きゃぁいいんだろ?」

「そーお。行けばいいんですーっ。まぁったく。」

「んだよ、羽根のでかさ負けたからって怒鳴ることねぇだろ?」

「誰も怒鳴ってなんかないでしょ?」

「あ、それとも負け惜しみ?」

「早く行きなさいよぉっ!!今日はあんたのばんでしょ!!」

「はいはいっ。」

・・人使いの荒いヤツだなぁもー。

そう言って真っ白の大きな羽根を持った天使が降りていく。

「さくら・・・。」

そういや、アイツと会ったのもこの桜の木だったっけ。

「兄ちゃんだれー?」

「えっ?」

そこには、目をまんまるに開けた少年が1人。

「兄ちゃん僕ん家でなにやってんのぉ?」

「ん?あんまりきれいな桜だったからな。」

「きれーやろ?これ僕の木やねん。」

あーそー。

これはな、俺様と健の木なの。

「お前はそこでなにやってんの?」

「僕なー、今日お熱があんねん。だからなお友達と一緒に遊ばれへんねん。」

「そーか。じゃぁ今日一日いい子にしてたら、明日はみんなと遊べるってわけだな?」

「そう!明日はみんなと野球すんねん。」

はは、この身長でか?

俺の姿見えるってことは5歳までってことだよな。

「お前いくつだ?」

「4歳っ。」

そっか。

「・・登りたいか?」

その少年はずっと木を見ていたことを知っている。

それもコイツのサイズの高さじゃない。

もっと・・もっと高く。

一番てっぺんを見ていた。

「うんっ。」

「よし、じゃぁしっかりつかまってろよ、兄ちゃんが上まで連れてってやるからな。」

「ホンマに?」

「ああ。あ、もちろんちゃんと下ろしてやるから安心しろよ。」

「うんっ!」

この桜の木は俺様と健の木。

それはきっと、この名前が消えてしまってもきっと変わらない。

 

 

健、お前何書いてんの?

んー?僕とGOの友情のあ・か・しっ。

あそー。

でもGOって横文字やなんだけど。

・・俺・・森田剛って名前だったんだ。

そうなの?じゃぁ剛なんだ。

もうその名前はねぇけどな。

そんなことないよ。GOはずっとGOであって森田剛なの。

 

 

三宅健と森田剛はずっと親友です。


 

END